トルクメン料理において「包む料理」にはブレックの名がつきます。単にブレックと言うと水餃子を指し、ユムルトガ=卵なのでユムルトガリブレックは「卵入りの水餃子」です。しかしすっごいですよね、薄薄の皮を少しだけ開けて閉じ、生の卵液を素早く注いで空気を抜いて閉じてゆでるだなんて、世界の餃子料理の中でもトルクメニスタン(クフナウルゲンチ)とウズベキスタン(ヒヴァ)にまたがるホラズム地方独特のもの。自由旅行ができるヒヴァのほうが圧倒的に観光客が多いのでこの料理はヒヴァ料理として有名ではあるものの、この料理の最古のルーツはトルクメニスタン側と考えられています。12〜13世紀のホラズムシャー朝の首都はクフナウルゲンチで、アムダリヤ川下流の莫大な水を利用し高い農業生産力を誇る中央アジア最大の灌漑農耕オアシスでした。農耕による小麦栽培、牛や鶏の飼育という条件が揃っており、当時より非常に珍しい高度な料理が生まれました。13世紀のモンゴル侵襲によりクフナウルゲンチが破壊され、のちにアムダリヤ川の流れが変わったため都市は衰退しましたが、この「卵入り水餃子」の技法は南の政権であるヒヴァハン国(16世紀~)へと受け継がれました。もしこの料理が16世紀以降にヒヴァで生まれたものであればその頃は既に中央アジア全域との素早い交流があることから、サマルカンドやブハラなど他の都市にもレシピが広がっていたはずです。



