世界245か国目、リビアの訪問達成報告
私は、昨年12月(1か月半前)に、世界の最たる渡航難関国リビアへの訪問を達成しました。
かつてのアフリカのトップカントリーの座を争う豊かな国。
「トップカントリーは南ア(南アフリカ共和国)じゃない?」と言われそう? でも後から入ってきた人が肌の色で人を分けて残虐な行為をしてきた国と、リビアは根本が違う。指導者カダフィはリビア生まれのリビア人で、彼はカリスマ性の高い政治力と石油の財力により、欧州の言いなりにならずに「すべての人に家と暮らしを」と掲げて国作りをしてきた。かつてリビアにはアフリカ中から留学生が集まり華やかだったリビア。アフリカの優等生国家と言えよう。
しかし隣国チュニジアが荒れてカダフィ暗殺後より内戦へ突入したリビアは「行っちゃいけない国」の筆頭となりました。つか外務省危険度レベル4。私も正直、”一生行けない国”、あるいは最後まで渡航が残る国だと思っていた。何年もそのような覚悟を決めていたので、今回の渡航は何年もリビアの英語のニュースに全部目を通した上での渡航です。
リビアのビザ取得に立ちはだかる幾重もの高い壁、信じられないどころか「あり得ない」の連続。困難の一部はリビア独特の、他国じゃ起こり得ないものでした。だからこそリビアへの渡航が成功したことは、自分が多角的に成長したと心から思う。だから旅は良いんだよね。一応同時期にアルジェリアも渡航できるかと思ってビザ準備を進めましたが、正直、難易度が高いと恐れられているアルジェリアビザの難易度はリビアビザの十分の一以下だと思った。数字は直感ですが。
リビアの話に戻ると、何しろ旅行者が入れない国なので正しい情報がネットにほとんど上がっておらず、行って発見したことは極めて多いです。
ましてや「お料理目的♪」が理由でリビアへ渡航する人なんかいない。これは観光ビザの範囲なら断言できる。旅だけに人生を懸ける人であってもリビアは極めて難しいのだもの。だから料理研究家が食と観光の目的でリビアを旅したのは私が初めてです。断言の口調ですが、本当に、それだけ ”行けない国” だということです。
なおこのように準備には長年かかったので、日本にいるうちにアラビア語の読み書きができるようになって渡航できたから、リビア現地での料理研究は実に好調でした。苦労したけどこれはこれでよかったかな。
スパイスアンバサダー目線で言えば、リビア料理には香辛料がよく使われました。だから精一杯精一杯、毎日寝不足になりながら食文化やレシピを学び、調べ、数多くのリビア料理を知ってきました。なお、唐辛子ペーストの「ハリーサ」(※)はチュニジアのイメージが強く持たれていますがリビアも相当なハリッサ大国でした。
※日本での販売名はハリッサでも現地の発音はハリサ(強アクセントを示してハリーサ)が近い。
東にミスル(※)、西にマグレブ(※)。
※ミスル:エジプトの言葉によるエジプトの意味。マグレブ:現在の国区分ではモロッコからチュニジアを指す用語
その偉大な双方の食文化の融合地点ですから、リビアが食の大国であることは間違いない。わかりやすく言うと、エジプト料理も、チュニジア料理やモロッコ料理も、それから地中海料理(イタリア料理やギリシャ料理)も、さらには砂漠のベルベル料理も融合。
ミスル、マグレブ、地中海、そして砂漠のベルベルの美食が、リビアの味。
なんでこういう融合が生じるかというと、リビアが砂漠のド田舎で大して人も住んでないから、リビアの食文化が薄いこと。人が生きるために土着のものを食べることはもちろんなされてきたのですが、ミスル(エジプト)やローマ(イタリアより広い意味での広域の欧州)の偉大な食の発展に比べると至極ちっちゃいもんです。地理的に狭間というだけなら融合しないんだけど、リビアの場合はアフリカ大陸の北岸の通行地点だし、リビアはアフリカの出入り口の位置にあって内陸から地中海への通行地点。この「通行地点」であったことが、リビアに東西南北の4方向の料理を綺麗に融合させました。その意味でリビア料理は豊かで素晴らしいものでした。
私の好きな言葉。
「アラブの国を旅するとアラブがもっと好きになる」。だからリビアの旅は心底楽しかったです!
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次回より、「スパイスを使う世界のおかずスープ」のレシピを掲載していきます。作る側も食べる側も楽しさがあればいいなと思い、香辛料/スパイスを使うことで、味気なさや寂しさを感じない、美味しいことが間違いない、素敵な食卓を彩るレシピを紹介していきたいと思います。
次回は「ハリッサを使うリビアの大人気おかずスープ」からスタートいたします。
謎の国リビアの料理とは!?
乞うご期待♪
【第1回】
きっかけはロシアの「主食1スープ1」
【第2回】
「おかずスープ」の定義
【第3回】
達成報告!渡航最難関国リビアへ!!
【第4回】ハリッサ使用
リビア料理「ハライミ」
【第5回】サテトム使用
ベトナム料理「ラウタイ」
【第6回】カレー粉使用
英国料理「マリガトーニ」
【第7回】チリパウダー使用
米国料理「ホワイトチキンチリ」
【第8回】五香粉(ウーシャンフェン)使用
台湾料理「素肉餛飩湯」(スールーフントゥンタン)
【第9回】八角使用
パキスタン料理「ヤクニ」
【第10回】オールスパイス使用
ジャマイカ料理「フィッシュティー」
【第11回】花椒使用
中国料理「水煮肉片」(シュイジューローピエン)
【第12回】ナツメグ使用
セントクリストファーネイビス料理「ゴートウォーター」
※本記事はハウス食品及びレシピブログが主催するスパイスアンバサダーに就任したことに基づき執筆するものです。