スパイスアンバサダーとして活動しています。スープ料理の魅力を活かしたく、主食をあわせるだけで一食が素敵に完結する「美味しい世界のおかずスープ」の楽しさを提案することにしました。「主食1スープ1」の素敵な食。世界の「スパイスおかずスープ」というテーマでレシピ化し、全12回の連載で発信しています。
【第6回】英国料理「マリガトーニ」
日本でも幾つかのミックスパウダーが市販されています。最初から安定した美味しさで配合されていることは利点ですよね。その最たる例がカレー粉です。
さて、
M u l l i g a t a w n y
すらすらと読めないのがトリッキーな英国英語。まあ英国内でもウェールズなどに比べればイングランドはまだましなのですけれど、ともあれ英国圏の料理に「マリガトーニ」と呼ばれるカレー風味のスープがあります。綴りは難しく「Mulligatawny」(マリガトーニ)、多くは「Mulligatawny soup」(マリガトーニスープ)と表記されます。具には鶏肉やリンゴが入り、またお米はしばしば野菜感覚で加えられ、主たるスタイルとしてはパンと共に食べられる料理です。
以前、マリガトーニスープのオーセンティックな本物のレシピを知りたくて、Printed mattar(プリンテッドマター=印刷物、出版物)をネット経由で探したことがあります。そこで、原点となるレシピを見ながら、なおかつ現代においても普及しているレシピを見ながら、料理研究をしました。
マリガトーニスープのオーセンティックレシピ
レシピは簡単です。
材料(6人分):
- バター
- 大3
- 玉ねぎ
- 1個
- にんじん
- 1/2本
- セロリ
- 20 cm
- 薄力粉
- 大3
- カレー粉
- 大1
- 鶏手羽元(※1)
- 8本
- 水(※2)
- 1 L
- 鶏がらスープの素(※2)
- 大1弱
- パセリA
- 2枝
- 塩
- 小1.5
- こしょう
- 小1/4
- ナツメグパウダー
- 小1/4
- リンゴ
- 1/2個
- 生クリーム
- 150 mL
- ごはん(炊いた米)
- お茶碗1杯
- レモン果汁
- 小2/3
- パセリB
- トッピングする量
※1:元レシピは骨付き鶏もも肉ですが、ここでは手に入りやすい手羽元を使っています。500 gくらい使います。
※2:水と鶏がらスープの素は、元レシピのチキンブイヨンに相当します。
作業工程:2 時間
- 鍋にバターを入れ、玉ねぎ、にんじん、セロリを粗みじん切りにして鍋に入れる。
- 鍋を中火で熱して野菜を炒め、体積が減ってしんなりしたら薄力粉とカレー粉を広くまぶし入れて混ぜる。
- 野菜をよけ、鶏手羽元を入れて炒める。
- 水を入れて強火にし、鶏がらスープの素、パセリA(2枝)、塩、こしょう、ナツメグパウダーを入れ、沸騰したら弱火にしてフタをして煮込む。
- 煮込み始めてから10分くらい経ったところで味見をし、塩加減やスパイス加減などを好みに調えておく。
- 1時間煮込んだらパセリと鶏手羽元を取り出す。パセリは捨てる(またはもったいないのでその場で食べる)。
- (なめらかな具が好みなら鍋の中をハンドブレンダーでわずかに撹拌するかマッシャーで潰す。)
- 鍋は弱火のまま、リンゴを5 mm角切りにして鍋に入れ、生クリームとごはん(炊いた米)を入れて全体を混ぜる。
- 鶏肉が触れる温度に冷めたら、両手で鶏肉を揉みほぐしながら骨から外し、鍋に入れる。
- ときどき混ぜながら5~15分(リンゴの柔らかさが好みになる時間)煮て、レモン果汁を加え、味見をして塩加減、スパイス加減、酸味加減などを好みに調える。
- 器によそい、好みでパセリBを刻んでトッピングして出来上がり。
- Enjoy!
美味しいーー♡♡♡
食べた感想としては、すがすがしく美味しいです!
どういう意味かというと、美味しい以外の感想が出ないので「純粋に美味しい」と思う純粋さがすがすがしい。ごはんが入っていて海外の料理でも口になじめますし、カレー粉がしっかりと「カレー感」を発揮していてお子さまから大人までみんな満足できる味。リンゴを入れるのですがリンゴ味がカレーにしっかりとなじんでリンゴの違和感はないですし、何より骨から離した肉はゼラチン質も多くて美味しいのです。
マリガトーニスープは、英領インドの時代に、インドに駐在していた英国人の食事のために、インド人がインドにない料理を創作したというもので、英国に持ち帰られてからもレシピは進化してきました。このレシピは1970年代の複数の英国料理本のレシピを統合し、オーセンティックでスタンダードな制作としました。
* * *
「スパイスを使うと、ふとほかの部屋から入ってきたときに、わあ、いいにおいって、料理を見ないうちから美味しそうって思ってもらえる。」
そういう瞬間って、嬉しいじゃないですか。
その瞬間が楽しくて、スパイスがあると幸せが増える。
料理って本当にすごいよね。言葉では伝えられないものなのに、食卓であの国へ旅できるのだから。こうして料理で地球はまるくなる。
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次回はチリパウダーを使ったおかずスープです。また世界の本物のレシピをお届けしますね。今回が英国ですから次回は米国に飛びましょう。お楽しみに。
【第1回】
きっかけはロシアの「主食1スープ1」
【第2回】
「おかずスープ」の定義
【第3回】
達成報告!渡航最難関国リビアへ!!
【第4回】ハリッサ使用
リビア料理「ハライミ」
【第5回】サテトム使用
ベトナム料理「ラウタイ」
【第6回】カレー粉使用
英国料理「マリガトーニ」
【第7回】チリパウダー使用
米国料理「ホワイトチキンチリ」
【第8回】五香粉(ウーシャンフェン)使用
台湾料理「素肉餛飩湯」(スールーフントゥンタン)
【第9回】八角使用
パキスタン料理「ヤクニ」
【第10回】オールスパイス使用
ジャマイカ料理「フィッシュティー」
【第11回】花椒使用
中国料理「水煮肉片」(シュイジューローピエン)
【第12回】ナツメグ使用
セントクリストファーネイビス料理「ゴートウォーター」
※本記事はハウス食品及びレシピブログが主催するスパイスアンバサダーに就任したことに基づき執筆するものです。