スパイスアンバサダーとして活動しています。スープ料理の魅力を活かしたく、主食をあわせるだけで一食が素敵に完結する「美味しい世界のおかずスープ」の楽しさを提案することにしました。「主食1スープ1」の素敵な食。世界の「スパイスおかずスープ」というテーマでレシピ化し、全12回の連載で発信しています。
【第7回】米国料理「ホワイトチキンチリ」
シリーズの中で使うスパイスにはミックスパウダータイプが4つあり、今回はその第2弾として「チリパウダー」を使用しています。
なお、海外のレシピで「Chili powder」(チリパウダー)と書いてある場合は唐辛子の純品の粉末を指します。なのに日本で市販されているチリパウダーの多くは唐辛子にクミンやガーリックなどをブレンドしたスパイスミックスです。でも忠実に外国表記をつけた日本の商品も売られていて「チリパウダー」と表記して中身は唐辛子純品です。米国の場合、唐辛子にクミンやガーリックなどをブレンドしたスパイスミックスは「Chili powder blends」(チリパウダーブレンド)。唐辛子純品と、唐辛子以外の素材が交ざっている場合とでは味と香りがガラリと変わってしまうので、このように「ブレンド」をつけるだけで絶対解釈ミスや間違いが減ると思うんですよね。日本のほうが唐辛子後進国なので(※)、なんで世界的な呼称にならうことをしなかったのかな?
・・・と、国際的に誤解を招くこの現状。いずれなんとかなるとよいのですが。
※コロンブスは新大陸から唐辛子を持ち帰ったという史実の通り、唐辛子のオリジンは米州です。
でも、日本の「チリパウダー」(←ブレンドのほう)は優秀で、特にガーリックパウダーが入っているので旨味が強くつくのが気に入っています。今回、おかずスープの中でもこのメキシカンな風味をつけるチリパウダーを画期的に使いたくて、米国の発明料理を日本の調理環境用にレシピ化しました。
材料(6人分):
- 白い豆(※1)
- 200 g
- 青唐辛子A
- 2本
- 生クリーム(※2)
- 70 mL(※2)
- 無糖ヨーグルト
- 生クリームと同量
- 水(鶏肉用)
- 500 mL
- チーズ(※3)
- 50 g(※3)
- 鶏胸肉(※4)
- 500 g
- 玉ねぎ
- 1個
- 青唐辛子B
- 0~2本(※5)
- サラダ油
- 大1
- 塩
- 小1
- チキンコンソメ(※6)
- 小1/3
- クミンパウダー
- 小1/2
- チリパウダー(※7)
- 小1/2
- 白こしょう
- 小1/2
- ベイリーフ
- 2枚
- ハバネロペパー(※8)
- ごく少量~小1/16
- マジョラム(※9)
- 仕上げにふる量
※1:白インゲン豆や白花豆など。ここでは乾燥状態の白花豆を使用しています。
※2:生クリームの使用量は任意です。また植物性ホイップでもよいです。
※3:チーズは白に近いもの、加熱すると融けるものを使います。ここでは「モッツァレラ配合のピザチーズ」を使用しています。加える量も目分量で好きな量を入れてよいです。
※4:現地では鶏一匹を買ってきて作るレシピもあるので好きな部位で構いませんが、胸肉が裂きやすく作りやすいです。皮はついたままで構いません。
※5:最後のほうでハバネロで辛さを調節できるので、辛いものが普通に大丈夫であれば青唐辛子を2本使ってみましょう。辛いのが苦手な方は減らします。
※6:チキンコンソメは鶏がらスープの素でもよいです。
※7:「チリパウダー」には2種類あり、1つは唐辛子やオレガノやにんにくなどのスパイスブレンドで、もう1つは唐辛子純品粉末です。ここでは前者の「スパイスブレンドとしてのチリパウダー」を使ってください。なければクミンパウダーやカイエンペッパーパウダーをブレンドして代用します。
※8:「ハバネロペパー」は香りのよいシネンセ種の唐辛子の粉末パウダーです。特徴的な香りをつけるので推奨しますが、なければ省きます。
※9:ドライマジョラムがなければオレガノやパセリなどで代用しても、省いてもよいです。
作業工程:1 時間(前日・前々日の作業時間を除く)
- <前々日>白い豆を水(分量外)に浸し、青唐辛子A(2本)を小口切りにして酢(分量外)に浸けておく。
- 清潔なビンに生クリームと無糖ヨーグルトを入れて混ぜ、冷蔵庫に入れておく(サワークリームになる)。
- <前日>白い豆の漬け汁を捨て、豆を鍋に入れ、新しい水(分量外)を入れて強火にかけ、沸騰後はフタをして火加減を弱め、豆がほくほくになるまで煮る(調理方法は豆のパッケージも確認する)。豆の薄皮が浮いてきたら、気になる場合は取り除く。豆が煮えたら煮汁ごと鍋に入れたままフタをして当日まで置いておく。
- <当日>チーズを室温に出しておく(真夏の場合は使う直前に冷蔵庫から出してもよい)。
- 豆の鍋を再度火にかけ、豆の中まで熱くなったら煮汁と豆を分ける(煮汁は捨てずに置いておく)。
- 鍋に水(鶏肉用)を入れて強火にかけ、沸たら火加減を落として鶏胸肉を入れ(切らずに入れる)、フタをして30分ほど、ときどき上下を返しながら弱火で優しく火を通す。
- 鶏肉をゆでる間に、白豆をハンドブレンダーの容器(またはミキサーやすり鉢)に入れ、煮汁を1 Cほど入れて撹拌し、豆を8割がた(あるいは好みの度合いで)潰しておく。
- 玉ねぎをみじん切りにし、青唐辛子Bを小口切りにする。
- フライパンにサラダ油を入れて中火で熱し、玉ねぎと青唐辛子Bを入れ、玉ねぎが茶色くならず透き通るように炒める。
- 鶏肉がゆで終わったら、一か所切って中まで火が通ったことを確認し、ボウルに取り出して粗熱を取る。
- 鶏肉のゆで汁の味見をし、塩やチキンコンソメを入れ、「しっかりと美味しいチキンスープ」と思える味にする。
- 鶏肉の皮は千切りにし、鶏肉は繊維に沿って裂く。
- スープに潰した豆、炒めた玉ねぎと青唐辛子、裂いた鶏肉を入れ、クミンパウダー、チリパウダー、白こしょう、ベイリーフを入れて混ぜ、ハバネロペパーを味見をしながら少しずつ入れて、「うわ!いいね!辛いね!」と思える辛さにする(要は、自分の味覚において辛さがオーバーせず、美味しいと思える辛さの上限近くの辛さにする)(この時点より辛さを増やしたくない場合はスープの中の青唐辛子を取り除く)。
- チーズをまんべんなく入れてフタをし、チーズを融かす。
- 器に盛り、ドライマジョラムをふり、青唐辛子の酢漬けとサワークリームをトッピングして出来上がり。
- Enjoy!
美味しいーー♡♡♡
なんか日本で一番美味しいホワイトカレーを作っちゃった気分♪
この「ホワイトチキンチリ」の原点は、2001年に米国国内で開催された「チリクックオフ」(Chili cook-off、唐辛子料理対決)という料理コンクールで優勝した作品です。現在までに米国ではレシピが多様化して広まりました。
その背景は「チリ」という料理です。米国で「チリ」という料理は通常チリコンカンのような「赤くて辛い肉と豆の煮込み」を指します。だから「ホワイトチキンチリ」は「そのチリ」の対照として作られたレシピなのです。白い豆を煮てマッシュして、鶏肉は優しく裂いて、優しい色合いのスープを作っているのに、青唐辛子のキックとハバネロのパンチが利いてこれはなかなか辛い料理です。辛いのが苦手なら唐辛子系の量を減らせばよいのですが、料理名の「チリ」は唐辛子の意味ということもあり、やはり「ホワイトチキンチリ」を作るからにはちゃんと辛く作ってほしいかな。
* * *
「スパイスを使うと、ふとほかの部屋から入ってきたときに、わあ、いいにおいって、料理を見ないうちから美味しそうって思ってもらえる。」
そういう瞬間って、嬉しいじゃないですか。
その瞬間が楽しくて、スパイスがあると幸せが増える。
料理って本当にすごいよね。言葉では伝えられないものなのに、食卓であの国へ旅できるのだから。こうして料理で地球はまるくなる。
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次回は五香粉(ウーシャンフェン)を使ったおかずスープです。また世界の本物のレシピをお届けしますね。もちろんそこは東アジア。お楽しみに。
【第1回】
きっかけはロシアの「主食1スープ1」
【第2回】
「おかずスープ」の定義
【第3回】
達成報告!渡航最難関国リビアへ!!
【第4回】ハリッサ使用
リビア料理「ハライミ」
【第5回】サテトム使用
ベトナム料理「ラウタイ」
【第6回】カレー粉使用
英国料理「マリガトーニ」
【第7回】チリパウダー使用
米国料理「ホワイトチキンチリ」
【第8回】五香粉(ウーシャンフェン)使用
台湾料理「素肉餛飩湯」(スールーフントゥンタン)
【第9回】八角使用
パキスタン料理「ヤクニ」
【第10回】オールスパイス使用
ジャマイカ料理「フィッシュティー」
【第11回】花椒使用
中国料理「水煮肉片」(シュイジューローピエン)
【第12回】ナツメグ使用
セントクリストファーネイビス料理「ゴートウォーター」
※本記事はハウス食品及びレシピブログが主催するスパイスアンバサダーに就任したことに基づき執筆するものです。