ベトナムのフォーを例にした、外国語料理名を日本語に置き換えるときに押さえるポイント

フォー

写真はベトナムの大都市であるホーチミンで撮影した、ベトナム国民食のフォーです。

「フォー」は「ベトナムうどん」と称されたりもしますけれど、それは違うと思う。そこでここでは、私のこれまでの無数の成功&失敗の体験からまとまった「外国語料理名を日本語に置き換えるときに押さえるポイント」を、ベトナムのフォーを題材にして記載します。

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外国語を日本語に置き換えるとき、単語を訳すのではありません。日本のどの文化に外挿されるのか、現状最優先で言葉を選択します。

日本語では穀物を粉にして練って細長く成形した食べ物は「麺」と総称され、「麺」という親要素を構成する子要素に「うどん」や「春雨」などがあります。ここではこれら子要素をAやBと置きます。

ベトナムのフォーは米の麺であり、「麺」という親要素に属する子要素の1つです。日本語にはフォーのような米の麺はないので、実在しない子要素Xです。AやBやXは並列かつ異なるものなので、子要素Xを日本語で語るにあたり、それをAやBと呼ぶことは不適切です。

これが、フォーという子要素Xを子要素Aの名称を使ってベトナムうどんと呼ぶのが不適切であると主張する論拠となります。

フォーはうどんでもないし、ビーフンとも違うし、焼きそばでも春雨でもない。日本語にないものを日本語で呼ぶ場合は、1)子要素に外来語を導入するか(ライスヌードル)、2)日本語で子要素名を作るか(米麺)、3)階層を1つあがって親要素で呼ぶ(麺)のが適切です。そもそもこれが成立するのは、日本人が「麺類を呼び分ける文化をもつ」民族であるというのが基礎背景になります。文化は尊重して単語は置き換えましょう。

ただし、麺類の場合、もうひとつやり方があります。「そば」は狭義にはそば粉をうって作る麺だけれど、日本語ではより広く麺類を包含する言葉でもありますから、フォーを「ベトナムの汁そば」と日本語化することは不適切にはあたりません。

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ベトナムの文化は、コメ、こめ、米。
米を炊いてごはんとしても食べ、米の麺も食べ、米粉を薄く蒸し上げてライスペーパーにもする。

米粒としても十分に・・・食糧としては麦粒以上に機能する米を、麺にするだなんて、すごい発想と努力と労力ですよね。

ここからも分かる。麺という食材の魅力が、どれだけすごいのかということを。

ベトナムは北が中国と接していて、中国でも中部から北部へとかけて、小麦が主食になっていく。中国の小麦の麺は極めて美味で、日本にも中国から小麦の麺が伝播した。ラーメンも小麦の麺ですし。

一方で、中国は南方になるほど米の生産と消費が増し、中国よりもさらに南方のベトナムには小麦がなくても米がある。

小麦粉って練れば割と簡単に麺打ちの生地になるけれど、米粉は難しそうじゃないですか。なのに、麺作りには難しそうな米を、手間と作業工程を確立して麺にしてしまうのだから、それだけ「麺」という食材には魅力があって、技術が生み出されてきたのだろうと思うのです。

ちなみに、世界の米どころはまだあります。インドネシアも、バングラデシュも、言えばマダガスカルも。しかし、その米はたいてい米粒で食べられています。麺をうつという文化は外から入ってきたものでした。

じゃあベトナムは? 「中国に近かった」という大陸ゆえに、麺という魅力的な食材が食の文化となり、ベトナムでは米から麺を作る文化が生まれてきたのだと思うのです。

「米から作る麺」には、ベトナムのバインフォー(フォーの麺)のほか、中国南方や台湾の河粉、米線、ビーフン、タイのカノムチン、マレーシアやタイなどのクイッティアオ、カンボジアのヌンバンチョクなどがあります。スリランカのイッディアッパもあるけれどあれはカレーをすくって食べるもので、ちょっとここで言う汁そば系統の食べ物とは違ってしまうけれど、広く見れば米の麺です。

東南アジアの大陸部を中心に生み出された、素晴らしい米の麺の文化。
米好き日本人には、あのつるんとした食感と、噛めば分かる米の甘みが美味しいですものね。私も、ときどきは米の麺を食べます。大好きです。

さあ、春です。野草の勢いも増してきた今の季節、ドクダミも出ているので、ドクダミの若葉を少しちぎって、我が家のパクチーやリーフ野菜もたっぷり摘んで、今日も生野菜を乗せるフォーを作ってみましょう(^。^)

フォー

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