バングラデシュ料理


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基礎情報バングラデシュ人民共和国People’s Republic of Bangladesh、首都ダッカ、ISO3166-1国コードBD/BGD、独立国(1971年パキスタンから分離)、公用語ベンガル語、通貨タカ

◆親日国で日本人が食べるカレーは美味しい。

バングラデシュは、東も西も北もインドに囲まれている国です。

西も東も北もインドに囲まれたバングラデシュは、昔は英領インドのベンガル地方という一地域でした。今でこそヒンドゥー教のイメージが強いインドですが、昔の広大な英領インドはヒンドゥーとムスリム(イスラム教徒)が混住している国で、第二次世界大戦終了後、激しい独立闘争の結果、英国が手を引くことになり、民族構成が変わります。さてここでヒンドゥーをH、ムスリムをMとします。その他少数派宗教はここでは割愛。
現パキスタンの土地  現バングラデシュの土地
【  】         【  】
【            】現インドの土地
に、
【HM】         【HM】
【HMHMHMHMHM】
と混住していたのが、
【MM】         【MM】←2つあわせてパキスタンという1つの国になり、
【HHHHHHHHHH】 ←インド となった。
比率が0:100、100:0になるわけがないので実際はM交じりのH、H交じりのM。ムスリム(M)が集まる2つの地が「パキスタン」という独立国家になった(1947)。東パキスタンと西パキスタンは1つの国なのに民族も言葉も文化も違った。政治主体が常に西(現パキスタン)で、東パキスタン(現バングラデシュ)は不満が頂点に達し独立を望む。そしてインドの支援を得て、東側がバングラデシュとして独立達成(1971)!
パキスタン      バングラデシュ
【MM】         【MM】
【HHHHHHHHHH】 ←インド
バングラデシュはもともとインドと同じ国だっただけに、似たようなイメージを抱きがちですが、何故インドとバングラデシュが違う国になったかという基本事項をしっかり押さえ、バングラデシュ料理を理解していきましょう。

バングラデシュ料理は、塩のほか、クミン、唐辛子、ターメリック、コリアンダー、カルダモンなどの香辛料が主要調味料という国です。なので、調理されたおかずは私たち日本人が「カレー」と呼ぶようなおかずになります。私たち日本人も料理名におかずとは言いませんよね。バングラデシュでは、一応トルカリという「おかず」に相当する単語はありますが、基本的には、「イリッシュマス」(魚の一種)のように、食材名を料理名として呼びます。そして、特定の調理法を示す場合は、食材名+コライ(濃厚かつスパイシーな鍋仕立てのカレー)、食材名+ジョル(汁気が多いカレー)のように、調理法を併記して呼びます。

畜肉のおかずは、ゴルマンショ(牛肉(のカレー、以下同様))、カシマンショ(羊?山羊?)など。マンショは肉という意味です。ちなみに、ベンガル人が「マトンだ羊だ」と主張する動物が、どう見てもヤギにしか見えないこともあって、日本語ではどちらを当てて良いのか迷います(苦笑)

鳥類は、ムルギ(チキン)だけでなく、コウタ(ハト)やコエル(ウズラの一種)もカレーになります。

魚類は、イリッシュマス(ニシン科)、ルイマス(コイ科)、ブアルマス(ナマズの一種)、ソトマス(小魚)などなど。マス(魚という意味)を末尾につけて呼びます。魚の1つ1つに名前がつけられているのは、この国には魚の文化が根付いている証拠です。なお、バングラデシュではルイやイリッシュなど川の魚の消費がほとんどであり、また魚を生で食べる習慣もありません。

ところで、数々のバングラデシュ料理の紹介文において、「バングラデシュ料理は米と魚」というようなフレーズばかり目にするのですが、実際にバングラデシュの食事がそこまで魚・魚・魚している印象はありません。明らかに常食しているものといえば、魚よりもはるかに野菜と豆に軍配があがります。確かにバングラデシュは世界最大級のデルタ地帯で、ヒマラヤの雪解け水とアッサムやメガラヤの多雨が流れ込む国土は、水郷が網の目のように入り組んで、魚は生活に密着した食材ではありますが・・・。しかし、バングラデシュでは、魚の値段が高いんです。バングラデシュで獲れた魚は米国やシンガポールなどへ輸出され、国内では消費が少なく、高値がつくとのことです(まあ安い魚は安いんだとは思いますが)。

さて、野菜のおかずは、総称してショブジと呼ばれます。香辛料で香りの良いくたくた煮にされたものが多いです。ショブジは「緑色」という意味のベンガル語ですが、じゃがいもや玉ねぎなど緑色でない料理もショブジです。バングラデシュは野菜の種類も豊富で、無数のショブジが楽しめます。また、豆類は「ダル」と総称される豆ポタージュ状に調理されます。ショブジダルも、ごはんにかけたり、薄パンに添えられたり、極めて日常的に食べられています。

主食は米です。パラパラした米はカレー味のおかずによく合います。バザールに行くと白い米、黄色い米、赤い米、小粒の米、細長い米など多数の米が売られています。米はバット(水で炊く基本的なごはん)のほか、ポラオ(香辛料やバターで風味よく炊くごはん)、ビリヤニ(香辛料やバターをきかせ、なおかつ肉のカレーとセットで炊くごはん)、キチュリ(野菜や豆と炊くごはん)など。キチュリは、雨の日や寒い日によく食べています。ビリヤニは祝事に欠かせないごちそうで、ムルギリビリヤニ(チキンのビリヤニ)やカッシリビリヤニ(マトンのビリヤニ)などがあります。

ボッタ又はボルタというおかずもバングラデシュ料理の象徴です。野菜、肉、魚、ともあれ、何かの食材をマッシュしたもので、代表的なものはじゃがいもで作るアルボッタや、なすで作るベグンボッタです。その他にも、魚のボッタや唐辛子のボッタ、アボカドのボッタ、オクラのボッタなどなど、いろいろなボッタがあります。

例えば食堂でおかずを1つ頼むとしましょう。例えば「コエル」(ウズラの一種)を注文します。そうすると、コエルのカレーに、バット(ごはん)、パニ(お水)、サラッ(輪切りきゅうりや生玉ねぎ)、モリッチ(青唐辛子)などが卓上に並びます。ダルは食べている途中に出されることが多いです。卓上に野菜がなければ「ピヤズ!(玉ねぎ!)」とか「ニブ!(レモン!)」とか「モリッチ!」などと言えば無料で持ってきてくれます。この国ではレモンがカレーの付け合わせになって、美味しいです。ごはんはおかわり無料で、カレーも汁の部分はたいていおかわり無料です。生玉ねぎや生の青唐辛子をかじって口の中に鮮烈な香りを広げて、右手でごはんにカレーを絡めて口に入れる、その味わいこそが、バングラデシュ料理の味わいです。米は、1kg40タカ(50円)とかで買えますから、米が1kg400円もする日本に比べると本当に安いですよね。美味しいカレーをかけて米をもりもり食べると、美味しくて食べやすいものですから、バングラデシュでは気をつけて食事をしないと、やばい、本当に太ってしまいます(苦笑)。


有名店で食事をする人々。ビリヤニ、カレー、バット、ニブ、パニ、ダルなど。(撮影地シレット)

バングラデシュ料理に独特の風味をつけているのは、魚のカレーやボッタ(マッシュ料理)にたっぷり使われるマスタードオイル(辛子油)です(肉のカレーには合わないので使いません)。ベンガル地方では辛子が乾季作物として重要で、その油が料理に使われます。辛い油ではないのですが爽やかな風味があります。一方で、スリランカやタイのカレーに必ず使われるココナッツミルクは、バングラデシュのカレーには使われません。なので、コクのある味わいというよりも、パサパサしたごはんにしゃぱしゃぱかけて食べるような、スパイスの香りが香しく立ち上るカレーが、バングラデシュのカレーです。

では次に、朝食や軽食の話に入りましょう。
ごはんをたっぷり食べる料理は昼食や夕食に多く、朝食はたいてい小麦粉で作る薄パンです。ルチ又はルティは、インドのチャパティのように、油はそれほど使わずに焼く薄パンです。パロタは、油を多く練りこんだり、油で揚げ焼きのように調理した薄パンです。町中を歩いていると、どのお店も店先でルチパロタを焼いている光景が目につきますね。ルチパロタも右手でちぎってダル(豆スープ)やショブジ(野菜とろとろ煮)をすくいながら食べます。また、プリールチが風船状に膨らむように油で揚げたもので、中にじゃがいも煮やダル(煮豆)が入っていることもあります。また、パロタの生地にじゃがいも煮を入れて作るものは、アルパロタと呼ばれます。

ムクレイは、イスラム教の国によく見られるマルタバック(ひき肉野菜炒めなどの具を小麦粉のどでかい薄皮で包んで皮をパリっと揚げ焼きにしたもの)です。似たような具を、小さめの皮で三角形に包んでから揚げたものはサモサ、厚めの小麦粉の皮で包んで揚げたものはシンガラと言います。

これら、小麦粉で作る料理はチャー(甘いミルクティー)と一緒にいただくのが定番です。チャーと言えばたいていドゥチャー(甘いミルクティー)ですが、アダチャー(生姜と砂糖入りの紅茶)を出してくれるところも多いです。

町中の屋台料理としては、ポチカがおすすめ。風船状のサクサク揚げに、別途ヒヨコマメや香菜、唐辛子などでマッシュを作り、酢唐辛子水を用意。客の注文が入ったらサクサク風船に指で穴をあけ、豆マッシュを詰めて、酢唐辛子水と一緒にサーヴします。インドやネパールのパニプリと同じ物ですが、パニプリより風船が小さいミニチュア版。美味しいですよ~。路上で売っているドイは、牛乳から作るヨーグルト状の半固形物を指します。チーズケーキのように甘くて美味しいです。英語でカード、インドでダヒと呼ばれるものです。

さて、ここで、お隣インドとの違いを見ていきましょう。
まずは、冒頭で解説したとおり、主要宗教の違いが食文化に相当の違いをもたらしています。インドはヒンズー教徒主体の国で、菜食主義者の比率が高い一方で、バングラデシュはムスリム主体の国。インドでは考えにくいことに、安飯屋でも気軽に肉が入っています。インドでは、菜食主義者への配慮からか、店の看板に「ベジ(肉類なし)」か「ノンベジ(肉類あり)」かが掲げられているけれど、バングラデシュでは、ベジ、ノンベジのくくりが目立たず、お店といえばノンベジです。ただし、豚肉はイスラム教に則って食べません(現地ベンガル人によると、ときどき豚肉を食べるヒンドゥー教徒も見かけるとのことです)。

食事の体系も、インドによくあるターリーやミールスの場合、出されたものはたいてい無料でおかわりができますが、バングラデシュではショブジ(野菜のくたくた煮)は別料金です。また、広大なインドには無数のカレーがある印象すらありますが、バングラデシュ料理の場合、種類が少ないように感じるのは、小さな国だから当然かな。

ムスリム主体のバングラデシュでは、金曜日と土曜日が週末のお休みにあたり、年に一度ラマダン(断食月)がやってきます。ラマダン中は、日の出から日没まで一切の飲食ができません。シャベバラット(ラマダン開始15日前)、ジョマットウルビダやショブイコダール(ラマダン中)、イード(イードアルフィタル、ラマダン明け)などなど、ラマダンに関するは国の行事は多く、行事にちなんだ料理を食べます。ただ、ヒンドゥー教徒、キリスト教徒、仏教徒も混住する国なので、仏教のお祝いやクリスマスなど、いろんな宗教の休日も多くて、なんだかいい国ですね。

バングラデシュは、宗教は違えど、国民は98%がベンガル人でベンガル語を話すので、まるで日本のような国民の一体感を強く感じます。そこもまたインドとの違いだと思います。インドは地方によって人種も言語も違い、料理もかなり違うけれど、ベンガル人国家のバングラデシュは、首都ダッカでも地方に行っても、人々や料理に共通点を感じます。その背景には、カースト制度の有無も大きく影響しています。ヒンドゥー教徒主体のインドは、カースト制度が前面に出ている階級社会です。上位カーストの者は下位カーストが作った料理を口にしない。だから、下位カーストの安飯屋は20ルピー(40円)の定食を出す一方で、上位カースト向けの高級店は、本当に高い価格で食事を提供します。その点、カースト社会ではないバングラデシュは、もともと物価が安いのは上述の米の価格の通りですから、有名店・高級店で食事をしてもたかが知れた値段です。階級社会が目立たないのも、バングラデシュを旅していて心地よく感じる大きな要素です。

バングラデシュは人口密度が世界で一番高い国ってご存知でしたか(約1000人/km^2)。行けばまず人の多さに驚きます。次に、人の良さに気づきます。人が優しく、カッカしている人も少なく、人に興味があるバングラ人は、私たち日本人が例えば駅のベンチに座っていると、どんどん寄ってきて、誰も何もせずこちらを見ているから面白い(笑)。この「人が混沌とする様」こそ、バングラデシュの魅力なんですよね。バングラデシュは「人に見られるところ」であり、それを見返してこそバングラデシュの旅。だから、国内に見所とされる観光地要素が少ないからなのですが、旅行者の間では、余計に「バングラは人を見るところ」と言われています。

こんな、大の親日国へ、あなたも、是非旅をしてみてください。太っちゃうほど美味しいごはんと香り高くて実に美味しいカレーと、人なつこくて優しいベンガリー(ベンガル人)がいて、英語が通じやすくて、みんなが優しいからごはんも余計に美味しく感じてしまって、物価もとても安くて、本当に旅がしやすいいい国です。イスラム教国ゆえ女性が一人で旅をする国ではないけれど、女性優先の女性に優しい国というのも、女性には嬉しいバングラデシュなのでした。

◆バングラデシュに行ったら、これ食べよ♪

【畜肉のおかず】
・カシマンショ・・・羊?山羊?のカレー。
・ゴルマンショ・・・牛肉のカレー。

【鳥類のおかず】
・コウタ(কবুতর)・・・ハト。
・コエル(কোয়েল)・・・ウズラの一種。
・ムルギ・・・チキン。

【魚類のおかず】
・イリッシュマス(ইলিশ মাছ)・・・ニシン科の国魚。
・ソトマス・・・小魚。
・ブアルマス(বোয়াল মাছ)・・・ナマズの一種。
・ルイマス(রুই মাছ)・・・コイ科の大きな魚。

【カレーの種類】
・コライ(কড়াই)・・・濃厚かつスパイシーな鍋仕立てのカレー。
・ジョル・・・汁気が多いカレー。

【野菜や豆のおかず】
・サラッ・・・輪切りきゅうりや生玉ねぎなどカレーのお供。
・ショブジ・・・野菜のおかずの総称。
・ダル・・・豆のポタージュ状。
・ニブ・・・レモン。カレーのお供。
・モリッチ・・・青唐辛子、カレーのお供。

【米料理】
・キチュリ・・・野菜や豆と炊くごはん。
・バット・・・水で炊く基本的なごはん。
・ビリヤニ・・・香辛料やバターをきかせ、なおかつ肉類のカレーとセットで炊くごはん。
┗ムルギリビリヤニ・・・チキンのビリヤニ。
┗カッシリビリヤニ・・・ヤギか羊のビリヤニ。
ポラオ・・・香辛料やバターで風味よく炊くごはん。

【マッシュしたおかず】
・ボッタ(ভর্তা)・・・マッシュしたおかず
┗アルボッタ(আলু ভর্তা)・・・じゃがいものボッタ。
┗ベグンボッタ(বেগুন ভর্তা)・・・なすのボッタ。

【パン類】
・パロタ・・・油を多く練りこんだり、油で揚げ焼きのように調理した薄パン。
┗アルパロタ・・・中にじゃがいも煮を入れて作るパロタ。
・プリー・・・ルチを風船状に油で揚げたもの。中にショブジやダルが入っていることも。
・ルチ又はルティ・・・油はそれほど使わずに焼く薄パン。

【軽食など】
・サモサ・・・小さめの皮で三角形に包んでから揚げたものは
・シンガラ・・・厚めの小麦粉の皮で包んで揚げたもの
・ドイ・・・牛乳から作るヨーグルトやチーズケーキ状の半固形物。
・ポチカ・・・風船状のサクサク揚げに豆マッシュや酢唐辛子水を入れてくれる。
・ムクレイ・・・ひき肉野菜炒めなどの具を小麦粉のどでかい薄皮で包んで皮パリに揚げ焼きにしたもの。

【飲み物】
・パニ・・・お水
・チャー・・・ミルクティー
┗ドゥチャー・・・甘いミルクティー
┗アダチャー・・・生姜と砂糖入りの紅茶


[kuwakuwa]

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