スリランカ料理

[last update 2015/06/22]

◆スリランカ料理が多分世界で一番辛いのには訳がある。


+++新着+++
・スリランカ料理の現地名称を、見やすく太文字にしました。


基礎情報スリランカ民主社会主義共和国Democratic Socialist Republic of Sri Lanka、首都スリジャヤワルダナプラコッテ、最大都市コロンボ、ISO3166-1国コードLK/LKA、独立国(1948年英国より)、公用語シンハラ語/タミル語、通貨ルピー

スリランカは、インドの東南の島国であり、モルディブの近隣国でもあります。

南インドに近いスリランカは、国土は北海道よりも小さな島国です。主要民族は、中南部に多いシンハラ人が75%(仏教)。2番目に多い北部のタミル人(ヒンドゥー教)でさえ15%と少数派です。タミル人は対岸のインド南部と同じ民族で、シンハラ人は古い時代に北インドから移住してきた人々です。スリランカ料理の名前はシンハラ語で語られることが多いです。そして、旅行者には、料理が不味いととかく評判が立ちやすいスリランカ。しかしそれにはやはり理由があるのです。

最初に書いておくことがあります。いろいろな国を旅して、スリランカを旅すると、料理が美味しく感じられません。庶民的な安飯屋では、おかず、麺、ごはん、軽食、etc、作り置きにされてショーケースに入っていて、温め直さずに客に出す。冷めて硬くなってぼそぼそしたごはんや料理は美味しく感じない(しかし慣れてくる)ですが、早く安く食べられることが、外での食事の重要要素だったのかもしれません。日本のおむすびだって冷えた状態で食べるのは、携帯するためであって、冷めて食べる文化にもそれなりの歴史や背景があるものです。

そしてスリランカ料理は辛いものはものすごく辛いです。冷めたり味が素朴であっても、「サライラサイ」(サライ=辛い、ラサイ=旨い)という言葉のように、辛味をきつくして美味しい料理として成立させている点が特徴です。しかし外国人には気を利かせて辛さを減らすから、そこを頑張って「あなたが食べるのと同じ辛さのものを頂戴」と言わないと、旅行者にはそれこそ美味しくなくなってしまうので要注意です。

例えば同じカレー圏でもインド料理の評価が高いのは(もちろんインドにも安飯屋なりの味のものはたくさんありますが)、広大な国ゆえに、低地も山岳も砂漠も多雨もあって山海の幸がある。例えば、インドには遊牧民文化があり、人間が強烈に美味しいと感じるバターやクリームがときに潤沢に使えますが、スリランカの食文化には畜乳の関与は薄いのです。大国と小国の違いは、得られる食材の数からして違うのです。

内戦ばかりしてきて、小さい国で食材も限られていて、近代的な発展が遅れたスリランカの伝統料理は、化学的な味から取り残された、どこか “ロストワールド” 的な存在です。他国と比較して美味しさで劣ろうとも、素晴らしい伝統ゆえの味があります。そういうものこそ、逆に美味しく感じてやろうじゃないか(つまり、スリランカを理解しようじゃないか!)と、やる気が出てきます(そして、そうしているうちにスリランカ料理が美味しく思えてくるという好展開、笑)。

そういうことを最初に述べた上で、小国スリランカの料理を紹介します。

スリランカは、熱帯ですから植物の育ちは抜群です。採れる代表的な食材はポル(ココナッツ)です。ポルキリ(ココナッツミルク)は様々なスリランカ料理に良い味をつけ、ポルテル(ココナッツオイル)は炒め油の基本です。そしてカラピンチャ(ナンヨウサンショウの葉、通称カレーリーフ)やランパ(ニオイアダンの葉)の香り、ゴラカ(酸っぱい乾燥果実)の酸味、ウンバラカダ(モルディブフィッシュ、かつおぶし)の旨味を活用します。ウンバラカダの「バラ」はカツオ、「カダ」はカダン(かけら)の意味です。野菜もよく育ちますし、島国なので魚が豊富です。

香辛料は家庭ごとにブレンドしてトゥナパハという自家製パウダーにします。「トゥナ」は3、「パハ」は5、基本3種類あるいは5種類、本当は数字にはとらわれず、各家庭の配合で香辛料をあわせてパウダーにしたものです。優しい香りのアムトゥナパハ(アム=生の)は野菜に、香りの強いバダプトゥナパハ(バダプ=ロースト)は魚や肉の料理に適しています。

スリランカ料理の形式は、基本は「ライスアンドカリー」、つまり「ごはん&おかず」です。おかずはカリーカリヤ、、ウェンジャナ又はウヤラとも言います。和え物、サラダ、軽食、料理名に固有名称がついてしまったもの、タレの類を除外して、おかずを総称する言葉です。おかずは香辛料で調理されるため、日本人にとっては「スリランカのおかずは全部カレー(カリー)」という印象になります。

日本語でなら、鶏肉のカレーはチキンカレーというように、材料名の末尾にカレーをつけて呼びますが、おかずのほとんどがカリーであるスリランカでは、わざわざカリーをつけません。ククルマス(鶏)、マール(魚)、バトゥ(なす)、ボーンチ(インゲン)と、具の名前だけで料理を呼びます。

なおククルマス(チキンカレー)は人気のおかずですが、肉は高くて毎日食べるものではありません。また、スリランカでは、豚肉や牛肉も食べられていますが、カリーの食材としては鶏>豚>牛の順です。

固有の名称で呼ばれるおかずには、ホディ(カレーの汁の部分)、キリホディ(ココナッツミルクたっぷりのカレーの汁の部分)、パリップ(緑豆のような惹き割りの豆のポタージュ風煮込み)、アンブルティヤル(アンブル=酸っぱい、ティヤル=魚料理、スリランカ南部の魚とゴラカ(酸味ある果実)と香辛料で煮て汁気を飛ばした煮込み)、ハールマッソー(じゃこや煮干の香辛料炒め煮)、マッルン(野菜などを細かく切って削ったココナッツの白い部分と炒めたもの)、サンボール(和え物)などがあります。ポル(ココナッツ)の実を削って玉ねぎや唐辛子と和えたものはポルサンボールと言います。

こういったおかずやパパダン(えびせんべいに似たチップス)を、お皿に盛ったごはんの上に、家庭では1種類~3種類程度乗せて、食べる分ずつお皿の上で混ぜてから口に運び、味の混合を楽しむのがスリランカ料理です。


これは味の違うカリー3種類にパリップ。混ぜてから口に運ぶ。(撮影地キャンディ)

おかずには近年油が多く使われ、テンプラードゥワ(野菜類の油炒め)類も増えてきました。アラテンプラードゥワ(アラ=じゃがいも)はじゃがいもの油炒めで、その他のテンプラードゥワもいろいろあります。

また薬味的に美味しいものに、ルヌミリス(塩(ルヌ)、唐辛子、玉ねぎ、デヒ(ライムのような柑橘)の果汁などを混ぜた辛いペースト)やルヌデヒデヒ(ライムのような柑橘)をルヌ(塩)漬けにしたもの)などがあります。

バト(ごはん)は通常は白いごはんを食べます。ゆでてから汁を捨てるスパゲティー方式で作られるので粘り気がありません。祝事などではカハバトカハ(ターメリック)を入れて炊くごはん)やキリバトキリ(ココナッツミルク)を入れて炊くごはん)が提供されます。

また、カリー(おかず)はバト(米飯)だけで食べるのではなく、イディアッーパ(別名ストリングホッパー、米粉の細い麺)、ピットゥ(米粉の麺を竹筒に入れて蒸したもの)、アッーパ(別名ホッパー、米の粉とココナッツミルクを混ぜてお椀型のクレープ状に焼いた物)、ロティ(小麦粉の非発酵薄パン)、ポルロティ(ココナッツ入りのロティ)と一緒に食べたりもします。

ちなみにアーッパは、冷めたものが多いスリランカの外食で、焼き立てアツアツが食べられる有難い存在です。米粉液を焼き始めてすぐにビッタラ(卵)を落として作るものは、ビッタラアーッパ(別名エッグホッパー)と呼ばれます。

さて、スリランカ、モルディブ、インドには、「軽食作り置き」という共通文化があります。スリランカではショートイーツ、モルディブではヘディカ、南インドではティファン等呼びます。ショートイーツの代表は、エラワルロティ(小麦粉の皮で野菜炒めを三角に巻いて焼いたもの)、ロールズ(同様に春巻き型に巻いたもの)、バニス(ミニおかずパン)、カトゥレトゥ(丸ちびコロッケ)などです。

ショートイーツ(軽食)の定番の飲み物は紅茶です。スリランカは、昔「セイロン」という国名でした。その名は今も銘茶「セイロンティー」より非常に有名です。甘いストレートティーは「」、甘いミルクティーは「キリッテ」(キリ=ミルク)で、ブラックやアイスティーを出す習慣はありません。スリランカには、有名なリプトンの直営をはじめ、多数のティープランテーションがあり、出荷落ちした紅茶くず「ダスト」が庶民に出回っています。でも茶葉が最高級なのだからダストの味も最高。スリランカの紅茶は間違いなく美味しいです。

飲み物と言えば、コラカンダ(コラ=青菜、カンダは粥)もあります。家庭料理の青汁粥みたいなもので、スリランカでは飲み物扱いです。ハクル(ヤシ砂糖)をかじりながらこのお粥を飲みます。

なお、日本語の「粥(かゆ)」の語源はスリランカのタミル語のカンジという説がありますカンジは英語のcongee(粥)になり、シンハラ語ではカンダ。中国語で「ジュ」や「ジョ」、韓国や北朝鮮では「クジュ」、日本語では音が優しくなって「カユ」というように、語感が関連した名称を持っているのです。

ところでスリランカでは、町を歩いて安飯屋に入るとスリランカ料理が出され、ちょっと美味しいものをちょっといい価格で食べようとすると中国料理屋となる妙な傾向があります。料理に中国の影響が強いため、スリランカ人の家庭でも安食堂でも、ヌードルズ(やきそば)やフライドライス(焼き飯)は既に国民食級に浸透していて、ルヌミリス(唐辛子ピューレ)をたっぷり混ぜていただきます。ロティ(小麦粉の非発酵薄パン)を細かく刻んでフライドライス(焼き飯)風に具材と炒めあげた、コトゥロティという中ス融合の食べ物もあります。

以上、いろいろと、スリランカ料理について書いてきました。
16世紀以降オランダやポルトガルが香辛料を求めて来航。1815年キャンディ王朝滅亡により英国領へ。少数派のタミル人を政府要職につけるなど、民族間格差を作り、火種となった。1948年セイロンとして独立。シンハラ優遇政策が興り、タミル人との衝突が起こり始めた。1983年本格的な内戦・戦闘へ突入し、政府が内戦終結を表明したのはごく最近の2009年。

料理の発展が遅い。とくに全世界中で工業製品が溢れるようになってきたここ数十年の発展から取り残されている。逆に、素材の味と、昔から伝わる香辛料と、今も土鍋で調理するような素朴さがあります。

守られた料理を食べにいくなら、スリランカです。スリランカのご飯を食べて日本に戻ると、日本の食事をしばらく口が受け入れなくなるという人がいます。体から工業的食品が排除されて、体が浄化されたからかもしれません。いいなあ、今度行くときは、そういう旅を目指したい。

スリランカに行かれたならば、この記事のタイトルの、「世界で多分一番辛い料理」が、体験出来たらいいですね。ブータン料理も韓国料理も唐辛子をたくさん使う印象がありますが、地元産の唐辛子があまり辛くないので、現地の料理は辛くありません。よって、「辛いが旨い」という信条のスリランカ料理が世界で一番辛い料理である可能性が濃厚なのです。もし、現地で、本気に辛い料理を出してもらえたのならば、それは、旅行者でなく仲間として歓迎してもらえた証かもしれません。

あ、あとデザートではワタラッパンがおすすめです。ココナッツミルクにヤシ砂糖、卵を加えて蒸したプリン。どこでも買える大好きプリン、美味しいので、是非食べてきてください。

◆スリランカに行ったら、これ食べよ♪

【カリー、カリヤ、ウェンジャナ、ウヤラ類(カレー系のおかず)】
・ククルマス・・・鶏のカレー。
・バトゥ・・・なすのカレー。
・ボーンチ・・・インゲンのカレー。
・ホディ・・・カレーの汁の部分。
 ┗キリホディ・・・ココナッツミルクたっぷりのカレーの汁の部分。
・マール・・・魚のカレー。

【その他のおかず】
・アンブルティヤル・・・魚肉とゴラカ(酸味ある果実)と香辛料で煮て汁気を飛ばした煮込み。
・サンボール・・・和え物。
 ┗ポルサンボール・・・ココナッツの実を削って玉ねぎや唐辛子と和えたもの。
・テンプラードゥワ・・・野菜類の油炒め。
 ┗アラテンプラードゥワ・・・じゃがいもの油炒め。
・ハールマッソー・・・じゃこや煮干の香辛料炒め煮。
・パリップ・・・緑豆のような惹き割りの豆のポタージュ風煮込み。
・マッルン・・・野菜などを細かく切って削ったココナッツの白い部分と炒めたもの。

【薬味や添え物】
・パパダン・・・えびせんべいに似たチップス。
・ルヌデヒ・・・デヒ(柑橘)の塩漬け。
・ルヌミリス・・・塩、唐辛子、玉ねぎ、デヒ(柑橘)の果汁などを混ぜた辛いペースト。

【調味料類】
・ウンバラカダ・・・モルディブフィッシュ、かつおぶし。
・カラピンチャ・・・ナンヨウサンショウ、通称カレーリーフ。
・ゴラカ・・・酸っぱい乾燥果実。
・デヒ・・・ゆずのような柑橘。
・トゥナパハ・・・自家製香辛料パウダー。
 ┗アムトゥナパハ・・・火入れしないトゥナパハ。
 ┗バダプトゥナパハ・・・ローストしてから粉にするトゥナパハ。
・ポル・・・ココナッツ。
 ┗ポルキリ・・・ココナッツミルク。
 ┗ポルテル・・・ココナッツオイル。炒め油の基本。
・ランパ・・・ニオイアダンの葉。

【米系】
・バト・・・ごはん。
 ┗カハバト・・・ターメリック(カハ)を入れて炊くごはん。
 ┗キリバト・・・ココナッツミルク(キリ)を入れて炊くごはん。

【米の加工品】
・アッーパ・・・米の粉とココナッツミルクを混ぜてお椀型のクレープ状に焼いた物。
・イディアッーパ・・・米粉の細い麺。
・エッグホッパー・・・卵と重ねて焼くアーッパ。
・ストリングホッパー・・・イディアッーパの別名。
・ビッタラアーッパ・・・エッグホッパーの別名。
・ピットゥ・・・米粉の麺を竹筒に入れて蒸したもの。
・ホッパー・・・アッーパの別名。

【ショートイーツ(軽食)、小麦粉加工品】
・エラワルロティ・・・小麦粉の皮で野菜炒めを三角に巻いて焼いたもの。
・カトゥレトゥ・・・丸ちびコロッケ。
・コトゥロティ・・・ロティを細かく刻んでフライドライス(焼き飯)風に作ったもの。
・バニス・・・ミニおかずパン
・ロールズ・・・同様に春巻き型に巻いたもの。
・ロティ・・・小麦粉の非発酵薄パン
 ┗ポルロティ・・・ココナッツ入りのロティ

【飲み物】
・コラカンダ・・・青汁粥。ヤシ砂糖をかじりながら飲む。
・テ・・・甘いストレートティー。
 ┗キリッテ・・・甘いミルクティー。

【中国系】
・ヌードルズ・・・やきそば。
・フライドライス・・・焼き飯。

【甘いもの、デザート】
・ハクル・・・ヤシ砂糖。
・ワタラッパン・・・ココナッツミルクにヤシ砂糖、卵を加えて蒸したプリン。


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スリランカ料理」への2件のフィードバック

  1. かとーA より:

    スリランカのカレーは「1食材毎」と聞きました。行ってみたらその通りでしたね。ルーというか汁の色も皆違う。印・パだったらそんなに色の違いはなのに、スリランカのはこだわりを感じました。
    鶏は、ヒン・ウルではムルグで、鳴き声を「くくるくる」と表現するのだけど、それがシンハラ語になっているのは驚き。
    ワタラッパンは、ホテルで出される裏ごしされたようなものより、黒砂糖やナッツが層になっているようなざっくり作られたものが好きでした。
    中国の影響については、工業製品がほぼ中国製で駆逐されているという印象を受けました。金物屋の親父さんが「昔は、スリランカ産のいい道具があったのに・・」とぼやいていました。内戦が終結して国内がもっと落ち着いてくれば、そういったものも復活することでしょう。

  2. Japan-Tom より:

    スリランカ…また…必ず…行くぞ!!!

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