最近読んでいた論文。『レモンの食後高脂血症抑制作用の検討』。
対照群(水摂取群):バター30 gによる血中トリグリセリド(TG)増加量は約50 mg/dL。
レモン果汁摂取群:TG増加量は約40 mg/dL。
レモン果汁摂取による血清TG増加抑制効果には有意差がとれた(P<0.05)(※)。このことから、レモン果汁による脂肪吸収抑制作用が示唆されたと本誌では結論を書いています。
※Pは有意水準と言い、「P<0.05」とは、ざっと言うと「100回に5回未満の確率でそうならないかもしれない」という意味です。
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よく血中脂質は悪者扱いされるけれどそれは間違い。
大前提として、血中に油があるのは正常なことで、体は油を必要とするから、腸から吸収したり肝臓で合成した油を血流に乗せて運ぶわけです。しかし油は水に溶けないので、血中を油が流れる際は、水にも油にもなじむ両性物質(これをアポタンパク質と呼ぶ)に油を乗せて運搬し(乗った状態をリポタンパク質と言う)、油は血中を流れていくわけです。
・血中輸送タンパク質=アポタンパク質
・油が乗った輸送タンパク質=リポタンパク質
・トリグリセリドを運んでいるリポタンパク質の例=VLDL(ブイエルディーエル)、CM(キロミクロン)
対照群(水+バター摂取)とバター摂取群では血清VLDL中のTG量に有意差がなかったが、レモン果汁摂取群ではレモン果汁によりバター摂取後のVLDL-TG量の増加抑制作用が認められた。レモン果汁にはキロミクロン生成遅延作用も確認されていた(※)。
※なお、総コレステロールと各種リポタンパク質中のコレステロールには有意な変動がなかった。
レモン果汁は、主要血中脂質であるトリグリセリドの吸収抑制作用が健康増進に期待できると言ってよいだろう。
単に増加遅延というだけでなく増加量そのものが下がったのはよいデータだね。
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しかし。
レモンは酸っぱいので大量を消費するのが難しいし、一般的な食生活での摂食量が上のような成果をもたらすかどうか、そのほかの食材が混ざることでの影響は不明です。でもまあ、レモンは脂っこい食事の脂っこさを消すにも役立つから、上の成果を期待することにして(※当てにはしないという意味です)、「脂っこいものが好きな人にもレモン効果で嬉しい料理」を作ってみました。トリグリセリドリッチな食品として鶏皮つきの鶏肉を選び、レモンを使用する実績のある国の料理としてモロッコ料理を選びました。
出来た!\(^o^)/
料理名はタジンアルダジャージビルゼイトゥンワルリムン、アラビア語綴りは「طاجين الدجاج بالزيتون والليمون」です♪ 日本語名なら『チキンとオリーブとレモンのタジン』です♪ タジン鍋の蒸し煮調理が奏功して、鶏肉がふわっふわに柔らかくなって大感激です。
レシピは簡単です♪ しかも味は本格的にモロッコ料理ですから間違いありません♪
味は、もちろん美味。ちなみにレモンは皮がないと香りがないので皮も使います。ただし皮の下の白い部分が苦みをもたらすので注意します。タジン鍋の蒸し煮の威力で、鶏肉が、私がこれまで食べた鶏肉料理の中で史上最強の柔らかさ、なおかつ旨味が逃げていないので美味。鶏肉とオリーブの油脂を、レモンがさっぱりとしてくれています。
単に味覚としてさっぱりするだけではなく、将来的に、より周知事項としてレモンの健康に良い作用が医薬品化できるレベルで認められるようになることを期待しています。そういう楽しさをわくわくと胸に抱き、レモンを使った世界の料理の探索とレシピ化に、一層やる気を出して頑張ろうと思います。
元フランス領であることや地理上の近さがあるからだと思うんだけどモロッコにはフランスパンも一般的で、タジンはフランスパンとあわせていただくと美味しい♪