冬の柑橘の季節に「ヴァンドランジュ」-オレンジワイン-を。

2020/02/28

冬の柑橘の季節になりました。「ヴァンドランジュ」-オレンジワイン-を作ろうと思いました。

ヴァンドランジュ(オレンジワイン)は、白ワインにオレンジを漬け込んで香りと美味しさを付与する飲み物です。でもこの飲み物は作ることを躊躇します。

1つめの理由は、スーパーでオレンジを買ってもそれはたいてい外国の輸入オレンジだから。ポストハーベスト農薬という、輸送中にカビないための農薬が使われているのだから。

<ポストハーベストとは>
ハーベスト=収穫、ポスト=あとで。よってポストハーベスト農薬は「収穫後に使う農薬」という意味になる。日本のスーパー陳列段階でよく見かける表示は、米国輸入柑橘類の防カビ剤であるエニルコナゾールECZ(別名かつ有名な名称はイマザリル)、チアベンダゾールTBZ、オルトフェニルフェノールOPP。程度は物によるが、発がん性や催奇形性リスクはほぼ明らか。日本ではポストハーベスト農薬は使用禁止。

2つめの理由として、日本ではワインに果物を漬け込むことは酒税法で禁止されているからです(※)。

<酒税法の抜粋>
アルコール度数が20%以上のものに漬け込むことは可能。理由は、漬け込むことでそれ以上にアルコール度数が増す行為を制限するのが目的であるため。ワインは通常アルコール12%とか14%程度なので果物を漬け込むことが法律上できない。この法律を回避しながらサングリアを楽しむなら飲む直前に作るしかない。

ちなみに、さらに付け加えると、日本産の柑橘だから無農薬だなんて思っちゃだめ。防虫目的でメチダチオンが使われています。さらに、皮をむくから安全とはいえず、果肉からも農薬が検出されるという状況です。

私は、農薬は好きになれない。ポストハーベスト農薬は嫌い。日本が危険だからと禁止しているものを、米国やメキシコからの輸入品はガンガン導入している現実も嫌い。発がん性のような晩発性かつ非可逆病変はゴメンだよ。ついでに言うと、私はアンチ農薬のナチュラリストというわけでもありません。ナチュラリストの皆さんって農薬の化学を分かってないで物事を書いてるようなサイトばかりで、そういうのも好きじゃないんです。私は農薬の学問自体は大好きで、大学院でも毒物を研究して薬学の授業でも長らく毒性学や農薬学を担当してきて、中立的な立場から物事を判断しています。

というわけで。
折角 フ ラ ン ス 産 白 ワ イ ン っ !!(←強調する) を使って、旅先で体験した気持ち良いドリンクを作るのなら、使って気持ち良い柑橘を使いたい。なので家にあるはっさく -それこそ完全無農薬。化学肥料もあげてません- を使って、健康で健全なヴァンドランジュを作ることにしました。酒税法の規定も守りたいから、飲む直前にはっさくを入れて飲む!しかできませんが、でもまあ、飲むときゃ飲むの精神で飲み切ってしまうので、たくさん作ればよいでしょう(笑)

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私がヴァンドランジュに出会ったのは、ニューカレドニアのホームステイ。マリーおばさんのご自宅でした。

ニューカレドニア

素敵な家ですよね。生活感がいっぱいあっても、フランス人の家は、雰囲気が良くて素敵です。

私たちが到着した日、自家製の冷えたヴァンドランジュでおもてなし。

ニューカレドニア

ヴァンドランジュはおばさんのお手製で、オレンジの皮と少々の香辛料を白ワインに漬け込んで、出来上がったものをワインボトルに詰めて冷蔵庫で冷やしておいたのだそうです。聞けばワインのラベルも手作りなのだそう。ラベルには「vin d’orange」(ヴァンドランジュ)と書かれています♪ 素敵♪

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さあ、我が家で糖度が増したはっさくに、フランス産白ワイン♪ それから最高級のマダガスカル産バニラも使って♪

ヴァンドランジュ

2月になると、ほっこり暖かい日が登場します。だから気持ちよくお外でと思い、ガーデンテーブルを出して作業開始♪ お気に入りのガラス製ドリンクサーバーに、材料を入れていきましょう。

ヴァンドランジュ

作り方は簡単です。柑橘の皮をむいて、容器に入れるだけです。皮と身の間の白い部分(味も香りも悪い部分)を丁寧に除去したとしても、10分で作ることができるでしょう。

レシピは簡単で、白ワインオレンジなどの柑橘、バニラスティック砂糖シナモンスティック

白ワイン1本分(750 mL)なら、オレンジ1個、バニラスティック10 cm、砂糖10 g、シナモンスティック10 cmくらいでよいです。

ニューカレドニアのおばさんは、「1週間経ったら皮を取り出して、1か月経ったらオレンジの実を取り出す」と教えてくれました。

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ニューカレドニアは、本来メラネシア人(カナック族)の島ですが、フランスが、ここがニッケル鉱石というドル箱であるゆえ、この地球の反対側にある島を手放しません(ここのニッケル、世界の全ニッケルの3割を占めるらしい。そりゃドル箱だ~)。つまり、メラネシアン先住民の反発や独立意識から紛争もしばしば起こる、ちょっと複雑な島国です。フランス植民地からフランス海外準県となり、ともあれ、島にはフランス人が作った街もあり、フランス人がたくさん住んでいます。マリーおばさんもその一人です。

カナック族にとって、外から支配者が来たことは、辛く苦しいこともあったかもしれないけれど、便利で住みやすい様子を見ると、フランス領である利点も皆に享受されているのだと信じたい。

あのときは、マリーおばさんの家に滞在して南の島のフランス人文化を見て、更にニューカレドニアを一周してカナックの暮らしも見て、両方の視点からニューカレドニアを学ぶことができた。

・・・また、勉強する機会が来たら、ニューカレドニアをもっと理解していこう。今後勉強するときは、マリーおばさんに作り方を教えてもらったヴァンドランジュを飲みながら。そういう酒税法改正を心待ちにしながら。ね!

ヴァンドランジュ

ニューカレドニア



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