スパイスアンバサダーとして活動中です。今回を含め全21回の連載で大量には使いにくいスパイスで、その第3弾では、本タイトルの通り【スパイスリッチな世界の料理】としてローズマリー、バジル、こしょう(ブラックペッパー)のレシピを掲載します。ここで「リッチ」の基準は4人分を上回らないバッチで小さじ1以上使うレシピであることとしました。
連載第19回は、こしょう大活用、南アフリカ共和国(南ア)の開拓者の偉大な干し肉『ブルトン』です。

『ブルトン』は4人分でこしょう大さじ1/2を使います。
よってブルトンの
こしょう消費スコア=55
「ブルトン」は南部アフリカでは伝統の香辛料干し肉です。ブルトンが完成したとき、私は「これぞ世界の料理に近づけた」と心底感激しました。かつてオランダ人が大量入植してできたケープタウン。スエズ運河が19世紀末に開通する前の時代は、欧州とアジアをつなぐ船は必ずケープタウンを経由しましたから、ケープタウンは繁栄を極める国際都市でした。農場があれば大型動物が屠殺されるし、ゲームミート(狩猟肉)が盛んで人気な南アでは、仕留めた獣から肉を取り出し、干し肉にします。干し肉は補給で立ち寄る船舶にも絶好の食糧だったことでしょう。この干し肉は、今やアフリカ南部の一般家庭でも好まれており、庶民に広く親しまれている料理です。アフリカーナーの大好物☆

レシピは簡単です。
『南ア開拓者の偉大な干し肉♪ ブルトン♪』材料(4人分):
- 塊肉(※1)
- 500 g
- 酢(※2)
- 150 mL
- 塩
- 大1/2
- 砂糖
- 小1/3
- こしょう
- 大1/2
- コリアンダーパウダー
- 大1/2
- ガーリックパウダー
- 大1/2
- カイエンペッパー
- 少々
- パプリカパウダー
- 小1/2
- クローブパウダー
- 小1/4
- ドライオレガノ
- 小1/3
※1:あまり脂がのっていない、牛のもも塊肉などがよいと思います。なければ赤身ステーキ肉やローストビーフ用の肉、鹿肉などでも。
※2:酢はワインビネガーがあると現地のレシピに近くなりますが、日本の酢でよいです。せめて果物の酢を使おうとここではリンゴ酢を使っています。
作業工程:3 日
- 肉を8 mm~1 cmの厚さの薄切りにする(幅は細くても太くても構わない)。
- ガラスのボウルに、酢と肉を交互に入れ、ときどき上下を返しながらフタをして4時間置いておく。
- その間に塩・砂糖・スパイス類を均一に混ぜてスパイスミックスを作っておく(できれば混ぜたあとミルサーなどで挽いておく)。
- 肉を酢から取り出し、キッチンペーパーなどで酢を軽く拭き取ってバットに並べ、スパイスミックスを表裏まんべんなくふる。
- 肉どうしが重ならないように糸を通し、換気扇の前や扇風機の風が当たるところに一晩吊るしておく。
- 重力で下がってきた肉を元に戻すように調え、風通しの良いところ、換気扇の前、扇風機の風が当たるところなどに数日間吊るしておく。
- 重量が肉の初期量の45%~40%以下になったら食べ始められます。
- Enjoy!

南ア料理を理解するためには、第一に黒人料理を知ること、第二に数百年にわたってこの国を作ったボーア人の料理(それは農園のお肉や野菜やワインをも味わって)。そしてそこにマレーやインド(奴隷ないし労働者として移住した人々)や、宗主国英国の影響を乗っけていくようにして -それは南アフリカのスローガンであるすべての人種が共存する「虹の国」のように- 理解を深めていくと良いと思います。
* * *
世界はそのスパイスの使い方を持っています。
次回は、ローズマリー消費スコア75 の、美味しいスパイスレシピを4人分バッチでお伝えします。
乾燥ローズマリーは多く入れるほど妙な苦みと渋みが出るというか、刺激が強いというかで、たくさんは使いにくいですよね。なのに、75って、すごーい。使い方によっては、ローズマリーはたっぷり使えるスパイスなんですよ。
本企画も、やりがいを持って取り組むと本当に有意義ですね。多くの人にとって美味しいという保証つきの料理をレシピつきで紹介することで、「作る楽しみ」が芽生える一助になり、その結果として「スパイスの使い方」が変化していくこと、そうしてこれを読んでくれた誰かの役に立てるならばとても嬉しいです。こういった企画にご関心がありましたら、次回もどうぞお楽しみに☆

(1)スパイスにオッズをつける(第1弾)
(2)中東の魚炊き込みご飯『サヤディヤ』
(3)南米のめちゃ旨牛ハツ串焼き『アンティクーチョ』
(4)カシミールのじゃがいも蒸し煮カレー『ダムアル』
(5)中東イランのスパイス使いにはまる『ホレシュマスト』
(6)玉ねぎ2度入れカレーの心酔の美味『チキンドピアザ』
(7)南アフリカ共和国、多民族の虹の味『ボボティー』
(8)スパイスにオッズをつける(第2弾)
(9)青菜いっぱいチーズカレー『パラックパニール』
(10)カリブ海のカレーの風味『シュリンプカリー』
(11)あさりと豚肉のWのダシ『カルヌドゥポルコアアレンテージャーナ』
(12)ハンガリーのパプリカ料理『チルケパプリカーシュ』
(13)パキスタンのスパイス使いで『チキンカライ』
(14)マレーとインドの融合の味『フィッシュヘッドカリー』
(15)スパイスにオッズをつける(第3弾)
(16)セントヘレナのお祝いトマトソース『ブレッドンダンス』
(17)サウジアラビアのイードの料理『ムアラク』
(18)ワインに合うお手軽フランス家庭料理『ブフミロントン』
(19)南ア開拓者の偉大な干し肉『ブルトン』
(20)英国圏の定番を本格的に作る『ローストポテト』
(21)地中海のマルタの郷土料理『スパゲティビルフェネック』※本記事はハウス食品及びレシピブログが主催するスパイスアンバサダーに就任したことに基づき執筆するものです。
