ジブラルタルで人気のワイン「Yllera」の読み方は「イエラ」。そしてジブラルタルの形成と言語ヤニートの考察。

2018/11/11

いつも、世界の料理を勉強すると、「読めない単語」に遭遇することばかりです。とはいえ、料理情報を伝達するには、日本語カタカナ表記にすることは最大重要事項のひとつなので、読めない単語に遭遇してもめげずに諦めずに、なんとか自分が納得する結論に至るように、調査します。

今回調べたのは、ジブラルタルで人気のワイン「Yllera」の読み方について。

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私がジブラルタルに行ったのは10月だった。
もし、夏に行くチャンスがあれば、きっと「カレンティータフードフェスティバル」(Calentita Food Festival)に日を合わせたいと思うだろう。スペインの南端にイギリスがある、でもジブラルタル料理はもっと複雑で、歴史に裏打ちされた様々な民族の混交があります。

今日は、「カレンティータフードフェスティバル」の写真を見ていました。

◆Calentita Food Festival, Gibraltar|Time Travel Turtle(≫こちら

素敵ですね、こういう空気、私もこの場所でこの空気を感じたい♪

イエラ

そして、世界の料理を知りたい私は、聞きなれない料理名を見るとつい「その土地のローカルフードかしら??」とわくわくしてしまいます。上の写真ではメニューボードに書かれた「Yllera」の文字に興味深々になりました!

さて、この「Yllera」。
ワインであることはすぐに分かったのですが、果たしてなんと読むのでしょう?

「Yllera」はスペインにあるワイナリーでした。

スペイン語では、「y」と「ll」の発音は幅というか揺らぎがあるのです。
「y」-イの音だったりジャジュジョの子音になったり。
「lla」-リヤ、リア、リャ、ジャ、ヤ、(アルゼンチンなどではさらにシャとも)。

ただし、音の違いは意味を変えない。
「トルティージャ」でも「トルティー」でも同じ認識をする。この点で「利」と「」が違う意味をなす日本語とは大きく違う。

◆Youtube「Grupo Yllera. El hilo de Ariadna.」(≫こちら

イエラ

0:58 イエラ

◆Youtube「Cata del vino Boada Pepe Yllera 2012 de Grupo Yllera」(≫こちら

イエラ

0:49 イエラ

<結論>
スペイン産ワイン「Yllera」の読み方は、「イエラ」でよいだろう。

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ジブラルタルの言語について。

スペインの南の端っこに英領の国がちっこく存在する、そこがジブラルタルです。

18世紀はじめに「スペイン継承戦争」というのがありました。もともと元スペイン王と元フランス王の双方の孫のルイ14世がフランス王で、彼はじいちゃん(元スペイン王)の孫(スペイン王の姉)と結婚してて、嫁さんの弟(スペイン王)が死去するとスペイン王家から男の血筋が切れてしまうこともあって、スペイン王の姉の孫(つまりルイ14世の孫)がスペイン王位を継ぐことになりました。そうなると、フランス権力がスペイン領土も取り込んで広大かつ強大になるわけで、周辺国は危機を感じ、英国、オーストリア、オランダなどは力をあわせてフランスと戦いました。

欧州と北米のあちこちが戦場になり、戦後の線引きは講和条約(※)で。これで王位継承を明確にし、更に世界の領土の所有も整理しました。結果的に、王位継承には関知しない英国は、領土の点で大儲け。10年近く軍事占拠していたスペインの一角(ジブラルタル)の他、北米ではアカディアやハドソン湾地方など、諸々の土地を正式に手に入れた。世界を股にかける大英帝国を築く大きな前進と言える。

※講和条約:戦争終結や戦後処理のための条約。この本文の場合はユトレヒト条約。

ジブラルタルで英国支配が始まると、マルタ、ジェノバ(イタリア)、モロッコなどの商人がジブラルタルに駐在する英国人相手に商業ないし労働をした。スペインとポルトガルの移民(難民や労働者)が最終的に食文化の融合をさらに強化しました。さらに、英領になる前から長く先住していたユダヤ人は商業に長ける民で、ジブラルタルの文化、防衛、政治、発展に貢献しています。

ジブラルタルは土地柄スペインのアンダルシア地方の一角と言える場所にあるので、スペインのアンダルシア方言をもとに、各民族の言葉が取り入れられ、「ジブラルタルのスペイン語」が出来た。この「ジブラルタルのスペイン語」は、「ヤニート」(Llanito)と呼ばれる。

・・・そう。「Llanito」の読み方も、ジャニートやリャニートではない。ヤニートだ。

冒頭の疑問の「Yllera」の読み方も、「イエラ」であることに、何も矛盾しない気がした。なんかスッキリした!!!

ただ、ヤニート(ジブラルタルのスペイン語)は若い世代には薄れてきており、若い人は英語を話すという。家庭の中で親が話す言葉は理解するから、バイリンガルということになるのだろうけれど。

「ジブラルタル料理」の理解って、小さい国だから他国に比べれば簡単かと思ってた。だけど、思った以上に、歴史背景も複雑で、豊かで、興味深くて、素敵です。

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「勉強をする」ことは、己の向上であり、私にとっては、日々の暮らしの中でも大変に素晴らしい時間です。今までの不勉強を取り戻すことができるから、人生の後悔が、やればやるほど減っていきます。そして、世界史が苦手で嫌いだった高校時代には得られなかった、「やればやるほど出来る」喜びもあって、それが単に勉強で終わらず、世界の料理の勉強の基礎ができ、美味しい食事作りという自分のライフワークに活かせるのだから、有意義ですし、「世界の勉強」も、きっと一生続けていけるような気がします。



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