スリナム料理

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【基礎情報】

国名:スリナム共和国Republic of Suriname、首都:パラマリボ、ISO3166-1国コード:SR/SUR、独立国(1975年オランダより)、公用語:オランダ語、通貨:スリナムドル

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【地図】

南米大陸の北東部には、ギアナ三国と呼ばれる3つの国が並んでおり、スリナムはその中央に位置しています。東に仏領ギアナ、西にガイアナ、南にブラジルと国境を接し、北の海に出れば、カリブ海南端のトリニダード・トバゴが比較的近いところにあります。 国土の大部分はギアナ高地に属し、未開発で、国民が居住するのも、旅行者が移動するのも、ほとんどが北部海岸線沿いです。

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◆南米屈指の料理のダイナミシティー

きっとスリナムに行けば誰もが驚くはず。「南米に、こんな国があるのか」と。南米には14の国がありますが、その多くはスペイン語を公用語とする、元スペインの植民地です。スリナムは公用語がオランダ語なのでそれだけでも南米では特異な国です。そして世界に類を見ない民族構成をもち、世界中どこにも似た国がないと言えるユニークな文化を形成しています。南米なのに料理の基盤はアジア各国の食文化が根付き、またユダヤ人が持ち込んだ料理もあるとかで、スリナムの食文化の奥の深さは、同時に、スリナム料理の際立った美味しさにもつながっています。

スリナムの野菜
スリナム料理は野菜が豊富。長いインゲンはコウサバンド(三尺豆)。(撮影地パラマリボ)

スリナム料理を理解する背景としては、以下のことを把握していると良いと思います。

  1. 熱帯気候に位置し、海や川を有し、植生豊かである。
  2. スリナムの先住民はアメリインディアンと呼ばれる人々である。
  3. 1975年の独立まで、4世紀に亘り、オランダの植民地だった。
  4. 現在のスリナムやキュラソーが長くオランダ領であった頃、一方で、現在のインドネシアもオランダ領であった。労働者不足の解消のためオランダ政府がインドネシア系の人々(ジャワ人)を多数スリナムへ入植させ、砂糖などのプランテーションの農園労働者とした。
  5. その他、インド人労働者やアフリカ人奴隷も入植させられた。
  6. ユダヤ人(イベリア半島ユダヤ人)の入植も何段階かに分けて行われ、多くは農場経営者や奴隷所有者となった。
  7. 商業に極めて長ける中国人系移民は、近年特に多くなった。

このような背景の上で現在のスリナム料理が成り立っています。スリナム料理は、アメリインディアン、ジャワ(インドネシア)、オランダ、インド、アフリカ、ポルトガル、ユダヤ、中国、そしてクレオール(土着文化と白人文化の混合という意味)といった要素の混合です。クレオールと言えば、スリナムの地元民が話す言葉もクレオール言語です。公用語はオランダ語ですが、地元民はスラナントンゴ(またはタキタキ語)という、オランダ語&英語を含めて形成された混合言語を話しています。
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主食(米と麺) Staple (Rice and Noodles)

スリナムは、国民の約2割がジャワ人です。よって、スリナム料理の土台を2つ挙げよと言われたら、南米大陸熱帯の土着的な料理と、ジャワ人の料理(今で言うインドネシア料理)です。それはスリナム人が、インドネシア人と同様にライス(白米)を主食とすることにも表れています。ごはんに肉や野菜のおかずがちょこちょこ乗る一皿盛りは、まさにインドネシアのナシチャンプルーですし、ローカルな食堂では、いくつものおかずを作り置きにしてガラスケースに陳列して、この風景もインドネシアにそっくりです。

インドネシアのナシゴレンは、スリナムではナシ。これも国民食級の焼きめしです。インドネシアのミーゴレンは、スリナムではバミ。黄色い太麺が自慢の国民食級の焼きそばです。スリナムではスパゲティー麺を使ってバミを作ることも多々あります。

一方で、アフリカ人奴隷の歴史を感じる米料理もあります。モクシアレシという、豆や野菜や塩漬け肉の炊き込みごはんです。西アフリカのジョロフライスやカリブ海で発展したピーズアンドライスと同系統の料理で、奴隷制度時代、余り物や残り物を使ってこの料理が作られていました。黒目豆が入ったバージョンも一般的で、これは米国料理のホッピンジョンととても似ていますね。由来や、起源も。
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主食(イモ類) Staple (Tubers)

熱帯ですから、イモ類もよく育ちます。テロはキャッサバ芋の名称ですが、大きめのフライドポテトのようにして作るフライドキャッサバもテロと言います。

ほかの芋には、タヤ(またはポンタヤ。ココヤムという里芋に似たイモ)があります。タヤを使って作るポムは、ポルトガル系ユダヤ人が、ポルトガルではじゃがいもで作っていたオーブン料理を、じゃがいもに乏しいスリナムでココヤムで作ったことに由来する、タヤをすりおろし、塩漬けチキンとオレンジの果汁を混ぜてオーブンで焼いた料理です。「ポムなしに誕生日は迎えられない」とスリナムのことわざにあるように、お祝い事には欠かせない料理です。
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肉のおかず Meat

スリナム料理では肉類としてはキプ(鶏肉)を多用します。キプメットナシあるいはキプメットバミという、キプコウサバンド(三尺豆の炒め煮)とナシ(焼き飯)あるいはバミ(焼きそば)の一皿盛りは、多くのスリナム人が国民食と認識するものです。

塩漬け肉(オランダ語でザウトフレイス)も伝統的に用いられています。上述のモクシアレシ以外にも様々な料理に用いられます。
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魚のおかず Fish

スリナムは海に面し大河に挟まれた国ですから、漁業も盛んで、魚も豊富です。魚はフィスと言い、焼いたり揚げたりして食べられます。海を挟んだ先にあるカリブ海南部の国と共通する食文化もあり、バッケルヨウフ(干した塩ダラ)はまさにカリブ海南部のソルトフィッシュそのものです。お湯で戻してトマトや玉ねぎと現地の唐辛子で炒め煮にするのが定番中の定番で、こうやって調理したものもバッケルヨウフと言います。テロ(キャッサバ芋)と合わせたテロメットバッケルヨウフも代表的なスリナム料理の1つです。海水魚も淡水魚も様々な種類のものが獲られているのに、輸入してまでバッケルヨウフを食べているのは、ポルトガル人の影響です。
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野菜や豆のおかず Vegetables & Beans

熱帯気候ゆえ、ゴーヤ、トマト、オクラ、ナス、ダゴブラッド(空芯菜)、コウサバンド(三尺豆)など、日本では夏野菜とされるものが一年を通して食卓に上るのが、スリナム料理の特徴です。タヤブラッド(タロイモの葉)も熱帯らしい食材です。特にコウサバンド(三尺豆の炒め煮)はスリナム料理の象徴的な存在になっています。

野菜をシンプルに食べるグルントゥーこそ、スリナムを語る料理の1つだと思いました。グルントゥーは単に野菜という意味ですが、英語のGreenと語源が同じで、狭義には緑の野菜を意味するものと思われます。グルントゥーの一例には、ゴーヤのオイル煮、インゲンのオイル煮、かぶの葉のようなものの炒め物が盛り合わせがありました。

また、インドネシアのガドガドを模したとされるのが、フーダンガンです。野菜とゆで卵を盛り合わせた料理ですが、南米の素材でガドガドソースを作ろうと思ったらココナッツミルクベースになったのか、あるいはオランダ人がヨーグルトを導入したためなのか、ともあれ南米料理には極めて珍しいことにココナッツヨーグルトソース(ココナッツサンバルというふりかけをかけることもある)をたっぷりかけたヘルシー料理です。

フーダンガンと良く似た料理で、野菜とゆで卵をピーナッツソースでいただく料理はペッチルといい、インドネシアのガドガドにかなり近い料理です。
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スープ類 Soup

スープは、インドネシアではソト、スリナムではサオトと言い、名前が似ています。典型的なサオトは、鶏肉や野菜が入ったサオトスプです。
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軽食 Quick Eats

スリナムではインド系の軽食屋をよく見かけます。インドはティファンという軽食文化が発達していて、インド人労働者の植民の歴史から、インドの軽食は遠くスリナムにも広まりました。ロティはインドのチャパティーのような薄焼きパンです。これにカレー味のおかずを添えていただきます。特にマサラキプ(カレー味の鶏肉)との組み合わせたロティメットマサラキプ(ロティ&チキンカレー)はロティ料理の定番中の定番です。

パスタイは、直訳してパイです。ジャマイカでもパイをよく見かけたことを思い出します。となると、これはオランダの前の入植者だったイギリスの影響でしょうか。1人サイズの小さなパスタイもありますが、チキンを具にした大皿仕立てのパスタイも人気です。

甘いものでは、ボヨという、すりおろしたキャッサバに砂糖などを混ぜてオーブン焼きにしたケーキもあります。
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アフリカ人奴隷の歴史 Due to African slave trade

スリナムにはアフリカ人奴隷の起源を感じる料理もあります。主食の項の再掲ですが、モクシアレシは、西アフリカのジョロフライスや、それをもとにカリブ海で発展したピーズアンドライスに近い料理で、残り野菜や豆などと塩漬け肉を使って作られた炊き込みごはんです。スリナムでは肌の色が黒い人を数多く見かけるものの、料理の点ではアジアの料理が強烈な印象をもたらすので、料理の点で黒人文化を感じることはあまりないように思います。
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中国料理 Chinese

首都パラマリボにいると、南米にいるはずなのに、中国人、中国人商店、中国人飲食店に無数に遭遇し、人々も軽食には中華料理のテイクアウェイを買うのがごく普通で、驚きます。回転テーブルに中国茶、本格的な中華料理は、本家本元の味がして極めて美味なのに、お腹いっぱい食べても1人500円という、現地の安い物価で食べられるのです。

モクシメティは、中国料理から生まれた肉の盛り合わせです。モクシが肉、メティが混合を意味し、モクシメティは直訳して「混合肉」です。チャーシューや調理された鶏肉のぶつ切りなど、3、4種類のお肉が、ナシ(ごはん)やバミ(焼きそば)の上に乗ります。

なお、中国料理の影響が大きくなったのは、途上国の彼方此方でそうであるように、長い歴史の中では比較的近年のことです。しかし中国料理の浸透は、スリナム料理を一層美味しいものにしてくれました。
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お酒 Alcoholic Drinks

パルボは首都パラマリボの愛称を名にしたピルスナー系統のビールです。日本のビールもピルスナー系統なので、日本人には飲みやすくて美味しいです。アルコール度数は5.5%。熱帯では麦芽とホップは成長しないので、アメリカやヨーロッパから輸入し、そして地元産の米を加えて作ることで生まれたものです。スリナムではパルボが8割の市場シェアを占めています。川沿いにならぶユネスコ世界遺産、オランダ語で、ウォーテルカント(水辺通り)、地元のおじさんたちみたいに、ここでたそがれながらパルボの1L入りをドンと飲むのが美味しいのです。
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ノンアルコール Nonalcoholic Drinks

ノンアル気分のときは、ダウェットをどうぞ。レモングラスシロップで風味をつけたココナッツミルクドリンクです。
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最後に Acknowledgments

以上、スリナム料理について、概観いたしました。

スリナムにいると、南米にいるはずなのに、ジャワ人、インド人、中国人・・・と、アジア系の人々があまりに多すぎてギョッとします。それは民族の大きなるつぼです。「ダイナミック(dynamic)」という言葉が、動的で力強いという意味ならば、スリナムの料理はまさに料理のダイナミシティーを形成しています。

アジアベースの多様さがあり、変化に富みすぎて、スリナムの旅は飽きる暇がありません。冒頭に書いたように、「南米にこんな国があるのか」と、いつもわくわくしていつも驚いていました。白いごはんが主体で野菜が多くてアジアの味付けの料理が多いのですから、料理に疲れることもありません。もし疲れたって中華料理がある。カレー味もある。日本人とってほっとする味がいっぱいあるのも、スリナム料理の良い点です。

スリナム料理に出会えたことと学べたことに感謝すると共に、本稿が、スリナムを旅して、スリナムの料理を知りたい人の一助になれれば、嬉しく思います。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary

【主食類】
  • タヤ(Tajer、Taya)・・・ココヤム(里芋に似たイモ)
  • テロ(Telo)・・・キャッサバ芋またはフライドキャッサバ
    • テロメットバッケルヨウフ(Telo met bakkeljauw)・・・キャッサバと干しダラの炒め煮のセット
  • ナシ(Nasi)・・・ごはんまたは焼き飯
  • バミ(Bami)・・・焼きそば
  • ポム(Pom)・・・タヤをすりおろして塩漬けチキンやオレンジの果汁とオーブン焼き
  • ポンタヤ(Pomtaya)・・・ココヤム(里芋に似たイモ)
  • モクシアレシ(Moksi Alesi)・・・豆や野菜や塩漬け肉の炊き込みごはん
  • ライス(Rijst)・・・ごはん
【肉や魚】
  • キプ(Kip)・・・鶏肉
    • キプメットナシ(Kip met nasi)・・・鶏肉と三尺豆と焼き飯の一皿盛り
    • キプメットバミ(Kip met bami)・・・鶏肉と三尺豆と焼きそばの一皿盛り
  • ザウトフレイス(Zoutvlees)・・・塩漬け肉
  • バッケルヨウフ(Bakkeljauw)・・・干した塩ダラ、または塩ダラとトマトの炒め煮
  • フィス(Vis)・・・魚
  • マサラキプ(Masalakip)・・・チキンカレー
  • モクシメティ(Moksi Meti)・・・チャーシューなどの肉の盛り合わせ
【野菜】
  • グルントゥー(Groente)・・・緑の野菜(炒め煮の盛り合わせなど)
  • コウサバンド(Kouseband)・・・三尺豆(長いインゲン)
  • コウサバンド・・・三尺豆の炒め煮
  • ダゴブラッド(Dagoeblad)・・・空芯菜
  • タヤブラッド(Tajerblad)・・・タロイモの葉
  • フーダンガン(Goedangan)・・・野菜とゆで卵の盛り合わせにココナッツヨーグルトソースまたはココナッツサンバルをかける
  • ペッチル(Petjil)・・・野菜とゆで卵の盛り合わせにピーナッツソースをかける
【スープ類】
  • サオト(Saoto)・・・スープ
    • サオトスプ(Saoto soep)・・・鶏肉や野菜が入ったスープ
【軽食】
  • パスタイ(Pastei)・・・パイ
  • ボヨ(Bojo)・・・すりおろしたキャッサバで作るオーブン焼きケーキ
  • ロティ(Roti)・・・インドのチャパティーのような薄焼きパン
    • ロティメットマサラキプ(Roti met Masalakip)・・・ロティーとチキンカレーのセット
【飲み物】
  • ダウェット(Dawet)・・・レモングラスシロップで風味をつけたココナッツミルクドリンク
  • パルボ(Parbo)・・・ピルスナー系統の米入りビール

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料理を知る会話 Useful Phrases

以下は公用語のオランダ語での会話です。なお、スリナムの地元の言葉にはスラナン語(スラナントンゴ)(タキタキとも言う。)もあり、ジャワ人(インドネシア系の人々)はジャワ語を話しています。

  • ありがとう・・・Dank u(ダンキュ)
  • ありがとうございます・・・Dank u wel(ダンキュウェル)
  • こんにちは・・・Goedendag(フーデンダッハ)
  • これは何ですか・・・Wat is dit?(バトイスディト)
  • これは何と言う名前ですか・・・Hoe heet dit?(ウーヘトディト)
  • これ、料理、名前・・・Dit(ディ)、Gerecht(フレフト)、Naam(ナーム)
  • オランダ語でこれは何と言いますか・・・Hoe heet dit in het Nederlands? (ウーヘトディトインヘトネーデルランズ)
  • スラナン語でこれは何と言いますか・・・Hoe heet dit in het Sranan tongo? (ウーヘトディトインヘトスラナントンゴ)
  • タキタキ語でこれは何と言いますか・・・Hoe heet dit in het Taki Taki? (ウーヘトディトインヘトタキタキ)
  • これを下さい・・・Geef me dit(ヘフメディト)
  • 美味しい・・・Lekker(レカー)、Heerlijk(ヘーライク)
  • 素晴らしい・・・Geweldig(ヘウェルディヒ)
  • 乾杯!・・・Proost!(プローシト!)
  • いくらですか?・・・Hoe duur is dat?(ウーデュアイスダット)

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