◆日本人が美味しいと思う料理が沢山あるのには訳がある。
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・烏酢(ウーツー)・・・卓上定番のウスターソース。(本文記載済み)
・菜脯蛋(台:ツァイポーヌン、中国語で菜脯煎蛋(ツァイプージェンタン))(本文記載済み)
・文章を読みやすく全体修正し、料理名を太文字にしました。
台湾は、日本、中国、フィリピンの間にある比較的大きな島国です。中国の福建省ととても近い位置にあります。
台湾は、日本の九州ほどの広さの島です。もともとミクロネシア系の原住民が住む熱帯の島に、17世紀頃より中国大陸の南方(福建省や広東省など)から、今の本省人(ほんしょうじん)の由来となる中国系の人々が入ってきました。その後、中国の毛沢東共産党に敗れた蒋介石国民党が大陸から台湾に入ってきて、今の外省人(がいしょうじん)の由来となりました。現在、台湾は、本省人が人口の8割以上、外省人は1割、原住民は2%程度を占めます。那覇よりも南に位置する台湾ですから、気候は暑くいろいろな作物が豊かに育ちます。実は富士山よりも高い山があるくらいなので涼しい土地も多い。こうして台湾は様々な食材に恵まれ、現在(ある程度の面積がある国々の中では)日本の2倍かつバングラデシュに次いで世界第2位という極めて高い人口密度をもつ人口密集国家へと発展したのです。
*このサイトでは、いわゆる中国(中華人民共和国)について、別途ページを設けます。日本は台湾を国家として承認して(できて)いませんが、中華民国(台湾)政府は共産党と中国の支配を係争している国民党の中国政府であり、それを正式な政府として認める国もあり、国家要件を満たしているのがその理由です。両政府ともに全域を自国(独立国)と主張していますが、本ページは、中華民国が実効支配する台湾本島を中心とした食文化を紹介します。
台湾に行ってみると、その暑い気候に感動し、ここはもともとミクロネシア人が住んでいた島だということに納得がいくものです。ミクロネシア人としての文化を感じる食材は、芋頭(ユータオ、タロイモ)やキャッサバ(キイモ)です。芋頭は台湾の名産の1つで、芋頭蓋飯(ユータオカイファン、芋と肉の煮物をごはんにかけたもの)などのほか、デザート類の材料にもなります。中国南方やベトナムでも、タロイモはかき氷の具だったりしますよね。台湾も同じです。
キャッサバ粉(タピオカ粉というと日本人にも通じやすい)は水分と共に加熱すると大変にもちもちします。台湾ではもちもちした食感が好まれ、文章の中で「もちもち」を「QQ」(キュキュ)や「QQ的」(キュキュダ)と表現します(漢字の中にいきなりQが入ってくるので最初はビックリします)。広東省や香港の飲茶の点心と似たようなもちもちした餃子の皮を作ったり、台湾のスウィーツとして著名な珍珠奶茶(チェンツーナイチャー、タピオカミルクティー)のもちもちした粒を作るのに使われます。
台湾料理の特徴として、外食文化が強いことが挙げられます。これは台湾の主要民族の出身地である福建省や広東省と同じですし、その他中国南方や、シンガポール、ベトナムなどの東南アジアとも共通する文化です。そして本省人は3世紀以上にわたって台湾で福建や広東の食文化を育んだ結果、台湾料理においては「小吃」(シャオチー、軽食)の要素が強くなりました。これは、まさしく福建省で顕著な小吃文化との共通点です。台湾に行くと茶(チャー)や果物のおもてなしを受けることもありますよね。台湾ではお茶だって福建式。福建式に淹れられ、小さなおちょこで飲むのです。
中国人の料理というと、油っ気が強くにんにくや唐辛子が利いている印象がありますか? 確かに外省人(近年中国大陸から移動した人々)の料理にはそういう本格的な本場中国料理があり、四川料理とか、北京料理とか、本格的中国料理のお店を展開しています。しかしこれらは新しく台湾に入り込んできた「ニューカマー」的な存在です。しかし、本省人の長年の台湾料理は油も塩分も控えめです。
なお、今や台湾料理の代表選手として取り上げられることの多い牛肉麺(ニウローミェン、台:グーバーミー)並びに牛肉料理各種は、1949年に外省人の到来とともに入ってきた、これまた台湾のニューカマーです。台湾では、農耕や運送の動力である牛を食べる習慣はありませんでした。またその長年の習慣のためか、今も「素食」(ベジタリアン料理)を提供するお店が多くあります。
台湾料理は味付けが甘いのも特徴です。台湾は調味料がいろいろと甘くて、醤油でさえ甘草(カンゾウ)が入っていますし、肉鬆や肉燥(どちらもバッソー、肉のデンブ又は細かい肉の角煮味煮込み)がいろいろな料理の味付けに加えられていて甘いです。辛い調味料は主に卓上に置いてあり、「辛味は自分で足してね」というスタンスなので、料理自体は辛くありません。台湾ではまた、食卓によく風味づけのための烏酢(ウーツー、ウスターソース)が乗っています。一方で案外食卓に塩はないものです。
だしを取る文化があるので、薄味であり、薄味だからこそ、薬味で香りをつける。乾物や塩蔵の食材をよく使うので、生野菜には出ない深い味わいがある。このあたりの料理のコンセプトは日本料理も同じです。特に、地理的に近い沖縄とは、気候や食材が似ているということ以上に、料理が似ています。中国の記録には沖縄が大琉球、台湾が小琉球と記されており、古くから両者は交易の関係にありました。ゴーヤを繁用すること、肉類は豚肉が中心であること、だしで旨味をつけること、島国なのに意外に魚を食べないこと、など。そういえば沖縄も薄味文化で、辛味は自分でかけますね(唐辛子泡盛、コーレーグースー)。
日本と違うのは、蒜泥(スァンニー、にんにくおろし)が卓上に置いてあることも多く、外食でにんにくを入れて食べることも抵抗がない。箸とレンゲをよく使い、レンゲでご飯ものを食べる人も多い。この点は中国本土に共通点が多いのだろうと思います。ただし骨や貝殻などを食卓まわり(床)に捨てる中国大陸のような文化習慣は(外省人を除いて)ありません。
食卓に水やお茶が出てくることもあまりありません(自助(セルフサービス)ならある)。そのかわり、食事をするところの周辺には、色とりどりのフルーツなどを使う飲み物屋がたくさんあります。
では、食材系統別に、各論を紹介します。
※台湾には中国普通話(中国大陸本土の言葉)と台湾語(福建省に由来する地元語、閩南語系統)があるので、ほとんどの料理に複数の名称がついています。台湾語名が圧倒的に優位なものを除いて、分かる範囲で両方書いています。
まず、麺モノ。
ビーフン料理が台湾の1つの代名詞になっているように、米で作る麺が多いです。もちろん小麦粉の麺もあります。意麺(イーミェン)は卵麺で、冬粉(トンフン)はもちもちとした春雨です。台湾で麺料理を食べると長崎ちゃんぽんをたびたび感じることもあるのが不思議な気分です。牛肉麺(ニウローミェン、台:グーバーミー)は牛肉乗せ麺、担仔麺(ダンザイミェン、台:ターアーミー)は肉燥(バッソー、肉のデンブ又は細かい肉の角煮味煮込み)で汁も旨い麺、蚵仔麵(台:オアミ)は蚵仔(オア、小粒のカキ)が入った麺、切仔冬粉(チェツァイトンフン)は麺を素早く出汁の中で煮るという意味の麺、鳝魚意麺(サンユーイーミェン)は田ウナギのあんかけ乗せ麺。
次に、ご飯モノ。
台湾は丼ないしお茶碗のサイズがとても小さくて、日本人なら2軒ハシゴ余裕です!(笑)
魯肉飯(ルーローファン、台:ローバープン)又は肉燥飯(ローツァオファン)は、豚の細かい角煮が乗ったごはん、焢肉飯(コンローファン)は豚の角煮乗せごはん、鶏肉飯(チーローファン、台:ケーバープン)は裂いた鶏肉を乗せたごはん、火雞肉飯(ホーチーローファン)は裂いた七面鳥肉を乗せたごはん、排骨飯(パイクーファン、台:パイクップン)は豚スペアリブ煮込み乗せごはん。
もち米を使う料理もあります。
肉粽(ローツォン、台:バーツァン)はちまき、飯団(ファントゥアン)は台湾のおむすび(もち米を使う巨大モノです)、油飯(ヨウファン)は醤油炊き込みかやくごはん。
屋台食は台湾の旅の楽しみですね。
蚵仔煎(台:オアツェン)はカキオムレツで、中国大陸福建省の海蛎煎(ハイリージャン)と同じもの。菜脯蛋(台:ツァイポーヌン、中国語で菜脯煎蛋(ツァイプージェンタン))は切り干し大根入りの卵焼き、臭豆腐(チョウドウフ、台:チャウタウフー)は臭い豆腐、香腸(シャンツァン)はやや甘く仕立てられている台湾ソーセージ、鍋貼(クオティエ)は焼き餃子、潤餅(ルンピア)はクレープのような小麦粉の皮に肉や野菜を乗せ、ピーナッツと砂糖をかけてくるんで食べるもの、棺材板(グアンツァイパン)は棺桶という意味の料理で、厚切りのトーストをくりぬいてクリームシチューを入れたもの。
スープ類も美味しいです。
鹹蜊仔(台:キアムラーアー)はシジミ汁、蛤蜊湯(グーリータン、台:ハーマートゥン)はハマグリ汁、下水湯(シャーシュウェイタン、台:ハーツイトゥン)はモツ煮込み、魚丸湯(ユーワンタン、台:ヒーオワントゥン)はつみれ汁。
台湾で是非食べてほしいスウィーツもあります。
愛玉(アイユー、台:オーギョー)は愛玉子から抽出した多糖類で固めた黄色いゼリー、珍珠奶茶(チェンツーナイチャー)は烏龍茶やミルクティーにタピオカの粒を入れた飲料、豆花(トウフワ、台:ダウホエ)は柔らかい豆腐にシロップやあんこをかけて食べるもの、粉圓(フェンユェン)はタピオカパール(タピオカ粉を練ってまるめてゆでた小さな粒)のデザート。
以上、いろいろと、台湾料理について書いてきました。しかし農耕に長ける東南アジアや東アジアは料理の種類が膨大に多く、四季がある台湾はなおさらです。だから、ここではまだまだ台湾料理を書き切れていません(苦笑、でも後日追記していきます)。
しかし、これを読んで台湾の食の旅を楽しみたい人へアドバイスするならば、やはり「本省人の料理を理解してこそ台湾料理の柱を理解する」ということです。
台湾旅行って、日本人の短い観光ではつい台北で終わりがちですが、台北は外省人(近代になって大陸から移動してきた人)が多く住むので、やはり食事を楽しんで台湾を理解するのであれば、何よりも台南です。台北が東京ならば台南は京都です。歴史と深みがあり「美食の都」とも称せられ、歴史に裏打ちされた数々の名物料理を誇る街なのです。
台湾の良さは、外食文化が強いことです。だから、旅行者でも庶民の食事と同じものを味わえるのも、台湾旅行の楽しさです。これ、本当に有難い。
本省系の台湾人家族の団欒に招かれて。路上も家族の大事な食卓です。(撮影地台南)
-台湾こそが本来のChinaである- ・・・この意味、分かりますか。
複雑な国です。中華人民共和国とのことは、日本人が想像もできないほどのことだと思います。台湾人は日本に優しくて、日本人に親しみをもってくれる。日本語で書かれている食材や食品も多い。日本と海を挟んで接する国の中では、日本を好きでいてくれる度合いは格別です。
冒頭に、『日本人が美味しいと思う料理が沢山あるのには訳がある』と書きました。その理由は、まさに台湾人が日本を好きでいてくれるから。私たちは、台湾を旅すればするほど、心が温まり、嬉しくなり、台湾人の心に感動して台湾料理を食べるから、どんどん台湾料理が美味しく味わえてしまうのです。
◆台湾に行ったら、これ食べよ♪
【麺モノ】
・意麺(イーミェン)・・・卵麺。
・蚵仔麵(台:オアミ)・・・蚵仔(オア、小粒のカキ)が入った麺。
・鳝魚意麺(サンユーイーミェン)・・・田ウナギのあんかけ乗せ麺。
・担仔麺(ダンザイミェン、台:ターアーミー)・・・肉燥(バッソー)で汁も旨い麺。
・冬粉(トンフン)・・・もちもちとした春雨。
┗切仔冬粉(チェツァイトンフン)・・・麺を素早く出汁の中で煮るという意味の麺。
・牛肉麺(ニウローミェン、台:グーバーミー)・・・牛肉乗せ麺。
【ご飯モノ】
・焢肉飯(コンローファン)・・・豚の角煮乗せごはん。
・鶏肉飯(チーローファン、台:ケーバープン)・・・裂いた鶏肉を乗せたごはん。
・排骨飯(パイクーファン、台:パイクップン)・・・豚スペアリブ煮込み乗せごはん。
・飯団(ファントゥアン)・・・台湾のおむすび。
・火雞肉飯(ホーチーローファン)・・・裂いた七面鳥肉を乗せたごはん。
・芋頭蓋飯(ユータオカイファン)・・・芋と肉の煮物をごはんにかけたもの。
・油飯(ヨウファン)・・・醤油炊き込みかやくごはん。
・魯肉飯(ルーローファン、台:ローバープン)・・・豚の細かい角煮が乗ったごはん。
・肉燥飯(ローツァオファン)・・・豚の細かい角煮が乗ったごはん。
・肉粽(ローツォン、台:バーツァン)・・・ちまき。
【屋台食】
・蚵仔煎(台:オアツェン)・・・カキオムレツ。
・棺材板(グアンツァイパン)・・・厚切りのトーストをくりぬいてクリームシチューを入れたもの。
・鍋貼(クオティエ)・・・焼き餃子。
・香腸(シャンツァン)・・・やや甘く仕立てられている台湾ソーセージ。
・臭豆腐(チョウドウフ、台:チャウタウフー)・・・臭い豆腐。
・菜脯蛋(台:ツァイポーヌン、中国語で菜脯煎蛋(ツァイプージェンタン))・・・切り干し大根入りの卵焼き。
・潤餅(ルンピア)・・・小麦粉の皮に肉、野菜、ピーナッツ、砂糖をかけてくるんで食べる。
【スープ類】
・鹹蜊仔(台:キアムラーアー)・・・シジミ汁。
・蛤蜊湯(グーリータン、台:ハーマートゥン)・・・ハマグリ汁。
・下水湯(シャーシュウェイタン、台:ハーツイトゥン)・・・モツ煮込み。
・魚丸湯(ユーワンタン、台:ヒーオワントゥン)・・・つみれ汁。
【スウィーツ】
・愛玉(アイユー、台:オーギョー)愛玉子から抽出した黄色いゼリー。
・珍珠奶茶(チェンツーナイチャー)・・・烏龍茶やミルクティーにタピオカの粒を入れた飲料。
・豆花(トウフワ、台:ダウホエ)・・・柔らかい豆腐にシロップやあんこをかけて食べる。
・粉圓(フェンユェン)・・・タピオカパール(タピオカ粉を練ってまるめてゆでた小さな粒)のスウィーツ。
【調味料】
・烏酢(ウーツー)・・・卓上定番のウスターソース。
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