゚・*美味しさは、香りで作る。*・゚【スパイスアンバサダー2023】
使用スパイス:八角、シナモンスティック、フェンネル、ベイリーフ、鷹の爪
先日、優しいご近所さんがご自宅付近で獲れたイノシシのお肉を分けてくださいました。いただいたお肉は、肩まわりと前脚の3650 gです(重量は脚の骨を含む)。そのお肉を大事に使い切り、下さった方への御礼の気持ちと、お肉に感謝の気持ちを込めて、いただいたお肉で作った世界の料理のレシピを掲載してきました。
第9回となる今回がこのシリーズの最終回。最後は私が(日本以外で)「世界で一番料理が美味しい国」と確信している中国のめちゃウマ料理でこのシリーズを締めくくろうと思います。
* * *
第9回、中国料理「东北酱大骨」(トンページャンターグー)
お肉使用量:700 g(全量3650 g中累計3650 g)。
この料理名についている「东北」(トンペー)は中国東北地方のことで、日本史や世界史に出てくる「満州」のあたりの地域を指します。遊牧民の要素ももつ満洲族の料理は漢民族から受けた調理法や調味法とともに美味しく発達し、この骨付き肉は「肉もすごいが味付けがすごい」という美食になっています。
材料(4人分):
- 骨付きイノシシ肉(※1)
- 700 g
- 生姜
- 30 g
- 長ねぎ
- 1本
- サラダ油
- 大2
- 八角
- 2つ(16角分)
- シナモンスティック
- 1本(約8 cm)
- フェンネルシード(※2)
- 大1/2
- 鷹の爪(※3)
- 2本
- ベイリーフ
- 3枚
- 豆板醤
- 小2
- 老抽(※4)
- 大1
- 醤油
- 大1
- 日本酒(※5)
- 50 mL
- 塩
- 小1/4
- 砂糖
- 小2
- 食紅(※6)
- 耳かき2杯程度
※1:骨付き肉は動物の背骨や脚を使います。普通に売られているもので代用するなら(料理名の大骨より小さくなってしまうけれど)スペアリブを使うとよいです。
※2:フェンネルシードがない場合、クミンシードやディルシードで代用するか、省きます。
※3:鷹の爪は丸ごとのものを使います。ない場合は小口切りや一味唐辛子少々で代用します。
※4:老抽(ラオチョウ)は黒色が濃くて塩分が低い中国の醤油ですが、ない場合はオイスターソース少々で代用するか、塩分に気をつけながら日本の醤油を増やします。
※5:日本酒は現地の黄酒(ホワンジョー、米の酒)の代用です。紹興酒を使ってもよいです。
※6:この料理は赤味を出して作られることが多いので食紅を加えています。現地では赤い色のタレ(排骨酱など)を加えたりします。なければ省いてもよいです。
作業工程:1 時間
- <骨を切る>骨付き肉を骨ごと切り(電動のこぎりや斧など)、水中で断面を洗ってできるだけ骨のかけらを落とし、仕上げの水できれいに全体を洗っておく。
- <下ゆで>鍋に骨付き肉が浸る量の水(分量外)を入れて強火にかける。
- 湯が沸くまでの間に、生姜を2 mm厚さの薄切りにし、長ねぎの葉(緑の部分)を切り落として葉の内側を洗い、長ねぎの白い部分を3~4 cm長さに切る。
- 湯が沸いたら骨付き肉、生姜の薄切りの1/3量、長ねぎの葉を入れ、再沸騰させ、1分ほど煮てアクをすくい取り、肉を引き上げる。
- 肉をゆでた鍋を観察する。ゆで汁にくさみがなく「だし汁」として使えるなら残す。生姜と長ねぎの葉は最終的に食べるなら残してもよいし、食べないなら取り出してよい。
- <本調理>小皿に八角、シナモンスティック、フェンネルシード、鷹の爪、ベイリーフを入れておく。
- フライパンにサラダ油を入れて強火で熱し、豆板醤を入れて素早く炒める。
- 生姜の残り、長ねぎの白い部分、スパイス類(八角その他の皿の中身)を入れて素早く炒める。
- 骨付き肉を入れて炒める。
- 下ゆでのゆで汁(または水)をひたひたになるまで加え、火加減を強火にし、老抽、醤油、日本酒、塩、砂糖の1/3量(小さじ1弱くらい)、食紅を入れ、ときどきアクを取りながら、肉の上下を返しながら煮詰めていく。
- 途中で砂糖の1/3量を追加し、引き続き煮詰める。
- 途中で砂糖の残りを追加し、引き続き煮詰める。
- 煮汁が減ってきたら食べられないスパイス類が邪魔なら取り出し(ベイリーフやシナモンスティックなど)、味見をして味の濃さなどを確認し、煮詰め具合を考えておく。
- 目的の味の濃さになってきたら味見をし、塩加減や甘み加減などを好みに調える。※私はこの分量で煮汁がほぼなくなってとろっとするまで煮詰めています。
- Enjoy!
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肉が旨い!タレが旨い! 美味しいー♡♡
「骨付きの肉にかぶりつく」のは美味しいですよね。何と言うか、人類の内なる野生が目覚める味で、ヒトの本能がこれを「旨い」を認めざるを得ない。形態が、箸で食べる漢民族料理とは違いますから、指でつかんで、骨にへばりつく膜まではがすようにお召し上がりくださいね。お肉も美味しいのだけど、「タレが旨い、タレが旨い」と言って白いごはんも進んでしまうすごい料理です。
* * *
全9回で私が作った世界の伝統料理。
・・・どれも美味しかったなあ・・・♪
・・・そして、楽しかったなあ・・・♪
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私が地域のジビエ振興について思うことは幾つかあります。
- 畑を荒らされて心折れて離農する人がいないでほしい。そのためにも害獣は適切に捕獲すべき。
- 獲って獲りっぱなしはよくない。食べられるものを粗末にせず、食用になる動物を獲ったなら美味しく味わって食べる。
- ふるさと納税という、人口が増えない地方行政体にとって千載一遇の大チャンスにきちんと乗って、税収が上がってほしいこと。私、横浜に住んでいたときふるさと納税でイノシシ肉をもらってたんですよね。そのイメージです。収入がないと地域がしぼんじゃいますからね。
- 食糧自給率がカロリーベースで38%という恐ろしく低い値。そして有事に経済制裁を受けて悲惨になった国も報道で見てきた。日本が有事になったらまずお肉が食べられなくなる。ジビエの肉を確保できる農業地域は最も住民がひもじくならないだろう。
- ジビエ肉の加工だと、肉うどん、ハンバーグ、カレーなんかは日本中のいろんな自治体でもやっているのだけど、そこに、目が開眼するような目新しいレシピを導入すれば、他の地域よりも頭飛びぬけて話題にもなるし、集客性も高くなる。
- 野山を走り回る肉は健康的で美味しい。健康づくりが地域作りの要の1つなら、健康的な食材を食べることは健康づくりの必須項目で、ジビエ肉にはそのポテンシャルがある。今回の骨つきメチャ旨肉なんて、地域のスーパーのお惣菜に並んだら売れる味ですもの(価格による)。狩猟と加工と販売の回転が定常状態になれば、「美味しい」という地域の笑顔が増えるのだし、私はそういう未来を思い描くのがとても楽しいんですね。
あとは地元の皆さんと料理の会なんか開いて美味しい料理でわいわい盛り上がるのも立派な地域貢献ですよね。世界の料理はこういうポテンシャルに溢れているから、私もわくわくして活動に取り組んでいられます。だからこれからも、日本のほかの誰もできないくらいにジビエ肉の世界伝統料理レシピを蓄積し続けていきます。
今回いただいたお肉は1 gも無駄にせずに完全消費しました。私は本当に楽しかったです。これを下さった優しいご近所さんには心から感謝をしており、今後も交流を宜しくお願いいたします。