イラン料理

+++新着+++

  • 野菜や豆のおかずの項を新設しました!
  • 写真を更新しました!(今後の投稿は、肉のおかず、乳製品などを予定しています)。

【基礎情報】

国名:イラン・イスラム共和国Islamic Republic of Iran、首都:テヘラン、ISO3166-1国コード:IR/IRN、独立国、公用語:ペルシャ語、通貨リヤル

▲目次に戻る


【地図】

イランと大きく国境を接する国は、イラク、トルクメニスタン、アフガニスタン、パキスタンです。南は海に面し、北はカスピ海に面し、コーカサスのアゼルバイジャンやアルメニアトルコとも国境を接しています。

▲目次に戻る


◆ハーブやフルーツを多用する悠久のペルシャの料理

今の国名は「イラン」。でも、長い歴史の中でこの国は長く「ペルシャ」と呼ばれてきました。長い歴史が育んだイラン料理(ペルシャ料理)には、ハーブやフルーツが驚くほど多用されています。日本料理には登場しないような食材、例えばミント、さくらんぼ、ざくろ、オレンジ、ヨーグルト、バラの花びらなどが、米料理や肉料理に使われます。唐辛子をほとんど使わないので辛くなく、香辛料も控えめでスパイシーすぎず、ハーブやフルーツを取り入れたナチュラルな味わいには、一目の価値があります。ターメリックを多用するので黄色い料理が目立ちます。

イランのおもてなし
自宅に招いてくれた新婚さん。おもてなしにはチャイやピスタチオ。(撮影地シラーズ)

地図を見ると分かりますが、イランはとても広い国です。ペルシャ系の人々が主要民族ですが、アラブ系民族も、テュルク(トルコ)系民族も混交し、ここはまるでユーラシア大陸の縮図のようです。これらの民族はいずれももともと遊牧文化を持っているものの、イランには砂漠主体の国と違って四季がある点が特徴で、季節ごとに美味しい作物も採れ、肉も野菜も、そして海に面することから魚も揃っています。

外食産業が提供する料理の幅が狭いため、旅行者には食べるものの種類が少ないと言う人もいます。イランの旅の食事といえば、チェロウポロ(ごはん)、ナン(薄焼きパン)、キャバブ(肉の串焼き)、ホレシュ(煮込み)・・・の連続になりがちです。でも、家庭料理に踏み込めば、イラン料理は幅広い食文化を有していることが理解していけます。
▲目次に戻る

主食 Staple

イランのお米はパラパラとした炊きあがりの長粒種です。シンプルにふんわり軽く炊いたごはんはチェロウチェロウの方法で具を入れたものはポロと呼ばれます。ポロにはスパイスが入り、そのお米のパラパラさから、煮込みや肉類のおかずと大変に良く合います。ゼレシュクと(バーベリー、メギ科ヘビノボラズの赤い実)を散らした美しいごはんはゼレシュクポロと言います。

ポロは、見た目がお米でも、メニューによっては山盛りごはんの中からモルグ(鶏肉の煮込み)が登場して驚くこともあります。イラン人はごはんのおこげが大好きで、おこげができるように真剣にごはんを炊き(ごはんの底にじゃがいもを敷いておこげっぽくすることも)、おこげ部分をターチン又はターディグというおもてなし料理にするほどです。

お米に並ぶもうひとつの主食が、ナン(パン)です。ナンにはもちもちした特大のバルバリ、インドのチャパティーのように鉄板の上で焼くタベ、小石の上で焼くサンギャック、フェルト生地みたいに薄いラバシュなどがあります。イランは家庭でナンを作ることはあまりなく、町中にナン屋が存在します。
▲目次に戻る

野菜や豆のおかず Vegetables & Beans

ゲイメーは、黄色のえんどう豆(この名がゲイメー)という半分に割れた黄色い豆とラム肉やフライドポテトの煮込みです。ゲイメーホレシュの一種です。

このように、イラン人は豆をよく食べます。ほかにも、ショレ(豆や野菜やハーブが煮溶けたとろみあるシチュー)、アダスポロ(レンズマメ炊き込みご飯)、バガリポロウ(ソラマメ炊き込みご飯)などいろいろな豆料理があります。
▲目次に戻る

軽食 Quick Eats

外食の種類の少ないイランでおすすめなのが、サンドビーチ(食パンではなくコッペパンのようなパンを使ったサンドイッチ)です。町中にサンドビーチ屋があり、その具も様々ですが、是非、名物のサンドビーチェマーグズ(羊の脳みそのサンドビーチ)を食べてみてほしいです。
▲目次に戻る

お茶やコーヒー Tea & Coffee

イランといえば、チャイ(紅茶)とナッツ。これはおもてなしの基本であり、数種類のミックスナッツをアジルとも呼びます。特にピスタチオはイランが世界一の産地です。

イラン一般家庭で見た、チャイの淹れ方について。
周辺の国では、「お茶を丁度良い濃さに煮出してカップに注ぐ」のですが、イランでは、「お茶を何時間でも煮出しておいて、カップに注ぐときにお湯で割る」のです。だから、イランの湯沸かしは、家庭でもお店でも、上下二段式です。下段でお湯を沸かし、その上にティーポットやヤカンをセットし、下段から出る水蒸気によって上部でお茶を煮出し続けるのです。

お茶を注いだグラスは茶托(受け皿)に乗せて供されますが、驚くことが2点! 1つめは、グラスのお茶を茶托に移して茶托から飲むこと。2つめは、砂糖を茶に溶かすのではなく砂糖の塊を口の中に入れて無糖の紅茶を口に入れることです。
▲目次に戻る

食習慣 Habits & Customs

イラン人の多くはテーブルで食事をとりません。最近は食堂やレストランでは椅子とテーブルのスタイルも多くなり、旅行者はむしろこのスタイルで食事をすることのほうが多いかもしれませんが、多くの家庭では絨毯の上にビニールのカバーを敷いて、みんなで囲んで食べています。食堂でも、少し高い台を設置してあるところならば、そこに絨毯を敷いてみんなで車座になって食事をとります。
▲目次に戻る

宗教に関連して Food & Religion

世の中のほとんどの国は政教分離政策(政治と宗教の切り離し)をとっていますから、政教一致の国はごく一部しかありません。政教一致の国は、イスラム教国家のイランやサウジアラビア、キリスト教国家のバチカンなどがあります。イランは厳格なイスラム教国家である以上、旅で訪れる人もイスラム教の戒律を理解する必要があり、表向きにはそれらを実行しながらイランを旅することになります。女性は髪を隠し、腰やお尻のラインが分からないような服を着て、バスの中では男女が分離され、お酒や豚肉は絶対禁止です。

また、これを読んで下さったみなさんがイランを旅される際は、ラメザン(断食月ラマダンのイラン口語発音)の時期を外したほうがよいと思います。もともと外食で食べるものの種類が少ない国なのに、厳格なイスラム教国家ゆえ、ラメザン中は日の出から日没まで食事の場は閉店です。
▲目次に戻る


料理名一覧 Food & Drink Glossary

【米の主食】
  • チェロウ・・・ごはん
  • ポロ(پُلَو)・・・チェロウの方法で具を入れたもの
    • アダスポロ・・・レンズマメ炊き込みご飯
    • ゼレシュクポロ・・・バーベリーの実を散らしたごはん
    • バガリポロウ・・・ソラマメ炊き込みご飯
  • ターチン・・・おこげごはん
  • ターディグ(ته دیگ)・・・おこげごはん
【パン類】
  • サンギャック・・・石焼きパン
  • サンドビーチ(ساندویچ)・・・コッペパンのサンドイッチ
  • タベ・・・鉄板の上で焼くパン
  • ナン・・・パン類の総称
  • バルバリ・・・縦スジの入った薄パン
  • ラバシュ・・・フェルト生地みたいに薄いパン
【肉のおかず】
  • キャバブ(کباب)・・・肉の串焼き
  • モルグ・・・鶏肉料理
【豆のおかず】
  • ゲイメー(قیمه)・・・黄色のエンドウ豆
  • ゲイメー(قیمه)・・・黄色いエンドウ豆と肉とじゃがいものの煮込み
  • ショレ・・・豆や野菜のシチュー
【煮込み】
  • ホレシュ(خورش‎)・・・煮込みの総称
【飲み物】
  • チャイ・・・紅茶
【その他】
  • アジル・・・ミックスナッツ
  • ゼレシュク・・・バーベリーの実

▲目次に戻る


Link

▲目次に戻る


ペルシャ料理のポロと同じ語源でインド料理のプラオがありますが、今回のポロは、プラオというよりもビリヤニに似た作り方のような気がします。
お米は半分くらい茹でておいて、ハーブとタマリンドのペーストを焼いた魚に塗りつけ、お米と魚を交互に重ねて30分弱火で蒸しあげる、というものです。

ポロを作る時のこうした炊き方を「チェロ」と呼ぶそうです。
ふわっと軽い炊きあがりだそうですが、まさにそうだと思います。
チェロに対して、湯干し法のような炊き方は「カテ」と呼ぶそうで、カテで炊いたご飯は「ダミ」と呼ぶそうです。