アフガニスタン料理

[last update 2016/06/26]

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アフガニスタン料理の夕食。パロウやコルマやアシュやスイカなど。(撮影地イシュコシム)

バンジャンボラニにレシピリンク挿入!


基礎情報アフガニスタン・イスラム共和国Islamic Republic of Afghanistan、首都カブール、ISO3166-1国コードAF/AFG、独立国(1919年英国より)、公用語パシュトゥー語/ダリ語、通貨アフガニー

◆ここは文化の交差点、山の国の質素な食

南はインド、東は中国、西にペルシャ、北にソ連。アフガニスタンのまわりは大国です。

アフガニスタン料理を語る基礎事項を4点挙げると、1)シルクロードの一部であり隣国から文化の流入があったこと、2)山岳国家であり国内の地理的な障壁が大きいこと、3)部族主義が続いていること、4)紛争国であり干ばつもあり料理の発展が妨げられていること、です。「アフガニスタン」という国は確かにあって、「アフガニスタン」と隣国の国境線は確かに地図に載っています。でも、アフガニスタンの国民はその国境線の中でまとまったことがありません。英国やソ連の介入、タリバン政権樹立、北部同盟による抵抗、2001年からのアフガニスタン紛争・・・。外の国に翻弄されているだけでなく、内部民族も群雄割拠で、国が統一されないのです。それが、「アフガニスタン」です。

「人々はアフガニスタンという国名やアフガン人という呼称を表面上は持っているが、自分がそのような者であるという共通の信念があるわけではない。彼らはまだ、自分たちの部族を、アフガニスタン国民という大きな集団的アイデンティティの中に溶け込ませようとは思っていない。」
 -「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」モフセン・マフマルバフ より引用。

アフガニスタンは200年以上前にペルシャ(イラン)から独立し、100年以上前に英国によって国境が確立しました。わざと民族が分断するように国境線を引き、紛争の大きな要因となりました。アフガニスタンにはおよそ20もの民族がいると言われていますが、紛争期間が長く総人口すら分からない状態なので、出典によって数値はかなり異なるものの、
1)パシュトゥン人 40~60% ペルシャ系、隣国パキスタンでは1割を占める。
2)タジク人 30% ペルシャ系
3)ハザラ人 10% モンゴル系
4)ウズベク人 10% テュルク(トルコ)系
5)その他
という民族プロファイルを見せています。

アフガニスタン料理を本当に理解するためには、これら各民族が分布する土地ごとに理解していかなければならないと思いますが、アフガニスタンは本質的に農耕と遊牧(牧畜)経済とはいっても農地に適した土地はわずか7%だけ。中央アジア(ウズベキスタンなど)と同様、食べるものの種類は多くないのではないかという印象すらあります。

アフガニスタンの主食はナンです。小麦粉で作る平たくて大きな釜焼きのパン。形は、中央アジアのリピョーシカのような円盤状だったり、イランのバルバリのような波形状で薄く長いパンだったり、インドやパキスタンのナンのような大きい薄い円盤状だったり、さまざまです。ナンを焼くために土間に釜を持つ家もたくさんあります。

米も食べられています。パロウ又はパラウといい、長粒米を玉ねぎや油、トマトなどと炊き込んで食べます。バターや油の香りがよいイランのポロと共通するパロウから、ウズベキスタンのプロフや中国新疆のポロにそっくりの、にんじんと油をたっぷり使って炊き込んだパロウもあって、ごはん1皿からもアフガニスタンがペルシャ系とテュルク系(トルコ系)の接点であることを感じるのです。

おかずの代表格は、コルマです。玉ねぎ、トマト、香辛料で煮込んだ、とろっと、もったりとした煮込みです。裕福バージョンは肉入りですが、豆だけのコルマも、じゃがいものコルマもあります。お隣パキスタンは流石に元インドということもあって、パキスタンのコルマはスパイシーカレーですが、アフガニスタンのコルマはスパイシーなコルマから塩味に近い質素なコルマまでさまざまです。ナン(釜焼きパン)をちぎってコルマの具をすくってたべたり、コルマをパロウにかけた、いわゆる「ぶっかけ飯」にして食べたりします。

日本人がアフガニスタンのコルマを「シチュー」や「カレー」と呼ぶならば、「スープ」と呼ばれるような汁物がショルバ(ショルワ)です。じゃがいもやにんじんや玉ねぎ、トマトや肉類。作る人によっていろんなショルバがあります。ウズベキスタンのシュルワ、トルクメニスタンのシュルパと語源が一緒なのは明らかで、これもテュルク系(トルコ系)の料理の流入なのでしょうか。なお、味噌汁など日本語の「シル」も同じ語源であるとする説を私は支持しており、その起源はどこなのか、大いに興味があります!

肉の煮込みはまた「グシュトゥ」とも呼ばれます。グシュトゥはダリ語で肉という意味で、単にグシュトゥと言えば「肉の煮込み」を指します。

肉の串焼き「カバブ」もアフガニスタンではポピュラーな料理です。遊牧民文化圏では、肉の串焼きは定番です。アフガニスタンの中だけでなく、東西南北どの方向の隣国でも、肉の串焼きは国民食です。タジキスタンやウズベキスタンなどソ連構成国だったところではシャシリークとも呼ばれます。イランではキャバブとも呼ばれます。

アフガニスタンには、生野菜が頻繁に登場します。パキスタンから国境を越えたとしても、タジキスタンやウズベキスタンから入国したとしても、これは驚く食文化の変化と感じるはず。バザール(市場)に行って野菜を買ったり、また野菜を自分で育てたりして、大根、きゅうり、トマト、ディル、レタスなどの盛り合わせが食卓にのぼります。野菜はパキスタンと同様「サブジ」と呼んだり、ロシア語同様(※お隣ウズベキやタジクもロシア語圏です)「サラタ」と読んだりしますが、ともあれ、サラダは、その土地柄や季節を感じるよい料理ですね。

トルシーと呼ばれる酢漬け野菜もあります。イラン、イラクやシリア、離れたところではエジプトにも同様の料理があります。

アフガン料理の代表格でもある「ボラニ」は、小麦粉を練った生地の中にゆでじゃがなどを入れて、平らに伸ばして焼いたもの。インドやネパールで言う「アルパロタ」によく似た料理です。

「ボラニ」っぽく聞こえるが違う料理もあります。イランやトルコでは、ヨーグルトの和え物をボラニと呼ぶのですね。上述した「お焼き」のボラニとの接点は良く分かりませんが、アフガン料理で知られるバンジャンボラニは、焼きナス(ナス=バンジャン、周辺国ではバジンジャンだがアフガンではジが無音となる)をヨーグルトで和えた人気料理です。

「アシュ」はイランやアフガニスタンでポピュラーな麺料理です。小麦粉を打って麺にしてゆでて(市販のスパゲティー乾麺を使ってもよい)、スープやヨーグルトと合わせて食べる料理です。不思議なことに、イランやアフガンの「アシュ」は、タジキスタンでは(同じペルシャ系民族なのに)「オシュ」という名の「炊き込みごはん」になるから面白い。アフリカのスーダンやチャドにも広がる「粉を湯で練ったもの」は「アシ(アシード)」と呼ばれ、エジプトの薄いパンは「アエーシ」と呼ばれる。私は、「アシュ」とは、「命を支えるもの(主食となる炭水化物類)」という意味で形を変えて世界各国に存在するのではないかと思っています。トルコ語の「アシ」もペルシャ語の「アシュ」にもそんな意味があります。ただそれが、アフガニスタンの食習慣では、「アシュ」は麺料理を指すのだと思うのです。

遊牧民の文化もアフガニスタンの基盤の1つですから、乳製品はアフガニスタン料理にとって大事なものです。私が連れて行ってもらったアフガニスタンの家庭では、おもてなしに、ナン(釜焼きパン)とパーイ(ずばりヨーグルト、チャカとも言う)が出されました。また、中央アジアやモンゴルと同様に、羊の乳からバター分を取ったあとに丸く乾燥させた「保存用ヨーグルト」があり、「クルト」と呼ばれます。クルトを水で戻すと再びヨーグルト状の液体が得られます。この「クルト」を使った料理(もちろんあれば新鮮なヨーグルトを使ってもよい)に、「アシャック」があります。野菜を詰めたワンタンのようなものを、ミートソースとヨーグルトをかけていただく料理です。

マントゥもアフガン代表料理です。日本語で「餃子」、中国語で「饺子(チャオズ)」、そして韓国で「マンドゥ」、中央アジア各国で「マントゥ」又は「マンティ」。だからアフガニスタンの「マントゥ」は、その料理が中国の方面から流入してきた形跡を示すような気がします。ネパールやインドでは「モモ」ですね。ともあれ、中身は肉だったりじゃがいもだったり玉ねぎだったりし、油をかけたり、黒こしょうをたっぷりふったり、ヨーグルトをかけていただいたり。どれもとても美味しいものです。ネパールやインドのようにトマトチャツネのようなタレをかけて食べることもあります。

更にアフガニスタン料理が中央アジアやイランと似ていると思う点の1つが、フルーツの素晴らしさです。ザクロ、アンズ、ブドウ、桑の実、アーモンド、ピスタチオ、さくらんぼ、桃、イチジク、スイカ、リンゴなどがあります。ドライにできるものはドライフルーツにして長期保存をきかせ、そして、お客がきたら、これらドライフルーツやナッツを盛り合わせて、お茶とともに供し、もてなすのです。赤いアフガン絨毯はペルシャ絨毯と同じ文化の表れです。この絨毯で、車座になって皆でドライフルーツを食べてみれば、アフガニスタンに来た感激が大きく感じられます。お茶は「チョイ」、うち緑茶はチョイサーブス、紅茶はチョイシオと呼ばれます。

というわけで、アフガニスタン料理を語ると、どれも必ず、国境を接するどこかの国の料理との共通点があることが分かりました。アフガニスタンと国境を接する国は6つ。ペルシャ系のイランとタジキスタン、トルコ(テュルク)系のトルクメニスタンとウズベキスタン、ほんのちょっとだけ接する中国(中国の中でもタジク人の居住地域と接している)、そして、インド系のパキスタンです。今アフガン料理には、質素で素朴な中にも、確実にそれら大国の影響が表れています。ただし、厳格なイスラム教国であるので、豚肉やアルコール類はまず見かけないと思ってよいでしょう。

アフガニスタンが、安全に平和に旅できる国に、早くならないかな。
そうしたら、アフガニスタン各地にあるチャイハナ(茶飲み処)で伝統的なアフガニスタン料理やお茶を楽しんで、食事をしたまま皆で雑魚寝する、ときどき現地の人の家に泊めてもらって、一緒に家庭料理を楽しむ。そんな旅をしたいものです。

男性の衣装、女性の衣装、全部素敵で、
泥壁の家、泥壁の釜、どれもエキゾチックで、
空が青くて空が広くて、山と雲が白くて、すがすがしい。

何より、人々が、本当に温かくて優しい。
戦争の苦しみと共に生きる人々は、“様々な痛みが分かる人”は、本当は皆優しい。
アフガニスタンは、そういう国です。

最後に。
「アフガニスタン紀行 モゴール族の村を求めて」という京都大学文化人類学者の本を読みました。カブールからバーミヤン、北部国境方面をめぐり、西部ヘラート、そしてまた戻って南部カンダハルというルートの記録を綴っています。そこで出てくる食べ物は、ひたすら「ナン」と「ローガン」です。ローガンは羊のお尻の脂身です。

ナンと、ローガン(脂身)。・・・それは我々日本人にとって「飯と漬物」?
砂っぽい大地で生きるアフガン人の、命をつなぐ基本の食を、その本で見たのでした。

◆アフガニスタンに行ったら、これ食べよ♪

【主食系】
・アシュ・・・スープ麺。
・アシャック・・・野菜ワンタンにミートソースとヨーグルトをかけたもの。
・ナン・・・釜焼きのパン。
・パロウ・・・油や塩、肉や野菜の炊き込みごはん。
・ボラニ(ボロニ)・・・小麦粉を練った生地でじゃがいもなどの具を挟み焼きにする。
・ボラニ(ボロニ)・・・ヨーグルトの和え物。
 ┗バンジャンボラニ・・・焼きナスのヨーグルト和え。
・マントゥ・・・肉やじゃがいもで作る餃子又はシュウマイ風。

【ナンやパロウの友】
・カバブ・・・ 肉の串焼き。
・グシュトゥ・・・肉の煮込み。
・コルマ・・・シチューやカレー的煮込み料理。野菜、豆、肉など具の種類は様々。もったりしている。
・シュルバ・・・スープ。さらっとしている。

【その他】
・クルトゥ・・・乾燥ヨーグルトボール。水で溶いて使う保存食。
・サラタ・・・生野菜盛り合わせ。
・パーイ・・・北部の言葉で言うヨーグルト。

【飲み物】
・チョイ・・・茶
 ┗チョイサーブス・・・緑茶
 ┗チョイシオ・・・紅茶


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アフガニスタン料理」への5件のフィードバック

  1. やふーじゃ より:

    アフガニスタンイイね☆

  2. 隣国パキスタンのウルドゥー語で「ローゴン」は油のことで主にごま油を指します。ゴマ油を塗ったほんの少し分厚いナンを「ローゴニー ナン」と呼んでナーンバーイーが売っていました。

  3. あづさ より:

    教えてくれてありがとう感激しました!!ごま油ですね。覚えます!

  4. アーヤ より:

    アフガニスタン人の私よりも詳しいですね。
    びっくりです。
    小麦粉を練った生地でじゃがいもなどの具を挟み焼きにするボラニの方の発音は bolani です。
    バンジャンボラニの方の発音は borani です。burani でもいいです。
    違いはLとRです。
    日本人にLを発音できない人が多くて同じに聞こえるかもしれない

  5. アーヤさんありがとう。とても嬉しいです。
    アフガン大好きです。
    お友達になりたいo(^-^)o
    またアフガン料理を教えてください。

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