クウェート料理

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【基礎情報】

国名:クウェート国State of Kuwait、首都:クウェートシティー、ISO3166-1国コード:KW/KWT、独立国(1961年英国保護国終了)、公用語:アラビア語、通貨:クウェートディナール

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【地図】

クウェートはペルシャ湾に面したアラビア半島の小国です。北西から北にかけてイラク、南西から南にかけてサウジアラビアと接しています。ペルシャ湾を挟んだ先にはイランがあります。

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◆伝統アラブとモダンアラブとインターナショナル

世界を代表する産油国、クウェート。首都クウェートシティーを歩くと、未来世界のようなデザイン都市や、高層ビル群の摩天楼に圧倒されます。道路や車や建物などいろいろなものが綺麗で新しく、巨大な石油プラント群は国の豊かさの象徴です。でも、探せば伝統的なものもちゃんとある。スパイスや鮮魚がむきだしで積まれるスーク(市場)に、アラブ装束の男性たちが絨毯に集う昔ながらのアラブカフェ。お祈りや断食月や飲酒禁止などのイスラム教に基づく生活習慣は今も徹底して行われています。クウェートの文化は、伝統アラブと、モダンアラブと、インターナショナルの混交です。

クウェート
近代ビルディングの中にも、伝統的なアラブのカフェ(撮影地クウェートシティー)。

西アジアの地図を見ると、有名なチグリス川とユーフラテス川の河口の南に小さな国があります。そこがクウェートです。

クウェートは国土のほとんどが砂漠です。目と鼻の先はすぐペルシャ(現イラン)で、歴史の中ではアラブになったこともペルシャになったこともありますが、基本的に漁村というか不毛の地。18世紀にナジュド(現サウジアラビア)からサバーハ家が移住してからはポートシティーとして繁栄し、貿易、商業、漁業、真珠産業などで栄えました。今も首長家はサバーハ家であり、300年近くにわたり一族で政治を司る、事実上一族独裁による絶対君主制国家です。

クウェートは地理的にイラクの足元にあり、歴史的にもずーっと正式にイラク内の一地域だったのですが、オスマン帝国領時代の英国介入のあたりから英国に口説かれて、オスマン崩壊後にイラクが独立国になるときも英国はクウェートを手渡さず、最終的に英国が手を引いたあともイラクとクウェートが別々の独立国のままという状況がイラクからしたら許せない。イラクは眈々と奪回の時を待ち、1990年にクウェートへ侵攻したのが湾岸戦争の始まりです。大部分の国民が国外退避し、クウェートの油田が攻撃されて火災炎上、国土も荒れました。しかしそのような湾岸危機を乗り越えて復興した今、クウェートは冒頭の通り息をのむモダンなビューティフルカントリーです。

クウェート料理を理解するためには、「典型的な湾岸諸国の食文化」を理解しましょう。よく出てくる「ガルフ」という単語は「湾」という意味で、アラビア湾(ペルシャ湾とも呼ぶ)を指します。湾岸諸国(ガルフ諸国)とは、クウェート、バーレーンカタールUAEといったアラビア湾岸のアラブ側の国を指します。もともと住民はアラブ人のイスラム教徒で、石油が採掘される前は土着のアラブ料理や近隣のペルシャ文化の影響を受けた料理を食べていました。

ざっと100年前にアラビア湾に石油が発見され、この100年で彼らの社会は莫大な富により変貌しました。オイルマネーで湾岸諸国は急発展し、諸外国の労働者が多数流入します。南アジア人(インド人、パキスタン人、バングラデシュ人など)、フィリピン人、国外アラブ人(エジプト人、レバノン人、パレスチナ人など)が多く、どこも自国民比率が少ない(例:クウェートにおけるクウェート人比率は30%(2018年)、カタールにおけるカタール人比率は13%(2017年)等)という国民プロファイルが形成されます。外国人だらけなので料理はおのずと国際色が豊かになります。インド料理やパキスタン料理は定番で、エジプト料理もレバノン料理も、アラブ各地のファストフードもすっかり日常食です。そもそも自国民はオイルマネーで潤っていて超裕福で、自宅ではメイドの作る外国料理も食べるし、外に出れば(イスラム規則の範囲内で)世界中の料理が食べられる状態です。テイクアウェイもデリバリーを含めて外食産業も発達しています。どこも砂漠がちな国で作物があまり採れず食糧自給率は低いけれど、主食の小麦や米をはじめ、世界各地からたくさんの食糧が輸入されています。

国民の生活習慣や法律はイスラム教に則っており、豚肉やアルコール禁止(※規制度合いは国による)の食生活を送ります。イスラム圏はもてなしの文化が強いのですが、シリアやエジプトなどでは客人にシャイ(紅茶)をふるまうところ、湾岸諸国ではアラビアコーヒーとナツメヤシの実がもてなしの定番です。

クウェート料理とは、こういった「典型的な湾岸諸国の料理」そのものです。バーレーン料理やカタール料理などと似ていて当然。モダンとインターナショナルだけでなく、伝統アラブもしっかりと共存していて、クウェート料理を知れば知るほど、アラビア半島の歴史をも学べるのが有意義です。

以下各論では、食材別にクウェート料理を記載していく予定です。
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