ブータン料理


+++新着+++
・ゾンカ文字について解説リンクを挿入しました。
私の趣味は世界の言語!今はゾンカ語|あづさDIARY


基礎情報ブータン王国Kingdom of Bhutan、首都ティンプーISO3166-1国コードBT/BTN、独立国、公用語ゾンカ語。通貨ヌルタム

◆ヒマラヤ山麓の、伝統文化の守られた夢の国。

ヒマラヤの山麓のブータンは山岳地帯。北はチベット(中国)、南はインドです。

ブータンは、英国との争いに負けて平野部を失い、国土のほとんどが山岳地帯です。植民地になっていたらおそらくインドになっていたでしょうから、今の「ブータン」が山岳国家として存在することは、植民地化を回避した歴史の上に立つ、ブータン最大の特徴の1つです。首都ティンプーの標高は2400m、さらに標高4000m級のところにも人が居住しています。北はチベット、西はシッキム(今はインドに併合されたチベット仏教の国)に隣接するブータンは、文化や風習はチベットの影響を色濃く受け、ブータン独自の風習も根強く残しています。近年まで鎖国政策を敷いていたブータンは、今も自由きままな旅行をすることは不可能という国ですが、だからこそ数々の伝統文化が残されています。偉大なる農業改革を続けた西岡氏の功績、インドとつながる車道が出来たここ50年の物流、鎖国が解かれて押し寄せる規制緩和など、様々な要素によって、今もブータン人の食生活は変化を続けています。

ブータンの文化はチベット仏教の文化が土台です。チベットの料理には中国本土から麺や餃子が流入しており、それがヒマラヤを越えてブータンやネパールの伝統料理にもなりました。その代表例として、「トゥッパ」と総称される麺類があり、そのうち手打ち麺は「バトゥー」と呼ばれます。乾燥牛肉をゆでて戻して具にしたビーフバトゥーなどがよく食べられます。また餃子にそっくりの食べ物は「モモ」と呼ばれます。ブータン人は「エゼ」という唐辛子の薬味をつけてモモを食べます。ただ、中国本土では乳製品をあまり使用しない一方で、チーズを多用するブータンでは、「チーズモモ」(チーズが具の餃子)の存在が特徴的です。チベット料理には欠かせないスジャ(バター茶)は、ブータンでも変わらず定番の飲料で、おもてなしの場でも供されます。お茶請けには、ザウ(炒り米)、シップ(米をつぶして乾燥させたもの)、ゲザシプ(トウモロコシをつぶして乾燥させたもの)などがあります。

ブータン人の主食は米。特に、パロなど西部では、標高が高いにもかかわらず、日本人の農業改革の成果から稲作が盛んです。ブータン人が好むのは「レッドライス」という薄赤い米で、粘り気は少ないけれど食べると意外ともちもちしていて美味しいです。他の料理もそうなのですが、標高が高いので、炊飯は圧力鍋を使って行われます。

山岳地帯で作物が限られ、チベット仏教の質素な食事、鎖国状態で外国の食材が輸入しにくいなどの条件が重なり、ブータン料理といえば、食べる食材が、他国と比べても少ないほうだと思います。それゆえ、1日3食を基本とするブータン料理では、朝も昼も夜も「ごはんとチーズと唐辛子」が食卓に上ります。ブータン産唐辛子はあまり辛くないので、保存のきく野菜、そして「ごはんがすすむおかず」という位置づけでしょう。唐辛子(ゾンカ語でエマ、英語でチリ)を使ったおかずは、たくさんありますが、唐辛子が主役のおかずとしては、「エマダチ」という唐辛子のチーズ絡め煮に、「エゼ」という唐辛子の付け合せ。「エゼ」は生唐辛子のみじん切りだったり火が通っていたりさまざまなバージョンがあり、たいていのブータン料理に添えられています。

都市部に住む一部の人を除き、ブータン人のほとんどは農家で、各家庭に家畜がいます。ブータン人70万人に対し乳牛が30万頭、ヤクが4万頭もいます。特にヤクは、牛が生きられない標高4000m級の地方でも生きる貴重な家畜です。牛やヤクが子育てをする夏の時期に生乳を搾乳し、バターやチーズを作り、保存食としています。乾季に入る秋には牛やヤクの肉を軒先にずらりと干す、冬の間の保存食づくりの光景も見られます。

ブータン料理
ヤクシャ、レッドライス、エゼ、ダル。ヤク肉の唐辛子煮は貴重な体験。(撮影地ドゥンドゥンイサ)

厳しい気候のブータンではいつも生肉が手に入るわけではなく、「干した」という意味の「スィッカム」という状態の肉(豚肉ならパクシャスィッカムと呼ぶ)にして肉を保存しています。干した肉と同じ呼び名ですが、その干し肉から作る唐辛子と大根等の炒め物も、豚肉ならばパクシャスィッカムと呼ばれます。生の肉でも干した肉でも構わず広義で総称するならパクシャパーとも呼ばれます。

牛肉、豚肉、鶏肉のいずれも、チベット仏教では禁忌にはなりません。したがって、野菜のあまり採れないブータン料理では肉類がよく食べられます。肉は「シャ」と言いますが単独ではあまり使わず、豚肉はパクシャ、牛肉はノシャ、ヤク肉はヤクシャ、鶏肉はジャシャと呼ばれます。肉料理の代表選手は「パクシャパー」という、豚肉スライスと大根と唐辛子のシンプルな煮物です。これを牛肉やヤク肉で作れば「ノシャパー」や「ヤクシャパー」になります。

一方で魚肉は「ニャシャ」と呼ばれ、魚のぶつ切りを唐辛子と煮込んだ料理などがありますが、ブータン人は魚はあまり食べません。川には有害な成分が流れているからだと言うブータン人もいます。

また、米があまり採れない中央部や東部ではソバやトウモロコシが主食になります。特に中央からやや東のブムタン地方ではソバ栽培が盛んで、「プタ」というソバ粉の押し出し麺や、「クレ」というソバ粉のパンケーキがあります。

さて、次に、インドの影響についてですが、ブータンの南に接するインドとは、20世紀後半になり、自動車道がつながりました。そしてインドの食材が首都にも流入するなど、ブータンに大きな食文化の変化がもたらされました。例えばガジャ(ミルクティー)はインドのチャイと同じ、ダル(豆シチュー)はその名前もインドでの呼び名と同じです。寒い高地の食堂では食べるものを注文するとお湯が供されますが、それはインドのヒンディー語と同じく「タトパニ」と言います。しかし何よりもインドの影響が強いのは、「インドチリ」と呼ばれる辛い唐辛子ではないでしょうか。本来ブータン産唐辛子はあまり辛くないものですが、安価なインド産唐辛子が流入するようになり、唐辛子を多用するブータン料理は一層辛い料理になったのです。

酒は、「チャン」と総称され、米、麦、トウモロコシなどをもとに伝統的に自家醸造されています。どぶろくのような濁り酒は「シンチャン」、蒸留酒は「アラ」です。また、禁煙国家ブータンでは、(食べ物ではありませんが)「お口の恋人ドマ」は重要な嗜好品です。熱帯アジアではよく見られる、キンマの葉でビンロウジュの実と石灰を包み、口の中で咀嚼し、酩酊感を楽しむもので、ブータンでも道端には吐き捨てられた真っ赤な唾液がいたるところで地面を染めています。

最後に「ニシオカライス」に触れない訳にはいきません。ブータンでドライバーとして私の旅を共にしてくれたブータン人は、ブータンの旨い白米を「ニシオカライス」と言い、誇らしげに私に食べさせてくれた。ブータンのコメ作りを飛躍的に発展させた日本人である故西岡京治(にしおかけいじ)氏はブータン国王から「最高に優れた人」を意味する「ダショー」の称号を贈られた当時唯一の外国人で、28年間ブータンの農業改革に尽くし、いくつもの野菜に加え、日本米の導入にも成功した人です。今のブータンの食生活は、食べるものの種類は少なくても、豊かであると思います。そこには西岡氏の業績が多大にあらわれています。

ブータンに行ったら、きっと、ブータン人のおもてなしの心の数々に感動を覚えることでしょう。家庭や食堂で、お腹がいっぱいになるまでおかわりでもてなされる習慣に、ついつい断りきれないかもしれません。お腹がいっぱいになったときの「ミシュ、カディンチェ」(もう要りません、ありがとう)は、本当によく使う言葉です。でも、ブータン人の好意を受け、是非お腹いっぱいブータン料理を楽しんできてください。

もうひとつ、Kuzu Zang Pola(クズザンポーラ、こんにちは!)の言葉と共に!

◆ブータン行ったら、これ食べよ♪

ゾンカ文字への取り組みについてはこちら。
私の趣味は世界の言語!今はゾンカ語|あづさDIARY
【唐辛子系】
・エマダチ・・・唐辛子のチーズ絡め煮
・エゼ・・・唐辛子でできた付け合せ。生唐辛子を刻んで調味したり、火を通したりとバリエーションさまざま。
・ホゲ・・・生野菜とエゼ(唐辛子付け合せ)を混ぜたサラダ。

【チーズ系】
・ケワダチ・・・じゃがいものチーズ絡め煮
・シャモダチ・・・きのこのチーズ絡め煮
・チュゴ・・・ブロック状の干しチーズ。固いミルクキャンディーのよう。

【肉・魚類】
・ノシャパー・・・牛肉スライスの、たいてい唐辛子の入った炒め煮。
パクシャスィッカム・・・干した豚肉の、たいてい唐辛子の入った炒め煮。
・パクシャパー・・・豚肉スライスの、たいてい唐辛子の入った炒め煮。
・ヤクシャパー・・・ヤク肉スライスの、たいてい唐辛子の入った炒め煮。

【米、ソバ、穀物の加工品】
・クレ・・・そば粉のパンケーキ。甘くない。
・ザウ・・・いり米
・シップ・・・米をつぶして乾燥させたもの。
・ゲザシプ・・・トウモロコシをつぶして乾燥させたもの。
・ト・・・ゾンカ語。日本語のごはんと同じ。炊いた米を指したり、食事全体を指したりする。
・ニシオカライス(Nishioka Rice)・・・故西岡氏がブータンでの生育を成功させた日本米。
・プタ・・・そば粉の押し出し麺。油と唐辛子で炒めて食べる。
・レッドライス(Red Rice)・・・パサパサした赤米。ブータン人はこれを好む。

【その他の食べ物】
・ギュマ・・・腸詰め。山椒粉が入ってヒリヒリする味わいのものもある。
・ダル・・・豆のポタージュ風。
・ティンゲ・・・中国の山椒。卓上調味料としても根付いている。エゼや麺類の風味づけに。

【飲み物】
・ガジャ・・・ミルクティー。インドのチャイと同じ。
・スジャ・・・バター茶。油が浮いて肉の味がする。こってり味のホットドリンク。
・タトパニ・・・お湯。寒いブータンの食堂で供される。
・レッドパンダビール(Red Panda Beer)・・・中央部ブムタン特産の地ビール。


本記事、レシピ内容及び写真の著作権はすべて管理人:松本あづさにあります。読んでくれた方が実際に作って下されば嬉しいですし、料理の背景やTipsなど、世界の料理情報の共有を目的として、大事に作成しています。
出典URL付記リンクを貼れば小規模な範囲でOKなこと】
・ご自身のサイト、ブログ、FacebookやTwitterにおける情報の小規模な引用や紹介。
事前連絡出典明記をお願いします】
・個人、団体、企業等の活動や出版等で、当サイトおよび当管理人のもつ料理レシピや写真を活用・使用したい場合。
事後連絡でもよいのでお寄せ下さい(楽しみにしていますので)】
・小学校や中学校の宿題や課題で当サイトを活用してくれた生徒さん。
ご遠慮ください】
・大々的なコピペや読み込み、出版物への無断転載。
・営利目的や利益が生じる手段での無断使用。
※免責事項:上記の引用に基づいて万が一損失・損害がありましても、対応はユーザーご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。