ネパール料理

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  • 国名をネパールに変更しました(2020年まではネパール連邦民主共和国でした)。
  • 公用語を現行に修正しました。

【基礎情報】

国名:ネパールNepal、首都:カトマンズ、ISO3166-1国コード:NP/NPL、独立国(1768年ネパール統一)、公用語:ネパール語、通貨:ルピー

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【地図】

ネパールは内陸国で、北はチベット(中国)と接し、南、西、東はインドと接しています。

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◆北インド平原のカレー文化と山岳チベットの粉食文化の中継地点

澄んだ青空にヒマラヤが神々しく浮かび上がる。ネパールはヒマラヤ山脈の南麓に位置する国です。北はチベット(中国)、南はインドに接し、ネパールの人や文化には随所にアーリア人(Indo-Aryan)とチベタン(Tibetan)の二面性が見られます。それぞれ、宗教はヒンドゥー教と仏教、料理は北インド系のカレーとチベット系の餃子やうどん、菜食主義者が多い文化と野菜が少なく肉や乳に依存する文化、酒を飲まない文化と飲酒慣行文化、といった具合です。ネパールはそれらの融合のみならず、長らく都市社会を作ってきたネワール族の水牛料理なども見事です。小さな国ですがいろんな人と文化があり、美味しい料理にたくさん出会えます。

ダルバット
国民食のダルバット(ダルバート)はカレーやおかずのワンプレート盛りです。(撮影地ポカラ)

ヒマラヤ山脈は地球で最も標高が高い地域で、その北はチベット(中国)の広大な高原があり、南麓にはネパール、シッキム(インド)、ブータンといった国や地域が連なります。寒さが厳しい高地山岳地帯ゆえ人は住みにくいと思われるかもしれませんが、チベタン(チベット系民族)によるチベット仏教を礎とする文化が育まれました。

ネパールの国民食はダルバットトルカリ(またはダルバートトルカリ)ないしダルバット(ダルバート)。全国的に日常的に食べられているもので、ダル(豆ポタージュ)、バット(又はバート、ライス)、トルカリ(カレーのおかず)、サグ(青菜の炒めもの)、アチャール(漬物)、チャタニ(薬味のタレ)のセット総称です。このようにカレーがごはんのおかずですから、誰が見てもネパール料理は北インド料理に似ていると思うことでしょう。その理由はただ単に隣の国というだけじゃない(例えばブータンもインドの隣国だが随分毛色が違う)。ネパール料理がインド料理に似ているのは、ネパール統一王朝が敷いてきた「ネパール化」の結果の一端です。

かつてネパールを統一した王朝は、多民族国家にも関わらず民法でネパール全土にヒンドゥー教の基礎文化を敷き、文化的統一をも推進しました。具体的には、ジャート(カースト、※)制度導入、ヒンドゥー語に似たネワールの言葉をネパール語とし、ヒンドゥー語と同じデーヴァナーガリー文字(हिंदीみたいな文字)を公式に使ってきました。結果、チベット仏教を礎とする地域なのに、今や国民の大多数がヒンドゥー教徒です。

※カースト制度:インドで生まれた身分的階級制度。

ヒマラヤ山脈は人の移動の障壁ですから、ネパールの強大な市場アクセスは南に接するインドにあります。食糧も生活物資も相当量がインドから運ばれ、インドからの輸入に強く依存している現状です。チベタンも多く住むものの、主要民族はインドから北上してきた大量のヒンドゥー教徒(カス族、※)ですし、物も人も生活も経済もインドと結びついているのですから料理もインドに似て当然です。菜食主義者が多く、牛肉は忌避され、料理は香辛料を多用するから日本人はそれを「カレー」と呼びます。なおネパールでは生姜や香辛料を自国で生産しており、カレーはなかなか美味しいです。

※ネパールのカス族はパルバテヒンドゥーとも呼ばれ、ネパール人口の半分以上を占める支配的グループであるが、国勢調査や統計では細分化されるためこの名前は表に出ない。

チベタンの代表的料理は、モモ(餃子またはシュウマイ)、トゥクパ(うどん)やテントゥク(平麺またはひっつみの汁物)など。ツァンパ(麦こがし)とスーチャ(塩入りバター茶)も伝統料理です。ネパールでは、1つのお店がカレーとトゥクパの両方を提供したりもし、インドの料理とチベタンの料理はどちらも国民食の位置づけを確定しています。

さて、ネパール料理を学ぼうとするとき、いきなりタカリとかネワリなどの名前が出てくると難しいですよね。だから、ネパールの料理を理解するために、まずは大雑把に「北インド料理」と「チベタン料理」の二本柱を軸にして、要は「カレーと粉モンが共存する」と理解するとよいです。

そして次の段階として、ネパール料理の構成要素を以下のように把握するとよいでしょう。

  1. カス族の料理。人口の半分以上を占めるヒンドゥー文化の料理。カレーなど香辛料料理。ネパール全土に根付くダルバット
  2. チベタンの料理。ヒマラヤ高地の料理、ヤク肉やヤクのチーズ、バター茶などが特徴。
  3. タカリの料理。ヒマラヤのやや低い位置の料理。ヒンディーより肉類をよく食べる。タカリの看板は美味しさを示すブランドでもある。
  4. ネワールの料理。都市部(盆地)の料理。チョエラ(肉マリネグリル)やサプミチャ(骨髄炒め)など水牛料理や儀式の料理に長ける。
  5. その他(チョウメン(焼きそば)やフライドライス(焼きめし)など中国料理、路上スナック等)

最後に。
ネパールといえば、不安定な政治状況が続き、道路や電気インフラも不足し、特に農村部の貧しさが顕著で、海外への出稼ぎ労働者が後を絶ちません。世界中でインド料理店は人気ですが、インド料理店のオーナーやシェフは実はネパール人(それからバングラデシュ人)という図式も多々あります。ネパール人の作る料理は美味しいのでしょう、インド料理店という看板のもとで、彼らは世界中で調理の腕をふるっているのです。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary

【主食類】
  • チョウメン・・・焼きそば
  • ツァンパ・・・麦こがし
  • テントゥク・・・平麺またはひっつみの汁物
  • トゥクパ・・・うどん
  • バート・・・ライス
  • バット・・・ライス
  • フライドライス・・・焼きめし
  • モモ・・・餃子またはシュウマイ
【肉のおかず】
  • サプミチャ・・・骨髄炒め
  • チョエラ・・・肉マリネグリル
【野菜のおかず】
  • サグ・・・青菜の炒め物
【豆のおかず】
  • ダル・・・豆ポタージュ
【飲み物】
  • スーチャ・・・塩入りバター茶
【その他】
  • アチャール・・・漬物
  • チャタニ・・・薬味のタレ
【総称】
  • ダルバート・・・ごはん、おかず、汁などのセット総称
  • ダルバット・・・ごはん、おかず、汁などのセット総称
  • ダルバートトルカリ・・・ごはん、おかず、汁などのセット総称
  • ダルバットトルカリ・・・ごはん、おかず、汁などのセット総称
  • トルカリ・・・カレーのおかずの総称

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