エマダチか、エマダツィか。答えは両方。

2015/09/01

ヒマラヤ山脈の南麓に、ブータンという素敵な国があります。

深くチベット仏教に根差した国。

ブータン

人々の衣類も伝統的で素敵です。

ブータン

ブータンは唐辛子をよく食べる国で、その国民食に、「唐辛子のチーズ絡め」があります。

ブータン

この料理。料理名は、「エマダチ」でしょうか? 「エマダツィ」でしょうか?

正しく知りたい。
だから私は、2日ほどデスクに徹して、ゾンカ語(ブータンの公用語)を勉強しました。

* * *

まず、文字を書き、子音と母音を頭に入れました。

ゾンカ語

専門の書籍を持っていないので、ネットで以下のサイトを中心に勉強しました。ゾンカ語と近親関係にあるチベット語のほうが情報量が多いので、チベット語で仕組みを学んでいるところもあります。以下のサイトからは、特に文字に関連するところは全部読み、それから、文字の組み立てについてはかなり真剣に全体を網羅し、手でひたすら書いて細部まで理解し、-それでも不慣れだから身についていないけれど- 文字を読解できるようにしました。

・English-Dzongkha Pocket Dictionary(≫こちら
・ゾンカ語表現集(≫こちら
・ゾンカ語基礎語彙集(≫こちら
・Dzongkha Development Commission 2018(≫こちら
・A classified lexicon of Standard Dzongkha(≫こちら
・日本語Wikipedia「チベット文字」(≫こちら
・英語Wikipedia「Tibetan script」(≫こちら
・Tibatan Workshop — Character –(≫こちら
・བུམ་ཐང་ཁ་ – རྫོང་ཁ་ – ཨིང་ལིཤ་ཤན་སྦྱར་མིང་མཛོད།. Bumthangkha-Dzongkha-English Lexicon(≫こちら

チベット系の文字は、文字の作り方がすごいですね。部首があり、子音と母音を数多く組み合わせていきます。

ゾンカ語

単に組合せているだけじゃなくて、子音変化が異様に多く、例えばpの子音にyがつくと「ピ」じゃなくて「チ」になるなど、体で覚えていかないといけないものも多くあります。でもそれらのルールは体系的で、私は素人ながらチベット文字系が好きだと思いました。

そのように、2日間、素人なりに基礎に徹した上で、エマダチかエマダツィかを検証しました。

ゾンカ文字は、こうです。
 ཨེ་མ་དར་ཚིལ། 

以下3枚の画像は、素人がゾンカ語の文字を楽しんで解析したものです。情報源にはならないからそこは宜しくね。でもね、私はこうしてゾンカ語が読めるようになって嬉しかった。そんな記録です。

◆1文字めはエ、2文字めはマ。

エマダツィ

◆3文字めは苦労した。ダ。

エマダツィ

◆4文字目は後置詞を勉強するまで分からなかったこと。ツィ。

エマダツィ

こうして、ゾンカ語の綴りを日本語カタカナ表記する場合は「エマダツィ」が適切であることが分かりました。

* * *

しかし!

外国語の音は、ただ転記するのが正しい訳じゃない。フランスの首都「Paris」は絶対彼らは日本語カタカナ読みの「パリ」とは発音していないが、彼らが喉から息が抜ける発音をしているからと言って「パヒ」と書くのはやりすぎだ。日本は従来から外来語を日本語表記するために50音表に載っている日本の音で綴る努力もしてきたのだ。「表現」にはこれまでに日本の著者や編集者等により検討されてきた蓄積があるのです。

楽器の「Violin」は「ヴァイオリン」と書くほうが英語の「V」を反映していて良い、という意見もあるだろう。でも、「ヴァイオリン」を日本語の音で綴って「バイオリン」としてきた実績が長らくある。

イタリアの都市「Venezia」は、「ヴェネツィア」や「ベネツィア」と書いてもいいけれど、「ベネチア」表記だって山ほどある。日本人が日本語で読む媒体上なら「ベネチア」表記のほうが親切とも言えるだろう。それが、50音表の文字で記載してきた従前からの努力の証拠だ。

だから結論。

<結論>
ブータン料理の「ཨེ་མ་དར་ཚིལ།」はゾンカ語の「ཚི」が「ツィ」なので「エマダツィ」と表記できる。しかし日本語表記としては50音表の音を使って「エマダチ」とするほうが読み手にも分かりやすく、日本語媒体での表現の慣習に合っている。

* * *

当サイトでは、「エマダツィ」がそれほど発声難解ではないのと、ゾンカ語が「チ」と「ツィ」を使い分けていることを考慮して、「エマダツィ」表記をしていくと思います。でも、自分がブータンでブータン人の発音を聞いたときに「エマダチ」とメモをしたのも事実。耳が日本人なので「エマダツィ」も「エマダチ」に聞こえました。だから、日本語カタカナ化表記は読み手となる日本人の立場に立つという慣習に倣い、「エマダチ」表記をしていっても良いのだろうなと思っているところであります。

標題をもう一度。
エマダチか、エマダツィか。
答えは両方!



* * *

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