今日の記事は、「シンガポール料理名物のチリクラブは、マレーシア料理と言ってもよいだろう。」というお話しです。
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シンガポールに旅行に行く人は、きっと事前にガイドブックを見て、観光名所のみならず、シンガポールで食べたいものをリストアップすることでしょう。肉骨茶(バクテー)や、チキンライス、カヤトーストや、ホッケンミーや、ラクサ、オタオタ、それから外せないチリクラブ、あとはシンガポールスリングとか。
チリクラブは、シンガポールを代表する美食です。
酸っぱ辛くて香りが良くて、カニのダシが移った汁が超絶旨い。カニのミソの風味が口に広がったときにゃぁ、涙が出るほど旨い(TT)
でも、今日、アジアの本を読んでいてふと思ったことがあります。シンガポールは、生まれてまだ50年ちょっとの若い国なんです。シンガポールの名物料理がすべてこの50年で作られたものだなんて思えない。じゃあチリクラブはいつ作られた料理なんだろう? シンガポール独立よりも前から存在するものなら、ひょっとしたらそれはマレーシア料理と言ってもいいんじゃない?
という思いつきを契機に、今日はチリクラブの歴史について知ったことをまとめます。
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マレー半島で長らくマラッカなどの沿岸沿いで交易や商業に関わってきた海峡中国人(ストレイトチャイニーズ、華人系住民)は、中国明朝後期から清朝にかけて海外交易が禁止されると、トレーダーをやめてマレー半島に定住するようになります。その主な定住地がマラッカ、ペナン、シンガポールです。
20世紀前半の大東亜戦争は日本が主導するアジア植民地の解放戦争という一面を持っていました。日本は敗戦しましたが解放は実現し、マレー半島は英国から独立を達成します。しかし独立当時マレー人以外の人種が約半数を占めていた(華人が特に多かった)ことから、マレーシアはマレー人の少数民族化を防ぐため、異民族排斥(マレー人と先住民を優遇する政策、ブミプトラ政策)を施行。反発した華人たちはシンガポールを連邦から脱退させて独立国とし、マレーシアから分離しました。1965年のことでした。
「1965年、シンガポール独立。」・・・今日のキーワードはこれです。
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◆Singapore Infopedia(≫こちら)
「シンガポールインフォペディア」は国立図書館委員会(NLB)が発行するシンガポールの電子百科事典です。ここに「Chilli crab」(チリクラブ)というページがあります。
汁だくで、美味しそー♡
チリクラブの歴史を、要点を抜粋して和訳しました。
「Cher Yam Tianが1950年代半ばに考案した料理である。彼女は1956年に屋台でチリクラブを販売し始め、好評を博したことより1962年にパーム・ビーチというレストランをオープンした。1960年代の地元のシェフでもあったHooi Kok Wahは1963年にレストランをオープンし、今のシンガポールの一般的レシピである酸っぱいチリクラブを作成した。2009年、マレーシアの観光大臣はチリクラブはマレーシア料理であると主張し、多くのシンガポール人は憤慨した。」(Invented by Cher Yam Tian in the mid 1950s. In 1956, she began selling the dish from a pushcart. eventually opened a restaurant in 1962, called Palm Beach, at 514 Upper East Coast Road. Hooi Kok Wah, local chefs in the 1960s, is also considered a pioneer in the history of chilli crab in Singapore. He opened Restaurant in 1963, created a sourer version of chilli crab that has become common version of the dish in Singapore. In 2009, Malaysian tourism minister claimed that chilli crab was Malaysian dishes. Many Singaporeans were indignant.)
つまりね、チリクラブが作られたときも今の味付けになったときもシンガポール独立前の話なんです。もっと手短に言うと、「チリクラブが作られた国はマレーシア」(厳密にはマラヤ連邦か?)なんです。
なお文中に出てくる、チリクラブを出す最初のレストラン「パームビーチ」の場所は、下の位置。つまり現在のシンガポール島の東部にあります。
現在、「パームビーチシーフードレストラン」は、シンガポールの南部の一等地、しかもマーライオンの隣にあります。
「パームビーチシーフードレストランのホームページは、≫こちらです。
トップページの料理の数々のうち、堂々と中央に掲載されているのは、やはりチリクラブです。サイト内では、チリクラブは当初、香辛料を好むプラナカンのお客様の提案から作りだされたレシピであり、それを今も受け継いでいることが書いてありました。
ということで、今日の自己の結論。
シンガポール料理名物のチリクラブは、マレーシア料理と言ってもよいだろう。シンガポールでもマレーシアでも、「Chilli crab」(チリクラブ)と英語表記をするほかは、「辣椒螃蟹」(ラーチューポンハイ)や「辣子蟹」(ラーチーハイ)という料理名としても提供されています。
だけど、現在、旅の楽しみとしてチリクラブを食べに行くのなら、是非本家本元、シンガポール島に行くとよい。
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さて、チリクラブは自宅でも作れますよ!!!
レシピは簡単です。レモングラスとナンプラーとブラチャンと小さめのカニ(ワタリガニなどでよい)があれば、あとの材料は揃いやすいと思います。なければ省けばいいので、レシピは簡単です(≫詳細はこちら)。
材料(2人分):
- カニ(※1)
- 400g
- サラダ油
- 大3
- にんにく
- 5かけ
- 生姜
- にんにくと同体積
- 長ねぎの白い部分
- 10cm
- レモングラス
- 3cm
- 片栗粉
- 大1
- 卵
- 1個
- あらびき唐辛子
- 小1~大1
- 水
- 400mL
- 塩
- 小1
- 鶏がらスープの素
- 小1/2
- 砂糖
- 大1
- ケチャップ
- 大2
- ナンプラー
- 小1
- 発酵エビペースト(※2)
- 3cm
- 酢
- 小1
- トマトピューレ
- 大2
- 味の素
- 好みで少々
- コリアンダーの葉
- 仕上げに乗せる量
※1:ワタリガニなど、割と小さめのものがよいです。
※2:ブラチャン、バゴオン、ガピなど。なければ省きます。
作業工程:20 分
- カニを包丁でブツ切りにする。
- フライパンに油を敷いてカニを乗せて両面焼く。水分がはねるので紙をかぶせるとよい。
- その合間に、にんにく、生姜、レモングラス、長ねぎをみじん切りにする。
- 片栗粉大1を同量の水と混ぜ、水溶き片栗粉を作り、別の器に卵をといておく。
- カニにだいたい火が通ったら、カニを片方に寄せて、みじん切りにした野菜と砕き唐辛子を入れ、空いたスペースで炒める。
- 水、塩、鶏がらスープの素、砂糖、ケチャップ、ナンプラー、発酵エビペースト、酢、トマトピューレ、好みで味の素を入れて煮立てる。
- 味見をして、塩加減や辛味加減などを好みに調える。
- 加熱を続けながら、水溶き片栗粉を細く流し入れて、全体を混ぜてとろみをつける。
- 卵液を細く長し入れて、全体を混ぜて、細かく分散させる。
- 皿に盛りつけて、コリアンダーの葉を散らしてできあがり。
- Enjoy!
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ちょっと汁だくに作って、花巻に吸わせて食べるのも現地風。日本だったら、ちょっと汁だくに作って、余った汁にごはんを入れて食べるのも、B級かもしれませんが味はA級です♡