スパイスカレーを広めたい(1)カレーの定義
スパイスカレーを広めたい(2)取り掛かりのための基礎情報提供
スパイスカレーを広めたい(3)スパイスの計量について、お伝えしたいこと
「基本でシンプルなスパイシー度極上カレー」の作り方
手間最少!疲れたときにひとり分「包丁不要のスパイスカレー」
【スパイスアンバサダー2022】の活動として、4~5月は「目的別の美味しいスパイスカレーレシピ」を掲載しています。さあ今回の記事は私の渾身のレシピ、
それは何度も試してやっと完成した、
「唐辛子ゼロの新レシピ!!チーズインスパイスカレー」です。
* * *
インド人はカレーを食べるときにお酒を飲まないんですね(飲む人がいてもいいけれど)。フランス人はワインを飲むときにカレーを食べないんですね(食べる人がいてもいいけれど)。
カレーが日常的な人は分かっているんです。ワインが日常的な人も分かっているんです。大前提としてカレーがお酒に合わないことを。カレーは主食を伴うからお酒と一緒に食べられないのもありますが、ともあれこの前提は、世界の料理が好きな私の知人友人も軒並み同意見です。
「カレーがお酒に合わない」理由は、香辛料(特に唐辛子)が舌から知覚神経を刺激し、ワインの繊細な味を味わえなくなるからです。2021年にノーベル賞を取ったTRPV1(トリップブイワン)受容体理論はそれを支持する一端となっています。それで、それでもネットを見ると、カレーとワインはイケるという記事も散見されるものの、それは、「呑めないという仮説を棄却する」といった、統計学的手法のようなというか、背理法のようなというか、ともあれ否定を否定することで肯定を生んでいるだけと見受けられるものが多くて。でもそれを書いている人も分かってるんじゃないかな、土台として、カレーは -チーズやステーキや生ハムやテリーヌなどと比べると- ワインに合わないことを。
事実、私の家でも、スパイスから作る自慢の旨いカレーを作っても、夫はワインをあけるのを嫌がる。「カレーに一番合う飲み物はパニだろ」って言って(パニ=水)。ワイン好きな私も、カレーと一緒に万が一ワインを飲むとしても、お高いワインを開ける気にはならない。もったいないから。
でも、やってみたくなった。
「カレーはワインに合わない」と言われていることを未検証のまま鵜呑みにしたくないし、スパイスカレーが好きな私は、その壁を突破したい。それに、ワインに合わないとされる辛さや風味を排したら、それは辛い物やスパイシーすぎる風味が苦手な人にも好まれるスパイスカレーのレシピとなるはずだ。だからこれは、題して、「ワインに合うスパイスカレーへの挑戦」。
* * *
◆ワインに合う食べ物の検証
まず、ワインに合う料理がどんなものかを思い起こしました。
- チーズ。乳製品フレーバーとまったり濃厚さを口にして、次に果物由来のワインでそれを洗い流すと、また次のチーズを食べたくなる思いになる。つまりワインが進む。
- クリームソース:製品の旨味と香りって、いいよねえ。そして塩分もある。ワインを飲むことで洗い流されながら、次の一口に進みたくなる。
- バター:バターの風味はワインに合う料理の多くに含まれている。
- ステーキやチキンソテー:肉を食べるという満足度の高い味。肉汁の旨味と塩味。ワインを飲むことで洗い流されながら、次の一口に進みたくなる。
- 生ハム:肉の凝集された旨さと塩味。ワインを飲むと(以下同文)。
- トマトソース:加熱したトマトの旨さ。イタリア人はトマトとワインの相性を日常的に味わっている。
- オリーブ:オリーブと言えばワインに合う最高のつまみの1つ。油分の一口のあと、ワインの一口。よいよね。
- テリーヌ:油分の一口のあと、(以下同文)
ここまで書いて思ったこと。フランス料理ってワインに合うおかずに恵まれているなあと。油分と塩分が多いし、刺激の強い味がないし、ワインにチーズにオリーブなんて絶対的な組み合わせだし、料理はフレンチの技巧でクリーム仕立てのソースなどが濃厚で、肉の旨味も豊か。次に、イタリア料理ってワインに合うおかずに恵まれているなあと。生ハムにカプレーゼにチーズ盛り合わせ。油分と塩分が多い料理が多い上、トマトを使ったソースなどが濃厚で、刺激の強い味がないし、いいよね。
◆カレーに使う材料の検証
ワインに合う食べ物のイメージが強く沸いてきたところで、次に、香辛料以外のカレーの材料がワインに合うかどうかを検証してみる。
- 玉ねぎ:オニオングラタンスープやオニオンソテーはワインに合うね。
- にんにく:ガーリックステーキはワインに合うね。
- 生姜:生姜が利きつつワインが定番という料理が思い浮かばない。ひりっと舌に残るフレーバーがワインの味を変えてしまうしワインを美味しくなくしてしまう。
- トマト:イタリア・マルタ・バチカンを1か月まるまる旅行していたときは、毎日ワイン攻め&トマトソース攻めだった。トマト仕立ての料理はワインに合うのだ。
- 塩:塩味がついた料理はワインに合うね。イタリアの生ハムバーで生ハムやアンチョビとワイン三昧を思い出す。
- 肉や魚介:鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、どんな肉類もワインでいただける。ただし魚介類は口に海の香りが残るとワインの味を損ねてしまうものもある。
次に、香辛料を検証してみる。
- 唐辛子:多分カレーとワインが合わないと言われる最大のゆえん。これが最も舌に鈍麻を残す。唐辛子の辛味受容体は舌の深部にあるため一度ここが刺激されるとヒリヒリ感という舌の感覚異常が持続してしまう。その状態でワインと合わさると違う味が持続的に残る。よってワインのデリケートな味わいを遮る。
- コリアンダー(種子):コリアンダーの種子自体がオレンジのフレーバーがするし、ワインに悪い気はしない。
- ターメリック:独特の土臭い風味がする上、舌もざらつくし、ワインとの相性はどちらかというと良くないように思う。
- クミン:これもスーッとして香辛料のきつさを上げている。クミンを料理に多用するところでワインをよく飲む国って知らないなあ(むしろビールを飲んでるもんな)。
- こしょう:こしょうはワインに合う味わいを作る。何より肉や野菜の旨さを増す。こしょうがワインに合わなかったら欧米は中世にアジアに執着しなかっただろうから、こしょうがワインに合うことは歴史が実証している。
- カルダモン:スーッと感が残るからワインの味わいを変えてしまい、酒に合わない。
- クローブ:カレーの中のクローブを口に入れ、取り出してからワインを飲むと、甘味が同調する気がします。つまりクローブの風味とワインは合うんです。そりゃそーか、ホットワインには大抵クローブを入れるもんね。
- シナモン:シナモンの香りはワインを口にすると潔く流れてくれる。ホットワインにシナモンは確かに良い相性だし。
* * *
◆ワインに合うスパイスカレーの方向性
ということで、ワインに合うスパイスカレーの材料増減を考えました。
- 増やすもの:玉ねぎ、にんにく、塩、油分(油やバター)、乳製品(チーズやクリーム)、肉、トマト、こしょう
- 減らさないもの:クローブ、シナモン、コリアンダー(種子)
- 減らすもの:ターメリック
- なくすもの:唐辛子、生姜、カルダモン、クミン
ワインに合わせるカレーの方向性は、以下のようにイメージが固まってきました。
- カレーはトマトを濃厚にして、
- ワインに合うクローブやシナモンがかぐわしく、
- ワインの味わいを損なうスパイスを排除して(唐辛子やクミンなど)、
- しかし単なるトマト煮にならないようにターメリックは少し入れてカレーの土台を維持し、
- トマト、玉ねぎ、にんにくの旨さ、
- バターその他乳製品の旨さ、
- ほろほろ♪のチキンの旨さ、
- 塩味はきっちりと、
- 隠し味の砂糖は是非入れてこくとまろやかさをプラスして、
- ワインに合うようにサラダ仕立て&チーズたっぷりにしよう。
この方向性って、辛い物が苦手な人にも良いレシピになるはず!!
それでは「唐辛子ゼロの新レシピ大成功!美味しいチーズインスパイスカレー」のレシピを掲載します♪
材料(2人分):
- 玉ねぎ
- 1個
- にんにく
- 2かけ
- サラダ油
- 大1
- バター
- 大1
- トマト缶の中身
- 100 g(※1)
- フェヌグリーク
- 小1/10
- ターメリック
- 小1/3
- コリアンダーパウダー
- 小1
- ローレル
- 1枚
- 鶏肉(※2)
- 200 g
- こしょう
- 小1/5
- 塩
- 小2/3
- 砂糖
- 小1強
- 薄力粉
- 小2
- 水
- 150 mL
- ピーマン(※3)
- 4個
- クローブパウダー
- 小1/8
- シナモンパウダー
- 小1/8
- 生クリーム
- 大3
- ピザ用チーズ
- 大5
※1:トマト缶はカットタイプを使っています。
※2:鶏肉の部位は問いません。ここではもも肉のカット済み冷凍肉を使用しています。
※3:ピーマン以外でもよいので、カレーに合いそうな野菜類を入れます。ゆでほうれんそう、ゆでアスパラガス、スウィートコーンなどでも。
作業工程:20 分
- 玉ねぎとにんにくをハンドブレンダーにかけてみじん切り状態にし(なければ包丁でみじん切りにする)、小鍋に入れ、サラダ油とバターを入れて中火で熱し、玉ねぎが透き通ってきたらトマト缶の中身を入れ、トマトを潰すように炒める。。
- フェヌグリークパウダー、ターメリックパウダー、コリアンダーパウダー、ローレル、鶏肉を加えて混ぜる。
- 全体が均一になったら、こしょう、塩、砂糖を加えて混ぜる。
- 薄力粉を加えて混ぜ、全体が均一になったら水を入れて混ぜ、フタをして強めにぐつぐつと煮る。
- 鶏肉に火が通り、煮汁が煮詰まってとろっとしたら味見をし、塩加減や甘さ加減を好みに調える。
- ピーマンのヘタと種を取って幅1 cmくらいの縦切りにし、鍋に入れる。
- クローブパウダー、シナモンパウダー、生クリームを加えて味見をし、塩加減などを再度確認する。
- 器に7割ほどよそい、鍋に残ったカレーにピザ用チーズを入れてとろりとさせて器に盛って出来上がり。
- (オプション:ごはんを添えて、レタスやルッコラなどの生野菜を乗せて。)
- Enjoy!
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美味しーい!!
チーズインカレーだ♪♪ チーズが中からとろーん♪♪
このカレーの「画期的」&「美味しい」ポイントをまとめます。
- 唐辛子ゼロ!!辛い人が苦手な人にも、お子さまにも、お酒を飲みたい人にも!!
- 中からチーズがとろーん♪ いやこれ絶対美味しいでしょ。
- チーズ、クリーム、バター、チキン、トマトを使い、極上のまろやかな旨味。
- 微量のフェヌグリークと少量のターメリックと控えめなコリアンダーパウダーでカレー感が出ています。
- しかしフェヌグリーク、ターメリック、コリアンダーパウダー、ローレル、こしょう、クローブ、シナモンで、なかなかスパイシーです。
- クミンを入れていません。クミンに頼らないスパイス使いで、バランスがむしろ取れています。
- 美味しさの点では、チーズインカレーになったことで完全勝利!
- まるでフランスのビストロでカレーを食べているかのような、オシャレ気分も極上です。
- ワインと喧嘩する味が入っていないので、お酒も進む美味しさで、しかも優雅です。
- 野菜が入って、野菜が乗って、嬉しい一皿です。
* * *
私が長年かけて研究してきた、お酒に合うスパイスカレーへの挑戦。
1つ1つの素材を研究して、唐辛子ゼロで作るこのスパイスカレーのレシピが、多方面のニーズを叶え、スパイスカレーの版図を広げる足がかりとなれば嬉しいです。
次回以降も、目的別の美味しいスパイスカレーレシピを掲載していきますので、また見に来てください!
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※本記事はハウス食品及びレシピブログが主催するスパイスアンバサダーに就任したことに基づき執筆するものです。