スパイスカレーを広めたい(1)カレーの定義

2022/04/09

 <スパイスアンバサダー2022> 
「スパイスアンバサダー2022」の一年の活動が始まります。今年度もスパイスアンバサダーに就任できて大変光栄です。胸張って頑張りますのでどうぞよろしくお願いいたします。4月の活動テーマは、「スパイスカレーレシピ」です♪ スパイスカレーは私の得意料理?いえ日常料理! それこそ、インド内外の、インドにしたってカルナータカ州のカレーもケララも秘境アルナチャルプラデシュ(!←誰か驚いて、笑)もシッキムもと、アジアのみならず欧州も米州も太平洋もアフリカのカレーでも、とにかく世界中のカレーを作って遊んできゃっきゃっしているのは楽しいものです。

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<カレーの定義とは?>

まず初めに、カレーの定義について私の意見をまとめます。役に立つ内容だと思うので、スパイスカレー作りに関心がある方には特に読んでいただきたい項目です。

<先に結論・カレーの定義>
*定義には広義も狭義もあるので限定はないですが、
1)カレーらしい風味がする香辛料を使う
2)ウェット感(少なくてもいいから液体があること)
3)さらさらな汁でないこと(とろみや硬さがあること)
4)ごはんやパンなどと一体化していないこと(主食が別にある)
5)ごはんやパンのおかず(主に主菜)になること

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 1)カレーらしい風味がする香辛料を使う 
日本人にとって「カレーらしい風味」の正体はあまり知られていません。なぜならば「カレーらしい風味」の正体は1つではないからです。複数ある答えの共通点は、「日本人がカレーライスやカレーうどんで接してきて脳にインプットされている香り。すなわち和食にも洋食にも中華料理にもイタリアンなどにない”その他の異国”の香り」です。

カレーは辛い系統の料理ですが、唐辛子は顕著な香りを立てないから唐辛子が入っているだけではカレーになりません。唐辛子が入った中華の炒め物をいくら食べてもカレーにはなりませんものね。こしょうがいくら良い香りを出すとはいえこしょうが入っているだけではカレーになりません。バターの香りが良くても、バジルの香りが良くても、洋食やイタリアンの記憶と重なってしまうとそれは我々にとって「洋食やイタリアンのフレーバー」と脳が自動解釈をしてしまうため、カレーにならないのです。

カレーらしい風味をもたらす香辛料には、ターメリックの土臭いベース臭と、クミンまたはクローブといったトップノート系の香りがあります。できればベースとトップが同時に入っているとカレーになれます。その理由は、例えばイタリアンなトマトソースにクミンが入ってもエジプトやらチュニジアあたりの料理の風味止まりですが、トマトソースにターメリックとクミンないしクローブやフェヌグリークが入ればカレーライスの記憶がよみがえり、脳がカレーと認識するようになるからです。

個人的にはフェヌグリークがわずかでも入っているとよりカレーになれます。フェヌグリークはカレー粉を舐めたときのほろ苦さと「これカレーの香りなんだけど何の匂いだろう」と思う香りの正体です。ハウスやエスビーその他日本のナショナルブランドの市販のカレー粉にもほぼ全例でフェヌグリークが入っているはずです。フェヌグリークは日本人的カレーの風味に重要なのです。

もうひとつ、トマトソースに香辛料を入れてもスパイシートマトソース止まりですが、ターメリックを加えることで全体的にカレーの風味と色が出て、目で見てカレー&舌がカレーと感じる味になれるので、ターメリックは重要です。

以上、「カレーの定義」として、日本人が日本食・中華・洋食・イタリアンなどで覚えてきた色と香りではなく、カレーライスの記憶と重なる香辛料が使われていることは重要なのです。インド料理のレアなカレーじゃだめです。あくまで日本人が経験的にカレーライスと認識してきた香辛料が必要です。

 2)ウェット感(少なくてもいいから液体があること) 
もしカレーに水分がなくカラカラだったら? 最近ネットレシピでも頻繁に見かけるようになった「サブジ」(サブジ:野菜の意味のヒンディー語)なんかがそれにあたりますが、もしカリフラワーを使うサブジに水分がなくカラカラである場合、それを日本人に食べてもらったところでカリフラワーカレーとは呼ばれない。「カリフラワーのカレー味の炒め物」と呼ばれてせいぜい。日本人にとってカレーはカレーライスの認識が定着しているため、液体がないと料理カテゴリーがカレーではなく野菜炒めになるのです。しかし残っている汁気があればカレーと言われやすくなります(具沢山カレーのようになる)。

タンドーリチキンもいい例です。タンドーリチキンは窯で焼かれてウェットでないため、タンドーリチキンを知らない日本人に食べてもらったら、誰もそれを「チキンカレー」とは呼ばない。「スパイシーなでかい焼き鳥」等、焼き物カテゴリーで呼ぶでしょう。しかしタンドーリチキンをもったりしたカレーグレイビーの具にして英国料理のチキンティッカマサラにしたら日本人は誰もがそれをカレーと呼びます。このようにカレーが「カレーカテゴリー」にいるためにはウェット感が重要なのです。

ところで、日本ではドライカレーが市民権を得ていますが、ひき肉のドライカレーは完全カラカラな肉そぼろではなくウェット感が残されている上、それが5)の「ごはんやパンのおかず(主に主菜)になること」の条件を満たすのでカレーの定義の許容範囲内に位置すると考えられます。大事なことは日本人の認識なので、ごはんとセットになったときにカレーライスと呼ばれる料理がカレーであると思います。

 3)さらさらな汁でないこと(とろみや硬さがあること) 
ここ大事なのですが、料理はカレーの風味がするだけではカレーになれないのです。もしコンソメカップスープにカレー粉を入れてカレー風味のスープを作ったら? でも誰もそれをカレーとは呼ばない。「カレー味のスープ」と呼ぶでしょう。カレーライスの「カレールウ」に親しんだ日本人にとってカレーの経験とはとろみ料理なので、しかもスープや汁物という概念が別にあるため、とろみやある程度の硬さがないと料理カテゴリーがカレーではなくスープになってしまうのです。

「南インドにはラッサムというさらさらスープカレーがあるぞ」と言われそう? でもこの定義づけの根幹は「インドに何があるか」ではなく「その料理を見知らぬ日本人が食べたときにカレーと言うかどうか」です。日本人の認識の問題です。ラッサムのとろみがほんっとになくてさっらさらの場合、それではごはんにかけたってカレーライスにならない。日本人にとっては「スパイシーなスープ」止まりです。

また、中央アジアなどで見られる塩入りミルクティーに香辛料が入っていたとしても、北欧のホットワインにクローブなどの香辛料が入っていたとしても、とろみや硬さがないので、それは誰もカレーとは呼ばないですね。このように「とろみや硬さがある」という定義はスパイスドリンクを除外するためにも重要です。

なお日本の発明の「スープカレー」ですが、カレールウやカレー用スパイスを多く使い、器の底が見えないほど不透明でカレー度が上がっています。とろみが出ており、「カレーの中のスープ寄り」に位置します。それは日本人がカレールウのカレーを忘れずに水分を増やして作ったから、カレーの記憶と切り離さないものを作ったからです。スープカレーの調理者はカレー味のスープを作らずスーピーなカレーを作っているという認識です。

 4)ごはんやパンなどと一体化していないこと(主食が別にある) 
カレーライスは「カレー&ライス」です。もしカレーとライスが混ざって一体化して出てきたら、日本人の認識の料理カテゴリーはカレーではなくなり、「カレー混ぜご飯」や「カレーリゾット」のように、カレーとは呼ばれず「ごはんもの」になってしまいます。インドにはキチュリ(カレー味の雑炊)がありますが、キチュリを見知らぬ日本人がキチュリを食べたらカレー雑炊などと呼ぶでしょう。しかしキチュリを米抜きで豆だけで作ったら豆カレーと呼べる。それは豆はおかずだから、豆が主食でないからカレー味にまみれるとカレーに認識されるようになるのです。

しかし米を具にカレー作っても誰も米カレーとは呼ばない。あくまでカレー味の米料理になる。主食と分離していないとカレーとは呼ばれないのです。

カレーパンは、中身だけを取り出してパンと分けて皿に乗せたら「カレー」と認識されてパンを主食に食べるのでしょうけれど、パンの中に入っていると料理カテゴリーは「おかずパン」、つまりパン料理と認識されます。カレーパンがカレーなのではなく、あくまでカレーパンの中身がカレー。

このように、カレーがごはんものやパン料理と認識されず、カレーがカレーと認識されるためにはごはんやパンと一体化していないこと主食と分離していることが重要です。

 5)ごはんやパンのおかず(主に主菜)になること 
日本人にとってカレーの最たるイメージはカレーライスです。ごはんと一緒に食べる主菜です。主食がパンでカレーが主菜になっても同様です。しかし「パンにちょっと塗る程度」、タレかソースのようにスプーン1杯程度のカレーがついていても、それは料理カテゴリーとしては「タレかソース」になってしまいます。だってそうでしょう?「カレー」を注文して出てきたカレーの量がスプーン1杯の量、タレレベルの量だと、誰だって違うと主張しますでしょ? つまり誰だってカレーとは主食をそれだけで食べられるだけの量があること、主食にふさわしい量の主菜であることを定義づけているんですよ、経験的に。

ネパールのモモ(蒸し餃子)などではよくスパイシーなタレやスパイシーな薬味がついてきますが、タレや薬味がいかにスパイスを使っていても料理カテゴリーは「調味料」や「薬味ないし香の物」です。主菜になりえないのでカレーカテゴリーにはなりません。

料理カテゴリーとしてカレーと認識されるためには主食をそれだけで食べられるだけのおかずであり、すなわち主には主菜であることが重要です。(主にはという表現をしたのは、カツカレーの場合はカツが主菜でカレーが副菜になりうるため)。

また、カルダモンケーキやジンジャークッキーやスパイスチャイなど、スウィーツやドリンクを除外するためにも「ごはんやパンのおかずになる」という定義が必要になります。

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<カレーの定義・まとめ>
*定義には広義も狭義もあるので限定はないですが、
1)カレーらしい風味がする香辛料を使う
2)ウェット感(少なくてもいいから液体があること)
3)さらさらな汁でないこと(とろみや硬さがあること)
4)ごはんやパンなどと一体化していないこと(主食が別にある)
5)ごはんやパンのおかず(主に主菜)になること

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<スパイスカレーの定義とは?>

今回の「スパイスカレーを広めたい」の連載では「目的別スパイスカレーレシピ」を掲載していく予定です。そのため、本記事の最後に「スパイスカレー」の私が思う定義を記載しておきます。

<スパイスカレーの定義・まとめ>
1)カレーの定義(上の1~5)を満たす料理を作ること
2)単品スパイスを使うこと。スパイスはホールやパウダーを問わない。
3)カレールウなどを使わず、単品スパイスを組み合わせて使うこと
4)「異国の料理」としての趣が重んじられるため、ガラムマサラのような現地本格的スパイスミックスの併用は可。しかし日本のカレー粉は一応不可。

よーし。ここまで自分の中で、確実にカレーを定義することができました♪

よろしければまた見に来てください!

スパイスカレー


※本記事はハウス食品及びレシピブログが主催するスパイスアンバサダーに就任したことに基づき執筆するものです。



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