スパイスカレーを広めたい(2)取り掛かりのための基礎情報提供

2022/04/12


 私がスパイスカレーを作る理由 
いろんなカレーが作れるから。
スパイスの配合や材料を変えるといろんなテイストのカレーを作ることができます。「今日のカレーは、アフガニスタンのコフタチャロウ~」「今日のカレーはパキスタンのパヤ~」「今日のカレーはデンマークのボライカリー~」と、具を変えてスパイスを変えれば様々なカレーを作っていけます。これがスパイスカレーの最大の良さだと思う。レシピがマンネリにならない。バリエーションを与えてくれる。自分のカレーが固定されないのは気持ちいい。

 実体験の現状 

しかし、知り合いのお母さんたちや、実家の義母や妹の家もそうなんだけど、割と多くの家庭でカレー系の香辛料というと家に鷹の爪とこしょうしかないんですね。だって皆さんカレーはカレールウで作るんだもん。それにカレーは月に数回しか食べないんだもん。だからスパイスカレーやスパイスに対して「使ったことがない。余ったら使えない。だから要らない」という声を上げる。

しかしスパイスカレーを作る利点は大きいので、この障壁を徐々に低くしていけたらなあと、現状を直視して思うのでした。

 スパイスカレーに対する声を集計しました 

今回の主催企業のアンケートでは、スパイスカレーのモニター募集に対しみんなの声を集めていました(≫こちら)。

みんなの声

私が見た時点で112人の声が記載されていました。内訳を数えると、

  1. 取り掛かりが欲しい(作れるようになりたい・作ってみたい・したい)=52人
  2. 本格的なものを目指す=10人
  3. スパイスを知りたい=6人

これを見て感じるものがありました。みなさんの大きな気持ちは「憧れとチャレンジしたい気持ちなのだ」と。売り手がキャッチフレーズによく使う「手軽」とか「簡単レシピ」とか「時短」とか「誰でも作れる」を目指していないんです。
美味しいカレーを「自分が作りたい」
そのために「取り掛かりが欲しい」のだと。

では私に何が出来るだろうか? それは、おこがましくも、取り掛かれるようにしてあげられたらいいな、と思いました。よって今回の記事のテーマは、私ならではの取組みとして、そしてスパイスアンバサダーの任務として、

スパイスカレーに対する
取り掛かりのための情報を提供する
ことに決めました。

スパイスカレーの情報提供について、絵があると分かりやすいですよね。だからざっくりしたイラストつきの解説をつけることにしました。得意のMS Wordで作図してみたので、よろしければご覧ください。

* * *

<スパイスカレーに取り掛かるための情報>

普段母は味噌を計量しないで味噌汁を作り、私も計量しないで味噌汁を作ります。先ほど書いた「近所のお母さんたち」も季節の漬物を作るときに塩を量らないんですね。そして、インドなどカレーの国では、お母さんたちはスパイスカレーも計量しないで作る。そういうものなんです。家庭の調理は、お味噌汁的です。

スパイスカレー

だけど世の中に「レシピ」というものが固定してきて、「適量」と書くと不平を言う人も実際にいて、昔テレビで料理人が言っていましたが「鍋料理なんてそのとき「このくらい」と手に取る量を使うものだから、レシピに白菜や大根300 gとか書くのって違うんですけどね、書かないと言われちゃいますしね」と。分量を書かないとレシピにならないから書かざるを得ない。特にスパイスは少量で風味がつくので、レシピが「カルダモンパウダー小さじ1/8、クローブパウダー小さじ1/4」みたいにミクロな世界になり、難しいものになってしまう。・・・本当はそうじゃないのに

本当は、カレーというものはミクロな分数計算の世界じゃなくて、味噌汁の味噌なんです。家庭では計量なしでカレーを作るのが良いんです。実際私も、普段のスパイスカレーは、【ある程度の基礎が頭に入っている】ので、計量せずにそのとき「このくらい」と思う量で、パッと作っています。

大事なのは、その【ある程度の基礎】。だから、スパイスカレーに取り掛かりが欲しい=52/112人と、取り掛かりをつかんでスパイスカレーを作りたい方にきっと役に立てると思います(役に立てるように気合を高めて書いています!)。是非以下からの【基礎】をお読みください。なんたって、

スパイスカレー作りは気軽で自由度いっぱいです♪

* * *

(1)必要なスパイスは?

スパイスカレー

上の図を解説しましょう。
スパイス少なく作りたいなら、ベース1つとトップ1つがあれば、ひとまずカレーという料理になれます。

ベースは香りがあまり立たないがカレー味の基礎となるもの。1つだけならターメリックパウダー、2つめを使うならコリアンダーパウダーターメリックはそこそこ黄色が出る量を使いましょう。コリアンダーパウダーは多く入れるととろみや旨味を与えてくれるので多めに。

個人的に気に入っているのはフェヌグリークパウダーです。日本のカレー粉の匂いを嗅いで「このカレーの香り、クミンでもないこしょうでもない、なんの香りだろう?」と思う香りの正体です。フェヌグリークは人を引き付ける旨味をつけるので海外ではときに「ネコにマタタビ」のように言われます。フェヌグリークをごく少量入れてみましょう(多く入れると苦いです)。とても簡単に「カレー」と認識される風味が確立します。でも規模の大きなスーパーでないと売っていないからか入れないレシピが圧倒的に多いですけど(もったいないなあ)。

トップの香りはクミンパウダーでカレーらしい香りが出るので、まずは入れてみましょう。分量は、少し入れて味見→少し入れて味見と繰り返すとだんだん香りの増加度が頭打ちになってきますので、「香りもついたし、こんなもんかな」と思う量でいいです。

あと、野菜炒めなどの塩こしょう感覚でこしょうをふるあのイメージで、こしょうもふっておくと、香りが引き締まり、カレー感が増します。ただし多すぎると後悔するので、少量→味見→様子見で増やす感じで。

アジア以外でカレーをよく食べる地域にカリブ海諸国がありますが、カリブのカレーはオールスパイスナツメグ、ジャマイカあたりではタイムの香りも際立ちますね。こういう応用もスパイスを変えるだけ。とても簡単です。何かのきっかけでカリビアンカレーに興味を持ったらそれらを使っていけばOK。要は、クミンパウダーは必需品ではないので、クミンを決まり事扱いしなくてOK。

(2)基本の材料は?

スパイスカレー

上の図を解説しましょう。

カレーの旨味の土台が、玉ねぎ、にんにく、生姜です。分量は、玉ねぎを中心にその他を少し。みじん切りにしたほうが細胞がたくさん壊れて旨味を出してくれます。私は面倒なのでチョッパー使用。にんにくと生姜は切らすこともあるので、チューブタイプが超便利です。インド人も「ジンジャーガーリックペースト」としてこのタイプのものを使っているので、私も前向きに使っています。

重要ポイントですが、油で炒めることで野菜の生臭さをなくしてください。「しっかりと炒められた」状態が大事ですがあめ色玉ねぎはマストではありません。

世界のカレーは油の量が多いのですが、旨味や香りは油で引き出されるので、我々も遠慮せずに使うほうが美味しいカレーになります。

具は、ベジタリアンでなければ鶏肉がスタンダード。慣れてきたらその他の肉や豆類や野菜などいろんなものを具にしてみましょう。

トマトですが、トマトを使わないカレーも結構あるのと、トマトの旬でない時期はトマトが美味しくない上に高いので、必須ではないです。私は美味しそうな旬の完熟トマトが安売りしていたらまとめ買いして冷凍庫に入れておき、美味しそうなトマトがない時期はトマト缶を使います(そして季節を問わずトマト缶を常備しています)。

トマトを入れると確かに美味しくなりますが、注意!入れすぎるとハヤシライスのよう、あるいはイタリアンのパスタソース、クミンが入ったところでメキシカンなタコスソース止まりになってしまうので、トマトはあまり入れすぎないで

(3)基本の味付けは?

スパイスカレー

上の図を解説しましょう。

塩です。塩加減が肝です。私がインドの厨房で研修させてもらったときにシェフが言ってましたもの、「最高のスパイスは塩だ」と。塩が決まれば他がぶれてても美味しいと。このあたりは日本の料理も同じですね(いや世界共通)。実際味見をして「なんだか味が決まらないなあ」と思うとき、塩加減を直すと美味しく完成するものです。余談ですが塩加減が正しくても味が決まらないときは、砂糖やバターや生クリームやココナッツミルクを入れたりします。今どきのインド人はチキンパウダー(鶏がらスープの素)やテイスティパウダー(味の素)も使っています。塩加減がまっとうな範囲内なら、旨さを調える方法は幾つもあるから大丈夫。

スパイスカレーには砂糖を入れると旨味が整いやすいです。分量は「明らかに甘っ」と感じない程度。特に人気のバターチキンマサラのような、辛さを出さないカレーでは砂糖がバランスをとることを知っておきましょう。砂糖は最初に炒めてカラメル化するとプリンにかけるあの風味が出て美味しいですよ(インド人シェフもカラメルを作っていた)。

唐辛子は多くのカレーに入っている材料です。ウイグル人が私に言いましたもの。「唐辛子は辛いだけじゃない、旨味と風味を出すのだ」と。私も完全同意です。分量は食べる人に合わせて自由に変えられます。

  1. カイエンペパーパウダーレッドペパーパウダーなどのパウダータイプはカレーの中で形が見えないのが利点。
  2. 風味が抜けていなくて美味しい点で鷹の爪が最高!!鷹の爪を油で炒めて少し焦げてきたときのフレーバーはインド本格的カレーのフレーバーを彷彿とするものなのですよ。
  3. パウダーと鷹の爪の間を行くのが粗びき唐辛子(キムチ作りに使うような砕き唐辛子)。

ところでインド人はカレーを食べるときにお酒を飲みません(飲む人がいてもいいが)。フランス人はワインを飲むときにカレーを食べません(食べる人がいてもいいが)。「唐辛子の辛さは酒に合わない」んです。私も実体験でそれを理解しています。そこで最近ハマっているのが、「ワインに合うカレーへの挑戦」。今回の連載シリーズにも掲載しますが、唐辛子など酒類の味わいを邪魔するものを排して、美味しい上にワインが進むカレーを完成させることができました。となるともはや唐辛子はカレーの必需品ではないので、「辛いものが苦手な人こそスパイスカレーでコントロールできるよ♪」と、スパイスカレーに辛いイメージをもつ人にお伝えしたいです。

(4)その他のオプション

スパイスカレー

上の図を解説しましょう。

これまでの解説のように、基本のカレーを作ったとします。玉ねぎ、にんにく、生姜、トマトを使って美味しく炒めて、ベースのスパイス、トップのスパイス、唐辛子を加え、塩加減を調えました。こんなあたりで基本のスパイスカレーが出来ています。ただし、基本ではまだまだ細身です。そこに色気をつけていきましょう。

オプションとしては

  1. ヨーグルトを最初に炒めることで乳製品の旨さと栄養を得る
  2. ホールスパイスを最初に炒めて殻の中の香りをはじけさせる。はじけるホールスパイスはクミンシードマスタードシートです(片方あるいは両方)。クミンシードを使うと香りの良さにうっとりするものです。
  3. 仕上げのガラムマサラ(ストロング系スパイス混合物)。これでスパイスのバランスが整います。
  4. ベンガル人の店で教わったオススメ技!!ホールスパイスをカレーの汁に入れておくんです。これホントいいですよ~。シナモンスティック鷹の爪カルダモンホール。やっぱりスパイスはホールがいいなあ~♪といつも香りにうっとりしちゃいます。

なおカルダモンホールはさやを割ると小さな種を入れてもよいですが、私はさやにハサミで切れ込みを入れるだけで鍋に入れます。カルダモンを食べると強烈すぎて、食べる人がときに嫌がるので、食べる人が取り出しやすいように配慮しています。

さあ、こういうカレー作りが楽しくなってくると、きっとあなたもいつかカレーリーフカスリメティが欲しくなるんじゃないかしら。素晴らしい味と香りです。輸入食材店で購入できます。

(5)今日のテイストを楽しくチョイス♪

スパイスカレー

上の図を解説しましょう。

基本のスパイスカレーとして、玉ねぎ・にんにく・生姜、トマト、スパイス、あとは鶏肉あたりの具を選ぶと基本のカレーが出来ますが、もっとリッチでふくよかなボディのある感動的なカレーを作るために、そのとき食べたい気分で方向性を決め、テイストを増していきます。例えば、

  1. バターと生クリームリッチな、バターチキンカレー風。
  2. ココナッツミルクたっぷりな、南インドやモルディブ風
  3. 青唐辛子を使って(炒める&トッピング)シャープな辛さのパキスタン風
  4. 酢を加えたインドゴア名物のビンダルー
  5. 海鮮ぎっしり♪魚介類のダシが旨いスリランカ北部風

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結論
スパイスカレー作りは気軽で自由度いっぱいです♪

私も、レシピを作り出さないときはこういったカレーをお味噌汁のように、計量なしで作っています。大体の基本も、世界を実際に見てみると人により地域により民族によりまちまちなので、日本語でネット検索して出てくるような画一的な作り方が不自然なんですね。だから大丈夫。スパイスカレー作りは気軽で自由度いっぱいです

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これからもたくさんの方に作って頂けるスパイスカレーに挑戦したい。

いろいろな味を試してみたいし、自分もそうして素敵な食卓を囲みたい。

そして本格的なスパイス料理をもっとたくさん作れるようになりたい。

今回の主催企業のアンケートでは(≫こちら)、私が数えた時点で大勢の人が「憧れとチャレンジしたい気持ちを述べていた」。でも今思った。「憧れとチャレンジの気持ちでいっぱいなのは、私のほうなのだと。

本記事が、スパイスカレーがもつミクロで緻密で難しいイメージを払拭し、スパイスカレー普及の一端となれば、嬉しく思います。

次回は「お味噌汁の味噌感覚」で気軽にスパイスカレーが作れるようになるために、計量についてお伝えしたいことを記載し、それ以降は「目的別スパイスカレー」を多数掲載します。これからもどうぞよろしくお願いします!!


※本記事はハウス食品及びレシピブログが主催するスパイスアンバサダーに就任したことに基づき執筆するものです。



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