<スパイスアンバサダーの活動報告>
4月・5月のテーマは、いつもの料理がスパイスで新しい味わいになるという趣旨で、10回連載形式で、10通りのスパイスアレンジレシピをお届けしています☆
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第3回は、中東のイラクの残ったパンの美味しい食べ方、『タシュリーブ』です。
残ったパン、昨日のパン、どうやって食べる?
トーストしてジャムを塗るとか? 軽く焼いてスープと一緒に食べるとか? あるいは・・・。
・・・結構行き詰まる。
・・・行き詰まる理由は、日本の食卓が基本パン食ではないから、だと思います。
だって、残ったごはんならば私たち結構楽勝じゃないですか。焼き飯にしたり、お粥やおじやにしたり、お茶漬けのアイディアもたくさんあります。
つまり、「その国は、その国の料理の主要な食材であるほど、余り物を無駄なく消費する知恵を持っている」のです。稲作文化の日本にはごはんを無駄にしない知恵があり、小麦文化のメソポタミアにはパンを無駄にしない知恵がある、と。
今回紹介するタシュリーブは、私自身がイラクに行って感激した味です。強いていえば日本のお茶漬けに相当するもので、冷えた主食に温かい汁物をかけることで残りものが美味しくなります。熱が加わればβデンプン(消化の良くないデンプン)がαデンプン(消化の良いデンプン)に変わり、冷えた食材が温かくなるため美味しく感じられ、更にかけた汁の旨味が加わります。パン食圏にもお茶漬けに相当する文化があるのです。
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小麦の発祥はメソポタミアとは既に定説になっているのでしょうか。ナツメの花が薫る、古代から続く大河の文明。その高度の文明の跡に立つ国が現在のイラクです。イラクといえば旅行者が入っちゃいけない国の筆頭のような位置にありますけれど、広い国土はアラブ人地域とクルド人地域に二分化されており、クルド政府が独自に入国許可を出し始めた時期、私は、その情勢下における旅人の入国記録が見つからなかったけれど、最新の情勢を見て「今ならイラクに入れる」と判断して渡航しました。
民族が違うということは根本的に言語が違うわけで、アラブ語とクルド語のような文化の違いも旅の重要な観察事項なのだけど、でも、クルドの地域にもアラブ料理が広まっていたことは、現地体験ならではの発見だった。同じ国の中では民族問題を越えて同じものも食べているのだということを理解しました。
ということで、イラクで食べたタシュリーブ!!! イラク訪問2度目の夫に「お!これこれ!イラク料理って、パンの上に何かがかかってふにゃふにゃになるよな!」と言ってもらって、イラクのアラブ地域と同じ料理であることを確信したものです。お店の人も「イラクといえばタシュリーブだぞ~」なんて言ってくれるものだから、ほかのメニューを見るまでもなくタシュリーブに飛びつきました。
自宅でも作っています。レシピは簡単です。
材料(4人分):
- 玉ねぎ
- 大1個
- にんにく
- 1かけ
- 鶏肉(※1)
- 700 g
- サラダ油
- 1/2 C(※2)
- トマト缶(※3)
- 1つ
- 水
- 700 mL
- ローリエ
- 1枚
- カルダモン
- 5さや
- シナモンスティック
- 500円玉面積
- ターメリック
- 大2
- 塩
- 小1
- バハラート(※4)
- 大1
- プチトマト
- 好みで10個
- ドライレモン(※5)
- 大1程度の量
- パン(※6)
- 好きな量
※1:鶏肉は鍋用の骨ぶつ切りタイプがよい。値段は高くなるが牛肉や羊肉の塊やテール肉でもよい。
※2:1/2 Cくらいを適当に注ぎ入れる感じでよいです。
※3:トマト缶は400 mLサイズを使用。トマトピューレを使用してもよい。
※4:バハラートは中東のスパイスミックスです。入手が難しいのですがガラムマサラで代用してもよいです。クローブパウダーやオールスパイスパウダーやブラックペパーパウダーなど香りの強い単独スパイスをミックスしてもよいです。
※5:イラクではヌーミバスラと呼ばれるドライレモン(ドライライム)です。入手が難しいのですが、流行った「塩レモン」のレモン部分やスライスレモンなどで代用できます。
※6:イラクでも前日焼いたパンの残りなどを美味しく食べるための料理です。ホブズやナンのような薄パンがあればそれがよいですが、食パンやフランスパンの残りを使っても美味しいです。
作業工程:2 日
- 玉ねぎの半分をみじん切りにし、残り半分をカレーの具のように大きめに切る。
- にんにくをみじん切りにする。
- 鍋にサラダ油を入れて中火で熱し、玉ねぎのみじん切りとにんにくのみじん切りを入れて、きつね色になるまで炒める。
- 鶏肉をぶつ切りにして鍋に入れて、大きく切った玉ねぎも入れて、焼きつける。
- トマト缶を汁ごと入れて、トマトと油をなじませるように数分間煮る。
- 水、ローリエ、はさみで切れ込みを入れたカルダモンさやごと、シナモンスティック、ターメリックパウダーを入れ、フタをして沸騰させ、沸騰したら火を弱めて小さな沸騰状態を保つ程度にし、フタをして1時間ほど煮る。
- 火からおろしてフタをしたまま放冷する。
- 2日間の間に、1時間ほどじっくり煮てから放冷する過程を、3回くらい繰り返す。その過程のどこか途中で塩とバハラートとプチトマトを加えておき、味見もして塩加減などを調えておく。
- 最後の加熱のとき、乾燥レモン(あるいは塩レモン、スライスレモンなど)を加えてひと煮立ちさせる。
- シチュー皿にパンをちぎって乗せ、上から煮込みをかけ、1分ほど待って汁をパンに吸わせたら出来上がり。
- Enjoy!
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食べ方は。1)お皿用意、
2)残っているパンをちぎって乗せ、
3)メソポタミアのシチューを乗せて1分ほど待って吸わせる♪
このタシュリーブはメソポタミアの味、イラクの国民食。
ナツメの花が薫る、そして小麦という世界を支える穀物を生んだ、偉大なるチグリス河&ユーフラテス河の文明文化に想いを馳せて。それから家に残ったパンを美味しく食べる方法として、パン食文化圏の知恵が我が家で役立つってとても素敵なことだと思います。
だから今日、ここに本記事を紹介できて、私はとても嬉しいです。
カルダモンやターメリックなどを使った異国の味を、興味を持たれましたら是非楽しんでください。
【第1回】バルカン半島の美味ハンバーグ『グルマンスカ』
【第2回】モロッコの美味しいゆで卵の食べ方『カムンメハ』
【第3回】イラクは残ったパンの美味しい食べ方を持っている『タシュリーブ』
【第4回】アラブの焼きなすが世界的真価を発揮する『ムタバル』
【第5回】幸せ色のごはん、ターメリックでOK『サフランライス』
【第6回】中央アジアのシルクロード味の雑炊『スユクオシュ』
【第7回】オリエントに広まる感動の肉々ピザ『ラハムバジン』
【第8回】イベリア半島が受け継いだ世界の頂点文化『ピンチョモルノ』
【第9回】南米エクアドルの高Caミルクチーズスープ『ロクロデパパス』
【第10回】「砂糖カルダモン」の実力。スパイスの国のココナッツミルクプリン『ワタラッパン』
※本記事はハウス食品及びレシピブログが主催するスパイスアンバサダーに就任したことに基づき執筆するものです。