ビーツが「食べる輸血」と表現されることへの反論

2020/01/11

ビーツが「食べる輸血」と表現されることへの反論。

ビーツ

<ビーツについて>
ヒユ科(アカザ科)の根菜です。白いビーツも黄色いビーツもあるのだけど、市販で出回るのは真っ赤なビーツです。赤い色素(総称名:ベタレイン)に抗酸化作用ならびにラジカル捕捉作用が認められており、健康に良さそうなことは期待できる野菜です。

でもまあネットを見てみると安易な紹介文が多くて、ここでまず栄養面の客観的な評価をしておきます。

インターネット上で公開されている「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」(≫こちら)。これが現在最新の食品成分表です。サイトにエクセルが公開されているので、私はこれを活用して、料理の栄養評価をしています。

では、まずビーツ。よく間違えられるカブ(カブはアブラナ科なのでビーツの近縁種ですらない)。比較のための赤い野菜としてトマトとにんじん。代表的な根菜/土中の野菜として大根と玉ねぎ。これを抽出し、期待したい栄養として、水溶性食物繊維、無機質(ミネラル)、ビタミン類を合計18種類抽出。当該栄養素を最大量含む野菜に色づけ、ビーツは目立つよう黄色で色付け。その結果が下の一覧表です。

根菜栄養

この表から読み取れること

  1. ビーツが他より多い栄養素その1は、水溶性食物繊維。カブやトマトの2倍以上も入っている。これは不溶性食物繊維と異なる作用があり、血中コレステロール低下作用などが認められている。
  2. その2は、カリウム。群を抜いて多量に入っている。これは血中ナトリウムイオン排出作用があり血圧降下に寄与する。もうひとつ細胞内液に多い無機質であり、赤血球内部にも多量のカリウムイオンが保持されている。
  3. その3は、。他の野菜の2倍も入っている。言わずもがな必須元素であり、赤血球の造血に寄与する。
  4. その4は、亜鉛。カブやダイコンの3倍も入っている。味覚を維持するにも、健やかな育毛にも、亜鉛は役立つ。
  5. その5は、。群を抜いて多量に入っている。セルロプラスミンをご存知だろうか。銅を含む酵素が鉄の代謝を担っている。
  6. その6は、葉酸。群を抜いて多量に入っている。葉酸は赤血球を作る造血に欠かせない。
  7. その他読み取れることとしては、今回抽出した栄養素群を筆頭で多く含有する野菜はにんじん、次いでビーツであるが、それぞれの得意分野は随分と異なる。また、赤い野菜はβ-カロテンが多いイメージであるが、ビーツではその点は評価できない。
  8. さらに、にんじんとビーツ以外の4野菜(大根、トマト、にんじん、かぶ)は、今回の評価方法では抜きんでる長所を持たないように思われた。

ということで、ビーツは赤血球に関連するカリウム、鉄、銅、葉酸などの多さが目立つ

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さて、ネットでビーツが「食べる輸血」w などと謳われる根拠は分かりましたww しかしですね、輸血というのは、全血、赤血球、濃厚血小板、新鮮凍結血漿(FFP)と分画された製剤で、全血及び赤血球は出血など赤血球不足状態における赤血球補充。濃厚血小板はDICなど血小板減少時の血小板補充。FFPは血液凝固因子の補充や血漿交換に使う。輸血とは基本的に不足分の補充だ。

「ビーツは赤血球を増やしてくれそう♪」と思うことにはそこまで反論はしない。葉酸などが多いのであれば、ある種の貧血改善くらいに何らかの寄与はするかもしれないが、そういうのは造血と言うのであって輸血とは言わないのだよ。根本が違う。

ビーツを「食べる輸血」などと言ってはいけない。
ここは譲らんぞ (`・ω・´)ムンッ

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とはいえ。
ビーツ、なかなか良さそうな野菜ですよね。

ピンクサラダとか(≫こちら)、

ビーツ料理

ピンクカレーとか(≫こちら)、

ビーツ料理

ピンクスープとか(≫こちら)、

ビーツ料理

お料理の付け合わせにも映えます(≫こちら)。

ビーツ料理

使える野菜です。是非食卓に取り入れて。



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