写真は、チキンカライというパキスタン料理。
これは私がどうしても日本で作りたかった味、作りたかったレシピです。
・・・私には、パキスタン人の優しさに触れた素晴らしい思い出があります。
* * *
インドは、英領の時代はとても広い国でした。英領インドは、今のインドだけでなく今のパキスタンや今のバングラデシュを含む広い国でした。
今の国家形態になっていく歴史の過程の中で、ヒンドゥー教の多い地域をインド、イスラム教徒の多い地域がパキスタンとして「分割」されました(もちろんヒンドゥー混じりのイスラム、イスラムまじりのヒンズーですが)。
「イスラム教徒の多い地域がパキスタンとして分離されました」という点には大きな問題があり、つまりそれは今のパキスタンと今のバングラデシュであるため、2つは1つの国なのに地理上隔離し、しかも両者の人口規模はほぼ同等だったにも関わらず政治的権力は西側(今のパキスタン)にあり、東側(今のバングラデシュ)はベンガル語を話す地域であるのに西側のウルドゥ語が公用語になるなど、東側の反感が強かったのです。そうして戦争も経て、西は今のパキスタン、東は今のバングラデシュとして分離していきます。
* * *
パキスタン北部フンザで、パキスタン人の旅行グループと出会いました。そのパキスタン人はジープをチャーターして氷河へ行くそうで、私たちと中国からの国境越えをご一緒した哲っちゃんが誘ってもらえ、朝、哲ちゃんからそのパキスタン人に電話をかけてもらったら、もう少し人数が増えても問題ないと言ってもらえ、哲ちゃんと夫がパキスタン人の氷河ツアーに参加することになりました。
午後、2人とも大満足の様相で宿に帰ってきました(*^-^*)
良かった、良かった、おかえりなさーい!
しかも、そのパキスタン人グループが、私たちを夕食に誘ってくれています。レストランとかじゃなくて、彼らが宿で食事を作る、その彼らの手作りディナーへのご招待。
パキスタンに来て、パキスタン人と会話をするのは楽しいですね。昔パキスタンがインドだった頃、インドは英領土で、だから今もパキスタンは英連邦加盟国ですし、公用語が英語(とウルドゥー語)です。日本語以外の言語では、やはり英語が話しやすい。パキスタン人にいろいろとその文化などを教えてもらいました。
でも、今日は、ハラルな鶏肉(浄な鶏肉)が手に入らないそうです。よく「イスラム教では豚肉がダメ」とか言うけれど、それは正確なことではなく「イスラム教では不浄な肉がダメ」なのです。鶏肉であろうと牛肉であろうと、食肉に加工する際に所定の祈りの言葉を捧げられ、所定のさばかれ方をされた肉でなければだめ、ということになっています。今日調理をするパキスタン人は、今日フンザで手に入る鶏肉は食べられるものではないため、かわりに豆カレーを作ると言っています。
その話を聞いて私はつぶやいてしまった。
「そっかー、残念。私はまだチキンカライを食べていなくて」と。
カライというのは、インド北部やパキスタンで食べられるカレーの一スタイル。パキスタンでは絶対食べたいリストに入っていた料理で、そんなことをつぶやいたら、2、3人が、「じゃあ僕が作ってあげる」・・・と言ってくれるのです!!
(旅の間は絵日記を描いていました。)
私はずっと厨房で作り方を見てメモを取っていました。ダル(豆カレー)、チャワル(白い炊き込みご飯)そして、彼らは食べることのできない鶏肉を使ったチキンカライ。
そして食卓に登場したのが、「私たち3人のためだけの」チキンカライです。
パキスタン人お兄さんたちが作ってくれたチキンカライは・・・。
・・・ちょっとしょっぱかった。最初は「しょっぱいねー」と言いながら、それでもガーリックやスパイスの利いたチキンカライを食べ続けました。
何度か会話の中で「しょっぱいねー」が出てきたときに、ハッと気が付いたのです。
彼らはムスリム(イスラム教徒)だ。今日の鶏肉は宗教上食べられないものだ。だから調理の途中で「味見が出来なかったのだ」ということに。
・・・とっても切なくなりました。同時に、感動が大きく膨れています。
今目の前にあるチキンカライが、彼らが、ゲストである私たちのリクエストのために作ってくれた。
味見もできないことを承知で、それでも一生懸命に作ってくれたものなのです。
・・・ああ、ありがとう・・・
* * *
この日、人生で最高の「パキスタンのカレー」を手に入れた。
「最高のチキンカライ」は、感動に有り余る心をもつ味だった。
私たちは3人とも、彼らの心が良く分かった。だから哲ちゃんも「俺、最後まで食べます」と、すでにチャワルやダルを食べてお腹がいっぱいなのに頑張っていた。同様に私も夫も頑張って、全部食べきった。・・・後日レストランでチキンカライが登場した日があったけれど、やっぱり、今日のカライのほうが、美味しかったと思う。
当時の日記にはこう書いてあります。「もし夫さえ、うんと言ってくれたら、今日学んだ「彼らのチキンカライ」を -ちょこっと塩を減らして- 「自分のチキンカライの味」にしようと思う。」と。
それは、作るたびに今日の感激と感謝を思い出せる料理となる。
大事なことを教わった。「食べる人のことを考えて料理をする」という、基本的原点に回帰できる。
私は、彼らの思いを受け、これからも世界で一番美味しいカレーを作っていけるのだと思う。「心優しさ」を教えてくれた、パキスタン人に、今日の一日に、ありがとう。
材料(2人分):
- 黒こしょう粒
- 15粒
- カルダモン
- 2さや
- クローブホール
- 4粒
- コリアンダーパウダー
- 大2
- ターメリックパウダー
- 少々
- クミンパウダー
- 小2/3
- カイエンペパーパウダー
- 小1/2(※1)
- ジンジャーパウダー
- 小1/3
- シナモンパウダー
- 小1/8
- 塩
- 小2/3
- ガラムマサラ
- 小2/3
- サラダ油
- 大4
- チューブのにんにく(※2)
- 小2
- 玉ねぎ
- 中1個
- トマト
- 1/2個
- 青唐辛子
- 2本(※1)
- 鶏肉(※3)
- 300 g
- 水(※4)
- 250 mL
※1:このレシピでは標準的な範囲で辛めのカレーができますが、もっと辛くてもよいとも言われます。よって辛いのが好みならば青唐辛子やカイエンペパーパウダーを増やします。
※2:今回は「おろし生にんにく」という市販のチューブ商品を使用しています。生にんにくを使う場合は2かけ程度です。
※3:もも肉が手に入りやすくて美味しいです。
※4:野菜と鶏肉から水分が多く出る場合は水の量を減らしてもよいです。
作業工程:20 分
- 黒こしょう粒、カルダモン、クローブホールをフライパンで乾煎りし、十分熱くなったらスパイスミルやすり鉢に入れ、すりこぎで叩いてできるだけ砕き、取り出しておく。
- コリアンダーパウダー、ターメリックパウダー、クミンパウダー、カイエンペパーパウダー、ジンジャーパウダー、シナモンパウダー、塩をフライパンに加え、ヘラで混ぜながら中火で乾煎りして、煙が立つ頃には茶色が濃くなっていると思うので、小皿に取り出しておく。
- ガラムマサラパウダーを同様に乾煎りして、別の小皿に取り出しておく。
- 玉ねぎをみじん切りにし、トマトを1 cm角に刻む。
- 青唐辛子を4 mm幅の小口切りにし、2つの小皿に半分ずつに分けておく。
- 鶏肉を一口サイズにカットする。
- フライパンにサラダ油を入れ、にんにくを粗みじん切りにして入れ、中火にかける。
- にんにくから香りが出て色づいてきたら玉ねぎを入れて炒め、玉ねぎによく火が通って茶色く色づいてきたらトマトを入れ、全体を混ぜて、トマトを潰しながら炒め煮にする。
- トマトの色が濃くなってきたらと青唐辛子の半分と鶏肉を加え、中火のまま、時々鍋底から返しながら炒めていく。
- 鶏肉の表面が焼けたらガラムマサラパウダー以外のローストスパイスと水を鍋に入れ、全体を混ぜる。
- 水分を飛ばし、油が浮いてとろみがついたら、ガラムマサラパウダーを入れて全体を混ぜる。
- 火を止めて味見をして、塩加減や辛さ加減を好みに調える。
- 青唐辛子の残り半分をトッピングして、出来上がり。
- Enjoy!
このレシピやブログ記事を気に入っていただけたら応援クリックお願いします(*^_^*)