高等学校卒業程度認定試験(大検)の問題に、我がサイトの写真が使用されました。そしてアフリカ三か国料理を検証。

高等学校卒業程度認定試験(大検)の問題に、我がサイトの写真が使用されました。正しく言うと無断使用なんですけど。

科目は地理A1です(≫こちら

大検

問題です。
「ユウシンさんは、アフリカ諸国の食文化に興味をもち、資料4~6を得た。資料6を参考に、資料5中のX、Y、Zは、モロッコ、ナイジェリア、マダガスカルのどれか。」

◆資料4:アフリカの地図。

大検

白地図です。モロッコ南部の西サハラ問題もうまくぼかしています。でも思うこととしては、領土問題で係争中の国をわざわざ取り上げて領土をくっきり色分けするようなデンジャラスなことをしなくてもいいじゃない? 今回の作問ならモロッコじゃなくてチュニジアを取り上げれば良かったんじゃない? ・・・なんでこんなヘンなことするんだろうね。

◆資料6:各国料理紹介。

大検

ここよここ、ここの下部に、私と夫が作っているサイト(tabisite.com)のURLが載っているんですよ。「https://tabisite.com/hm/shoku/z40/08021310.html などにより作成」って書いてある!!

ひどいなあ、と思ったのがこれを見た第一印象です。だってうちのホームページでは写真を有料販売しているのですよ? その旨は明示しているのですからね。無償使用を相談するとかでもいいから連絡を入れればいいのに。しかも文部科学省よ? 試験作成委員会はそんなんでいいんかい? 使う場所も場所なのだし、ここから受験料収入を得てるんだし、ともあれどこよりも使用許諾はきちんとしないと。

なお、文部科学省HPに掲載されているPDFファイル上では写真が消されていました。

* * *

よし、じゃあ、我がサイトの写真を入れて、復元してみよう。写真出典が「tabisite.com」なのだから(※理由:tabisite.com以外のサイトから写真を使ったならそのサイトURLも書くはず。さすがに。)、写真を入れるのは簡単だ。そして出題内容を検証・校正しようと思います。

◆資料6:各国料理の写真、「tabisite.com」内写真を使った復元予想

大検

うーん。。。ここまで作業してみてね、思ったことがあります。作業が超~虚しいです。私が文部科学省なり試験作成委員だとして、使用許諾の連絡一本も入れず、許可も得ず、写真をコピペして、サイズを変えて(縦横比が元写真から変わっているから作業に一手間がかかっている)、そんな虚しい手間をかけて、何が楽しいのだろう。それで試験問題脱稿しちゃうんですか? それで受験料を儲けているだなんて、ホントひどい話だ。

(・・・なお、当サイトでは写真は基本的に1点5000円で販売しており、主に出版社やTV製作会社へ提供しています。今から文部科学省に請求書を送付してもいいくらいの話だよねぇ)。

では、校正してみます。

1)モロッコの家庭料理

こねて粒状にし →正しくは(小麦を)製粉してから顆粒状に造粒しています。伝統的な手作りの製法ではその過程にこねるような作業は入りますが、小麦をこねても顆粒にならない。資料5を見たあとに資料6を読ませたって誰も小麦粉だなんて思わないよ? あくまで小麦をもとに文章を作る必要がある。

その上に野菜や魚、肉などの具材を乗せた料理 →許容範囲だが、具材を乗せるのではなく、煮込みを乗せた料理、などのように書いたほうがよりよいと思う。

発祥地のアフリカ北部から西アジア →この文章では、西アジアを発祥地に含むように読み取れてしまう。問題作成の初歩的なミスである。正しくは、北アフリカが発祥で、西アジア(レバノンあたりを指しているのだろう)でも食べられているように書かなければならない。

アフリカ北部から西アジア →アフリカ北部と西アジアを混用しているのが誤り。正しくは、アフリカ北部からアジア西部。もしくは、北アフリカから西アジア。どちらかに統一すべき。私なら後者をとります。

アフリカ北部から西アジアにかけての地域で食べられ →「主に」をつけるほうがよい。西アフリカでも南欧でも食べていますから。

アラブ民族の料理の影響を受けている →本当にそうですか? そうなんですか? アラブが北アフリカに侵攻してくる前からクスクスは北アフリカにあった料理なんじゃないですか? アラブの影響って具体的に何ですか? それはクスクスたる原義に必要なものですか?

豚肉は使わない →書きたいことは分かる。でもね、豚肉を使ったクスクスもあるんです。クスクスはキリスト教徒も多く食べる料理ですから。だから、「基本的に」と入れるか、この文言は取ってしまったほうがいい。

なお、私はこの写真を食堂で撮影したため、見出しの「モロッコの家庭料理」が嘘になります。

2)ナイジェリアの家庭料理

ガリ(写真左)は →ナイジェリアは多民族国家であることを念頭に置かないとおかしなことになる。言語もたくさんあるのだから、ガリという名称だけでは語れない。だから、「写真左はガリやエバなどと呼ばれ」のように書き出したほうがよい。

「主食となる食材」を粗挽きした粉を炊いて臼で軽くついたもの →私が撮った写真において私が食べたガリは、確かに軽く搗いた(ついた)程度のものでした。しかしヘビーにどっぷり搗いたもののほうが主流なんじゃないかなあ。元文章も私が書いたものですが、今思ってみたら、人が書いた文章をそのままパクるのもいかがなものかと思いますが。

ドロースープ(写真右)はオクラを使って粘りととろみをつけた →決定的に誤り。私が元文章を書いたときは、旅をしながら食べた料理を紹介しているため、書籍などの十分な検証環境もなく、旅行記として書いている要素があります。それをそのままパクるからおかしくなる。本来ドロースープはオボノスープまたはオグボノスープ(Ogbono Soup)を指すことが多く、マンゴーの種から得られる粉体を使ってとろみをつけている。私は当時そのオボノパウダーを知らなかった。もちろんオクラを使ったドロースープもあるけれど、出題文においては、「ドロースープはオクラ」と決めつけた表現をしないほうがよい。オクラを消して、「ドロースープ(写真右)は粘りのあるスープ」でよいんじゃないかな。オクラ主体のスープの場合、ナイジェリアにはオクロという料理があるんです。

ドロースープ(写真右)は肉入りのスープである。 →肉なしのドロースープは存在しないのですか? ドローは肉って決めつけているような表現がひっかかる。原義上は、とろみがついているスープがドロースープのような気がします。

参考:英語Wikipedia「Draw soup」(≫こちら
「Main ingredients」の項に、Ogbono seeds(マンゴーの種), water, oil, leaf vegetables (bitterleaf and celosia), other vegetables, seasonings, meat

ナイジェリアにはヨルバ、ハウサ、イボなどの主要民族がいる →「主要民族がいる」という表現は違和感がある。また、こういうときは、多い順に書くのが普通である。ざっと、ハウサ30%、ヨルバ20%強、イボ20%弱として、でも続くイジョも10%強であるから、イボとイジョの間で線引きするのも、分かってやってんのかなーって思う(分かってやってればよい)。民族問題に抵触する部分って、とっても気遣って書かないといけないんだよね。しかも試験問題に使うなら尚更です。よって、「ナイジェリアの三大民族とされるハウサ、ヨルバ、イボ」、くらいに書いておくのがいいんじゃないかな。

ガリはヨルバ族の料理に由来する →本当ですか? 確かに私が書いた元文章では、作ってくれたおじさんの聞き取りを書きました。だから「ガリは本来ヨルバ族の食べ物だということです」と、聞き取りであることを前提にする文章を書きました。でも問題作成者は「ガリはヨルバ」って断定しちゃったよ? これはダメです。

なお、で、本当にヨルバの名前?かどうかを検証したくて、以下を見てみました。
₦airaland Forum(Nairaland Forum)
ナイジェリア最大のオンラインコミュニティとのことです。ここの「Where Does The Word ‘garri’ Come From?」(≫こちら)のスレッドを読んでみました。以下抜粋です(あづさ風の和訳つき)。

質問:「Where Does The Word ‘garri’ Come From?」(ガリという料理名はどこに由来するの?)

回答:「Its a slang “Ngari” by the native of Nigeria」(ナイジェリアにもともとあるスラングだよ。ンガリ。)
回答:「Do ur research,d name garri is from yoruba」(お前調べろよw ガリはヨルバの言葉じゃないか。)
回答:「If u ask me…..i will say its frm Yoruba language.」(僕もガリはヨルバ語だと思うけどなあ。)
回答:「Garri na ibo language angry」(怒るぞ、ガリはイボ語だコラ。)
回答:「Garri is possibly a Hausa word cos any powdery substance is called Garri.」(ガリはハウサ語でしょうよ。ハウサでは粒っぽいものにガリってつけるんだ。)
回答:「Garri is a corrupt word for “ngarri” which is and Igbo word」(昔のイボ語でさ、ンガリってあったじゃん、それがガリになったんだ。)
回答:「”Garri” was first found by the white in “Warri”」(ガリはな、白人の言うワリ(※)だ。)

※訳者注:スワヒリ圏では白飯をワリと言うのでそれを指しているのではないでしょうか。

回答:「its suprising that all d tribes in nigeria call it that general name. BTW na why southerners dey call EBA self garri」(ナイジェリアじゃあどこに行っても民族が変わろうとみんなガリって呼んでるんだからすごいことじゃないか。あ、南部ではエバって言うか。)
回答:「I think its name is from Ghana. 」(ガリってガーナの言葉じゃないでしょうか。)
回答:「Gari originates from Gar Language in Ghana.」(ガリはガーナのガー語から来ています)

・・・延々回答が並びます。

ヨルバ語という人、ハウサ語、イボ語、ガーナの言葉・・・そーだ、という論も、そーじゃない、という論も混在する。現地の人の認識としてはそれでよい。

なお、英語Wikipedia「Garri」のページ(≫こちら)には
「The word Garri originates from the Hausa Language in West Africa. 」(ガリはハウサ語に由来する)と書いてありました。

確かにハウサは歴史の中で商業の民としても優秀な民族であり、アフリカでもいろんな文物を移動させ、持ち込みました。ナイジェリア各地に広まって根付いた言葉がハウサ語に由来しても、現代ハウサ語がアフリカやアラブ各地の文物に由来していても、どちらにしてもおかしくない。

でも料理そのものはどうなのだろう。出題者は「ガリはヨルバ族の料理に由来する」ことに本当に検証をしたのでしょうか。いや、絶対してないと思うな。

なお、私はこの写真を食堂で撮影したため、見出しの「ナイジェリアの家庭料理」が嘘になります。

3)マダガスカルの家庭料理

これ、おそらく、写真は、http://www.geocities.jp/takehikokawasaki/seikatu/syokuji.htmlのものを使っていると思われました(だったら余計に出典書いてあげようよ)。

「主食となる食材」の上にのせた料理 →私のマダガスカル体験では白飯とおかずは分けて皿に盛るものだったため、おかずをごはんに乗せる料理が前提になってしまっていいのかなあと疑問を持ちます。

国民の20%以上を占めるマレー系住民 →通常、20%以上という言葉を使う場合、21~29%の範囲内であることを意味します。20%だったら20%と書くし、35%だったら30%以上と書くはずです。でもマダガスカルでマレー系がそんなに少ないのですか? ほんと?

検証しました。
まずは国勢調査の結果です。
◆The World Factbook、CIA(≫こちら

大検

CIAは米国の中央情報局です。有名なThe World Factbookです。ここに世界中の国勢調査などの結果をまとめたEthnic groups(民族構成)の国別一覧があります。それによると、「Malayo-Indonesian (Merina and related Betsileo), Cotiers(※) (mixed African, Malayo-Indonesian, and Arab ancestry – Betsimisaraka, Tsimihety, Antaisaka, Sakalava), French, Indian, Creole, Comoran」。

※Cotiersは正しくはCôtiers(コティエール)。英語Wikipedia「The people of Madagascar」(≫こちら)によれば沿岸部居住者を指す。

すなわち、

  1. マレー系(メリナ族、ベツィレウ族関連民族)
  2. コティエール(ベツィミサラカ族、ツィミヘティ族、アンタイサカ族、サカラバ族)
  3. その他(フランス人、インド人、混血、コモロ人)

と大きく3分され、更にコティエールにもマレー系が一部含まれています。

◆World Atlas(≫こちら
ワールドアトラスに、民族別人口比率があります。

大検

マレー系と統計認識されるメリナ族が人口の26%、ベツィレウ族が12%、これをあわせて38%。また英語版Wikipedia「Sakalava people」(サカラバ族)(≫こちら)にサカラバ族がマレー系であることが書かれており、サカラバ族6%をあわせると、3民族だけで44%。その他をあわせると、ざっとマレー系民族がおよそ半分を占めると言っていいのではないでしょうか。

問題文に戻ります。

東南アジアから伝えた料理の影響を受けている。 →そもそも「東南アジアから伝えた料理の影響を受けている。」とは日本語が正しくない。「料理には東南アジアから伝わった影響が残る。」などにするとよい。しかし、マダガスカル料理を思い起こしても、それが東南アジアから伝わったようなものが思い出せません。マダガスカルにはバクテーもルンダンもタイスキもない。東南アジアから船で渡った人々は稲作を持ち込んだのでしょうけれど、紀元後すぐという大昔の時代です。聖徳太子よりも前の時代です。料理については何を持ち込んだのか、検証せずに文章を書いたと思えてなりません。稲作が受け継がれたことを書きたかったのだと思いますが、それならば「東南アジアの重要な食文化が継承されている。」というように書くとよいと思います。

* * *

では、最後に、問題本文に戻ります。

「ユウシンさんは、アフリカ諸国の食文化に興味をもち、資料4~6を得た。資料6を参考に、資料5中のX、Y、Zは、モロッコ、ナイジェリア、マダガスカルのどれか。」

◆資料5:各国の小麦、米、とうもろこし、いも類の生産量合計に占める割合

大検

稲作が盛んなのはマダガスカル(X)。イモ類が多いのは熱帯雨林気候のナイジェリア(Y)。ちなみにじゃがいもやさつまいもではなく、よく食べられているのはキャッサバイモ。そして温暖なモロッコが小麦(Z)です。

* * *

次に検証したこと。・・・これが、「果たして高校卒業程度の学力認定試験に必要な事柄なのか?」という疑問があります。

出題意図は、アフリカの白地図を見せて、その国の主食となる作物とつながることを求めているのだけれど。。。それにしては、マダガスカルが特殊すぎて(要は地理気候が育んだ食文化ではなく船で移住してきた人的要素に基づくため)、もうひとつ、写真で、マダガスカルで米の写真を見せてしまうと、勉強してもしなくても米がマダガスカルって分かってしまうじゃないか・・・。こんなんじゃあ、識別指数(※)が上がらない気がします。

※識別指数:その試験問題が良問か否かを判定する基準の1つ。当てずっぽうで当たったり、勉強してもしなくても正答できる問題は識別指数がゼロに近くなります。逆に、ヘンに裏を書くような問題で、勉強した人がむしろ不正解になる問題は識別指数が大きな負の値になります。大きな正の値になった場合、「勉強した人は正答できる、不勉強な人は正答できない」という、試験問題として良質であることを意味します。

地理の出題なのだから、白地図のほか、ケッペンの気候区分の色分け図とか、月別平均気温ならびに平均雨量の折れ線グラフとか、貿易額の棒グラフなどを加工して提示し、日常の学習に使う資料の読み取りの力を問えばよいのではないでしょうか。マダガスカルが米っていうよりも、熱帯雨林がイモというほうが、アフリカの地理の基本であり、重要項目である気がします。

* * *

いろいろ書きましたが、高等学校卒業程度認定試験(大検)の地理の問題作成者が、「tabisite.com」の「その土地の食」(≫こちら)のページのファンになってくれていたのなら嬉しいですね!!

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