<スパイスアンバサダー2021>
スパイスアンバサダーの8~9月の活動テーマは、「世界のスパイスごはん、さっぱり・さわやか編」というテーマです。そこで今回より、10回連載で、さっぱりした料理として酸味に着目した「スパイスを使う世界の酸っぱい料理」を掲載していきたいと思います。
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<“さっぱりした料理”とは>
料理における「さっぱり」さとは、1)水分が多い、2)冷たい、3)酸味がある、の1つ以上を満たす料理であると考えられます。唐揚げにレモンをかけるのは、その3つを全部手早く達成するから「さっぱりする」のです。また、結論から述べると市販の乾燥品としてのスパイスだけではさっぱりさを出すのは通常無理だと思われます。例えば唐揚げやカレーなど、油分が多かったりもったりしている料理に、唐辛子やこしょうをかければさっぱりする? いや、刺激は生じるがそれは “さっぱり” とは違う。カレー粉?シナモン? いや、それも “さっぱり” した料理に変えているとは認識されない。バジル?ミント? それらは、みずみずしい生の葉なら1)水分UPによりさっぱりさを出せますが、香気成分が抜けた乾燥市販品では無理だと思う。
我々は、「さっぱり」した料理を作るために、1)水分の多い食材を使う(例:みずみずしいサラダ)か、2)冷たい料理を作るか(例:冷や汁)、3)酢やレモンで酸味をつけるなどします。1)と2)は水分と温度の問題なので、味付けの点で “さっぱり” した料理に取り組むなら3)酸味がほぼ必須で確実と捉えて良いでしょう。
なので、今回の「“さっぱり” した世界のスパイス料理10選」は、「世界の酸っぱい料理」を選ぶことに結論が到達しました。
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<スパイスを使った、世界の酸っぱい料理の選別コンセプト>
スパイスを使った世界の酸っぱい料理とそのレシピを紹介します。10か国を選ぶコンセプトは以下の通りです。
- 世界246か国を俯瞰してその国にどんな酸っぱい料理があるかを検証し、私がその国でその料理を実食した本物の料理を重視する。
- 「酸っぱさ」を4つの柱に分けた。連載第1~2回:酸乳編、3~4回:発酵編(※野菜の発酵を扱う)、5~7回:お酢編、8~10回:柑橘編と4大柱を構築する。
- 課題が「世界のスパイスごはん」なので、飲み物やデザートを作らない。おかずを作る(※最後1回だけおまけで驚きドリンクを紹介します)。
- アジア、欧州、アフリカ、米州、オセアニアと、5大陸を含める。
- 本物重視。スパイスを使った我流アレンジ料理にはしない。スパイスを使うその国の食とする。
- 主催者選定スパイス17種類のうち最低1つを使用する。そのメインスパイスは10回連載で重複せず、10回連載で主催者選定スパイスを10種類以上使うことになる。
- 全体を通して(10回内)国は重複しない。
・・・と、このような壮大な検証を経て(ここに最も時間がかかったけれど楽しかった)、10レシピを選定しました。
世界の料理って本当に素敵です。
酸っぱい料理はもちろん残暑の疲労回復にも最適!!! そこに、日本料理にはない新しいアイディアが加わると、食の幅が広がり、暮らしの楽しみが広がります。「美味しいものは、誰が食べても美味しいのだから」、それを伝えることを私の楽しみとして、10回連載で世界の酸っぱくてさっぱりとしたスパイス料理を紹介します。
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【第7回】お酢編3)エジプト料理「ファッタ」
「お肉を酢とあわせる料理は、私の知る限り、エジプトにはファッタくらいしかないのではないでしょうか」と、日本語を綺麗に流暢に話すエジプト人マダムが教えてくれました。そして作ってみたら、それはそれはとても美味しい料理でした。
材料(6人分):
- 米
- 2合
- 塊の肉(※1)
- 400 g
- 玉ねぎ
- 中1個
- バター
- 大2弱(※2)
- 水(肉をゆでる用)
- 400 mL
- 塩
- 小2弱(※3)
- ピタパン(※4)
- 2~3枚(※4)
- オリーブオイル
- 大3(※5)
- トマト缶
- 1缶(400 g)
- にんにく
- 1玉(※6)
- 酢
- 大3
- こしょう
- 小1/3
- クミンパウダー
- 小1/3
- カルダモンパウダー
- 小2/3
- ベイリーフ
- 1枚
※1:塊肉はあれば羊肉、または牛肉がよいです。厚さが3 cmくらいあればカレー用などにカットされたものを使ってもよいです。
※2:バターは3か所で使います。ここでは総量を記載しています。
※3:塩は4か所で使います。ここでは総量を記載しています。
※4:ピタパンは中が空洞になっている平パンです。なければインドのナンのような薄焼きパンで代用します。200 gくらいあればよいです。
※5:オリーブオイルは2か所で使います。ここでは総量を記載しています。
※6:にんにく1玉は、1かけではなく、1玉丸ごとを使います。あるいはにんにくとして60~70 gくらいあればよいです。
作業工程:2 時間(米の吸水を1時間とした場合)
- <米準備>米を研ぎ、夏なら40分以上、冬なら2時間以上、水(分量外)に浸けておく。
- <肉準備>米を水に浸けている間に、肉を厚さ3 cmに切り、10~12個に切り分ける。
- 玉ねぎを細かめのみじん切りする。
- 肉をゆでる中鍋にバター(大さじ1)を入れて中火にかけ、玉ねぎを入れて炒める。
- 玉ねぎがしっかりと炒められたら片隅によけて、肉を入れて表面を焼き、水と塩(小さじ1/3)を入れて強火にかけ、沸騰したらフタをし、ごく弱火にして1時間煮る。
- <パン準備>ピタパンを開き、4 cm角くらいにちぎってフライパンに入れ、手のひらにオリーブオイル(大さじ1)を乗せてから、パンにオイルがなるべく均等につくように、両手でパンを和える。
- 手を洗い、フライパンを中火にかけ、ときどき中を混ぜながら、おせんべいみたいに軽く香ばしくなるように数分間炒り、盛り付ける皿に並べ、フライパンの中のパン粉も皿の中央にあける(フライパンは後で米を炒めるので洗わずに置いておく)。
- <トマトソース準備>肉がゆで終わる15分前になったら、トマト缶の中身をハンドブレンダーかミキサーにかけ、にんにくを細かいみじん切りにする。
- トマトソースを作る小鍋にオリーブオイル(大さじ2)とにんにくを入れて中火にかけ、少し色づいて香りが出たら酢を入れてじゅわっとさせ、トマト缶の中身、塩(小さじ1/2)、こしょう、クミンパウダー、カルダモンパウダーを加え、ときどき鍋底から返して焦げ付かないようにしながら、とろっとソース状になるまで煮詰めていく。
- 肉をゆで終えたら火を止め、肉を別容器に取り出し、鍋のゆで汁を味見して、塩加減や旨味加減を好みに調える。肉の旨味が足りない場合はビーフコンソメ(分量外)などで補う。
- <パンの仕上げ>肉のゆで汁のおよそ100 mLをパンにかけ回し、吸わせる。
- <トマトソースの仕上げ>肉のゆで汁の残りの1/3量を鍋から取り出してトマトソースの小鍋に加え、全体を混ぜて、引き続きトマトソースを煮詰めていく。とろっとしたら火を止め、味見をして塩加減などを好みに調えておく。
- <ごはんを炊く>トマトソースを煮詰めている間に、米をザルにあげて水気を切る。
- フライパンにバター(小さじ1)と塩(小さじ1/3)を入れて中火にかけ、バターが融けたら米を入れ、全体に均一にバターがゆきわたるように1分くらい炒め、炊飯器の釜に入れ、肉のゆで汁の残りの半量を入れ、水(分量外)を目盛りの1.7合の高さまで入れてひと混ぜし、ベイリーフを入れて急速炊飯モードで炊く(フライパンは後で肉を炒めるので洗わずに置いておく)。
- <肉の仕上げ>フライパンにバター(小さじ1)を入れ、中~弱火にかけて融かし、肉を入れ、塩(小さじ1/3)をまんべんなくふり、表面が良い焼き色になるよう、じっくりと焼きつける。
- <盛り付け>ごはんが炊けたらベイリーフを除去してから全体を混ぜてほぐし(このとき肉の残りのゆで汁の一部を少々混ぜてもよい)、パンの上に盛り、肉のゆで汁の残りをごはんの上からまんべんなくかけ、平らにならし、トマトソースの3/4量を乗せ(残り1/4量は小皿に入れておく)、肉を乗せて出来上がり。
- 完成したファッタと、トマトソースの小皿を卓上に出し、トマトソースは食べる人が好みで追加できるようにする。
- Enjoy!
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レシピや写真を見ると驚きますよね、というか、躊躇しますよね。だって「パンの上にごはんをかける」なんて日本人には異色すぎて。でも作って食べて大感激です。ミドルイースト感が炸裂する美味しさです。下から順にホブズとごはん、肉のゆで汁をたっぷりかけ、ガーリッキーな酢トマトソース、てっぺんに肉。現地ではよく大きなグラタン皿などに敷き詰めるのですが、日本でならば、食べる人にこの「ファッタの仕組み」が分かるほうがよいと思うので、この写真は盛り付けを工夫し、パンもごはんもソースもお肉も、全部が目で見える盛り付けにしました(現地にもこのような盛り付け方があります)。作るのは一見手間ですが、1)肉をゆでてゆで汁を米とパンとソースに分けて使う、2)米は炊飯器まかせ、3)パンは軽く炒るだけ、4)トマトソースは鍋で煮詰めるだけ、と、4本のレールを頭に入れて作っていけば、同時進行も難しくならないのではないかと思います。
「夏は、スパイスを使った酸っぱい料理が合う!」
これからも、その楽しさと美味しさが詰まったレシピを厳選し、夏に合う、スパイスを使う世界10か国の酸っぱい料理を掲載していきます。どうぞ次回もご期待ください。よろしくお願いします。
【第1回】酸乳編1)
~アフガニスタン料理、ボラニカチャル
【第2回】酸乳編2)
~アルバニア料理、ターブコーシ
【第3回】発酵編1)
~中国料理、酸菜鱼(スアンツァイユー)
【第4回】発酵編2)
~ロシア料理、サリャンカ
【第5回】お酢編1)
~フランス料理、プレオービネグル
【第6回】お酢編2)
~ドイツ料理、ザワーブラーテン
【第7回】お酢編3)
~エジプト料理、ファッタ
【第8回】柑橘編1)
~***料理、***
【第9回】柑橘編2)
~***料理、***
【第10回】柑橘編3)
~***料理、***
※本記事は(1)「ハウス食品×レシピブログ」のモニターコラボ広告企画に参加していること、(2)スパイスをモニター提供されたことに基づき執筆するものです。
【レシピブログの「食卓で旅気分を楽しもう!暑さに負けない、世界のスパイスごはん<さっぱり・さわやか編> 」レシピモニター参加中 】