家庭菜園がご趣味の知人(恩師)が、今年ビーツを初栽培していました。
でも一方で、「僕と妻はビーツの食べ方が良く分からない」と仰っていました。そのご家庭は和食メインの食生活をされているのです。ビーツは日本の伝統料理に使用例が少ないので、そのお話を伺って、私は率直に「ああ困ったな。。。」と思いました。少なくとも、世界のスタンダードなビーツの食べ方は日本料理ではないですし、あの独特の土臭さは和食の味付けを損なうとさえ思います。もちろん、きんぴらや天ぷらのように、日本の料理には素材の風味を減らす調理法もあるのですけれど、私は、最初にその野菜を好きになるための料理は、風味を殺すのではなく、その野菜が真価を発揮する美食を食べるほうが良いという考えを持っています。
その知人は、自分が愛着をもって育てた野菜を知人におすそわけをすることを生きがいの1つにもしておられ、折角ビーツを1000株も作られ、素晴らしく美味しいビーツが生育し、今回、私も美味しいビーツを頂いたので、なおさらビーツの美味しい食べ方をお伝えしてあげたほうがいいと思いました。ただホームページのリンクを知らせるだけよりも、美味しくて簡単なビーツ料理をレシピブックにして差し上げれば、その知人だけでなく、知人の知人の方々(ビーツをおすそ分け頂いた方々)にも役に立つかなと思いました。
そこで今回、私が世界中で食べて美味しくて、日本の自宅でも簡単に料理できたお墨付きのビーツ料理を5つ選び、レシピブックにして、知人に提供しました。喜んでいただけるかは分かりませんが、役立てるポテンシャルは確実にあるものと思って。
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ところで私は、料理イベントの会では、こういう綺麗なレシピブックを、主催者の要望がなくても丁寧に作成しています。
そして、最終打ち合わせの頃に「今回調理する料理をまとめました。一応、プリントアウトして綴じればレシピブックになるので、参加者に配布もご自由にしていただけます。」と言うと主催側も喜んでくださり、参加人数分プリントアウトをしてくださいます。
今回も、ビーツを頂いた御礼に、私が選ぶ世界のビーツ料理5つを掲載したレシピブックを作成しました。世界的に名高いボルシュ(ボルシチ)は外さず、普段和食一辺倒の方でも食べやすいようポテトサラダやカレーのような身近な料理を含め、これから暑くなるのでその温度で美味しく感じる冷たい料理も季節柄含めました。ビーツ料理を美味しくする必殺技的なスメタナも簡易手作りできるようレシピブックに含めました。
▼こんな感じ♪
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選んだのは以下の6料理です。レシピリンクをクリックするとレシピを見ることができます。
1)ボルシュ
概要 :ボルシチ。ビーツとその他野菜と肉の煮込み料理
料理紹介:ボルシュは日本では「ボルシチ」として有名なスープです。ビーツという赤い根菜が主役のスープで、健康に良さそうな素敵な色をしています。ボルシュは今のウクライナのあたりが起源とされており、ロシアやウクライナの国民食である上、中央アジアのソ連構成国などにも広まりました。ビーツは、大根やカブと同様に、煮込むことで大変に甘く美味しくなります。この料理はキャベツを使うことも大事な要素で、煮込んだ結果として野菜の優しい甘さが口にあふれます。現地のスメタナは無糖ヨーグルトと生クリームをブレンドして簡単に作れますので、是非手作りし、現地のように添えて混ぜて食べてください。
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2)ハロードヌイボルシュ
概要 :ビーツを使ったピンク色の冷たいスープ
料理紹介:初夏に旬を迎える生のビーツは、驚くほど赤い色素を豊富に持ち、料理を赤く美味しそうに仕上げてくれます。ビーツを使う代表的な料理には、有名なボルシュ(ボルシチ)という赤いスープがありますが、夏はその冷たいバージョンも好まれます。スメタナ(発酵乳)と混ぜるので、不透明ピンクが素晴らしく綺麗♪ ゆでたビーツの酢漬けがあれば、火を使わないでこの冷たいスープが完成します。真夏の暑さのもとでは、「ハロードヌイ」すなわちキンキンに冷えたという意味のスープがこの上なく美味しいです。ほのかな酸味も気持ち良い。このレシピでは生ビーツを使い始めるところから調理過程を解説します。
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3)ビネグレット
概要 :ビーツと角切り野菜の酢の物サラダ
料理紹介:ロシア、ウクライナ、ベラルーシといった東欧の地域で「ビネグレット」と呼ばれるサラダは私の大好物。作り置きおかずが並ぶ食堂に行くと大抵置いてあって、見かけるとよく食べています。ビーツの赤さと甘さがこの料理の鍵で、あとは塩加減や酢加減が好みに決まれば作り方や分量の自由度が高いので、とても作りやすい料理だと思います。玉ねぎとビーツの美味しさを吸ったピンクの酢がじゃがいもにまとわりつくのが美味しい。基本的調味料が、酢、塩、サラダ油なので、日本の家庭でも作りやすく、ビーツビギナーには最適ではないかと思います。
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4)ポビーツマヨ
概要 :ビーツとじゃがいものマヨネーズサラダ
料理紹介:ニュージーランドの自由連合国家であるクック諸島は、近年日本からも独立を承認された、ポリネシア人が主要民族となる国です。ニュージーランド人が夏の暑い海を楽しみに来る、沖縄のような存在でもあります。クック諸島の伝統料理をいただく機会に、このビーツとじゃがいものピンクサラダを教わりました。クック諸島の新聞には料理名「マヨネイズ」と書かれ、宿のおばさんは「ポビーツマヨ」(ポテト、ビーツ、マヨの短縮形と思われる)と呼びます。マヨマヨしたポテトサラダが好きな人なら、舌触りが良くて滋味あふれる甘味をもつビーツが入った「アップグレード」感に、きっと満足していただけることと思います。
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5)ラトゥアラカリ
概要 :ビーツのカレー
料理紹介:これカレーですよ!真っ赤なカレーです!!ビーツをカレーに使うのはスリランカのあちこちで見かけた知恵。現地のシンハラ人の女性に作り方を教わり、食べた時に元気が出るような美味しいカレーが作れました。ビーツ自体に甘さがあるのでスパイスを利かせてもこのカレーは加えた唐辛子の量ほどは辛くありません。ビーツのもつまろやかさで、仕上がりもとってもまろやかで、しかしながらスリランカ料理たるスパイシーさを失わず、ご飯のとの相性も良いのです。モルジブフィッシュのかわりとして鰹節を入れましたが、カツオのダシをとるのもスリランカの教え通り。カレーに鰹節は相性がいいんですよ。
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<おまけ>
6)スメタナ
概要 :手作りのサワークリーム
料理紹介:いわゆるサワークリームは、脂肪分を比較的多く含む生乳を発酵させて作るもので、東欧料理には頻繁に登場します。美味しさが濃厚で、実に食べ飽きない味で、料理への応用範囲が広くて、一度作ると大変に重宝します。家で作る場合はヨーグルトとホイップクリームを混ぜるだけでもかなり現地のものに似た本格的な味になります。日本の市販のサワークリームは現地のものと硬さが違い、世界の料理を作るには、むしろこの手作り品のほうが都合が良いのです。パンに塗って食べても美味しいですし、お肉料理にもかなりよく合うし。こうしてカルシウムを摂るチャンスが増えることは健康的で嬉しいですね。
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本記事が、日本でビーツを美味しく食べてみたい皆様のお役に、ひいては家庭菜園でビーツを育てる楽しみのお役に立てることを願っています。