「本物のピクルス」を作ろう。塩水だけの乳酸発酵

2026/10/20

緑のトマト

「ピクルス」の作り方と言えば、日本では甘酢に野菜を浸す方法が一般的です。しかしそれは即席のものであり、その酸味は酢に含まれる酢酸が主体です。

世界には「もっと基本的なピクルス」があって、それは「塩水に漬けて何週間か置く」だけで、酸を加えずに作る、乳酸発酵によるピクルスです。その酸味は乳酸が主体です。

私が以前アルメニアに行ったとき、首都エレバンの家庭でホームステイをしたのですが、そのときキッチンに、大きな瓶に入った美味しい緑のトマトがありました。食べてみたら本当に美味しかった!! ラベルには、

Թթու

と書いてありました。トゥトゥと読みます。漬物のような意味です。食べたとき、「酢漬けではない軽やかな酸味」だとそのとき思いました。今思えば、私はその時点で「酢酸でない、乳酸の軽やかな酸味」を感じ取っていたのです。

その後、ロシアやその他の国でも同様の料理がありました。ロシア語ではマラソルネヤ(Малосольные)やクワシェニエ(Квашеные)と呼ばれます。やはり美味しい。いろいろな野菜で作られるのですが、でも不思議と、トマトの場合は緑のトマトが使われます。

日本料理には緑のトマトを使うレシピってほぼないじゃないですか。スーパーで売っていないし、一般家庭に緑のトマト料理が根付いていない。

また、日本で野菜の漬物といえば、野菜に塩をふるタイプが主流です。でも海外では塩水に野菜を入れる漬物がとても多いです。作り方を教わっているとき、この違いも衝撃的でした。

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私は塩水に野菜を入れる手法で漬物を作ったことはありませんが、あのときの美味しさを思い出し、そしてアルメニアの旅を思い出し、勇気を出して作ってみることにしました。ならばやはり緑のトマトで作りたい。思い出にある美味しいトゥトゥを再現したいです。

トマトは夏野菜であり、秋になっても暑気が残るうちは赤く熟しますが、秋が深まると熟れなくなり、12月には緑のトマトをつけたまま枯れていきます。日本では緑のトマトは商品価値があまりない(スーパーで市販されないですし)ので、私も流石に12月の緑のトマトの使い方が分からず、以前は土に混ぜて堆肥化するのみでした。

12月中旬、菜園で採った今期最後のトマト。

緑のトマト

つやつやしていますね~。傷んでいません。

5%の塩水(※)を作り、ハーブ・にんにく・スパイス類と共にトマトを入れました。

※厳密に言うと100 mLあたり5 gの塩を入れるので重量パーセントは4.76 w/w%。容量パーセントは塩水になることで体積変化をゼロと近似すると5 w/v%です。

緑のトマト

なお、注意事項としては、完全密封しないことと、毎日チェックすることです。

塩水に入れているのでトマトやスパイスは浮きます。だからどうしても水面に出る部分ばあります。そして水面に出た部分からカビが生えるおそれがあるので、毎日様子を見ることが大事です。私はカビ防止のために、水面から出る物を覆うようにラップをかぶせて遮断しています。

ただし、完全密封はいけません。フタは完全には閉めず(写真の容器にはトップに小さな穴と開け閉めの弁がついています)、毎日フタをあけて、酸素は送り込みます。なぜならば、乳酸発酵自体は酸素を必要としない化学反応で行われますが、乳酸菌の増殖自体には酸素が必要であり、酸素を送り込むことで乳酸発酵に関与する菌数は急速に増加します。乳酸発酵が進行すれば酸度が上がり腐敗から守ることになるのです。

カビ菌は増やさずに乳酸菌を勢いよく増やす、ということを考えて最初の数日は特に大事に守っていくのです。

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1週間経過。

緑のトマト

少し発酵が進んだようで、色がくすんできました。いいですねー。

味見をすると、塩水の塩味と、元のトマトの味がします。なんか薄い塩漬けの味であり、乳酸発酵の漬物には遠いです。

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3週間経過。

緑のトマト

いい具合に色がくすんできました。

味見をすると、嬉しいことに、いい酸味が出ています。穏やかできつくなく優しくて美味しい酸味です。

このように、チェックして、ちびちび味見をして、

7週間経過!

緑のトマト

美味しいー♡♡♡

本当に、いい発酵の味になりました。いい味です。発酵の旨味です。そして一緒に食べている家族との会話におのずと以下のセリフが生まれました。

「これ、本当のピクルスだよね・・・」

心底そう思いました。酢で漬けたのでは出せないこの優しくて軽やかで旨味を感じる酸味。でも酸味は強い。酸味が強いのに穏やかだと感じる酸味。そして良い香りがする酸味。これが乳酸発酵による自然の酸味なのだね。美味しかったです。

ちなみに、ロシアで食べたものは、上の3週間漬けに近かったです(それはたまたまそれに出会っただけの話です)。元の野菜の味もして、発酵があまり進み過ぎず、浅漬けの感覚が残っていたからです。アルメニアで食べたものは7週間漬けに近かったかな(それもたまたまそれに出会っただけの話です)。発酵が進んでいますが最後に砂糖を加えているようで、穏やかな酸味に甘みが入って、食べやすくなっていました。

実際に作ってみて分かったことは、赤いトマトで作っても美味しくないということです。緑のトマトでないと美味しくない。赤いトマトだとぐにゃっとなるし、漬けている間に自然破裂するものも出てくるからです。しかし緑のトマトで作ると周りの塩味だけでなく、ハーブ・にんにく・香辛料の美味しさと自身の野菜の味と発酵してきた周りからの酸っぱさ(乳酸)で美味しい。

あと、漬け汁が白濁していますが、これが正常な乳酸発酵の証拠です。乳酸菌の菌体成分や多糖類などの代謝物、野菜由来の成分など。海外で市販されている「本物のピクルス」も液体が白かったり、白いものが静沈していますから、自作のピクルスがそうなることは、正しく作れた証しです。

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初めて作って大成功だったので、それからは塩水の乳酸発酵の漬物をよく作っています。とにかく注意点は、水面に固形物があるとそこにカビがつくので毎日見てあげること。カビが少々ついても大丈夫で取り除いて上下を混ぜればいいです(このへんは味噌づくりと同様です)。ついていなくても(多分目に見えていない何かはあるので)ときどき上下を混ぜること。あと、カビを取り除いた後も不安だったら、液体部分だけを沸騰させて冷まして容器を消毒して野菜を戻すと復旧できます。

真冬だと気温が低いから作りやすいです。でも乳酸菌は40℃でも生育するから夏でも作れます。

酢を使わない漬物は、塩水(ブライン)によって善玉菌を活性化させ、酸味と保存性を引き出す伝統的な手法です。

漬け物なんて一気に大量を食べるものじゃないから、長い日数をかけてちびちびこまめに食べていくものです。健康法に良いよね。

さて、腸管免疫、増やしますか^^ プロバイオティクスですね♪

緑のトマト


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