米国食文化を知るための米国国勢調査結果におけるヒスパニックの捉え方

2025/08/09

サンタフェ

今日の記事のタイトルは「米国食文化を知るための米国国勢調査結果におけるヒスパニックの捉え方」。

いや~、

アメリカの国勢調査を読むの、めちゃくちゃ難しいんですよ!

だって国勢調査に人種を加味しているので、データが多いのです。人種を加味すると、当然、Alone(白人のみ、みたいな)とかCombination(混血)とかで組み合わせが増えます。でも、最近米国食文化の仕事で米国国勢調査にどっぷり悩む日々が続いていたのと、やらなくなるといずれ忘れてしまう未来の自分のために、未来に役立つメモを作っておきたいと思ってこの記事を書いています。

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私はアメリカ50州の全ての州をレンタカーで旅して食の収集をしてきました。現在49州制覇! 残すはハワイ州のみ。

全米の食制覇まであと1州です!!

※社員旅行や家族旅行でハワイは訪問しているので全米50州は訪問達成済みですが「レンタカーで食文化を学ぶ旅」としてはハワイ州を未訪問扱いとしています。

最初がカリフォルニア州スタートだったのですが、驚きました。ローカルなスーパー、ローカルな道、ローカルな飲食店、皆さんスペイン語話してるじゃないですか。だって学校で教わらなかったもの、アメリカでこれほどスペイン語が話されているだなんて。「アメリカは英語」ってそれだけ植え付けられた脳には衝撃的だったんです。

「ヒスパニック」という人々が、単語でのみ知っていた彼らの存在が、こんなに大きいことが、衝撃的だったわけです。

では、白人・黒人・先住民と多人種の全米で、ヒスパニックの割合はどのくらい?

そう思って最新の米国国勢調査結果(2020年)を見ていたら、

アメリカ人の人種内訳にヒスパニックがない

ということが衝撃でした。米国内でも含めるか否かに議論はあるから「あっちゃいけない」わけでは決してないんですが、ヒスパニックのそもそものルーツとしてスペイン人があるから白人と分けにくいのだと思う。でも、食文化の点では、白人料理、黒人料理と並べて、ヒスパニック(主にメキシコ系のラテン系)料理を外すことができない。つまりヒスパニックの人口寄与度を知らずには白人料理とか黒人料理とかすらも語れません。そこで、かなり時間はかかりましたが、食文化を知るための米国国勢調査結果の読み方を自分用にまとめました。

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まずは英語Wikipedia「Race and ethnicity in the United States」(≫こちら)から読んでみました。

タイトル訳:アメリカ合衆国における人種と民族

ここめっちゃ重要なんですが!
米国では人種民族を使い分けています。だからタイトルは「Race and ethnicity」です。

アメリカ人の人種には5区分あり、1)白人、2)黒人、3)ネイティブアメリカン/アラスカ先住民、4)アジア人、5)ネイティブハワイアン/その他の太平洋諸島民。あと6)その他が存在します。

ちょっと長いのでここでは、1)白人、2)黒人、3)先住民、4)アジア人、5)太平洋人、6)その他と短く書きます。

よって統計上アメリカの人種にヒスパニックはいません。

ここで大事なこととして、国勢調査では別質問で自身がヒスパニック系またはラテン系であるかどうかを尋ねています。ヒスパニックの米国での定義は英語版Wikipedia「Hispanic」(≫こちら)によると「米国でスペイン語を話す人々とその子孫を指す」(Spanish-speaking people and their descendants in the United States)ということで、ヒスパニックは白人とか黒人という遺伝子によらず、「スペイン語を話す人」という言語的な人の区別です。・・・まあそうだよなあ・・・

ヒスパニックってかなり白人入ってるもんなあ。

初期移民なり開拓者としての欧州白人は政治的エリート層であり、その自分らがここに来る前からここにいる白人を区別なり差別するために、白人社会がヒスパニックを人種区分で白人に入れないためにこんな苦しい区分けをしているのだろうなあと、ちょっと思うわけです。

で、「ヒスパニック系またはラテン系」と書くのが長いのでここでは「ヒスパニック」と記載します。

サンタフェ

全米各州で地元ごはんを食べていてヒスパニックが強いと感じるのはカリフォルニア州やニューメキシコ州ですね。上の写真はニューメキシコ州のサンタフェです。で、国勢調査局では上の「アメリカの5大人種」のそれぞれに、ヒスパニックの血が交じる人と混じらない人がいるとしています。さっきも書いたように5大人種とヒスパニック有無は別調査なのですが、ではヒスパニックに焦点を当てた人口統計を見ていきましょう。

2020年国勢調査のヒスパニック系アメリカ人の人種的人口統計について、英語版Wikipedia「Hispanic and Latino Americans」(≫こちら)でヒスパニックは6千2百万人いました。

さらに、ヒスパニックの中での人種別の割合を出したデータはあって、英語版Wikipedia「Race and ethnicity in the United States」(≫こちら)の「Hispanic or Latino Population by race (2020)」に載っています。

ヒスパニック

またここから読み取れることとして

【全体】ヒスパニックでないアメリカ人が81.27%、ヒスパニックのアメリカ人が18.73%です。ざっと5人に1人がヒスパニック
ヒスパニック全体を100%としたとき、
ヒスパニックの白人:20.26%
ヒスパニックの先住民:2.38%
ヒスパニックの黒人:1.87%
ヒスパニックのアジア人:0.43%
ヒスパニックの太平洋人:0.11%
ヒスパニックのその他人種(メスティソやムラートなどの混血系):42.25%
ヒスパニックの複数人種:32.70%
です。これを合算するとヒスパニック全体が100%になります。ヒスパニックの白人(単独及び混血)は62.51%、ここから非白人との混血を除外しても6割はいくのではないでしょうか。ヒスパニックの3人に2人が白人系と思われます

今度は分母をアメリカ人全体(3憶人以上!)を100%としたとき、
ヒスパニックの白人:3.80%
ヒスパニックの先住民:0.45%
ヒスパニックの黒人:0.35%
ヒスパニックのアジア人:0.08%
ヒスパニックの太平洋人:0.02%
ヒスパニックのその他人種(メスティソやムラートなどの混血系):7.91%
ヒスパニックの複数人種:6.12%
です。これを合算すると全米におけるヒスパニック比率が先ほどの通り18.73%になります。

* * *

次はアメリカ全体から見た国勢調査2020人種別調査結果(≫こちら)です。
白人:75.3%
黒人:13.7%
先住民:1.3%
アジア人:6.4%
太平洋人:0.3%
上の2つ以上の人種:3.1%
これを合計して100%です。

英語版Wikipedia「Non-Hispanic whites」(≫こちら)より、「白人」をヒスパニック白人と非ヒスパニック白人に分けたとき、非ヒスパニック白人:全米人口の58.4%。つまりヒスパニック白人は全米人口の75.3-57.47=17.83%だ。上の18.73%に近い数値だけど、18.73%は6人種の中のヒスパニックの合計で、17.83%は白人の中のヒスパニックだから意味は違う。そしてヒスパニック白人の全白人における割合は1783÷75.3=23.7%。

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これでやっと目的を達成しました。

多分、「1)定義」、「2)統計上の扱い」「3)全人口におけるヒスパニックの割合」、「4)ヒスパニックにおける白人の割合」、「5)白人におけるヒスパニックの割合」、「6)白人主体の米国で、次点は黒人かヒスパニックか」。この6点を理解していればいいんだ!

6点をまとめます。

1)ヒスパニックは人種区分ではなく言語区分である。定義は「米国内のスペイン語話者」。
2)ヒスパニックは人種名ではないので統計にヒスパニックという人種枠はない。ヒスパニックは5人種(白人とか黒人とか)にその他を加えた6枠の中でそれぞれ割合が集計されている。
3)全アメリカ人のうちヒスパニックは18.73%。
4)ヒスパニックにおける白人の割合は混血込みで6割くらいになるのではないか。
5)全アメリカ人のうち白人は75.3%。ヒスパニック白人は全米人口75.3-非ヒスパニック白人57.47=17.83%で、ヒスパニック白人の全白人における割合は1783÷75.3=23.7%。
6)なお白人に次いで多い人種は黒人(13.7%)だが、ヒスパニック(18.73%)のほうが多い。黒人にもヒスパニックがいるのでヒスパニック優位性はもっと高い。

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なお米国の国勢調査は10年ごとの実施ですが、2020年国勢調査のあとで「人種枠の変更」が決定されました。(≫こちら)。
タイトルは「我が国の人種/民族基準の改訂」(Updates to Race/Ethnicity Standards for Our Nation)

次の国勢調査(2030年)から、1)先住民、2)アジア人、3)黒人、4)ヒスパニック、5)中東&北アフリカ、6)太平洋人、7)白人の7区分で統計が集計されます。多分ここにその他を加えたら8区分なんですかね。

そう。ともあれ、

次の国勢調査からヒスパニックが人種として登場します!

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感想としては、個人素人なので間違えはあるかもしれないけれど、やれることはやったと思う。もともとヒスパニックについて人口割合を知りたかった背景には、「アメリカ南西部はヒスパニックが多いよなあ」と肌で感じていたことや、「アメリカ南東部は黒人が多いよなあ」と肌で感じていたこと。では黒人とヒスパニックのどっちが多いかは知らなかったし、考えてもぱっとネット検索してもいまいちわからなかったんです。・・・「ぱっと」じゃあ何事もダメなんですよね。だから、ちゃんとやってみようと思いました。なお「ぱっと」で人口比率がつかめなかった理由は、黒人とヒスパニックは統計区分が同等ではなかったのですから当然ですね。

ともあれこうして上のようにあちこちの英文を読んで数字を見て、1位白人、2位ヒスパニック、3位黒人、と、数字を以ってアメリカ人のことを理解することができました。

ちなみに料理の一言コメントですが、黒人料理は揚げ物が多くて胃にきます。白人料理は野菜が少ないのと工場製造食材多用で味が工業的。一方でヒスパニック料理は野菜が多くて香辛料という自然の味が嬉しいと感じました。


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