全粒粉で中国の「古き良き素晴らしき水饺(シュイチャオ)」を再現

2022/11/08

全粒粉全粒粉は小麦を丸ごと細かく挽いた、やや茶色い小麦粉です。

私は常々思うのですが、きっと昔は料理が美味しかったことでしょうね。

日本は今、醤油や味噌も工業生産品となり、鶏肉の飼育も機械的で、牛肉や牛乳になる牛は間違いなく薬物を摂取していて、農薬を使っていない野菜は皆無といっていいほど出回っていません。でも昔だったら、元気に走り回る鶏とか、堆肥作りから努力して作る野菜とか、それはそれは美味しい食材だったでしょうね。そういう意味で昔の料理は美味しかったのだと思うのです。

小麦粉の話をしましょう。
製粉技術が高い現代では真っ白な小麦粉を普通に購入できるけれど、昔だったら、表皮(ブラン)や胚芽が入った状態で粉にして、今で言う全粒粉をよく使っていたと思います。

全粒粉の魅力は、旨味の濃さ、色の濃さ、色が濃いから美味しそうに見えること、そして、昔ながらの粉を再現しうる素晴らしい食材であり、全粒粉を使う世界の料理には古き良きレシピとの邂逅があります!!

* * *

私の友人に、1980年代に北京に留学していた女性がいます。

彼女は

「当時、小麦粉は黄色かった」

と言っていました。白い小麦粉が皆無という意味ではなく、日常生活の中でよく見る小麦粉の印象と記憶。

その言葉を聞いて、私はとてもとてもうらやましくなりました。「黄色い小麦粉」とは今で言う全粒粉のような粉のことでしょう。私はすぐに、そのような味わいの深い小麦粉で作る料理は美味しそうだなあと思いました。

そこで今回是非作りたいと思ったのが、中国を代表する料理の1つである水饺(シュイチャオ)です。日本語では水餃子(すいぎょうざ)です。それを、友人が言うように、色がついた小麦粉で、古き良き素晴らしき水饺(シュイチャオ)を作ろうと思いました。今回は、友人の言う色合いに近くなるように、事前に何段階かで全粒粉割合を変えて試作し、全粒粉の配合割合を20%に決定し、結果として素晴らしく美味しい、昔ながらの古き良き水餃子を作ることに成功しました。

このページでは、レシピと、美味しく本格的に作るためのコツを惜しみなくお伝えします。

こんなに美味しい水餃子が自宅で食べられるなんて!

と、食べた人に喜んでもらえるレシピだと思います。興味があれば是非作ってみてください。

heart『全粒粉の皮で♪ 古き良き素晴らしき水饺(シュイチャオ)』
材料(36個分;2人分):
<皮>

中力粉
175 g
全粒粉
50 g
強力粉
20 g
片栗粉
5 g
3 g(小1/2)
熱湯
115 g(※1)

※1:熱湯の量は空気の湿度や粉の含水量によって変動しうるため多めに用意します。

<具>

ニラ
110 g
豚ひき肉
110 g
小1/3
味の素
小1/5
こしょう
小1/5
鶏がらスープの素
小1/3
醤油
小1
ごま油(※2)
大1

※2:ラードがあればごま油を減らしてラードを使うとよいです。

作業工程:1 時間 50 分

  1. <皮の準備>ボウルに中力粉、全粒粉、強力粉、片栗粉を入れ、スプーンで混ぜて均一にし、中央をくぼませて塩を入れ、塩をめがけて熱湯を入れ、塩を溶かしながら粉と水分を混ぜる。
  2. 水分が粉に吸われたらスプーンでボウルについた生地をかき落とし、生地を手のひらの付け根で押し、生地を2つ折りにしてまた押し、を100回繰り返し、生地が乾かないようにビニールシート類でくるんで15分置いておく。
  3. <具の準備>その間にニラを洗ってザルにあげ、別のボウルにひき肉と調味料類を入れ、ニラを振って水切りしてから3 mm幅にみじん切りにしてボウルに入れ、ヘラでひき肉を潰して肉の脂を引き出しながら均一に混ぜる。
  4. <皮の仕上げ>皮の生地を手のひらの付け根で押し、生地を2つ折りにしてまた押し、を100回繰り返し、まん丸に成形してから生地が乾かないようにビニールシート類でくるんで15分置いておく(この間に片付けと次の準備)。
  5. 作業台に打ち粉(分量外)をふり(茶漉しに粉を入れるときれいにふれる)、麺棒を出しておく。あれば直径7 cmで底面が平らなコップも出しておく。
  6. 生地の重さを量り、仮に360 gなら180 gずつになるよう包丁で中心を切り、1つはそのまま置いておき、1つはビニールシート類でくるんでおく。
  7. 生地を手のひら2枚の間(あるいは打ち粉のない台と手のひら)で転がして直径2~3 cmほどの棒状にする。
  8. 1個が10 gになるようにキッチンスケールの上にキッチンバサミで切り落とす(あるいは包丁で切るか指でちぎる)。※例えば生地が178 gの場合は10 gを16個と9 gが2個でよい。
  9. 個々の生地を上から見て丸くなるように指先で形を整え、打ち粉をした台に置く。
  10. 残りの塊も同様に、18個の丸い生地を作り、打ち粉をした台に置く。
  11. 36個全部に打ち粉を薄くふる(茶漉しでふるとやりやすい)。
  12. 底が平らなコップなどで上から押し、直径4 cmくらいに延ばす。※このとき正円でないなら指で正円に成形する。
  13. 必要なら打ち粉をしながら、端から中央まで麺棒を転がしてから生地を少し回転させ、を繰り返して1周し、直径7 cmの正円の生地を作る。このとき中央が少し厚く、端が薄くなりすぎず厚さが保てるようにする(端が尖らないようにする)。これを繰り返して皮を36枚作り、重ならないように置いておく。
  14. <ゆでる準備>できるだけ大きな鍋(5 Lは欲しい)に水をたっぷり入れ、強火にかけて沸かし始める。
  15. <具を包む>バットか平皿に具を四角く乗せ、スプーンかヘラで36等分にする(6×6や9×4などに分ける)。
  16. 手元に水(分量外)が入った容器を置き、鍋の直径より小さな皿を餃子が乗るだけ用意し、皿に薄く打ち粉をふっておく。
  17. (利き手が右なら)皮の上の面(空気に触れて乾いている面)が下になるように左の手のひらに乗せ、中央を右手の親指で押して軽くへこませてから具(36分の1)を乗せ、右の指で皮の上半周に水をつけ、下の最下位の位置(時計の6時の位置)をもちあげて上のてっぺん(時計の12時の位置)にくっつける。手前1か所、奥1か所にヒダを取るように円周を閉じ、はみでそうな具は押し込み、右手人差し指を第二関節でカギ型に曲げ、餃子の円弧の半周をすべて当て、右親指と左親指で半周の半分ずつを押さえて一気に全部を閉じ、力をかけて具が皮の中央を膨らませるようにして、打ち粉が残っている作業台の上に立てて乗せる。
  18. <ゆでる>全部包み終え、鍋の湯がぐらぐらと沸いたら、餃子を皿に入れて(重なってもよい)鍋の上で皿を傾けてなるべく短時間で餃子をすべて鍋に入れ、強火のままスプーンで鍋の中をぐるぐるかき回して対流を作って餃子をどうしがくっつかないように浮遊させる。
  19. 餃子が全部浮いたらコップ1杯の水(分量外)を入れていったん温度を下げ、再度沸騰したら出来上がり。
  20. Enjoy!
(←click!)
このレシピやブログ記事を気に入っていただけたら応援クリックお願いします(*^_^*)

* * *

以下に、私が何十回も百回以上も作って得てきたコツを書き出します。

  • 皮を作る粉の量を中国のパンジン(半斤、250 g)に固定したレシピです。
  • 皮の水分量は粉に対して約46%です。
  • 熱湯115 gは119~120 mLです(水の密度を0.96 g/cm3前後として)。
  • 皮に加える材料の合計は理論上368 gですが、こねる容器や手への付着と水分の蒸散により減じて約360 gの生地が完成し、これを36等分するので皮1枚の重量は約10 gです。
  • 私の作成では皮1枚10 gあたり具7 gかそれより少し少ないくらいがかなりベストです。よって7 g×36個=250~260 gの具となるように具の量を整えています。ニラ110 gは洗ってザルで水切りすると水分が付着して120~130 gになり、具の量の合計が理論上250~260 gくらいになります。
  • 皮を目分量で等分すると誤差ばかりが生じてしまうので、慣れないうちは棒状に延ばした生地を1 g単位で計量できるデジタルスケールの上に切り落として10 gに調整してすべてを均一にするほうが無難です。こうして慣れていくとやがて目視で10 gを切り落とせるようになります!
  • 丸い皮を作るために必要なことは、延ばす前に丸いことです。なので切り分けた生地をまずは丸くし底が平らなコップなどで正円に広げ、そこから麺棒で延ばすと大変きれいに作ることができます。
  • 皮を延ばすとき、麺棒で手前から奥まで直径全部を延ばしてしまうと縦長の楕円になってしまいます。それを避けるため、端から中心までの半径部分のみを延ばし、少し回転させて次を延ばし、1周して皮を完成させます。
  • 皮を直径7 cmよりも大きく延ばすと薄くなってもちもち感が出ず、また具が入っていないヒダ部分がひらひらしてワンタンみたいになって水餃子感が出ません。直径7 cmより小さいと包むときに具がはみ出て失敗しやすくなります。慣れないうちは直径7 cmのコップなどを作業台に置き、延ばした皮のサイズ合わせができるようにしておきます。こうすると最初から最後まで均一サイズの皮を作ることができます。
  • 皮の中央がやや厚くなることで、具を入れて端を閉じてぎゅっとしたときに具に押されて中央が伸びて丁度よくなります。ということは皮を作った段階で中央が薄いようでは仕上がりの生地が薄くなりすぎてもちもち感が出なくなります。
  • 皮の端が薄くなりすぎないよう端の厚さを保ちます。これはあまりに薄くなりすぎると皮のデンプンが少なくなる&乾燥が早まることから包んだときの接着力が弱くなり、ゆでる途中で皮が開いて失敗しやすくなるためです。
  • 皮を36枚作るとき、重ねると互いにくっついてしまうのでビニールシート類の上などに重ねずに置きます。このとき下の面は乾きにくく上の面から乾いてくるので、包むときは上の面を手のひらに当て、乾いていない下の面に具が乗るようにすると、皮がとじやすいので失敗が減り、また包んだあとの餃子と餃子がくっつきにくくなるのでゆでる段階の失敗も減ります。
  • 具を目分量ですくっていくと最後のほうで過不足が起こりやすいのですが、この作り方のように、最初に36等分しておくとスピーディーに正確に具を取ることができます。
  • 「右手人差し指を第二関節でカギ型に曲げ、餃子の円弧の半周をすべて当て、右親指と左親指で半周の半分ずつを押さえて一気に全部を閉じる。」の段階で、人差し指と親指の関節の位置がでっぱり、そのでっぱりがあるから箸でつかみやすくなります。
  • 「力をかけて具が皮の中央を膨らませるようにして」の工程がないと円形の皮を2つ折りにした半円形の餃子で終わってしまいますが、具が皮の中央を膨らませると、ひし形というか上手い具合に立体の形を出すことができます。
  • ゆでるとき、餃子がまな板の上などに乗っていてボチャボチャと湯に落とすようでは湯が跳ねて非常に熱くて危ないです。鍋より小さな皿に乗せ、皿の大半を湯に浸けてでも餃子がスムースにスライドして落ちるようにし、くれぐれも火傷をしないように。
  • ゆでるとき最初は餃子が沈むので、餃子どうし、あるいは餃子と鍋がくっつかないよう、鍋の中に対流を起こして餃子を浮遊させます。
  • 餃子が浮いたあとに水を差して再沸騰させることで、豚肉の中心まで火が通った状態になりやすく、食中毒のリスクが減らせます。

* * *

これが、皮の生地に全粒粉を20%配合したときの色です。

水餃子

皮の色が、きれいですね~!!

作っていて思ったのは、中力粉メインのいつもの皮生地と違い、ゆでる前からなめらかで気持ち良い生地でした。

水餃子

出来た♡♡♡

水餃子

素晴らしい♡♡♡つやつやで美しい♡♡♡

水餃子

素晴らしい出来上がりになりました。一緒に食べた夫曰く、「中国の地方都市の小さな食堂で食べた味の、懐かしい水餃子」と。

ちなみに今日の具は豚肉とニラが半々です。

なお中国現地では黒酢と辣油でいただきます。

水餃子

醤油を使わないので減塩にも良い料理です。

手作り辣油のレシピは≫こちらに掲載しています。

また水餃子のゆで汁は、そのまま白湯(さゆ)のようにして食事に出されます。

水餃子

これを中国語では「面汤」(ミェンタン)と呼ぶのですけれど、水餃子をいただくときには至極美味しいのです。

* * *

この水餃子のレシピは、そもそも私が中国の旅で味わった思い出を日本でも再現したく、中国の職人の技術はとても難しかったけれど、作っては課題を見出して修正し、作ってはレシピを修正し、こうしてレシピを書いた紙が修正だらけになるまで -それはすなわち向上の連続で- 作り上げた、思い入れのあるレシピです。

水餃子

”全粒粉で中国の「古き良き素晴らしき水饺(シュイチャオ)」を再現”

36個の水餃子はごはん(炊いた米)不要で食べるなら2人前(1人18個)です。ごはんやほかのおかずがあれば5~6人前(1人6~7個)にもなります。
以前に餃子のゆで実験をしたときの参考値ですが、餃子をゆでる前後の重量比が1.2だったので、1人18個食べるとすると、1人約370 gの餃子を食べることになります。このうち具が約130 g、水を吸った皮が約240 g。よってほかのおかずの用意も不要で、減塩をキープしながら美味しい食事が素晴らしく成立します。

素晴らしい中国の食文化。

健康づくりにも、自信をもって、おすすめします。

全粒粉を使った料理レシピ

※本記事は(1)「日清製粉グループ×フーディストパーク」のモニターコラボ広告企画に参加していること、(2)日清 全粒粉パン用 チャック付をモニター提供されたことに基づき執筆するものです。

【「全粒粉レシピコンテスト」参加中】



* * *

本記事、レシピ内容及び写真の著作権はすべて管理人:松本あづさ(プロフィールは≫こちら、連絡方法は≫こちら)にあります。読んでくれた方が実際に作って下されば嬉しいですし、料理の背景やTipsなど、世界の料理情報の共有を目的として、大事に作成しています。
出典URL付記リンクを貼れば小規模な範囲でOKなこと】
・ご自身のサイト、ブログ、FacebookやTwitterにおける情報の小規模な引用や紹介。
事前連絡出典明記をお願いします】
・個人、団体、企業等の活動や出版等で、当サイトおよび当管理人のもつ料理レシピや写真を活用・使用したい場合(料金は≫こちら)。
事後連絡でもよいのでお寄せ下さい(楽しみにしています)】
・学校や大学の宿題や課題で当サイトを活用してくれた児童・生徒・学生さん。
ご遠慮ください】
・大々的なコピペや読み込み、出版物への無断転載。
・商用非商用ならびに営利非営利を問わず、個人、団体、企業等の活動や出版等での無断使用。
※免責事項:上記の引用に基づいて万が一損失・損害がありましても、対応はユーザーご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。