ポーランド料理

+++新着+++

  • 野菜や豆のおかず」の項を新設しました!(今後の投稿は、軽食、アルコールなどを予定しています)

【基礎情報】

国名:ポーランド共和国Poland、首都:ワルシャワ、ISO3166-1国コード:PL/POL、独立国(1918年ロシアより)、公用語:ポーランド語、通貨ズウォティ

▲目次に戻る


【地図】

ポーランドは、東欧に属するロシア(の飛び地のカリーニングラード)、ベラルーシ、ウクライナ。バルトのリトアニア、中欧のドイツチェコ、スロバキアと接しています。北の海を渡った先はスウェーデンです。

▲目次に戻る


◆東欧と中欧の狭間にいろんな料理が集まる

「ポーランド」という国は、激動の人生を歩んでいます。欧州屈指の大国から一転して100年以上も消滅した。そして復活した。第二次世界大戦時にはナチス・ドイツに全土破壊され、アウシュビッツ強制収容所では人々が多数虐殺され、その後社会主義政権下に置かれ、領土を「移動」させられ、そしてやっと得た民主制の独立。「ポー・ランド」は「平らな・土地」という意味です。陸は平らに続き、人の移動に障壁がなく、政治、人、文化の絶え間ない伝播がありました。だからこそ、今、ポーランド料理とは、東欧と中欧の狭間であることを実感する、周辺国と共通する「料理のモザイク」を形成しています。

ビゴスとジュレック
ポーランドの2大国民食。赤いビゴスと白いジュレック。(撮影地ワルシャワ)

ポーランドは、お隣のチェコが単民族単文化主義であったのとは対照的に、歴史を通じて多民族共同体でした。リトアニアドイツ、ハンガリー、ルーシ(ウクライナやベラルーシ)などの文化的往来があり、ユダヤ人との共生もありました。それは様々な文化の混交を形成しました。

戦後、ポーランドが「西にずらされた」のをご存知ですか? ポーランドが「西にずれた」ことにより、東部はソ連になり、ルーシの人々はソ連割譲地域に残り、ドイツから獲得した西部地域内に居住していたドイツ人はより西に移住したのです。その「国土がずれた」結果として、新生ポーランドはほぼ単一民族国家となりました。これがすごいことなのです。

だから、ポーランド料理を理解するためには、おそらく最大の特徴と言える、『単一民族国家であるが、食文化は多民族的である』という点に着目し、それを大前提として捉えていきましょう。ポーランド料理は近隣国家と共通する様々なモザイクを形成していることなど、理解を深めるためには、その大前提が必ず役に立ちます。
▲目次に戻る

主食 Staple

ポーランドの主食はフレブ(パン)です。ポーランドでは、カナペツキビオセンナというオープンサンドイッチ式に食べることが多く、スライスしたパンにバターやシュメタナ(サワークリーム)やマヨネーズを塗り、トマトやきゅうりなどの野菜にハムやチーズを乗せていただきます。ポーランド人の友人の家に泊まったとき、彼女が最後の夕食に出してくれたもので、とても思い出深いポーランド料理です。「夕食がサンドイッチなんて朝ごはんか昼ごはんみたい」って感じますか? ポーランドでは夕食が軽くて、しっかり食べる(正餐)のは昼食です。
▲目次に戻る

じゃがいも Potatoes

「ポーランドの主食はじゃがいも」という言葉があるほど、じゃがいもはよく食べられています。じゃがいもはポーランド語でジムニャクジムニャクといえばゆでじゃがやマッシュポテトが日常的に登場します。コピトゥカはじゃがいもニョッキ、プラツキジムニャチャーネはじゃがいもをすりおろして作るパンケーキ、プズ又はピジ(Pyzyと書きますが、yはウとイの中間音なのでカタカナ化が難しい)はじゃがいもを練って作るゆで団子です。
▲目次に戻る

餃子(ピエロギ) Dumpling (Pierogi)

ポーランドには餃子にそっくりの料理があり、ピエロギと総称します。水餃子又は焼き餃子で、ウクライナのワレニキにも日本の餃子にも似ています。ピエロギは、具は肉やチーズやじゃがいもが入るのが定番で、ベーコンを炒めて出る油をかけて食べたりします。
▲目次に戻る

肉のおかず Meat

ポーランド人は肉をよく食べます。また豚足や内臓の調理にも長けていて、「アニマル食い」と英語旅行ガイドブックに揶揄されるリトアニア料理との共通点があります。ポーランド人は香辛料使いが上手で、焼き物も煮込みも燻製も美味しく作ります。

コトレトスハボブは豚のカツレツ、ゼベルカヴィエプショヴェは豚のあばらのグリルです。腸詰めやハムもとっても美味しくて、キウバサというポーランドソーセージがあります。ゴロンカは豚足のじっくり煮で、ドイツ(の中でもベルリン)の名物料理であるアイスバインと似た料理です。フラキ又はフラツキはモツ煮込みシチューです。
▲目次に戻る

魚介のおかず Seafood

ポーランドでは肉を食べる傾向が強く、魚料理は控えめな存在ですが、バルト海沿岸部ではズパルイブナ(魚のスープ)などの魚料理があります。シレジまたはシレジェ(ニシン)は上述のカナペツキビオセンナ(オープンサンドイッチ)の具にもウォッカのつまみにも合うことから、内陸部を含め全土で食べられています。調理法で人気があるのは酢漬け(マリネ)で、プロイセン王国首相の名を冠してビスマルクと言います。ニシンのオイル漬けはシレジェヴォレユと言います。ニシンの中でもシレジェアラマティアスは早い時期に収穫するニシン(産卵を経験しない処女のニシン)で珍重されています。
▲目次に戻る

野菜や豆のおかず Vegetables & Beans

肉料理の付け合わせなどで食べられる野菜料理には、ゆでじゃがいも、カプスタキショナ(発酵キャベツ)、千切りにんじん、ビーツの千切りサラダ、カーシャ(ソバの実を炊いたもの)、リシュ(やわらかく炊いた米)などがあります。

カプスタキショナは、中欧ドイツザワークラウトと同じ料理ですが、リトアニアにもフランスにもロシアにもあり、ユーラシアのある程度寒い地域に広域に共通する食文化だと思います。ポーランド人は冷蔵庫を開けてカプシュタキショナをそのままつまみ食いするほど、発酵キャベツが大好きです。

そのほか、ゴウォンプキ(ロールキャベツ)も人気のおかずです。

ポーランド人は、モルドバ人やロシア人に負けず劣らずきのこが好き。晩夏はきのこ狩りのシーズンで、一年分のきのこの保存食を作ります。
▲目次に戻る

スープ類 Soup

ポーランド料理はズパ(スープ)が大変魅力的です。正餐である昼食の始めにスープが飲まれます。ポーランド料理全般がそうですが、スープ類にもシュメタナ(上述のサワークリーム)やカプスタキショナ(発酵キャベツ、別名カプスタクファショナ)が多用され、酸味が料理の旨味になっていきます。

ビゴスは、ポーランド名物料理の代表格。カプスタキショナ(発酵キャベツ)と肉類を数日かけて煮込んだ「狩猟のスープ」とも呼ばれるもので、リトアニアにも同じ料理があります。

ジュレック(又はジュル)はザクワス(麦の粉の発酵液)やシュメタナ(サワークリーム)を使った白く爽やかなスープです。麦の粉の発酵液はルーマニアのボルシュと同じ文化で、ジュレックジュル)はキリスト教の行事である復活祭(イースター)のスープであり、ジュレックズヤイキエムジュルズヤイキエム、ゆで卵入りのジュレック)やジュレックズキウバサジュルズキウバサ、ソーセージ入りジュレック)も具の定番です。

バルシチは、ロシアボルシュと同じ名前ですね(日本語だとボルシチ)。ビーツを煮出した真紅色の美しいスープです。おかずにもなるロシア版と違いポーランド版は汁多めです。上のジュレックジュル)が白いので、こちらはバルシチツェルボンヌ(直訳:赤バルシチ)とも言います。フォドニックは夏のスープ。ビーツの赤と発酵乳が混ざってできる超ピンク色の冷製スープで、リトアニアのシャルティバルシエと同じ料理です。

グラシュは肉煮込みシチュー。ハンガリー名物料理と言われますが実際はユーラシア大陸の広域にあるもので、ポーランド版グラシュもよくパプリカ粉を使います。

ズパポミドロヴァはトマトスープ、ロスウは鶏と野菜の澄んだスープ。こういったシンプルなスープにはよくパスタやお米が入ります。
・・・ああ、スープだけでこんなに長くなってしまいました。それだけポーランド料理はスープが魅力的なのです。
▲目次に戻る


料理名一覧 Food & Drink Glossary

【主食(パンやじゃがいも)】
  • カナペツキビオセンナ(Kanapeczki wiosenne)・・・オープンサンドイッチ
  • コピトゥカ(Kopytka)・・・じゃがいもニョッキ
  • ジムニャク(Ziemniak)・・・じゃがいも
  • ジムニャク(Ziemniak)・・・ゆでじゃがやマッシュポテト
  • ピジ(Pyzy)・・・じゃがいもを練って作るゆで団子
  • プズ(Pyzy)・・・じゃがいもを練って作るゆで団子
  • プラツキジムニャチャーネ(Placki Ziemniaczane)・・・じゃがいもをすりおろして作るパンケーキ
  • フレブ(Chleb)・・・パン
【肉のおかず】
  • キウバサ(Kiełbasa)・・・ポーランドソーセージ
  • コトレトスハボブ(Kotlet schabowy)・・・豚のカツレツ
  • ゴロンカ(Golonka)・・・豚足のじっくり煮
  • ゼベルカヴィエプショヴェ(Zeberka wieprzowe)・・・豚のあばらのグリル
  • フラキ(Flaki)・・・モツ煮込みシチュー
  • フラツキ(Flaczki)・・・モツ煮込みシチュー
【魚のおかず】
  • シレジ(Śledź)・・・ニシン
  • シレジェ(Śledzie)・・・ニシン
    • シレジェアラマティアス(Śledzie a’la Matjas)・・・処女のニシン
    • シレジェヴォレユ(Śledzie w oleju)・・・ニシンのオイル漬け
  • ズパルイブナ(Zupa rybna)・・・魚のスープ
  • ビスマルク(Bismarck)・・・ニシンのマリネ
【スープ類】
  • グラシュ(Gulasz)・・・肉シチュー
  • ズパ(Zupa)・・・スープ
    • ズパポミドロヴァ(Zupa Pomidorowa)・・・トマトスープ
  • ビゴス(Bigos)・・・発酵キャベツと肉類の煮込み
  • ジュル(Żur)・・・麦の粉の発酵液のスープ
    • ジュルズキウバサ(Żur z kiełbasa)・・・ソーセージ入りのジュル
    • ジュルズヤイキエム(Żur z jajkiem)・・・ゆで卵入りのジュル
  • ジュレック(Żurek)・・・麦の粉の発酵液のスープ
    • ジュレックズキウバサ(Żurek z kiełbasa)・・・ソーセージ入りのジュレック
    • ジュレックズヤイキエム(Żurek z jajkiem)・・・ゆで卵入りのジュレック
  • バルシチ(Barszcz)・・・ビーツの赤いスープ
    • バルシチツェルボンヌ(Barszcz czerwony)・・・バルシチと同じ。
  • フォドニック(Chłodnik)・・・ビーツと発酵乳の冷製スープ
  • ロスウ(Rosół)・・・チキンスープ
【その他】
  • カプスタキショナKapusta kiszona)・・・発酵キャベツ
  • カプスタクファショナKapusta kwaszona)・・・発酵キャベツ
  • ザクワス・・・麦の粉の発酵液
  • シュメタナ(Śmietana)・・・サワークリーム
  • ピエロギ(Pierogi)・・・餃子

▲目次に戻る


Link

▲目次に戻る