ポーランド料理

[last update 2016/06/29]

+++新着+++

ビゴスとジュレック
ポーランドの2大国民食。赤いビゴスと、白いジュレック。(撮影地ワルシャワ)

プラツキジムニャチャーネ(Placki Ziemniaczane)にレシピリンク挿入!


基礎情報ポーランド共和国Poland、首都ワルシャワ、ISO3166-1国コードPL/POL、独立国(1918年ロシアより)、公用語ポーランド語、通貨ズウォティ

◆東欧と中欧の狭間にいろんな料理が集まる

ポーランドは、中欧のドイツやチェコ、東欧のウクライナやベラルーシと接しています。

「ポーランド」という国は、激動の「人生」を歩んでいます。欧州屈指の「大国」から一転して100年以上も「消滅」、そして「復活」。二次世界大戦ではナチス・ドイツに全土徹底的に破壊され、アウシュビッツ強制収容所では罪なき人々が多数虐殺され、その後社会主義政権下に置かれ、領土を「移動」させられ、そしてやっと得た民主制の独立。「ポー・ランド」とは「平らな・土地」。陸続きでの人の移動に障壁がなく、政治、人、文化の伝播がありました。だからこそ、今、ポーランド料理とは、東欧と中欧の狭間の、周辺国と共通する「料理のモザイク」を形成しています。

ポーランドは、お隣のチェコが単民族単文化主義であったのとは対照的に、歴史を通じて多民族共同体でした。リトアニア、ドイツ、ハンガリー、ルーシ(ウクライナやベラルーシ)などの文化的往来があり、ユダヤ人との共生もあり、様々な文化が混交してきました。

戦後、ポーランドが「西にずらされた」のをご存知ですか? ポーランドが西にずれることにより東部はソ連になり、ルーシの人々はソ連割譲地域に残り、ドイツから獲得した西部地域内にいたドイツ人はより西に移住して、その結果新生ポーランドはほぼ単一民族国家となりました。これがすごいこと。

だから、ポーランド料理の大きな特徴は、『単一民族国家なのに、食文化は多民族的』という点にあり、料理は近隣国家と共通する様々なモザイクを形成しています。

ポーランドの主食はパンです。スライスしたパンにバターやシュメタナ(サワークリーム)やマヨネーズを塗り、トマトやきゅうりなどの野菜にハムやチーズを乗せるのがポーランド式のパンの食べ方です。カナペツキビオセンナと言います。英語ではSpring sandwich、日本の言葉で言うならオープンサンドイッチ。ポーランド人の友人の家に泊まったとき、彼女が最後の夕食に出してくれたもので、私にとっても思い出深いポーランド料理です。

「夕食がサンドイッチなんて、朝ごはんか昼ごはんみたい」って感じますか? ポーランドでは夕食が軽くて、しっかり食べる(正餐)のは昼食です。東欧にはこういう国が結構あります。昔はポーランドでは1日に5回の食事をとりましたが、最近は3回の家庭も増えています。

パンが主食なので、スープ類は大事なお供です。正餐である昼食の始めにスープが飲まれます。ポーランド料理全般がそうですが、スープ類にもシュメタナ(上述のサワークリーム)やカプスタキショナ(発酵キャベツ、別名カプスタクファショナ)が多用され、酸味が料理の旨味になっています。カプスタキショナは、中欧ドイツザワークラウトと同じ料理ですが、リトアニアにもフランスにもロシアにもあり、ユーラシアのある程度寒い地域に広域に共通する食文化だと思います。ポーランド人は冷蔵庫を開けてカプシュタキショナをそのままつまみ食いするほど、発酵キャベツが大好きです。

ビゴスは、ポーランド名物料理の代表格。カプスタキショナ(発酵キャベツ)と肉類を数日かけて煮込んだ「狩猟のスープ」とも呼ばれるもので、リトアニアにも同じ料理があります。ジュル(又はジュレック)は「白ボルシチ」とも言われるスープで、ザクワス(麦の粉の発酵液)やシュメタナ(サワークリーム)が使われ、爽やかな酸味があります。麦の粉の発酵液ってルーマニアのボルシュと同じですよね。ジュル(ジュレック)はキリスト教の行事である復活祭(イースター)のスープであり、ゆで卵は具の定番。キウバサ(ポーランドソーセージ)も具の定番です。バルシチは、ロシアのボルシュと同じ名前ですね(日本語だとボルシチ)。ビーツを煮出した真紅色の美しいスープです。おかずにもなるロシア版と違って、ポーランド版は具なしです。上のジュル(ジュレック)が白いので、こちらは「赤バルシチ」(バルシチツェルボンヌ)とも言います。フォドニックは夏のスープ。ビーツの赤と発酵乳が混ざってできる超ピンク色の冷製スープで、リトアニアのシャルティバルシエと同じ料理です。グラシュは肉煮込みシチュー。ハンガリー名物料理と言われますが、ユーラシア大陸のいろいろなところにあるものです。ハンガリー定番の味付けにならい、ポーランド版グラシュもよくパプリカ粉を使います。ズパポミドロヴァはトマトスープ。大抵マカロニかお米が入っています。東欧各国然り、ポーランドでも米は野菜的な扱いです。ロスウは鶏と野菜の澄んだスープです。こちらもよくマカロニやお米を入れます。

・・・ああ、スープだけでこんなに長くなってしまいました。それだけポーランド料理はスープが魅力的なのです。

では、次は肉料理。ポーランド人はとにかく肉をよく食べます。お隣チェコもそうですね。また豚足や内臓の調理については「アニマル食い」と英語旅行ガイドブックに揶揄されるリトアニア料理との共通点が多数あります。ポーランド人は香辛料使いが上手で、焼き物も煮込みも燻製も美味しく作ります。

コトレトスハボブは豚のカツレツです。ゼベルカヴィエプショヴェは豚のあばらのグリルです。腸詰めやハムもとっても美味しくて、先述のキウバサというポーランドソーセージなどがあります。ゴロンカは豚足のじっくり煮で、ドイツ(ベルリン名物料理)のアイスバインと似た料理です。フラキ又はフラツキはモツを使ったシチューで、先述のグラシュのように調理されたりします。鶏肉はクルチャックと言い、豚肉の次くらいによく食べられています。

肉料理の付け合わせは、じゃがいも、カプスタキショナ(発酵キャベツ)、千切りにんじん、ビーツの千切りサラダ、カーシャ(ソバの実を炊いたもの)、リシュ(やわらかく炊いた米)などです。特に「ポーランドの主食はじゃがいも」とも言われるほど、じゃがいもはよく食べられています。エストニアも、ベラルーシも、あのあたりの国はじゃがいもをよく食べます。

じゃがいもはポーランド語でジムニャク。ゆでじゃがやマッシュポテトなどになってよく登場します。コピトゥカはじゃがいもニョッキです。プラツキジムニャチャーネはじゃがいもをすりおろして作るパンケーキで(プラツキがパンケーキを意味する)、まさにウクライナのドラニキです。プズ又はピジは(Pyzyと書きますが、yはウとイの中間音なのでカタカナ化が難しい!)、じゃがいもを練って作るゆで団子、中に肉あんが入ることも。

その他の料理も概ね周辺国の伝統料理ばかりで、クロケティ(クレープや春巻きの皮に具を包んで巻いてから揚げる、巻き揚げコロッケ、オランダでも見るスタイル)、ゴウォンプキ(ロールキャベツ、ルーマニアのサルマみたい)、ピエロギ(水餃子又は焼き餃子、ウクライナのワレニキにも日本の餃子にも似ている)などがあります。ピエロギは、具は肉やチーズが入るのが定番で、ベーコンを炒めて出る油をかけて食べたりします。

ポーランド人は、モルドバ人やロシア人に負けず劣らずきのこが好き。8月はきのこ狩りのシーズンで、一年分のきのこの保存食を作ります。一方で、バルト海沿岸に面しているものの、魚はあまり食べません。

ポーランドの飲み物と言えばヴォドカ(ウォッカ)をどうぞ。ロシアの酒というイメージがありますが記録上ウォッカ製造の記録が古いのはポーランドのほうです。その他、ミョート(ハチミツ酒)も、双方の国で歴史の長いお酒です。ピーボ(ビール)の種類も豊富で、なおかつ、ソーキエム(かき氷シロップのようなもの)をビールに沈めて飲むこともしばしば。

デザートには、ナレシニキ(ポーランド風クレープ)、ポンチェック(複数形はポンチュキ、バラのジャムのドーナツ)、バブカ(オーストリアやドイツのクグロフ)、センカチュ(ドイツのバームクーヘンやリトアニアのシャコティス)などがあります。

最後に、ポーランドとカトリックと食文化について。ポーランド国民の約9割がカトリック系のキリスト教徒で、クリスマスや復活祭などのキリスト教の行事は、生活習慣の基本になっています。ここでは、日本人には滅多になじみのない「復活祭」(英語でイースター、ポーランド語でヴィエルカノツ(Wielkanoc))について書こうと思います。

キリストは「死んで3日後に復活した」と記録されていることに因み、キリスト教徒は「復活祭」を祝います。そして復活までの苦しみの日々を分かち合い記憶するために断食及び食事制限(肉や卵を食べない)の日々(四旬節)を過ごします。例年2~4月頃がこれに相当します。

・謝肉祭(カルナヴァウ(Karnawał)):四旬節(ヴィエルキポスト(Wielki Post)、断食や食事制限)直前期。食べて踊ってどんちゃん騒ぎ。
・「脂の木曜日」(トゥーストゥツワルテック(Tłusty Czwartek)):四旬節前の最後の木曜日。ポンチェック(又はポンチュキ)というバラのマーマレード入り揚げドーナツをたらふく食べる。今や宗教的意味から離れて「脂の木曜日にポンチェックを食べれば幸せになれる」とさえ言われ、全国民が揚げドーナツを食べる。
・灰の水曜日(シュロダポピエウソヴァ(Środa Popielcowa))から四旬節スタート。46日間、1日1食とか、タンパク質性食事を採らないなど、質素に暮らすことでキリストの受難と死を黙想する。しかし今や断食や食事制限をしない人も多い。
・復活祭(復活の主日)と「復活祭の翌日の月曜日」が国民の祝日である。食卓にはごちそうを並べ、キリストの復活を祝う。卵は復活にちなんだ縁起ものであり必ず出される。ポーランドでは国民食のスープであるジュレックにゆで卵を入れて出すのが定番。バブカなどの卵をたっぷり使うお菓子も定番である。

以上、いろいろと、ポーランド料理の概要を書きました。
ポーランドは、「古くて新しい国」という言葉がぴったりです。大戦中に破壊され焼かれた国土は再建され、特にワルシャワやクラコフなどは中世の古地図通りに復元されました。ショパンの音楽、コペルニクスの地動説、ノーベル賞学者キュリー夫人、そしてローマ法王ヨハネ・パウロ2世の祖国としても知られる国。

きっとポーランドに行くと、美しさや、新しさや、悲痛な歴史や、偉人の輩出など、感じるものがたくさんあると思います。料理はそれほど味付けが濃くないので日本人の口にもとても合うと思います。

ポーランド料理を楽しむ機会に巡り合えたら、人生はまた一つ豊かになれるのではないかとさえ、私は思います。

◆ポーランドに行ったら、これ食べよ♪

【主食級すなわちパンとイモ】
・カナペツキビオセンナ(Kanapeczki wiosenne)・・・オープンサンドイッチ。
・コピトゥカ(Kopytka)・・・じゃがいもニョッキ
・ジムニャク(Ziemniak)・・・ずばりじゃがいも。ゆでじゃがとかマッシュポテトもこう呼ぶことがある。
 ┗プラツキジムニャチャーネ(Placki Ziemniaczane)・・・じゃがいもをすりおろして作るパンケーキ。
・プズ又はピジ(Pyzy)・・・じゃがいもを練って作るゆで団子、中に肉あんが入ることも。

【スープ類】
・グラシュ(Gulasz)・・・肉シチュー。
ビゴス(Bigos)・・・発酵キャベツと肉類を長時間煮込んだもの。
・ジュル(Żur)・・・麦の粉の発酵液を使ったスープ。
 ┗ジュルズキウバサ(Żur z kiełbasa)・・・ポーランドソーセージ入りのジュル。
 ┗ジュルズヤイキエム(Żur z jajkiem)・・・ゆで卵入りのジュル。
・ジュレック(Żurek)・・・ジュルと同じ。
・ズパポミドロヴァ(Zupa Pomidorowa)・・・トマトスープ。
・バルシチ(Barszcz)・・・ビーツを煮出した真紅の具なしスープ。
 ┗バルシチツェルボンヌ(Barszcz czerwony)バルシチのこと。直訳は「赤バルシチ」。
フォドニック(Chłodnik)・・・ビーツと発酵乳で作る超ピンク色の冷製スープ。
・ロスウ(Rosół)・・・チキンスープ。

【肉料理】
・キウバサ(Kiełbasa)・・・ポーランドソーセージ。
・クルチャック(Kurczak)・・・
・コトレトスハボブ(Kotlet schabowy)・・・豚のカツレツ。
・ゴロンカ(Golonka)・・・豚足のじっくり煮。
・ゼベルカヴィエプショヴェ(Zeberka wieprzowe)・・・ポーク・リブ。豚のあばらのグリル。
・フラキ(Flaki)又はフラツキ(Flaczki)・・・モツを使ったシチュー。

【その他の料理】
・カーシャ・グリチャナ(kasza gryczana)・・・挽き割り蕎麦。ゆでて食べる。
カプスタキショナ(Kapusta kiszona)・・・発酵キャベツ。
カプスタクファショナ(Kapusta kwaszona)・・・発酵キャベツ。
・クロケティ(Krokiety)・・・クレープや春巻きの皮に具を包んで巻いてから揚げる、巻き揚げコロッケ
・ゴウォンプキ(Gołąbki)・・・ロールキャベツ
・ピエロギ(Pierogi)・・・餃子。ひき肉やカッテージチーズが具の定番。
・リシュ(Ryż)・・・米。ゆでて食べる。主食ではなく野菜的扱い。

【飲み物】
・ヴォツカ(Wódka)・・・ウォッカ。
・ピーボ(Piwo)・・・ビール。
 ┗ピーボスソーキエム(Piwo z sokiem)・・・フルーツシロップ入りビール。
・ミョート(Miód)又は(ミョートピトヌイ miód pitny)・・・ハチミツ酒。

【デザート、お菓子】
・センカチュ(Sękacz)・・・ドイツのバームクーヘンの原点。
・ナレシニキ(Naleśniki)・・・クレープ。
・バブカ(Babka)・・・クグロフ。
・ポンチェック (Pączek)又はポンチュキ(Pączki、複数形)・・・バラのマーマレード入り揚げドーナツ

【その他】
シュメタナ(Śmietana)・・・サワークリーム。


[kuwakuwa]
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ポーランド料理」への4件のフィードバック

  1. 参考になりました。そして、とってもいい情報ですね。
    ありがとうございます。

  2. アレク より:

    東京にポンチキヤと言うポーランドのポンチュキを通販をしてるお店が有ります。お店と言うより大使館のイベントとかにケータリングしてる所です。
    で、本題なのが、
    ここでポンチキをネットで注文して、「パーティーだから」と言って他のポーランド料理をリクエストすると作って冷凍とかで送ってくれるんです!ポーランド関係者の間では知れた裏メニュー
    興味がある方は試してみましょう。
    ポンチュキを注文する前提みたいですけど、

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