ブルガリア料理

[last update 2015/02/22]
基礎情報ブルガリア共和国Republic of Bulgaria、首都ソフィア、ISO3166-1国コードBG/BGR、独立国(1908年オスマントルコより)、公用語ブルガリア語、通貨レバ

◆南のギリシャや東のトルコの影響を受けたスラブ人の料理

まずは、下の地図で、ブルガリアの周辺にどんな国があるか見てみましょう。

ブルガリアは681年に建国されたヨーロッパで最も古い国のひとつです。古くから伝統をもち、キリル文字(Чやиやжなどの文字)もブルガリアで生まれました。ブルガリア人とはもともと5世紀にボルガ川流域からやってきたトルコ系民族と言われており、ボルガ⇒ボルガル人⇒ブルガル人と名がつけられ、それが今の国名の由来にもなっています。6世紀に南下したスラブ人と混血したことで、今のブルガリア人はスラブ系民族に分類されています。西に接するセルビアやマケドニアもブルガリアと同じスラブ人の国です。このように、ブルガリアには、長い歴史の中で民族や文化が入り交じり、西のバルカン、南のギリシャ、東南のトルコ、北のルーマニアと共通する食文化を有しています。

ブルガリアはオスマントルコに14世紀から20世紀まで支配されていました。オスマントルコの最大版図は、東欧、中欧、南欧、コーカサス、北アフリカ、西アジアと大変に広く、各地域の料理も随分と伝播されました。しかしオスマントルコが第一次世界大戦で敗戦国となり、ブルガリアが独立するとき、ブルガリア人がおよそ9割を占める現在の単一国家に近い形になりました。宗教はギリシャと同様、キリスト正教を主体とします。

ブルガリア料理の主食はパンです。米は野菜の位置づけで、日本人が刻み玉ねぎをひき肉に混ぜる感覚で、ひき肉に米を混ぜて調理したりします。米は後述のサルマ(ロールキャベツ)の具の定番でもありますが、米主体の料理としてはピラフが作られることもあります。

パンが主食で、パンをちぎってすくうディップがある。このあたりはアラブやトルコの料理との共通点です。キョーポル(ナスと赤ピーマンのピューレ、セルビアのアイバル)やスネジャンカ(硬いヨーグルトにみじん切りきゅうりやおろしにんにくニンニクを加えたもの、ギリシャのザジキ)などかあります。

ブルガリアといえば、日本では「明治ブルガリアヨーグルト」のイメージが強いようですが、ブルガリアに限らず、周辺国はどこもヨーグルトを日常的に料理に使います。ヨーグルトはブルガリアではキセロムリャコ(酸っぱい乳)と呼ばれ、バター分を取った後に発酵して作るアイラン(ヨーグルトドリンク)や、タラトール(刻み野菜が入る冷たいヨーグルトスープ)、上述のスネジャンカ、ムサカ(ナスやトマトソース、クリームソースなどの重ね焼き)など様々な料理に用いられています。なお、エジプトレバノンのムサカ(ムサア)はナスのトマト煮ですが、ブルガリアのムサカはギリシャと同じ重ね焼きなのが興味深いです。

ヤギの乳から作るシレネという白いチーズも極めてポピュラーです。ギリシャのフェタと同様のもので、飲み屋のおつまみに出たり、細くおろしてレタス、トマト、きゅうりの上にかけてショプスカサラタとして食べるなど、いろいろな場面で活躍します。バニツァは、紙のように薄く伸ばした小麦粉の生地でシレネや玉ねぎなどを包んで焼いたもので、バルカン半島全域で見られるブレックと同様の料理です。バニツァは朝食や軽食の定番です。新年にはおみくじ入りのバニツァを食べる習慣があります。

肉類は、豚肉がよく食べられています。キリスト教主体の国なので食の禁忌は基本的にありませんが、牛は肉牛より乳牛の飼育が優先され、羊はトルコや湾岸方面への輸出が大で、一方で国内自給のための養豚が盛んなのです。ブルガリアの肉料理には、カバルマという肉や野菜をトマトで煮込む土鍋料理、サルマという発酵させたキャベツの葉で作るロールキャベツ(トルコのドルマやルーマニアのサルマーレと同じ料理)、キュフテというひき肉を成形した肉団子などがあります。ケバプチェはキュフテと同類の食べ物ですが、細い棒状に焼かれる点に特徴があります(セルビアのチェヴァプチチと同じ)。

スープ類は総称して チョルバと呼ばれます。シュケンベチョルバは羊や牛のハチノスを煮込んだこってりしたスープ。にんにくを効かせていただきます。ボブチョルバは豆のスープで、これもブルガリアの国民食です。

肉料理や乳製品が多い印象のブルガリアですが、ギリシャと同様にキリスト正教が主体となる国であり、一年の半分は宗教上動物性の食品を食べられません。そういう日は野菜や豆の料理が主体となります。キセロゼレ(発酵キャベツ、ドイツのザワークラウトやポーランドのカプスタキショナと同じ)は大事な保存食です。

飲み物は、ビラ(ビール)やビノ(ワイン)のほか、ラキヤというアルコール度数の高い(40~60%)蒸留酒が名物です。ラキヤはさまざまな果物で作られ、材料ごとに違う名前がつけられるほどポピュラーです。ボザは小麦を発酵させた飲み物です。


青空の下に広がる市場にて。ワインの量り売りの店。(撮影地ソフィア)

さて、トルコをアジアの端っこと見るならば、ブルガリアはヨーロッパの端っこです。民族的にはセルビアやマケドニアと同じスラブ系ですが、料理は南欧ギリシャの影響を受け、北に接するラテン人のルーマニアの影響を受け、イスラムのトルコやアラブ諸国の影響をも多大に受けて、それでも独自の「ブルガリア料理」の世界が広がっています。ブルガリアを旅した際は、是非、そんなブルガリア料理を体感してもらえたらと思います。冬はなかなか冷える国なので、体が温まる煮込みが多く、またハンガリーのイメージで知られるパプリカの多用はブルガリア料理でも定番で、いろんな料理がほんのり赤く、目からも美味しさが楽しめます。

ちなみに、日本人がアラブやトルコを旅したあとにブルガリアに入国すると、途端に豚肉やビール&ワイン三昧になれるので、嬉しいという声をよく耳にします(*^-^*)

◆ブルガリア行ったら、これ食べよ♪

【乳製品】
・キセロムリャコ(Кисело мляко)・・・ヨーグルト。
・シレネ(сирене)・・・白いチーズ。
・スネジャンカ・・・硬いヨーグルトにみじん切りきゅうりやおろしにんにくニンニクを加えたもの。
・タラトール(таратор)・・・刻み野菜が入る冷たいヨーグルトスープ。
・バニツァ(Баница )・・・紙のように薄い生地でシレネや玉ねぎなどを包んで焼く。ひき肉入りのこともある。

【肉料理】
・カバルマ(Каварма)・・・肉や野菜をトマトで煮込んだ土鍋料理。
・キュフテ(кюфте)・・・ひき肉を成形した肉団子。
・ケバプチェ(Кебапче)・・・細い棒状に焼かれる肉団子。
・サルマ(сарма)・・・発酵させたキャベツの葉で作るロールキャベツ。

【野菜や豆類】
・キセロゼレ・・・発酵キャベツ。
・キョーポル(Кьополу)・・・ナスと赤ピーマンのピューレ。
・ショプスカサラタ(Шопска салата)・・・トマトレタスきゅうりの上におろしたシレネをかけて食べる。
・ムサカ・・・ナスやトマトソース、クリームソースなどの重ね焼き。ひき肉が入ることもある。

【スープ類】
・チョルバ(чорба)・・・スープ類の総称。
 ┗シュケンベチョルバ(Шкембе чорба)・・・羊や牛のハチノスを煮込んだこってりしたスープ。
 ┗ボブチョルバ(боб чорба)・・・豆のスープ。

【飲み物】
・アイラン・・・ヨーグルトドリンク。
・ビノ(Вино)・・・ワイン。
・ビラ(Бира)・・・ビール。
・ボザ(Боза)・・・小麦を発酵させた飲み物。
・ラキヤ(ракия)・・・果物などから作られる蒸留酒。

Tips about cuisines

・ショプスカサラダの「ショプスカ」は、首都ソフィアのあたりに住む人をショップ人、あるいはその地方をショップ地方またはショプルック地方と呼ぶことに由来する。


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