アンティグア・バーブーダ料理

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【基礎情報】

国名:アンティグア・バーブーダAntigua and Barbuda、首都:セントジョーンズ、ISO3166-1国コード:AG/ATG、独立国(1967年英国より)、公用語:英語、通貨:東カリブドル

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【地図】

アンティグア・バーブーダはカリブ海で「┓」のように連なる島の北東の角に位置します。よって北や東には隣国はなく、近隣国には、西にアンギラとセントクリストファー・ネイビス、南西にモンセラート、南にグアドループやドミニカ国があります。

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◆カリブ海の典型的な食文化は、今後どう残るのだろうか

アンティグア島とバーブーダ島はカリブ海の小さな島で、2つの島の名前が1つの国名になりました。海がきれいでシーフードが豊富。でも魚介類はあまり食べず、農業生産に適した土地も限られていて家畜や農産物は少なく、食糧の多くを輸入に頼っています。よくある食べ物は、米やパンのほか、イモ類やパンノキの実や、バーベキューチキンにソルトフィッシュに、オクラどろどろ煮。お酒といえばラム酒。・・・ここまで書いて、アンティグア・バーブーダ料理は、割と典型的なカリブ海の食文化なのだなと、改めて思いました。

アンティグア・バーブーダ料理
独立記念日のお祭り会場ではたくさんのローカルフードを販売。(撮影地セントジョーンズ)

アンティグ・バーブーダは、ヨットハーバーあり、綺麗なビーチが多数あり、シュノーケルやダイビングも人気の、カリブ海らしさあふれる観光名所の1つです。でも、カリブ海の小国で観光業が盛んということは、ご多分に漏れずめぼしい産業がないということでもあります。

人が定着したのがおよそ3000年前。ポリネシアやミクロネシアに比べると比較的長い歴史があります(※)。

※例えばハワイの場合、人類が定着してからまだ1000年ちょっとです。

しかしスペイン艦隊に発見され、英国人が移住し、ヨーロッパから持ち込まれた天然痘(致死率の高い感染症)や奴隷労働や栄養失調により先住民は絶滅し、伝統文化は失われました。今や英国植民地時代に奴隷としてアフリカから移送されてきた黒人(及びムラート(白人と黒人の混血))が人口の90%以上を占める国です。

今の年配層が子供の頃は、一面にサトウキビが広がる土地だったそうです。そもそも英国がカリブ海に乗り出した動機が砂糖への執着でしたから、英国が親分だった頃は砂糖産業はうまくいっていたのでしょうが、1967年の独立後、他国も同様ですが、サトウキビプランテーションは縮小・撤退していきます。

カリブ海の食文化について。

  1. キューバジャマイカなど、比較的サイズの大きな国は独自の文化(大陸的な文化)を育む傾向があります。
  2. 小国でも特有の文化を育む国もあります。例えばマルティニークの宗主国フランスの顕著な影響や、トリニダードトバゴの高いインド人比率といったような。
  3. 宗主国が違うと移民や物流が変わり、食文化も変わる。蘭領の国に麺類が多く仏領の国にバゲットが多いといったように。
  4. カリブ海28か国はいずれも列強の植民地を経験するが、元(一部現)英領国家が最も多い。蘭領、仏領、米領、スペイン領の国はカリブ海の少数派とみなせる。

大事な点は、カリブ海は「元英領の小さな島国」が多数派であるということです。アンティグア・バーブーダやセントクリストファー・ネイビスやセントビンセント・グレナディーンなど、いずれも先住民が絶滅させられて(※)伝統文化が失われ、サトウキビのプランテーションができ、アフリカの黒人奴隷がたくさん入ってきてアフリカの食材や調理法が流入した。その一方で英国は食文化を英国化するような支配はしていない。カリブ海内での出稼ぎ労働は普通のことで、英領バージンの店のシェフがセントルシア人だったりアンギラの店のシェフがジャマイカ人だったりして、文化がどんどん混ざる。・・・といった歴史や文化の類似性から、「カリブ海諸国の多数派」は食べるものも似てきます。これが冒頭に書いた、「アンティグア・バーブーダ料理は概ねカリブ海の典型的な食文化を有する」といった一文の根拠となります。

※ドミニカ国のごく一部の保護区域内の村のみ先住民が残る場所があります。

なお、アンティグア・バーブーダは、2017年に超巨大ハリケーンが直撃して、バーブーダ島が壊滅、アンティグア島も大打撃を受けたというニュースが報じられました。その後の様子がなかなか届かず、人によっては今も潤沢な食生活を営めない事態も続いているのかもしれません。今後アンティグア・バーブーダにはどう変わってしまうのか、それとも復興できるのか、見当がつきません。

カリブ海の典型料理を受け継ぐアンティグア・バーブーダ料理は、純粋で素敵だと思います。よって本稿では、復興の期待も込めて、アンティグア・バーブーダがその災害以前までに培ってきた食文化を記載していきます。
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主食 Staple

日常の主食は、ライス(米、ごはん)、ブレッド(パン)、マカロニパスタなどです。

アンティグア・バーブーダにはクレオールシーズニングというスパイシーなソースがあり、シーズンライス(赤豆、豚脂身肉、骨付き鶏肉、トマト、黒胡椒、緑ピーマンなどの具が豊富なクレオールシーズニング混ぜごはん)が美味しい。ライスアンドピー(またはピーズアンドライスピーズンライス、豆炊き込みごはん)もカリブ海大定番の料理です。

パン類ではアンティガンバターブレッド(バターたっぷりパン)が名物。そしてカリブ海大定番のジョニーケイク(ふわふわ軽い揚げパン)。トリニダードトバゴ由来のロティ(小麦粉の薄焼きパン)もあります。

伝統を感じる料理は、ドゥカナ(レーズン、小麦粉、スウィートポテト、ココナツを混ぜてバナナの葉で包んでゆでたもの)です。高級ドゥカナだとこれにミルクやバニラを加えるレシピもあります。現地の雑誌には、「ドゥカナの特に美味しい食べ方は、ソルトフィッシュと食べること」と書いてありました。それが上の写真です。ドゥカナガーナのチュイ(Twi)語のオドコノに由来するそうです。

アフリカのガリなどに似た、炭水化物を餅状にする主食は、アンティグア・バーブーダではフンジと呼ばれ、主に乾燥トウモロコシ粉から作られます。フンジはガーナのチュイ語でフンジー、ナイジェリアのヨルバ語でフンジェ、アンゴラのキンブンド語でフンジですから、こういった料理がアフリカ由来であることがよく分かります。

主食になる果実は、グリーンフィグ(青くて小さいバナナ)とブレッドフルーツ(パンノキの実)です。イモ類はエッド(またはダシーン、タロイモ)をゆでて主食にします。これらイモやバナナなどお腹にたまる炭水化物を盛り合わせたものがプロビション。プロビションとは「食糧の供給」という意味をもつ英単語。お腹にたまる炭水化物類を総じてこう呼び、カリブ海南部で多く見かけるものです。何がなくともプロビションがあれば生きていけると、カリブ海の奴隷時代から存在するものなのでしょうか。
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料理名一覧 Food & Drink Glossary

【主食】
  • エッド(Eddo):タロイモ
  • グリーンフィグ(Green figs):青くて小さいバナナ
  • ジョニーケイク(Johnny Cake):ふわふわ軽い揚げパン
  • ダシーン(Daseen):タロイモ
  • ドゥカナ(Ducana):スウィートポテトやココナツを混ぜてバナナの葉で包んでゆでたもの
  • パスタ(Pasta):パスタ、主にスパゲティー
  • ブレッド(Bread):パン
    • アンティガンバターブレッド(Antiguan butter bread):バターたっぷりパン
  • ブレッドフルーツ(Breadfruit):パンノキの実
  • プロビション(Provision):イモやバナナなどの盛り合わせ
  • フンジ(FungeeまたはFungi):乾燥トウモロコシ粉を練って餅状にしたもの
  • マカロニ(Macaroni):マカロニ
  • ライス(Rice):米、ごはん
    • シーズンライス(Season rice):クレオールシーズニング混ぜ具だくさんごはん
    • ピーズアンドライス(Peas and rice):豆炊き込みごはん
    • ピーズンライス(Peas ‘n’ rice):豆炊き込みごはん
    • ライスアンドピー(Rice and pea):豆炊き込みごはん
  • ロティ(Roti):小麦粉の薄焼きパン
【魚のおかず】
  • ソルトフィッシュソルトフィッシュ(Salt fish):塩漬け干しタラのトマト野菜油炒め煮
【調味料】
  • クレオールシーズニング(Creole seasoning):スパイシーなソース

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