私はこの度、2018年4月に、レシピブログ・ハウス食品(株)主催のスパイスブログのスパイス大使に着任いたしました。大使として任命を受けることができたことを大変喜ばしく、また光栄に思っております。
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少々私と「香り」の接点を記載しますと、私の父は農学(食品科学)を専攻し、職業は香料会社の研究者でした。香辛料や果実といった天然植物の研究と加工が専門で、それゆえ小さい頃からいつも我が家は「食卓の香り」や「食材の香り」に満ちていました。そのまま私は、物質化学、物性科学、生物学などに興味をもち、「物質と生体」を最も学べる学部として薬学部を志願し、進学しました。弟は農学部(食品科学)へ進学し、職業は香り(特に焙煎や発酵)の研究をしています。私も弟も結婚して実家を出ているものの、ときどき家族が集うと、食卓は、父の手作りの香辛料ミックス調味料が並び、旅館の娘である母が作る料理は旅館さながらの薬味使いが溢れる香りの良さがあり、弟は香辛料や発酵食品を使って即席で創作ひらめき系時にB級グルメ的な旨いおかずを作り、私が勝手ながら世界の料理を作るといった、「香りある食卓」が、いきいきとそして大変ライブリーに展開されているのです。
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先日、父が、地域の生産物を使った町おこしのアドバイザーのような立場で講義をする場があり、私も出席しました。その父の作る講義資料に、私の心に響く言葉が書いてありました。
「美味しさは、香りで作る」と書いてあったのです。
「美味しさは、香りで作る。」
その言葉は真なりと思いませんか。牛乳と砂糖を混ぜただけよりもバニラが加わると途端に絶品ですよね。醤油をかけた豆腐も美味しいけれど、かつおぶしやみょうがが乗ると更に美味しさを増す。焼き肉も肉が焼けるにおいが旨さを増す。チョコレートもカレーも、みんなが美味しいと思えるのは、「美味しさが、香りで作られている」からです。
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また私は幼少より、薬学部に進学する夢のほかに「世界を見たい」という夢と憧れを抱いて育ちました。夢は随分と叶い、現在242か国を旅して、食文化や海外レシピも大変に多く収集いたしました。現地では積極的に地元の人の家に泊まりました。家庭のキッチンを見て、家庭料理を見て、一緒に作って、作るところを見学して、一緒に食事をし、会話をしました。すなわち、日本では知らないがゆえに自己流使いになってしまいがちな「香辛料の現場の使い方」を、生で見る機会に多く恵まれたのです。私の世界旅は、「世界中で本物の料理を見る」という素晴らしい経験でした。
「美味しさは、香りで作る。」
これは、今も世界中で素晴らしく実践されています。人々は古来から「美味しいものを作る」という欲求と願望のもとで、世界の美味しい料理を形成してきました。下手すれば何億人という食べ手がいる料理は、日本人1億人が愛する料理以上に、世界的「愛され」料理と言えるかもしれません。そういった「その土地の食」の探求と自宅でのレシピ再現は面白くてやめられません。一生のライフワークになっていきそうです。
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さて、私がこの任に就いてできることとは、これら「世界の料理への想い」と現場レシピの情報の発信と活動です。
- 世界の香りあるレシピ。
- 世界旅の食の体験記。
- 香りのある暮らし。
- そして食育から次世代の育成を担う。
この情報を見てくれた人が香りある暮らしを楽しむ手掛かりとなれば幸いと思います。スパイス大使としてこれまでの経験を活かし、上記、誠意と熱意を以って尽力する所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
松本あづさ