フランス語の「玉ねぎ」の綴りが「oignon」から「ognon」になりました。
従来、フランス語で玉ねぎは「oignon」(オニヨン)でした。
しかし、2016年に、アカデミーフランセーズ(※)は、「 i 」が入っていることで混乱を招くという理由から「oignon」の「 i 」を取って「ognon」とすることを発表(再発表)しました。
※フランスにおいて国語の管理を司る機関
綴りが変わると現地料理名の記載を変える必要が生じるため、今日はこの「フランス語の綴りの記載変更」について、学ぶことにしました。
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◆France Announces New Way of Spelling ‘Onion’(≫こちら)
タイトル:「フランスは玉ねぎの新しい綴りを発表した。」(2016年2月7日)
そもそもフランス語の特徴として、綴りと発音の整合性が高いことが挙げられます。これは綴りと発音が一致しないことが多すぎる英語とは違う、大きなポイントです。
しかし、整合性が高いフランス語にも例外はあり、それが「oignon」(オニヨン、玉ねぎ)でした。「oignon」(オニヨン)と「oiseau」(オワゾ、鳥)を並べてみると分かりますが、「oi」の発音が両者は一致しませんね。規則通りなのはオワゾのほうで、オニヨンが例外でした。フランス語の規則通りに発音すると「oignon」はオワニヨンとなりそうですが、例外的にオニヨンと発音するのです。
このような例外現象があると、正しく読めないばかりでなく、逆に、音を聞いても正しいスペルが起こせないという問題点にもつながります。この問題点を改善するために、今回、玉ねぎを「ognon」と綴り「オニヨン」の読み方と整合性をもたせたのだと、私は理解しました。
日本でも国語基準が改定されることがあります。近年ですと2010年に日本文化庁は「肝心」を「肝腎」にすることにしました(※)。
※理由は、「肝心」が正しかった時代は腎の字が常用漢字でなかったためで、このたび腎の字が常用漢字入りしたため本来の「肝腎」と表記することに何の問題もなくなった。
ただ、言語の改定というものは、改定後も慣習的な用例としては残存していくこともあります。でも、もしどっちでもよいのであれば、正しい用法を正しく使用するのが良いと思うし、私もそうしたいと思うので、今後は、玉ねぎをフランス語で記載する機会には新スペル「ognon」を使っていこうと思います。
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上の写真は、スプアロニヨン(Soupe à l’ognon)、すなわちフレンチオニオンスープです。この料理名も、従来は「Soupe à l’oignon」(スプアロニヨン)でした。
私は、今回の改定は、発音に合わせて綴りを変える解決方法でよかったなって思うんです。
人の言葉は文化だから。
文字は、言葉が先にあって、あとから文字を当てはめることが圧倒的に多いものだから。
もしこれが、「oignonという綴りに合わせて玉ねぎの呼び方をオワニヨンに変えましょう」みたいなおかしな改定でなくてよかった。
フランスは、言語文化を尊重してくれました。
とても嬉しいことだと思いました。
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このスプアロニヨンは、玉ねぎ1kgを2時間かけてあめ色に炒めて、スープに溶け込ませた、大変に本格的で伝統的で、大変に美味たるスープです。作業内容は簡素で簡単なので、是非作ってみてください。
末筆ながら、これまた発音やアクサンについて相談に乗ってくれ、いろいろと教えてくれたお友達のまきちゃん、ありがとう~(*^ ^*)