キューバは豆ごはんをよく食べる国です。
アロースモロとか、モロスイクリスティアーノスとか、アロースコングリとか。
下の写真は西部の首都ハバナで食べたアロースモロ。黒豆。
下の写真はもっと東のシエンフエゴスで食べたアロースコングリ。これも黒豆だねえ。
そのとき私はこんがらかった。
アロースモロとアロースコングリはどう違うのか!?
そしてハバナのにいちゃんに聞いた。
ホームステイ先の家のにいちゃん(西部ハバナ在住)は、こう言っていた。「アロースモロは黒豆と米で炊くごはんで、アロースコングリは赤ないし茶色い豆と米で炊くごはんである。しかし現代では黒豆を炊き込んでもアロースコングリと言うなど区別が厳格でなくなってしまった」とのことでした。
今私はそのハバナ在住者の説明を検証したく、そして可能な限り正しい情報に基づいた正しいレシピを構築したく、アロースコングリとアロースモロが同じが違うのかを検証したので、その過程と結論を記載します。
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◆「¿Congrí oriental o Arroz moros y cristianos?」|Juventud Rebelde(≫こちら)
タイトルは「東部のコングリ?それともアロースモロとクリスティアーノス?」。この記事はJuventud Rebelde(フベントゥードレベルデ)は若い共産主義者の連合(Unión de Jóvenes Comunistas)により制作されるキューバの新聞のものです。
・東部のコングリ、アロースモロ、モロスイクリスティアーノスは、似ていますが、同じではありません。(congrí oriental y arroz moros y cristianos. Sí, se parecen pero no son lo mismo.)
・ハイチで革命が起こったとき、ハイチ人はキューバ東部(特にグアンタナモ)に移住し、「コングリ」を持ち込みました。(Cuando se lleva a cabo la Revolución en Haití, muchos de sus habitantes emigraron hacia las provincias orientales de Cuba, especialmente a Guantánamo, y ellos fueron los que trajeron consigo el congrí.)
・キューバの文化人類学者であるドン・フェルナンド・オルティスの研究によれば、「コングリ」はフランス語とアフリカ言語が縮約したハイチ語の造語です。「コングリ」は、cong(コング:豆のアフリカ語)とriz(リ:米のフランス語)に由来します。(Según el etnólogo cubano Don Fernando Ortiz, el haitiano vocablo «congrí» resulta una declinación y mezcla del francés y africano. Este término hace referencia a cong (vocablo africano para designar a los frijoles) y riz, como el francés para el arroz.)
・黒豆はすでにキューバの古い先住民により食べられていたためキューバオリジンと考えてよく、米と豆の炊き込みご飯としてモロスイクリスティアーノスが作られた。(los frijoles negros ya formaban parte de la dieta de nuestros aborígenes, por tanto los frijoles negros son de origen bien cubano, y junto al arroz formaron el tradicional plato arroz moros y cristianos)
・多くの人がアロースコングリをモロスイクリスティアーノスと混同していますが、アロースコングリは小豆(あずき、赤い豆)が使用され、モロスイクリスティアーノスは黒豆が使用される点で異なります。作り方は同じです。(Aunque muchos confunden el arroz congrí con el moros y cristianos. La diferencia está que en el primero se emplean frijoles colorados y en el segundo frijoles negros, pero el procedimiento de elaboración es similar en ambos casos.)
◆「¿Moros o cristianos o arroz congrí?」|Guerrillero(≫こちら)
タイトルは「アロースモロ?モロスイクリスティアーノス?それともアロースコングリ?」。この記事を書いた「ゲリイェロ」はキューバの新聞です。
・キューバの偉大な人類学者フェルナンド・オルティスは、コングリはハイチから来たと断言している。(el gran antropólogo cubano Fernando Ortiz que dice que el congrí viene de Haití)
・アロースコングリ、モロスイクリスティアーノスのレシピはよく似ていますが、違いは、アロースコングリ(キューバ東部スタイル)には小豆(あずき、赤い豆)が使われ、モロスイクリスティアーノス(キューバ西部の首都ハバナスタイル)には黒豆が使われることにあります。(Aunque la receta del arroz congrí y del arroz moros y cristianos es muy parecida, la diferencia entre ambos platos radica en que para el congrí se utiliza frijoles colorados (estilo oriental) y para el plato de moros y cristianos se utiliza frijoles negros (estilo habanero).)
◆¿Congrí o Moros y cristianos?|La cocina de vero(≫こちら)
タイトルは「アロースコングリ?それともモロスイクリスティアーノス?」
ここのコメント欄のトップに良い表現があって、
・モロスイクリスティアーノスは、キューバ東部のアロースコングリの西部版です。(moros y cristianos es la versión occidental del congrí oriental. )
ここまで書いてあることを順序よくまとめると以下のようになります。
1)黒豆ごはん編:黒豆はすでにキューバの古い先住民により食べられており、モロスイクリスティアーノスは黒豆の炊き込みご飯で、キューバ西部(首都ハバナはキューバ西部)の料理で、アロースモロとモロスイクリスティアーノスは同じ。
2)赤豆ごはん編:アロースコングリは赤い豆を使う炊き込みご飯でキューバ東部の料理であり、かつてハイチ人がキューバ東部にコングリを持ち込んだ。
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ここまでくると上記のハバナ在住者が言っていた言葉(再掲)が理解しやすい。「アロースモロは黒豆と米で炊くごはんで、アロースコングリは赤ないし茶色い豆と米で炊くごはんである。しかし現代では黒豆を炊き込んでもアロースコングリと言うなど区別が厳格でなくなってしまった」
まあ、区別が厳格でなくなったのもよく分かる。こういう商品が市販されているくらいですから・・・。
◆Goya Congri, Cuban Style.|Amazon(≫こちら)
「コングリ」と大きな見出しをつけて、
小見出しに「モロスイクリスティアーノス」と書き、
黒豆と書き
写真が黒豆。
このように、「コングリと称しても黒豆を使うこと」や、「コングリとモロスイクリスティアーノスを区別しない」事象が公にまかりとおっている現実に突き付けられますね。。。
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本記事のタイトルは、
「アロースコングリとアロースモロは同じものか違うのか」。
答えは
「本来アロースモロ(別名モロスイクリスティアーノス)は黒豆を使う西部料理で、アロースコングリはハイチに近いキューバ東部でハイチからもたらされた赤~茶色い豆を使う料理というように本来の定義は違うが、今では区別は厳格ではなくなっている。」
という答えが正しいようです。
*これらの豆ごはんのレシピは以下リンク先を参照していただけます。