西アフリカのセネガルを旅して、とても気に入る味のスパイスコーヒーに出会いました。
「コモンオディサ?」(Comment on dit ça、この名前は何!?)と感激して聞くと、
「カフェトゥーバ」
と。
旅して初めて聞く名前でした。
飲んだときの印象は、とにかく、まず一口目に「おいしいー♡」という感動。私はジンジャービヤ(ジンジャービール)や北アフリカのミントティーのような香りの立つ飲み物が割と好きで、暑い日にごくっと飲むのは嗜好です。
飲んでいるうちに、私は「これは生姜みたいな風味だ」と感じました。本当は日本では見たことがない、未知のスパイスを使っているのですが、味の記憶は生姜に最も近いと思いました。
* * *
カフェトゥーバはこういうところで買って飲みました。
これぞ西アフリカらしい光景です。
路上で食べ物や飲み物を売る女性がとても多いのです。
西アフリカの飲み物は高い所から泡立つように注ぎ落して、美味しくしています。
何しろおばさんの笑顔が良かった。
* * *
それからというもの、私はずっと「カフェトゥーバを自分でも作ってみたい」と思ってきました。
日本にいるある日、料理のイベントで講師をするとき、そのイベント内容の1つに、セネガルからの帰国者がカフェトゥーバを淹れてくれるという、素晴らしい幸運が!! その帰国者はMade in Senegalのカフェトゥーバをたっぷり持っていて素晴らしかった。そうして私は彼から余りを頂いて帰宅することができたのです。
* * *
セネガルの市販のカフェトゥーバです。
インスタントではなく挽いた豆です。
パッケージ表面の右下には、「ジャールを加えて挽いたコーヒーのピュアブレンド」(pur mélange de café moulu lien dosé avec “diar”.)と書いてあります。
ジャールとは、日本ではセリム等呼ばれる香辛料です(※)。学名がXylopia aethiopicaの文字通りエチオピア原産のスパイスです。
※ヒハツ(Piper longum)、ギニアショウガ(Aframomum melegueta)、Piper guineense(和名不明)とは異なる植物。
裏面には、イタリア語、英語、フランス語で、作り方がごく簡単に書いてあります。
簡単に言うと「フィルターコーヒーのようにドリップして、好みの甘さにしてください」と書いてあります。でも、粉の量、湯の量と温度、砂糖の量・・・数字が書いていなければ誰も正解の味にならないでしょうよ・・・。
中身です。インスタントコーヒーではなく、豆を挽いたコーヒーです。粒子がとても細かいです。あと色も濃い。
* * *
カフェトゥーバの味を検証
この微粉末状のカフェトゥーバを味見しました。
- 昔飲んだ味を思い出す。
- 喉がかすかに焼ける。これは風味の強いスパイスが入っているせい。
- firstトーンの風味として、黒こしょうを感じる。
- 苦みがある。これは焙煎が強いせい。
- 砂が入ってるwww さすがメイドインセネガルwwwww
次にドリップして淹れたカフェトゥーバを味見しました。ドリップは注意深く行い、現地のコーヒーの濃さとなるように試験を繰り返しました。
<分量>コーヒーの粉大さじ1に対し、95℃の湯を200 mL用意し、最初大さじ1杯(15mL)注いで20秒間粉を湿らせ、残り185 mLの湯を細く注ぎ入れ、180 mL抽出できたところでフィルターごと撤去し、砂糖を大さじ1.1入れて溶かし、高い所から注ぎ落してairing(エアリング、空気を含ませること)する。
- 昔飲んだ味を強く思い出す。
- 生姜のような、喉がかすかに焼けるような、ストロングスパイスを感じる。
- firstトーンの風味として、生姜(ジンジャー)を感じる。
- かすかに蒸れた味がする。何というか、生乾きの布の風味がかすかに香る。土の上に立つ掘っ立て小屋の風味かもしれない(小屋は食べたことないけどさ、小屋の中に入ったときの湿気た匂いというか)。さすがメイドインセネガル。でもそれが妙に&異様に西アフリカの記憶を呼び起こすんだよね。
* * *
では、作ってみました。
使ったスパイスは、以下の3つです。
・粒こしょう
・クローブホール
・ジンジャーパウダー
いろいろとネット上のサイトも見るのだけど、少数のサイトだけ見て実行しては良くないと思い、カフェトゥーバについて記述するサイトを100個以上読みました。セネガルの公用語はフランス語なので、主にフランス語サイトで読みました。日本でなじまれている香辛料を使うならどんな香りかを思い描いて探しました。結果としては、こしょう・クローブ・ジンジャーと、他の料理にも使いやすいラインナップで構成できたのです。というか、そのようにしたかったんです。
ネスレ社がオリジナルカフェトゥーバとして発売したときの主なスパイス、現地でセリムのほかにスパイスを複数ブレンドするときの組成、などなどを検討するうちに、4つめのスパイス使用の案にはカルダモンも上がりましたが、カルダモンの香りが記憶と合わないので却下。
このようにして、私が日本でカフェトゥーバを作るための使用スパイスを決めていったのですが、その作業工程の中でも、やはり「現地で本物を体験している」ことは強みだなぁと実感しますね。
アラビカ種のコーヒー豆(挽いてあるもの)を用意します。
うっすら煙が上がるように、ほのかな苦みが引き出されるように注意深くローストします。
スパイスを入れ、スパイスが熱くなるまでローストし、全体をミルにかけて微粉化し、新規に生じた断面を焼くために再度ローストします。
出来ました。
湯の量を計量しながらドリップ(抽出)します。
ドリップし終えたら砂糖を加えて溶かします。
そして最後は泡重要!!
西アフリカに行くと、紅茶もコーヒーも、カップからカップへと、シャクシャクと泡の音をたてながら注いでいます。だからここでも最低1度は高い所から注ぎ入れて、空気を含ませて美味しくします。
出来た!!\(^o^)/
何回も作りました。スパイスのそれぞれの量、湯温、湯量、砂糖の量・・・、検討する要素はたくさんありますからね。
そうしてやっと「ばっちり!! 万歳!!」と思えるところまで到達しました。
上の写真は、左が私の製作のカフェトゥーバ、右がセネガルから持ってきたカフェトゥーバです。右を先に淹れているので泡が減っていますがそれは問題じゃない(泡は立て直せる)。肝腎の、濃さ、甘さ、スパイスの風味、スパイスの強さ、の4点で、めっちゃいい点が出せる味が作れたのです。
あわよくば、布製のコーヒーフィルターを洗いながら使い続けて、ちょっと蒸れた味みたいなものを出せたら完璧だったのかもしれません。途上国の味ってそういうところにもありますから(真剣)。
* * *
もちろん、現地のカフェトゥーバだって味は1つじゃない。
だけど、あのとき、異国の地で体験した、それまで未体験の美味しいスパイスコーヒーが我が家に登場した。そしてそれは、私の舌の記憶という、つたない記憶だけど、その記憶にかなり重なるものが出来た。
もうひとつ幸運だったのは日本の自宅にセネガルのカフェトゥーバが登場したことでした。これがなければ比較検証ができなかったので大感謝です。
夏はスパイスで元気になれるよね。
冬だってスパイスで体がポカポカだよね。
だから私は飲むぞ。
カフェトゥーバだーい♪