マリ共和国トンブクトゥの「12スパイス」を全紹介

2021/02/13

【最初に、トンブクトゥの12スパイス・まとめ】
1)Mafeyji(マフェイジ):Cuminum cyminum(クミン)
2)Alkalfa(アルカルファ):Cinnamomum zeylanicum(シナモン)
3)Alhorabi(アルホーラビ):Piper nigrum(黒胡椒)
4)Kabe(カベ):Evernica sursuraceae(樹皮につく地衣類)
5)Alhalawa(アルハラーワ):Pimpinella anisum(アニス)
6)Albassar haganté(アルバッサルハガンテ):Allium cepa(乾燥ロースト玉ねぎ)
7)Lorria(ローリア):Laurus nobilis(月桂樹の葉)
8)Mari(マリ):Parkia biglobosa(ヒロハフサマメノキ)などの実の発酵物。いわゆるスンバラ。
9)Fefe(フェフェ):Piper nigrum(白胡椒)またはスパイスの混合物
10)Djatoum Kogo(ジャトゥンコゴ):Solanum lycopersicum(乾燥トマト)
11)Tonko(トンコ):Capsicum frutescens(キダチ唐辛子)
12)Dabiino(ダビーノ):Phoenix dactylifera(デーツ、ナツメヤシの実)

マリスパイス

* * *

きっかけは、私が作ってみたいと思ってきたマリ料理だった。日本語サイトでは「ファカホイ」と書かれることが多いが、フォコホイだったりフォコイだったりもする。

本当はそのスペルを知りたかった。そして出てきたのが下のサイト。
Fakahoy|Timbuktu(≫こちら

マリスパイス

フォカホイ(Fokahoy)の材料に、知らない名前が2つあった。「marre」と「wakondo seed pods」だ。英語レシピで「pods」が出てくるのは、材料がサヤに入っているものだ。見慣れているものだとカルダモンを思い出す。

そして「Wakondoが何か」を知りたくて今日の検証が始まった。

Google検索「mali cuisine “wakondo”」
マリの公用語はフランス語だ。英語でもフランス語でも当たりやすいよう「cuisine」(料理)の単語を使って「Wakondo」を探す。一番上に日本人のサイトが出てきた。

Spices in Timbuktu|The voyages(≫こちら
引用:「トンブクトゥ(地方)では料理によって12種類のスパイスを使い分けます。(中略)12種類のスパイスの学名は調査中です。すべてわかりましたらまたお知らせします。」
ただし、このように書かれてもうすぐ10年ということは、再UPされる見込みはないかもしれないという懸念がある。

ここで得られる12のスパイス情報は以下の通り。
1)Mafe IjeまたはMafeyji マフェイジ:Pimpinella anisum(アニス)
2)Mari マリ:魚とパルキア?
3)Alkalfa アルカルファ:Cinnamomum Zeylanicum(シナモン)
4)Fefe フェフェ:Piper Nigrum(白胡椒)
5)Alhorabi アルホーラビ:Piper Nigrum(黒胡椒)
6)Kabe カベ
7)Alhalawa アルハラーワ:Cuminum Cyminum(クミン)
8)Wangara Mafe Ije マンゴロマフェイジ
9a)乾燥タマネギ
9b)乾燥タマネギ(粉末)
9c)Tawatalbasar タワータルバサル:Phenix dactilifera(デーツ)とタマネギ
10)Wakondo ワーコンド
11)Lorria ローリア:Laurus nobilis(月桂樹)の葉
12)Lai ライ:Allium sativum(ニンニク)

なお、ファカホイを調理するには、1)マフェイジ、2)マリ、4)フェフェ、5)アルホーラビ、6)カベ、7)アルハラーワ、10)ワコンドを使うようだ。ちゃんと作ってみたいという気持ちがあるから、ちゃんとこれらが何者なのかを調べてまとめてみよう。

Ingrediants|Timbuktu(≫こちら
伝統的な12ないし14のスパイスを掲載している。

1)塩。ソンガイ語で「chiray」
2)粒こしょう。ソンガイ語で「alhorabi」
3)シナモンスティック。ソンガイ語で「kalf」
4)ベイリーフ、ローレル、ローリエ。
5)クミンシード。ソンガイ語で「maffe jay」
6)アニスシード。ソンガイ語で「maffe alhellouwa」
7)乾燥トマト粉末
8)乾燥ローストオニオン
9)小粒唐辛子。
10)Kabay。樹皮につく地衣類。Evernica sursuraceae。
11)wangaray maffay jay。針葉樹林のにおいのような種。
12)maray。バンバラ語で「スンバラ」。Parkia biglobosaすなわちAfrican Bean Locustから作られる発酵ペースト。
13)デーツ。
14)ドライオニオンとデーツを混ぜてボールに成形したもの。
その他の有名スパイスとして、
ワクンド(Wakundo):乾燥したサヤから得る種。
ジッスマ(Jissuma):ローゼルの葉。

Африканская книга(≫こちら
タイトルは「アフリカの本」というロシア語サイト。
「Этот набор из двенадцати приправ (соль, два вида перца, лавровый лист, корица, зира, анис, аннато, сушеный лук, африканский мускатный орех, семена рожкового дерева и лишайник Evernica sursuraceae) 」の一文がある。
12の調味料:
salt、2つのコショウ、ベイリーフ、シナモン、クミン、アニス、アナトー、乾燥玉ねぎ、アフリカのナツメグ、carob seeds、Evernica sursuraceae lichen。

(Re)Découvrez la ville de Tim-Buktu autour d’une recette copieuse|Okedjenou(≫こちら
タイトルは「心のこもったレシピでトンブクトゥの街を発見」
トンブクトゥの料理の12のスパイス:
「Ce sont : L’anis, La cannelle, Le Cumin, La Datte, Le Fêfê, Le Laurier, La mousse de fougère, L’Oignon grillé, Le Piment, Le Poivre noir, Le Soumbara, La Tomate séchée.」
アニス、シナモン、クミン、デーツ、フェフェ、月桂樹、シダ苔、玉ねぎのグリル、唐辛子、黒コショウ、スンバラ、ドライトマト。

Définition et bienfaits des 12 épices de Tombouctou|La cuisine de Tombouctou(≫こちら

マリスパイス

トンブクトゥの12のスパイス:
1)La cannelle:シナモン
2)Le soumbala:スンバラ
3)Le piment:唐辛子
4)Le poivre noir:黒こしょう
5)La datte:デーツ
6)Le laurier:ベイリーフ
7)Le fêfê:スパイスの混合物で、唐辛子に似た顕著な味を生む。
8)Oignon grillé:乾燥ロースト玉ねぎ
9)Tomate séchée:乾燥トマト
10)Le cumin:クミン
11)L’anis vert:グリーンアニス
12)La mousse de fougère(シダ苔), kabé:カベ

* * *

さてここでいったん、十数のスパイスを掲載している上記5サイトの情報を統合してみたいと思う。

足りない名称は、下のサイトで29種類のトンブクトゥのスパイスやハーブ類の名称を掲載しているので、補えるものは補っていこう。
◆SAHEL FONDO(≫こちら

マリスパイス

1-Alhorobi 2-Mafeydje 3-Tawat Albassar 4-Alkaffou 5-Alhalawa 6-Féfé 7-Djissima 8-Fokohoye 9-Djatoum Kogo 10-Djatoum gani 11-Dindi 12-Thieri 13-Hamkorey 14-Mari 15-Goumba 16-Albassar 17-Albassar haganté 18-Wakondo 19-Gorboye mouskour 20-lahoye 21-Hoye 22-Kabbé 23-Damsou 24-Bosso 25-Loria 26-Wangara mafedjé 27-Boulanga 28-Alkalfa 29-Alkafoun

* * *

さあ、長い時間をかけて苦戦しましたが、一応こうまとまりました。
私がエクセルで5サイトの情報を統合したのが以下の図です。

マリスパイス

冒頭の日本語サイト◆Spices in Timbuktu|The voyages(≫こちら)ではアニスとクミンが逆になっていました。◆L’Agriculture pratique des pays chauds(≫こちら)のサイトの「Le Maféïdjé (mot à mot : enfant de sauce) des Songaïs, ou cumin」の記述その他幾つかを見て修正しました。また空欄を埋めるためにザルマ語やタマシェク語オンライン辞書を使いました。このように私がオンラインで調べて埋め現地確認されていない箇所には*をつけています。また唐辛子属には数十種ありますが、◆Cultivated vegetables of the world: a multilingual onomasticon(≫こちら)からCapsicum frutescens(キダチ唐辛子)としました。この調査をするきっかけとなったワコンドWakondoは、◆Skinner-Hausa_comparative_dictionary(≫こちら)からギニアコショウであることが分かりました。

※この記事を書き終えたあと、◆SAHEL FONDO(≫こちら)とFacebookコメント欄を通じて連絡を取り合ったら、ワコンドWakondoの写真を載せてくれました。ギニアコショウ確定です。

マリスパイス

重要なことですが、
「トンブクトゥの12スパイス」の、12種類は決まりがないことが示唆されました。今回5つのサイトでの紹介頻度を参照し、すべての人が掲載していたのは7スパイスだけです。もしマリの12スパイスを挙げるなら、5サイト中3サイトで掲載されていたものを選ぶのなら、ちょうど数は12になります。

だから、今回の検証の成果を以下のようにまとめます。

【トンブクトゥの12スパイス・まとめ】
1)Mafeyji(マフェイジ):Cuminum cyminum(クミン)
2)Alkalfa(アルカルファ):Cinnamomum zeylanicum(シナモン)
3)Alhorabi(アルホーラビ):Piper nigrum(黒胡椒)
4)Kabe(カベ):Evernica sursuraceae(樹皮につく地衣類)
5)Alhalawa(アルハラーワ):Pimpinella anisum(アニス)
6)Albassar haganté(アルバッサルハガンテ):Allium cepa(乾燥ロースト玉ねぎ)
7)Lorria(ローリア):Laurus nobilis(月桂樹の葉)
8)Mari(マリ):Parkia biglobosa(ヒロハフサマメノキ)などの実の発酵物。いわゆるスンバラ。
9)Fefe(フェフェ):Piper nigrum(白胡椒)またはスパイスの混合物
10)Djatoum Kogo(ジャトゥンコゴ):Solanum lycopersicum(乾燥トマト)
11)Tonko(トンコ):Capsicum frutescens(キダチ唐辛子)
12)Dabiino(ダビーノ):Phoenix dactylifera(デーツ、ナツメヤシの実)

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トンブクトゥ

私が好きな写真。トンブクトゥの路地。

私は西アフリカの旅が大好きでした。マリを旅したとき、無理をしてでもトンブクトゥには行きたくて、無理をしてトンブクトゥへ行きました。

そして出会った光景は、忘れ得ぬ素晴らしい宝物になった。

トンブクトゥは、マリ北部トンブクトゥ州の州都でニジェール川の中流域に位置する。砂漠の民トゥアレグ族の街で都。金と塩を交換する塩金貿易で繁栄し、「黄金の都」と称えられ、世界遺産にも登録されている。

この町は西アフリカのイスラム教布教の拠点で、多くの巡礼者を集める聖地でもありました。

ジンガレベルモスク。西アフリカ最古のモスク(14世紀初頭)。

トンブクトゥ

市場。トゥアレグ人が素敵。

トンブクトゥ

今回調べたスパイスのことを、あのときの私が既に知っていたら、トンブクトゥの旅は違ったものになっていただろうか。

* * *

西アフリカ料理を作るのは難しい。それは、日本とは植生が違いすぎ、日本にない植物類が多用されるので、正体を突き止めるのも難しいし、情報は少ないし、日本で調理するときの代替品を見つけるアテすらない。私は、調理し終えたものしか食べていないから、材料単品の1つ1つの味が分からない。

でも、今日の勉強のように、未知なる名称の未知なスパイスなども、1つ1つ検証して、勉強して、「慣れて」いけばいい。「慣れて」いくしかない。「慣れ」が増えることでハードルが下がり、これから数々の西アフリカ料理を楽しんで作っていけるようになるだろう。

1日も早くそうなれることを期待し、これからも勉強を頑張っていこうと思います。

なお今回の検証については、機会があるなら現地の人の発音をもっと聞いていきたいし、Youtubeなどを使えばその機会は自分からも取りに行ける。だから、分かったことがあれば、追記していきたいと思います。

* * *

そうだ!!

もともとの話に戻そう。私はフォカホイという料理を作りたかったんです。で、ピースコープ(※)の人のサイトで現地レシピを見つけたものの、知らない調味料があっていったん挫折したんでした。

※Peace Corps、米国政府が運営する海外派遣ボランティア組織。日本のJICAのようなもの。

マリスパイス

今なら分かる。「marre」と「wakondo seed pods」は、豆発酵物とギニアコショウだ。ギニアコショウはカフェトゥーバの生姜っぽい匂いの成分だもの。それぞれ、八丁味噌と生姜が良い代用になることだろう。

ヤッター。ブイ (^^)V



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本記事、レシピ内容及び写真の著作権はすべて管理人:松本あづさ(プロフィールは≫こちら、連絡方法は≫こちら)にあります。読んでくれた方が実際に作って下されば嬉しいですし、料理の背景やTipsなど、世界の料理情報の共有を目的として、大事に作成しています。
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