アフリカを旅して、行き残した国に行くために再上陸して、エジプトからナセル湖を船で渡ってスーダンへ入国した日。
上陸して最初の食事はもちろんスーダン料理!! もう、のっけからわくわくする料理でした。
*パン:「عيش」(エイシ、アエーシ)
*オクラパウダースープ:「ويكه」(ウェイカ)
*トマト肉スープ←今日の追跡テーマ
*白豆入りスープ:「فاصوليا」(ファスーリャ)
*生トマト:「طماطم」(タマティム)
実はこれは、先にお店に入っていたスーダン人お客さんが注文していたもので、「君たちも一緒に食べよう」と同席させてもらえたのです。だから豪華におかずが4品も並んでいます♪
スーダンの庶民的なお店が素敵。
スーダン人がとてもとても素敵。
黒人さんが笑って、目と歯が白く映るのって、カッコイイよね!って、いつも思います!
お店の人に下の写真の料理名を聞いたら、「ダマア」と言っていました。
私の当時のメモにはこう書いてあります。「玉ねぎみじん切りを肉片少々(だしが出る)と共によーく炒め、トマトを足して時間をかけて炒め煮風にしたもの。濃厚な旨さと天然の甘さ。」同席のお客さんは英語が話せるので、「ダマアって何ですか」と聞いたら「トマトソース」という答えが返ってきました。
「ダマアはトマトソース」と、それをメモして追及が終わってしまった当時。しかし、心の片隅で、スーダンの「ダマア」って何だったんだろう? とずっと思っていました。涙が出るほど美味しく感じた料理だったから。
* * *
最近、スーパーで羊肉が安く売っていました。嬉しくて、即買いし、さあ何を作ろうかなと、旅の料理メモをペラペラとめくっていたら、「ダマア」の写真とメモに出会いました。よし作ろうと思いました。
私は、世界の料理を作るときは、事前準備として、材料やレシピだけでなく、現地語での料理名表記や、語源・意味なども調べます。だって、折角の貴重な時間とお金を遣って作るのだから、「それがどんな料理なのか」をちゃんと知ってから作りたいじゃない? ということで、「ダマア」を作ろうと思ったことで、「ダマア」は何語なのか、どんな意味なのか、やっと調べる機会が訪れたのです。
ということで、この記事では、スーダン料理「ダマア」という料理名について検証する過程と結果を記事にします。
* * *
◆1)Google検索「damaa sudan」
パッとしたのは出てこない。
◆2)Google翻訳「tomatoes」
「トマトソース」って言っていたから、トマトの意味が含まれるのかも?と思ったけれど、しかしトマトのアラビア語はタマティムだ(※)。違う。。。
※アラビア語スーダン方言にはイタリア語に近い単語として「بندورة」(バナドーラ)という表現もあります。
◆3)Google翻訳「دمة」
「ダマア」がさっぱりつかめないので、右から読んでダマアになるよう、「アマダ」→「amd」→アラビア語にして「دمة」と仮に置いて、この意味を見てみた。これを翻訳すると、血液という意味になるみたい。違う。さらに「دامة」や「دامه」や「دامءه」など、「ダマア」になりそうな何パターンかを同様に試しても、うん、なんかダメみたい。
◆4)Google検索「Kisra كسرة」
じゃあ、スーダン料理を掲載し、英語で解説が記載され、料理名のアラビア語スペルが付記されたサイトを探しに行こう。私の好物のスーダン料理ならアラビア語が書けるから、その「キスラ」を英語とアラビア語で併記してから検索した。見つけたのが、◆A Taste of Sudan|Arab America(≫こちら)
あった・・・
「スーダンのパンにはグラサがあり、ダマ(お肉・トマト・玉ねぎ・カルダモン・シナモンで作られる料理)と一緒に食べられます。」(Another typical Sudanese bread is Gurassa (قراصة), and is often eaten with a steak dish, tomatoes, onions, cardamom, and cinnamon, called Dama (دامة).)
アラビア語の綴りが出てきた。「دامة」だ。・・・でも、これを画像検索してもチェスみたいなゲームが出てくるし意味を調べても耐久性という意味になるし、・・・これは違うぞと思わざるを得なかった。
◆5)自分の旅メモ
自分の旅メモを見ると、ダマアのところに「英語ではsauce」って書いてある。スーダン人がそう言っていたのだ。
◆6)Google検索「sudan sauce dama」
「sauce」という単語を入れれば料理の世界限定で検索することになるので、肉やオクラのトマト煮などが多数出てくる。それをアラビア語スペルが出るまで頑張って探す。
あった、「دمعة」。さきほどのとは綴りが違う。直訳すると「涙」らしい。しかし「دمعة sauce」で検索するといろいろと料理が出てくる。だから「دمعة」の直訳は「涙」でも、実態は料理を示すのだと、だんだん確信を抱いてきた。
しかし英語が絡んだ文章を見て結論に至ってはダメだ。最終的にはアラビア語の情報はアラビア語で探さなくちゃダメだ。
◆7)Google検索「دمعة وصفة」
例えば肉じゃがの作り方を検索したいとき、「肉じゃが 作り方」みたいに検索しますよね。料理について検索するときには、その国の言語で「作り方」という単語を嚙ませると非常に良い結果が出てくるのです。私は「ずおふぁ」を単語登録して「做法」(作り方の中国語)になるように、「わすふぁ」を単語登録して「وصفة」(作り方のアラビア語)が変換されるようにしています。これはすごく便利な技です。
ということで、「ダマア 作り方」をアラビア語で「دمعة وصفة」(ダマア ワスファ)として検索し、画像検索に入ります。ここが最重要ポイントですが、検索結果からは私が現地で食べたダマアに近い画像を探します。
あった。◆「طريقة عمل الدمعة السودانية باللحمة|JUST FOOD」(≫こちら)
いいね♪ タイトルが「طريقة عمل الدمعة السودانية باللحمة」だ。訳すと「スーダン料理、お肉入りダマアの作り方」です♪
この写真はアシーダ(やわらか餅)のソースとして食べていますね。私はアエーシ(パン)のソースとして食べました。見た目も似ていますし、お肉が使われています。よってレシピも似ていそうです。
少なくとも、私があのとき知った「ダマア」の綴りはالدمعة、定冠詞を外してدمعةで、ほぼ間違いありませんね。
スーダン料理「ダマア」のアラビア語スペルは「دمعة」。肉やトマトを使った煮込みソース料理である。直訳すると「涙」の意味ももつ。
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◆8)【後日談】スーダン人友人オスマンへの質問
実は、この「ダマア」について調べているときは、イスラム暦の断食月(※)でした。私にはスーダンの旅で非常に仲良くしてくれた友人がいるのですが、努力して断食を頑張るムスリム(※)に料理の質問は控えるべきですね。だから、イード(※)を迎え、日本との時差を計算しても、断食月が確実に終わったと断言できるタイミングで、スーダン人友人に「ダマア」について質問をしました。彼は英語学校の先生をしていて、英語が流暢です。
※断食月:別名ラマダン。日の出から日没まで一切の飲食をしないイスラム教徒の宗教上の断食期間。ムスリム:イスラム教徒。イード:断食月が終わったイスラム暦の新年。
写真を送り、撮影場所がワディハルファであることを伝え、当時私が耳にした「damaa」という名称で合っているかどうか。合っているならアラビア語の綴りと、「ダマア」の意味は何か、という質問をしました。オスマンの返事は私がこれまで調べてきたことと完全に一致していました。
それに加え、オスマンが教えてくれたのは、「ダマアだけを言うと涙の単数形(※)の意味にもなるから、料理の話をするときは、ダマアソースってかんじでムラダマア(ملاح دمعة)と言うと良いよ。そうすれば涙と解釈されることはなく、みんな料理名として捉えてくれるから。」とのことでした。
※「涙」の単数形は「دمعة」で複数形は「دمعات」。
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「一粒の涙」という料理名の、ダマア。
ロマンチック。いい名前だな。
エジプトから船でスーダンに入り、ワディハルファで食べた食事が「ダマア」という玉ねぎとろとろ羊肉トマト油煮だった。素晴らしく美味しかった。
その料理名が「涙」を意味することが、何年もかかったけれども、やっと昨日判明した。
今日はスーダン料理ダマアを作ってランチにしよう。
我が家に旅がやってきたと思える素晴らしい味に、絶対なることだろう。