世界を旅していると、「スープになるお茶」に出会い、驚き、感激します。
世界には「塩味のミルクティー」が多くて、食事のときにいただくと、まさにスープのようにお茶を飲む感覚になります。
最初に塩入りミルクティーに出会ったのはカザフスタンでした。中国との国境付近の町ジャルケントから旧首都アルマトイへ、ミニバスに乗って移動するとき、途中食事休憩でストップしたサリオゼク(だと思う)の町です。
メニュー表記は、チャイスモロコム(чай с молоком)。
チャイスモロコム(чай с молоком)はロシア語で、直訳して、tea with milk。カザフスタンは中央アジアの中でロシア人比率が圧倒的に高い国なので、料理メニューはロシア語で書かれることが多いのです。
「ミルクティーにはお砂糖」という、日本で生きてきたゆえの固定観念があったから、一口飲んで驚きました。だって塩味がします。塩辛いほどの塩分ではなく、塩もミルクも紅茶も薄めに入っていて、疲れたときの塩分補給にごくごく飲めるという感じでした。
「お砂糖入れるの?」
「ニエット!」(入れない!)
(旅の間は絵日記を書いていました。)
大きな声で、お砂糖は却下されましたよ(笑)。ミルクティーには塩を入れるのが、彼らの大事な食文化であるのです。
* * *
塩入りミルクティーは、その後、モンゴルのスーテーツァイや、チベットの酥油茶(スーユーチャ)なども体験します。
随分と世界の各地で塩入りミルクティーに慣れて来たにも関わらず、驚いたのは、モンゴルのヒーツテイツァイでした。
聞けば、肉入りミルクティーですってよ。肉入り、肉入り、肉とミルク・・・、もはやスープの域になっている。これはモンゴル東部の町チンギスでいただいたものですが、注文するときは、なぜ普通の塩入りミルクティーの1.5倍の値段がするのか分からなかったのですが、肉を使ったミルクティーなら値段が高いのも納得します。
ただ、あとからモンゴル人にヒーツテイツァイの作り方を教わったところ、茶葉を使わないことが分かりました。ここで、お茶のバリエーションとしてはヒーツテイツァイは外れることになりますが、モンゴルでは「茶葉を使わないのに茶(ツァイ)と呼ぶ」ことが分かったのは収穫でした。
* * *
タジキスタンでは、ダルホースからホーローグへとパミールの山岳地帯を南下して移動していました。目指すはその先のアフガニスタンです。朝4時には移動を開始し、悪路を進み、そしてたどり着いたイズグロンという村での朝食が・・・。
シルチョイだったのです。
パミール高原の生活は、家畜の乳に依存している。
ここはタジキスタンだが、川の向こうの崖はアフガニスタンだ。このような厳しい土地にも、人は生きている。だからこそ、彼らの命を育む塩入りミルクティーは、人が生きる本質をとらえた飲料だと思えるのです。
シルチョイは、仕上げにバターを乗せて、融かして、パンをつけて吸わせて、パンと一緒にいただくものです。もうホントこうなるとこの紅茶はスープです。
* * *
この記事のタイトルは、世界のお茶は驚く魅力に溢れてる。「スープになるお茶」としました。
写真も多く掲載し、世界の広域で、塩とミルクを使うお茶が、食事に飲まれていることを紹介しました。中央アジア、モンゴル、チベット圏という、ユーラシア大陸高原の重要な食文化です。私たち日本人の感覚では、お茶はスープ料理にならないし、ミルクティーにバターも入れないけど、アジア広域を見た場合、小さくて狭い日本の感覚のほうが風変りとみなせるとも言えるでしょう。
それに、ミルクは完全栄養食品にかなり近い食品です。そして生きるためには塩が絶対必要です。
だから、塩入りミルクティーは、人が生きる本質をとらえた飲料、言い換えれば、人を造る飲料だと思えるのです。そう考えると、ミルクティーに砂糖を入れるほうが本質的ではないとも言えるかもしれません。
* * *
私は、一つずつ、作ってみたい世界の料理を作るようにしています。地味な料理でもいい、その土地に連綿と受け継がれる食を作りたいと、ときどき気分を変えたい日の朝食には、世界の朝ごはんが登場します。
だからこの日はタジキスタンのシルチョイとノン。
世界のお茶は驚く魅力に溢れてる。
「スープになるお茶」は素敵です。
塩入りミルクティーと焼き立てパン。
人を健康に育む食材の組み合わせで、朝から元気です!
レシピは簡単です。美味しいし疲れが取れるし、パンがあるだけで食事にもなる。レシピを掲載しておきますので、素晴らしいユーラシアの食文化を宜しければお楽しみくださいね。
* * *
材料(4人分):
- 水
- 700 mL
- 紅茶(※1)
- 2 g(※1)
- 牛乳(※2)
- 120 mL
- 塩
- 小1/2
- バター
- 小2
※1:この写真ではリプトンイエローラベルティーバッグ使用。紅茶のティーバッグは茶葉2 gで、ティーバッグ1個になります。
※2:牛乳は成分無調整の美味しいものを使います。
作業工程:10 分
- 鍋に水を入れて沸かし、紅茶のティーバッグを入れてフタをして70秒置き、時間が経ったらティーバッグを引き上げて、最後の1滴まで自然に落とす。
- 牛乳と塩を入れ、お玉で汁をすくっては高いところから落とし、汁をすくっては高いところから落とし、これを再沸騰するまで繰り返し、表面に泡を立てる。
- 味見をし、牛乳の濃さや塩加減を好みに調える。
- カフェオレボウルなどに注ぎ、好みでバターを一人あたり小さじ1/2ほど入れて出来上がり。バターを融かしてからいただきます。
- Enjoy!
このレシピやブログ記事を気に入っていただけたら応援クリックお願いします(*^_^*)