この記事のタイトルは「米国料理を理解するための移民流入の歴史」。
「米国料理」を理解しようとすると、100%必ず、ここ数世紀の移民の知識が必要になります。アメリカの歴史において本家が英国とは間違いではありませんが、今、英国系住民よりもドイツ系移民のほうが多いなど、英国一本建てでは語れない多数の要素があります。学校で歴史を習うときに「アメリカはイギリスの植民地だった」と反射的な暗記をしてしまったりで、米国移民の歴史を深く知らない人もとても多いと思います。
しかし移民流入の歴史を知らないと「米国料理」をとらえられなくなるので、今回、自分のために整理してまとめました。
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移民の到来を大まかに5段階に分けました。
◆1)有史前
- 北米大陸に一万年以上前から住んでいる先住民族としてのネイティブアメリカン
- 米国国勢調査上「ネイティブアメリカン=アメリカインディアン+アラスカンネイティブ」すなわち「先住民=本土の人+アラスカの人」なので米国本土の先住民はアメリカインディアンとも呼べる
- 彼らは古代にアジアから海を渡って北米に到達した
- モンゴロイド系で日本人に血統が近い
◆2)入植・植民地時代(17~18世紀)
- 契機は1492年コロンブスが新大陸発見、1498年英国人探検家が東海岸へ→英国が領有→植民地群成立へ
- 英国、北アイルランド、オランダ、ドイツ等(ちなみにフランス人はカナダ植民地のほうを頑張っていた)
- 有名なメイフラワー号でのピューリタンら到来(1620年)はプリマス植民地設立(後のマサチューセッツ植民地)
- 1607年バージニア植民地設立~1732年ジョージア植民地設立で「13植民地」が揃う→13植民地は1776年独立宣言をし最初の「アメリカ合衆国」になる
- 1648年にドイツ三十年戦争(宗教戦争)が終わり貧困に苦しむ農民が大量渡米
- 1700年代は植民地人口が激増
- 強制移民とも言うべき奴隷は17~18世紀に盛んに運ばれアフリカ黒人が多数だが、黒人奴隷自体はそう多くない
◆3)旧移民(~1880年)
- 西欧人、北欧人等
- ドイツ・イギリス・スカンジナビア・南アイルランド等
- 1845年アイルランド飢饉のためアイルランド移民急増
- 1848年のドイツの革命(民主的な改革)が失敗して政治難民のドイツ移民が大量渡米
なお関連事項として、1861~65年は南北戦争です。
◆4)新移民(1880年代~第二次世界大戦)
- 南欧人、東欧人等
- イタリア人、ギリシャ人、ユダヤ人、スラブ人(ポーランド人など)等
- アメリカの産業が成長し、ゴールドラッシュの夢も重なり、移民ブームは南欧と東欧にも広まる
- 大型客船が運航する時代になって輸送能力が飛躍的に高まったためこの時代の移民は人数が膨大
- ロシア系ユダヤ人は19世紀の宗教移民の最大勢力である
- その他のユダヤ避難民も米国は受け入れた
- 19世紀末は移民のピークである
- 西部開拓者家族の実話ドラマ「大草原の小さな家」は1800年代後半が舞台(主人公ローラは1867年生まれ)
- 1882年の改正移民法で中国移民は禁止(それまでは黒人奴隷制廃止後の労働力として中国移民が大勢いた)
- 1924年に国籍ごとの厳格な移民割り当てが制定されたため欧州とアジアからの新移民の波は終了し、規制されなかった中南米からの移民は相対的に増加する。メキシコ移民激増
◆5)第二次世界大戦後の新移民
- 中南米、アジア、難民
- 1965年に国別割当制度が廃止され、技能者や難民の入国が認められ、アジアや中南米の移民が増える
- 1970年代以降より不法移民(外国人労働者)が著増
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国別の状況としては、
- 英国移民は恒常的に続いてきた
- ドイツ移民は1820年~2000年の総計が700万人を超え米国最大の移民グループ。ドイツ系ユダヤ人も多い
- イタリア移民とソ連移民はドイツ移民より遅れて20世紀に入って大量流入
- 1980年代以降というごく近年はメキシコ移民増加が目立つ
など。
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この記事のタイトルは「米国料理を理解するための移民流入の歴史」。
「アメリカは英国の植民地」だったことは正しいし、英国は米国成立の本家本元だけど、米国を理解することはそんな単純なわけがない。
自由の国を求めて流れてくる人々。敗戦国の者、弾圧を受けた者、貧困者などがアメリカに渡った。欧州のあちこちから、そしてアジアや中南米やアフリカからアメリカにやってきた人々。なおアフリカ由来の人は奴隷と一辺倒で思われがちだが黒人イコール奴隷ではなく、奴隷制度が興る前から北米に渡っていた黒人も多い。
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ちなみに、今人生のテーマとして「アメリカ50州レンタカーで食文化を学ぶ旅」を掲げています。
2024年7月 1か月かけて20州制覇。
2024年10月 1か月かけて28州制覇。累計48州。
2025年6月 カナダと合わせてアラスカ州訪問。累計49州制覇。
残すはハワイ州のみ。
全米制覇まであと1州です!!
※社員旅行や家族旅行でハワイは訪問しているので全米50州は訪問達成済みですが「レンタカーで食文化を学ぶ旅」としてはハワイ州を未訪問扱いとしています。
これだけ米国で時間を過ごしている間、興味を持って料理を探したので様々な料理に出会いました。
アメリカ料理を大きく分類すると、白人料理、黒人料理、ヒスパニックが三本柱になり、中心かつ最大の柱は白人料理です。その白人料理の柱は均質ではなく「欧州各国」という何種類もの素材の棒が束ねられたような多要素のぶっとい柱です。もともと彼らの祖国にあった料理よりもむしろ、彼らが母国の味をもとに熱意を持って米国で創作した新しい料理が目白押し。一例ではギリシャ系アメリカ料理の「シンシナティチリ」もイタリア系アメリカ料理の「チョッピーノ」もギリシャやイタリアにはありません。もし名前が同じ料理があったとしても米国では米国版として進化系だったりします。そういうものが多数あるから米国に行って興味を持って料理を探すと、白人料理がものすごい膨大なことになっていることを痛感します。本当に太い柱です。
さらにそこに、黒人料理もあれば、ヒスパニック(主にメキシコ系)料理もある。米国西部はメキシコから買い取ったから移民云々言う以前にメキシコ系のヒスパニック文化が根付いている。アメリカは人と文化ごと土地を買ったのだから、そこは移民と分けなければならないなと。
こういう考察は非常に有意義で楽しいのだけれど、米国を旅している間は、正しく考えるためにも正しく移民の歴史を知らないといけないなとずっと思ってきました。帰国して半月が経ってやっと、旅の間に蓄積していたメモをまとめることができました。
今日はここまでまとめられてよかったです。
これでやっと米国料理を総括できます!
そしてまた、自分のために残したい事柄が出てきたら、ここに書き足しに来ようと思います。
上の写真(誌面の中の写真)はミネソタ州で撮影。ミネソタ州は人口の3割(多い!)がドイツ系アメリカ人ですって (^^) そう、上の復習ですがドイツ移民は米国最大の移民グループなのでね、スーパーでザワークラウトとかとにかくどこに行っても売ってるわけです・・・と、このように、現地スーパーでいろんな食品を見ていろいろ考察するのが楽しい私なのでした。