スーパーで買える食品から医薬品が生まれた例(1)

2022/12/05

私は今、「スーパーで売っている身近な食材から創薬された医薬品」に興味をもっています。背景は、自分自身が薬剤師であり、薬科大学などで薬剤師免許を取得したい薬学生に薬学を教えてきた教育者であり、世界の料理の研究者であり、普段はスーパーで食材を買う主婦だから。そして市役所の依頼などで市民向けに健康講座の講師を務める者となると「身近な食品」との接点はますます多く、身近な食品と健康の関連をより正しく知っておきたいと思ってきました。

ネットでも実社会でもよく見る「医薬品でないものに効果・効能を謳うこと」の危険性。薬機法(旧薬事法)の精神を理解する人が研究資料データなど自身が根拠を見た上で法に抵しない表現規制を理解して語るなら良いのだけど、「トマトはリコピンで抗酸化作用で癌を予防!」みたいに強い表現で言うことは、薬事法の時代から築き上げられてきた法の根幹に抵触する行為です。もしリコピンに素晴らしい抗癌作用があればすでに医薬品として製造販売が承認されて上市していますからね。でもそうでないということは、箸にひっかからない程度のものであるということ。

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でも、ごく少数ですが、あるんです。

「スーパーで買える食材の成分が、本当に医薬品になった例」が。

薬剤師&料理を業にする私としても、こういう情報は見逃せません。そこで記事にするにあたり、物事を選出するためには基準が必要なので、以下のように基準を策定しました。

<食材が医薬品になる例の収集基準>
・生鮮食品や天然物として購入するもの(肉、魚、植物、乳製品等)
・漢方薬として購入するものは除外する
・ヒト生体基本成分(ビタミン類など)は除外する
・食品成分の化学構造を人為的に変えたもの(誘導体)は除外する)
日本で製造販売が承認された医療用医薬品として実績があるもの。ただしあまりに古くても意味が薄いので2000年以降の実績とする。
・その食品を日常の調理方法で食べたとして、その成分由来の医薬品が掲げていた効能効果があまりにも期待できなさそうなものは除外する(例:卵(リゾチーム含有)は喉の痛みを取ろうと思って食べるものではなく、また他の目的への使用が考慮できない。)

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このシリーズ(1)の掲載はレンチナンです。画像はインタビューフォーム抜粋。

レンチナン

レンチナン

すごいですね、すべてグルコースを構成糖とする多糖類なのですね。

<自分用勉強メモ>

  • 抗悪性腫瘍剤「レンチナン」
  • 発売:1986年~2018年(需要低下により製造販売中止)
  • 製造販売元:味の素(株)が開発し、森下製薬(株)より発売。森下製薬はアミノ酸輸液を製造販売した会社で味の素がアミノ酸を供給、資本参加など。
  • 開発の経緯(インタビューフォームより抜粋):国立がんセンターはきのこ類由来の多糖体が抗腫瘍効果を有することに着目した。1969年シイタケ(Lentinus edodes)エキスがマウス皮下サルコーマの増殖を抑制することを見い出した。その後、β-(1→3)結合を主
    鎖とする高分子グルカンを単離することに成功し、これをレンチナンと命名した。1974年よりレンチナンの開発研究が進められ、1985年に製造販売承認。1994年再審査合格(※)
  • 化学構造の特徴:レンチナンはシイタケの子実体より抽出して得た多糖体を精製したもので、β-(1→3)結合を主鎖とする高分子グルカンである。
  • 動物実験成績:動物実験においては同系腫瘍及び自家腫瘍に対して化学療法剤との併用投与により腫瘍増殖抑制作用ならびに延命効果が認められている。また、レンチナンの単独投与によっても腫瘍増殖抑制作用ならびに延命効果が認められている。
  • 剤形:注射剤
  • 適応:手術不能又は再発胃癌患者におけるテガフール経口投与との併用による生存期間の延長
  • 作用機序:直接的に腫瘍細胞を障害する作用はない。生体防御機構を賦活することによって抗腫瘍効果を発現マクロファージ、キラーT細胞、NK細胞及び抗体依存性マクロファージ仲介性細胞障害作用(ADMC)の活性を増強。
  • 使用成績:臨床試験において生存期間の延長が認められている。レンチナン単独投与による効果は確認されていない。

※医薬品を使う期間が長くなるほどさまざまな副作用情報が集まるし、時が経つほど科学や医療も進歩するので、その薬が今後も世に出ていて良いかどうかを原則6年ごとに有効性・安全性・品質の観点から定期チェックする。これを再審査制度と言う。

感想としては、レンチナンは注射剤として多糖類を体内に投与する剤形なので、レンチナン成分を含むしいたけを食べたとしてもレンチナン成分は消化管から吸収されないであろう。しかしレンチナンはβ結合をもつ多糖類でありヒト消化酵素抵抗性と思われ、つまりは消化管滞留性が長く消化管免疫を増強する可能性は期待できるのかもしれない。見たところ大した禁忌も警告もなく副作用も抗癌剤としては格段に少なく、これはこれでいい薬だったのかもしれない。

とりあえず、私はしいたけが大好きなので、しいたけを研究してその成分を抗癌剤として医薬品開発に成功した日本の企業にも感謝し、これからもしいたけを食べていこうと思う。免疫増強の点で、どこかで何かが違うのではないかなと、アテにならない期待だとしてもほのかに楽しみにして。



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