イタリアで大好きだった「ペペロンチーニリピエニディトンノ」(Peperoncini ripieni di tonno;丸い唐辛子のツナ詰めのオイル漬け)を作りたいと長らく思っていました。でもイタリアの丸い唐辛子は普通売られていないから、作れないでいました。そこで「唐辛子がないなら自分で栽培しよう」と思い、去年、苗を買って菜園に植えるところから始めました。
そうして、
無事に保存食の状態まで調理することができました! これを冷蔵庫で保存し、時々のワインの友になっています。このように、作るのに1年かかる料理もあるけれど、「やればできる」感覚を得られたことはとてもすがすがしく、嬉しさ満点です。
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きっかけは、イタリアの旅。
我が家でグランタリエーレ。イタリアサルディニア島の思い出。
イタリアの様々なお惣菜が大きな皿に乗って出てくる「グランタリエーレ」。
写真に収めてしまうと大きさが分かりにくいけれど、店員が運んできてテーブルに置くと、その大きさに驚きます。この1皿で日本円換算で4000円くらいしました。
そのとき初めて味わったんです。丸い唐辛子のツナ詰めのオイル漬けを。
オリーブオイルには風味がついて、辛さは感じないほどこなれていて、マグロの身の味わいが良く、まわりの唐辛子はソフトで、オリーブオイルがなめらかにまとわっていて…♪
わー、何て美味しいんだろう!
と大感激!!
その後もイタリアの各地のスーパーのお総菜コーナーで、同じ料理を何度も見かけました。
私は何度も買って、宿の部屋で食べていました。だって本当に美味しいのだもの。
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世界の料理の研究において、私は自分自身が海外で実食した料理を優先的に作るようにしています。
だから、この瞬間も、いつかこの丸い唐辛子のツナ詰めのオイル漬けを自分で作って日本でレシピ化したいと思いました。
ただ、日本で普通に売っている唐辛子は鷹の爪がほとんどで、イタリアのこの丸唐辛子は売られていないんですね。しかしネットの種苗専門店で苗が安く売られていたので、苗を買いました。
2本の苗を植えて、
夏には旺盛に実がつきました! 鷹の爪系統の唐辛子に比べると、1つの株から収穫できる唐辛子の量が多分100倍以上とたくさん実ってくれます。
まんまるでコロコロで、綺麗~♪
ちなみにこの唐辛子は肉厚でジューシーで、摘みたてでフレッシュなものは鮮烈な辛さがあります。実が小さいため中の種が目立ちますが、実が小さいので種は多くは入っていません。シネンセ種の唐辛子と違って特有の香りもないので、普段から、きんぴらや中華の炒め物やトマトソースの辛味づけなど、辛味をつけるには料理を選ばず使えます。
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10月から11月、晩秋の時期になると、最後の実り。
全部収穫して、さあそれではイタリアの保存食を作ります!!
左から解説すると、
1)小さなナイフでヘタがなるべく小さく取れるように切れ目を入れ、2)そっと引き抜き、3)中の白いものは種なので、4)穴を破ったり広げないように気をつけながら細いもの(写真は理化学実験用の薬さじの先)できれいに取り出します。
1時間かけてもこのくらいの数しかこなせませんが、それでも旬の大量の収穫を一気に仕込むのが保存食。頑張ります。
その後、酢が入った湯に入れてさっとゆがいて強い辛みを和らげます。そして内側に水が残らずすべて乾くよう、穴を下にして冷蔵庫に半日以上入れておきます。
その後、穴の中にツナを詰めます。
この作業がまた慎重さを要するもので、穴を破らないよう、穴を広げないよう、ツナがはみでないよう、中に隙間ができないよう、しっかりとツナを詰めていきます。
もくもくと作業を続けて、
ビンの中にそっと入れて、そっとオリーブオイルを注ぎます。
そうして、誰も触らない揺れない冷暗所に3か月以上置いておきます。
唐辛子の収穫が晩秋なので熟成期間は冬。だから冷蔵庫に入れなくても腐りにくい。でももし氷点下になるようなら冷蔵庫に入れると安心です。
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春になり、完成!!
唐辛子もツナもまったく崩れていません。
そして、イタリアの旅を思い出す素晴らしい味わいに感激しました。唐辛子の苗を買うところから勇気を出して取り組んで良かったと思いました。
こうして作るのに1年かかる料理もあるけれど、世界の料理を、夢を叶えるような気持ちで取り組むと、やりがいがありますね。
やればできる!! と、今後もさまざまな夢に取り組んで夢を叶える勇気をもらえました。