私はイラクに行ったことがあります。選んだ入国ポイントは、トルコ南部からの陸路国境越えでした。紛争国の治安情勢は刻一刻と変わる中、いくらそのときは安全な頃と地域とはいえ、軍の車に何度もすれ違うと緊張もする・・・。そうして私たちとイラク人を乗せた乗り合いタクシーはイラク側ザホ国境に着き、全員「Passport Saloon(パスポートサロン)」と書かれた部屋へと通されました。「サロン」という名のつく通り、ビザ手続きを待つ間、全員にイラキチャイ(イラクの紅茶)がふるまわれました。
国境といえば賄賂を要求されたり入国にいちゃもんをつけられたり時には拒否されたり、嫌な思いが尽きない場所だから、まさか紛争国の国境越えがこんな素敵なチャイから始まったことに、幸先の良さを感じ、嬉しくなりました。やるじゃんイラク(*^.^*) こんな素敵な国境、今まで体験したことありませんでした。
聞けばこの紅茶はトルコのチャイダンルック(çaydanlık、二段式ポット)と同じ淹れ方をしていました。下のポットで湯を沸かし上に濃い紅茶を置き、飲むときに濃い紅茶を湯で割る。これ、不思議とすっきりした味わいで飲めるんですよね。紅茶にはほんのりシナモンが香り、飲むときに砂糖を溶かしていただきました。
「キルクーク」に「バグダッド」、この文字を見て、イラク入国と緊張を実感し、今日から始まるイラクの旅に、何というか、やる気が出たのでした。
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それ以来ずっとずっと、私は自宅でも「二段式ポットで紅茶を淹れて飲みたい」と思ってきました。
二段式ポットは、画像検索でさまざまな色や形のものが見つかります。
ネットで買おうか躊躇しているうちに、家にあるポットを2つ組み合わせてみようと思ったんです。物を増やさずになかなか良いものが出来ました♪
ほら、自室の仕事デスクに置いて、こんな感じ♪
IH対応のヤカンというかポットがあり、ガラスの茶器がその口径にピッタリはまりました!!
IH対応だから延長コードがあれば室内どこでも設置可能です。
サイドにはグラス、砂糖、スプーン、紅茶、スパイス(カルダモンホール、シナモンパウダー)を脇に置いて。おつまみピスタチオも常備しました。
イラクではカルダモンかシナモンを入れることが多々あるそうです。私が国境及び市街地で飲んだものも、シナモンの風味がしました。
ただ、カルダモンホールは大丈夫なのですが、シナモンスティックを入れてしまうと強い香りが出すぎてしまうので、私はシナモンを入れる場合はパウダーをごく少量使い、そこまで強い香りが出すぎないように調整しています。
<イラキチャイの作り方>
1)下段の熱湯用ポットのみをセットして湯を沸かし、
2)上段の紅茶用ポットに茶葉と熱湯を入れ、
3)2つのポットを連結して湯を沸かし、濃い紅茶を出します。
この利点ですが、英国式の紅茶の入れ方では湯温が冷めないようにティーコゼーなどを使ってポットを保温するじゃないですか。でもどうやったって、火から離れた湯を火にかけていないポットに入れたら温度が下がるじゃないですか。この2段のポットで紅茶を淹れると、紅茶をぐつぐつ煮出して不味くすることがありません。そして紅茶を沸点に近い理想の温度(海抜が低いところなら100℃弱)で成分抽出できます。それが理想的に美味しい紅茶の淹れ方なのです。
4)カップに砂糖を入れ、濃い紅茶を注ぎ、熱湯を注いで飲みやすい濃さにして、
5)出来上がりです♪♪
「紅茶のお供にナッツ類」とは世界でも広域に見られるスタンダードですね。
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冷めるからティーコゼーで保温する(でも加熱してないから冷めていく)英国式の紅茶の淹れ方と異なり、この方法では完璧に熱い美味しい紅茶を淹れることができます。
そして濃い紅茶のポットを熱湯ポットの上に置いておき、飲みたいときに、また同様に紅茶を淹れればいい。
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2段式ポットで淹れる紅茶は美味しいです。旅した人や、住んだことがある人なら分かる。茶葉をずっと湯に浸けておくから渋みが出るけれども、砂糖の甘さと渋みが一緒になると美味しい。そして気分や体調によって濃く飲むのも薄く飲むのも自在だから、かなり「美味しさストライクゾーン」が広いのです。
とはいえ、インドに行けばインド式のどっぷり甘いチャイが美味しかったり、カザフスタンやモンゴルでは塩入りミルクティーが美味しいなど、その土地の紅茶の魅力はたくさんあって、素晴らしいですよね。キッチンではそういうお茶も作り続けていきます。
でも私は、私がロシア、イラン、トルコ、イラクなどなどで何度も感激してきた「2段式ポットで淹れる紅茶」を好きでいる限り、この方法を自分のデスクでも続けていこうと思います。
いいなと思ったことは、1つでも多く実現したいもんね♪(^^*