ウイグル家庭料理の自分用記録(5)手打ち麺

2021/06/28

私にとって宝物の思い出となるウイグル料理の記録、第5回です。

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ウイグル家庭料理、第5回・手打ち麺

◆ラグマン(لەغمەن)とセイ(سەي)

ウイグル料理ラグマン(لەغمەن)こそウイグル料理の代表格だ。ラグマンは代表的なウイグル料理であり、このご家庭でも何度も出していただいた。その都度小麦粉から麺をこね、寝かせ、引き、ゆでる。さっと冷水にとって水気を切ってから、セイ(سەي)をかけて食べる。セイは狭義には野菜という意味で、広義には野菜を使ったおかず料理(米の友とか、麺の友、みたいな)の意味である。この時期は秋冬であり白菜やじゃがいものセイをよく食べた。夏は三尺インゲンのセイが美味しいと言う。そのとき冷蔵庫にある野菜を使って作れる多様なセイのアイディアは日本の食卓アイディアにもぴったりだね。

「لەغمەن」(ラグマン)は「ل ە غ م ە ن」が「n a m gh a l」でこれを右から読む。ウイグル語の「ە」の発音は「a」よりむしろ「æ」であり、日本語話者の耳には「ア」と「エ」で揺れるので、「لەغمەن」は、同じウイグル人が同じようにしゃべっても、「ラグマン」に聞こえるときも「ラグメン」に聞こえるときもある。だが冒頭の「لە」は「ラ」で「レ」になることはない。この点に関するウイグル人の説明は「ウイグル語は、話すときは語尾があいまいになりやすい」と言っていた。
「سەي」(セイ)は「y e s」でこれを右から読む。

◆ラグマン(لەغمەن)

ウイグル料理これらの写真はすべて別の日のラグマン(لەغمەن)です。ラグマンに乗せる肉野菜炒め煮であるセイ(سەي)は、具に決まりがないが、お肉と野菜が入ったトマト炒め煮が乗ることがほとんどだった。
<ラグマンのセイの作り方>フライパンに油を多めに入れて肉と塩を入れて長い時間炒め、トマトとその他野菜(と唐辛子)を入れ、火をよく通す。
*なお、私がウルムチで食べた「グイルーラグマン」と「スイルーラグマン」について質問したところ、「前者は肉が大きくブツ切りになっていて野菜は少ないか入れない。後者は肉が小さくてスープが多め」とのことだった。また現地でラグマンを食べるときよく食卓ににんにくが置いてあって生のままかじりながら食べたという体験を語ったら「それは漢民族式だ」と言っていた。

◆ラーザ(لازا)またはヤグラーザ(ياغ لازا)

ウイグル料理ラーザ (لازا)は中国語の辣子(ラーズ)すなわち唐辛子のこと。ヤグラーザ(ياغ لازا)は「ヤグ」が油で「ラーザ」が唐辛子なので唐辛子油だから日本語にすると辣油(ラー油)のこと。
でもラグマンを食べているときにラーザ(唐辛子)と言えば当たり前でヤグラーザ(辣油)を指す。だからわざわざ長い名で呼ばなくても短くラーザと言えばいい。
<ラーザ(ヤグラーザ)の作り方>小さな容器に、唐辛子(粗挽き唐辛子として市販されているものでよい、たっぷり)、にんにく(クラッシュしたりすりおろしたものを唐辛子と同量)、花椒(カワウィチン、كاۋاۋىچىن)、黒酢少々、ごま油を入れて混ぜておく。そこに熱したサラダ油を少しずつ加えては混ぜ加えては混ぜていく。
*黒酢を入れることで腐らず長持ちし、なおかつ美味しいラーザが作れる。

「ياغ لازا」(ヤグラーザ)は「ي ا غ ل ا ز ا」が「a z a l gh a i」でこれを右から読む。
「كاۋاۋىچىن」(カワウィチン)は「ك ا ۋ ا ۋ ى چ ى ن」が「n i ch i w a w a k」でこれを右から読む。

◆ラグマン(لەغمەن)の麺延ばし・1

ウイグル料理ラグマン(لەغمەن)の麺延ばしについて教わったことを書いておくが、前提としてママは器具計量をせず経験と勘で粉や水を量るので、ここに書き起こした数字は、そのイメージを伺って私が数値化したものである。
<ラグマンの麺のレシピ>小麦粉500 mL(粉は限定されないがこの日は薄力粉使用)、塩小2/3、水。塩加減が最も重要とのことで、多いと跳ね返って縮む伸びない麺になり少ないとちぎれる麺になる。延ばして油を少し塗ってプルタ(پىلتە、渦巻き状のもの)にして20分ほど置いておく。※何十分も置いておくと麺がくっつくので20分。延ばすときの手際は見事に手早い。太さが変わらず延び、しかも等間隔でねじれている。

「پىلتە」(プルタ)は「پ ى ل ت ە」が「a t l i p」でこれを右から読む。日本人の耳にはプルタやプータに聞こえる。「細長くしたもの」という意味で、細長い揚げパン(中国語の油条(ヨーティアオ))はプルタクイマ(پىلتە قۇيماق)と呼ばれる。

◆ラグマン(لەغمەن)の麺延ばし・2

ウイグル料理プルタ(پىلتە、渦巻き状にした麺)を細くし、両手に巻き付けて持ち、引っ張り、まな板に打ち付け、コシを出しながら延ばしていく。麺は切らずに長いままゆでる。ゆで汁は後述のメンタン(مەنتاڭ)として飲むので捨てない。

◆ラグマン(لەغمەن)とアチックスー(ئاچچىقسۇ)とラーザ(لازا)

ウイグル料理(左上)ラグマン(لەغمەن)はゆであげた後にセイ(سەي、野菜の入ったおかず炒め煮)を乗せて出され、食べる側が好みで黒酢と辣油をかけて食べることが多い。(左下)キッチンでアチックスーラーザ(ئاچچىقسۇ لازا、辣油入り黒酢)またはラーザ(لازا、辣油)を用意し、(右上)ゆであがった麺を和えて提供することもある。(右下)タレが絡んだ状態で提供される麺も美味しい。

「アチックスー」(ئاچچىقسۇ、酢)は「アチック」(ئاچچىق、怒ったとか辛(から)いの意味)と「スー」(سۇ、水)からなる単語で「刺激的な水」のような意味に由来する。「ئاچچىق」(アチック)は「ئ ا چ چ ى ق」が「q i ch ch a a」でこれを右から読む。「سۇ」(スー)は「س ۇ」が「u s」でこれを右から読む。
「アチックスーラーザ」(ئاچچىقسۇ لازا)は、「アチックスー」(ئاچچىقسۇ、酢)+「ラーザ」(لازا、唐辛子)の組合せで「黒酢と唐辛子(辣油)のタレ」を意味する。アチョスーラーザやアチェックスラーザにも聞こえるなど、発音は日本人にはかなり難しい。

◆メンタン(مەنتاڭ)

ウイグル料理ラグマン(لەغمەن)のゆで汁はメンタン(مەنتاڭ)として飲まれる。メンタンは中国語の「面汤」(ミェンタン)からの流入語。
(左)ゆで汁そのままのメンタン
(右)はセイ(سەي、野菜の炒め物のおかず)の残りを少し足して美味しくしたメンタンメンタンが好きな人は夏でも熱いメンタンを好んで飲むと言う。私も好き。

「مەنتاڭ」(メンタン)は「م ە ن ت ا ڭ」で「ng a t n a m」を右から読む。

◆日本の素麺や冷や麦を使ってラグメン(لەغمەن)のような料理を作った場合の呼び方は?

さて、何度かこのテの細長い麺料理を頂いているうちに、ラグメン(لەغمەن)かウグレ(ئۇگرە)かが混在してきました。ラグメンウグレは混同しやすいので、教えてもらったことを書きます。

ウグレは辞書では「ئۇگرە」だが家族に書いてもらった綴りは「ئۇغرە」だ。「گ」は「g」の音、「غ」は「gh」の喉音。実際の発音はこれまた日本語カタカナ化が難しい音だったし「gh」音も聞こえる気がしたが、メモを取るときには「グ」は「グ」と書けているから耳では「گ」と聞こえたのかもしれない。
「ئۇگرە」(ウグレ)は「ئ ۇ گ ر ە」が「e r g u -」でこれを右から読む。なお「ئ」は母音が語頭にくるときに母音が単独で存在しないようにつける無音価母字なのでこれ自体に意味も音もない。

麺の分類には2つの尺度がある。1つは製法、2つめは食べ方だ。
<1:製法分類>ウグレは薄く延ばして包丁や機械で切ったもの。ラグメンはひっぱって空中で延ばしたもの。日本の素麺や冷や麦をウイグル人が見るとウグレと呼ぶ。
<2:食べ方分類>ショルパ(شورپا、肉入りクリアスープ)に麺が入るとウグレ。麺にセイ(سەي、汁気のある野菜炒め煮)がかかるとラグメン(لەغمەن)。
<3:総称>1や2に関わらず、麺全般をラグメンと総称する。
・・・この1~3を読むと、きれいに区切りがつけられなくて「あれっ?」って思いますよね。だから混乱しやすかったのです。でも、1~3が頭に入ると、これまでのウイグル麺料理体験もつじつまが合います。

では問題です。
ウイグル料理
写真は上下ともに日本の素麺や冷や麦を使って作ったウイグル料理です。
上の料理は? →ショルパ(肉入りクリアスープ)の中に入っているからウグレです。
下の料理は? →麺にセイ(汁気のある野菜炒め煮)がかかっているからラグメンです。

でも、これらに関わらず、麺全般をラグメンと総称します

次の問題です。
ウイグル料理
写真は左右ともに日本の素麺や冷や麦を使って作ったウイグル料理です。
左の料理は? →ショルパ(肉入りクリアスープ)の中に入っているからウグレです。
右の料理は? →麺にセイ(汁気のある野菜炒め煮)がかかっているからラグメンです。

でも、これらに関わらず、麺全般をラグメンと総称します

◆ソーメン(سومەن)またはコールムラグメン(قورۇم لەغمەن)

ウイグル料理ソー(سو)は「炒める」、メン(مەن)は麺。ソーは中国語の「炒」(チャオ)からの借用語。また手延べ麺料理として有名なラグマン(لەغمەن、上述)は麺料理全般を指す言葉でもあり、「炒める」はウイグル語ではコル(-قورۇ)、「炒めた」はウイグル語では「コルマ」(قورۇما)だから、ソーメン(炒めた麺)をウイグル語のみで言うとコールムラグメン(قورۇم لەغمەن)になる。
ソーメンを文字通り「炒める麺」と解釈すると、日本の焼きそばのように麺を油で炒めてあとからソースを絡めるように間違われるが、ウイグル料理のソーメン麺を先ゆでして汁気と合わせる料理なので注意。写真の麺は小麦粉を練った生地を平たく延ばしてから包丁で細切りにしたと言っていた。もちろん手延べ麺(狭義のラグマンの麺)を炒めてもソーメン
セイ(سەي)は広義には野菜のおかずだが、麺類のセイは羊肉や小さめ野菜のトマト炒め煮で、そこに「ゆでてザルにあげた麺」を入れて炒め合わせるようにして味を絡めて作る(セイの汁気は残ってもよい)。セイは先にしっかり炒めて味を決めておく。

「سومەن」(ソーメン)は「س و م ە ن」が「n e m o s 」でこれを右から読む。
「قورۇم لەغمەن」(コールムラグメン)は「ق و ر ۇ م ل ە غ م ە ن」が「n e m gh a l m u r o q」でありこれを右から読む。

◆メンペルソーメン(مەنپەر سومەن)

ウイグル料理日本料理の素麺とウイグル料理のソーメン(سومەن)は音が同じだが、ウイグル料理のソーメンは麺を先にゆでてセイ(سەي、汁気のある野菜炒め煮)に加えて炒め合わす料理である。上のウグレ(ئۇگرە)とラグメン(لەغمەن)は炒め合わせる料理ではないので、ソーメンウグレともラグメンとも異なる料理である。
メンペル(مەنپەر)は「1つ1つちぎった麺」という意味で、まさに中国語の「面片」の借用だ。チベットのテントゥクとも同じ料理だ。ソーメンの定義は「炒める麺」だが実質は「先ゆでしてからセイ(汁気のある野菜炒め煮)と絡め合わせる料理」である。よってメンペルソーメン(مەنپەر سومەن)は「麺の1片1片をちぎって先ゆでしてからセイ(汁気のある野菜炒め煮)と絡め合わせる料理」となる。麺が旨いからメンペルソーメンも旨い。

「مەنپەر سومەن」は「مە ن پ ە ر س و م ە ن」が「n e m o s r e p n e m」でこれを右から読む。

◆メンペルソーメン(مەنپەر سومەن)の麺作り

ウイグル料理メンペル(مەنپەر)は「1つ1つちぎる」という意味なので、麺生地を細く作ってから、沸かした湯の上で次々とちぎって投入してゆでる。「次々とちぎって投入」がものすごく手早い。
なおソーメン(سومەن)の麺は先にゆでてセイ(سەي)に加えて炒め合わすが、後述のフイメン(خۈيمەن、中国語で烩面、ウイグル語でスユカシやスユクアシ、後述)は麺を直接セイに入れる点で違いが出る。ソーメン(سومەن)の麺はラグマン(لەغمەن、手延べ麺)の麺より硬くベンシ(بەنسي、水餃子)の皮より柔らかく作るそうだ。

◆メンペルソーメン(مەنپەر سومەن)とトホムショルパ(تۇخۇم شورپا)

ウイグル料理
これは別の日のメンペルソーメン(مەنپەر سومەن)。奥には卵スープのトホムショルパ(تۇخۇم شورپا)。トホム(تۇخۇم)は卵、ショルパ(شورپا)は肉ダシのクリアスープの意味。この家のママは鶏がらスープの素などを使わずきちんと材料から旨味を出しているから毎回感動する。というのは、日本に住んでいると、ほんだし顆粒や鶏がらスープの素顆粒が -それは本来の我々の食文化ではないのに- こんなにも浸透してしまっているからだ。我が身を振り返り、肉の旨味はちゃんと肉から得ようと、そのほうが体にも栄養にも良いはずだと、決まり悪く思う。

「تۇخۇم شورپا」(トホムショルパまたはトゥホムショルパ)は「ت ۇ خ ۇ م ش و ر پ ا」が「a p r o sh m u x u t」でこれを右から読む。

◆フイメン(خۈيمەن)、スユクアシ(سۇيۇق ئاش)、スイカシ(سۇيقاش)

ウイグル料理フイメン(خۈيمەن)は中国語の烩面(フイミェン)そのままの料理名だ。「烩」はとろみある汁という意味なので、「烩面」は「とろみ汁そば」という意味になる。汁の中には短い平麺がたくさん入っている。
中に入っている平麺はメンペル(مەنپەر)すなわち「1つ1つちぎった麺」、中国語の面片、チベットのテントゥクと同じだ。上述のメンペルソーメン(مەنپەر سومەن)は「麺の1片1片をちぎって先ゆでしてからセイ(سەي、汁気のある野菜炒め煮)と絡め合わせる料理」だったが、フイメンは麺を直接セイに入れる点で違いが出る。麺を別ゆでしないから煮汁に多くのとろみが出て「烩」(フイ)の状態になるのだ。
フイメンは中国語の借用語で現地でも定着しているそうだが、敢えてウイグル語で言うとスイカシ(سۇيقاش)になる。スイカシスユックアシ(سۇيۇق ئاش)の略語。スユック(سۇيۇق)が「水っぽい」という意味(転じて汁物の意味)でアシ(ئاش)が主食や食事を意味するので、スユックアシないしスイカシは「汁物1つで食事になるもの」の意味になる。※実態はトマトベースのスープすいとんである。

「خۈيمەن」(フイメン)は「خ ۈ ي م ە ن」が「n e m i ü x」でこれを右から読む。
「سۇيۇق ئاش」(スユックアシ)は「س ۇ ي ۇ ق ئ ا ش」が「sh a q u i u s」でこれを右から読む。
「سۇيقاش」(スイカシ)は「س ۇ ي ق ا ش」が「sh a q i u s」でこれを右から読む。

◆フイメン(خۈيمەن)、スユクアシ(سۇيۇق ئاش)、スイカシ(سۇيقاش)

ウイグル料理この写真はどれも別の日のフイメン(خۈيمەن、別名スユクアシ(سۇيۇق ئاش)ないしスイカシ(سۇيقاش))である。フイメンは、セイ(سەي、汁気のある野菜炒め煮)を作って、小麦粉を練ったものを薄く細く短く平たくしたものを直接入れて煮る。鍋ひとつで作れるので、日常的に作りやすいからか、何度も食事に出していただいた。

◆ショルパメンチューザ(شورپا مەنچۇزە)

ウイグル料理フイメン(خۈيمەن)に似たタイプの料理にショルパメンチューザ(شورپا مەنچۇزە)がある。ショルパ(شورپا)は肉入りクリアスープ、メンチューザ(مەنچۇزە)は薄く延ばした麺を包丁で切って作る麺片(三角の麺と言っていた(包丁の切り方により三角になる))。だから、ショルパメンチューザは「麺片入りの肉入りスープ」となる。
<ショルパメンチューザの作り方>
最初に肉・塩・水を煮て、アクも取って、野菜を入れてショルパを作る。メンチューザも作っておく。ショルパを煮ている鍋にメンチューザを入れて2、3分ゆでて出来上がり。仕上げに黒こしょうをふってサーヴする。

「شورپا مەنچۇزە」(ショルパメンチューザ)は「ش و ر پ ا م ە ن چ ۇ ز ە」が「a z u ch n e m a p r o sh」でこれを右から読む。

◆ショルパメンチューザ(شورپا مەنچۇزە)の麺

ウイグル料理このメンチューザ(مەنچۇزە)の麺は薄力粉で作っていた。非常に薄く、それが口の中に入るとワンタンの皮のようにふわふわとし、美味しく感じられた。ちなみに具にノコート(نوقۇت、ヒヨコマメ)が入っているが、うまく煮るために、調理前に水に浸けて吸水させている。

「نوقۇت」(ノコート)は「ن و ق ۇ ت」が「t u q o n」でこれを右から読む。

◆ショルパピントーザ(شورپا پىنتوزا)

ショルパメンチューザ(شورپا مەنچۇزە)の関連料理として教えてもらったのがショルパピントーザ(شورپا پىنتوزا)。ショルパ(شورپا、肉入りクリアスープ)に入れる麺をピントーザ「پىنتوزا」(春雨やマロニーの類)に変えたらショルパピントーザになる。

「شورپا پىنتوزا」(ショルパピントーザ)は「ش و ر پ ا پ ى ن ت و ز ا」が「a z o t n i p a p r o sh」でこれを右から読む。

◆ショホラチュップ(سوخلا چۇپ)

ウイグル料理ショホラチュップ(شوخلا چۇپ)は、食べ心地がふわふわで心地よくて大変に気に入った料理です。ショホラ(شوخلا)がトマト、チュップ(چۇپ)が薄く伸びた平麺の意味なので、日本語では「トマト煮込みがけの平麺」とか、ざっと言うと「トマトきしめん」になる。
麺にかかるものはセイ(سەي、野菜のおかずの総称)と呼ばれる。この写真ではトホムセイ(تۇخۇم سەي、卵のセイ、トホム=卵)が乗っている。このトホムセイの材料は、ふわふわ卵、ピーマン、トマト、塩、油で、下からは柔らかくて美しいチュップ(平麺)が出てくる。レンゲですくうとふわふわ柔らかい平麺が出てくる。平麺は、一気にこんなに薄く作れるわけではなく、何度かパスタマシンに通して少しずつ薄くした上で、一口サイズにカットするそうだ。

「شوخلا」(ショホラ)は「ش و خ ل ا 」が「a l x o hs」でこれを右から読む。
「چۇپ」(チュップ)は「چ ۇ پ」が「p u ch」でこれを右から読む。
「تۇخۇم」(トホム)は「ت ۇ خ ۇ م」が「m u x u t」でこれを右から読む。「ۇ」は「ウ」と置かれるので「トゥフム」と書いても良いのだが、耳でウイグル人の発音を聞くと「トホム」に近い音に聞こえる。

◆グルチコールムスィ(گۈرۈچ قورۇمسى)とマシチュップ(ماش چۇپ)

ウイグル料理写真右はマシチュップ(ماش چۇپ)。マシ(ماش)はレンズマメや緑豆などの小さい豆で、チュップ(چۇپ)が薄く伸びた平麺。よってマシチュップ(ماش چۇپ)は「豆の煮込みがかかった薄い平麺」の意味になる。
写真左はグルチコールムスィ(گۈرۈچ قورۇمسى)で、いわゆるチャーハン。グルチ(گۈرۈچ)が米、「炒める」はウイグル語でコル(-قورۇ)、炒めたはウイグル語ではコルマ(قورۇما)であり、コールムスィ(قورۇمسى)が炒め物や焼き物の意味。
写真のグルチコールムスィ(گۈرۈچ قورۇمسى)は卵チャーハン。ごはんを硬めに炊いておき、小鍋に油を入れて卵と塩を入れて炒め、ごはんを入れて炒め、ラーザ(لازا、唐辛子)を入れて作る。なお硬めに炊くごはんは、米2合に対して水が1.7合ラインと言っていた(炊飯器)。この硬さが絶妙で非常に美味しいと思った。

「ماش چۇپ」(マシチュップ)は「م ا ش چ ۇ پ」が「p u ch sh a m」でこれを右から読む。
「گۈرۈچ قورۇمسى」(グルチコールムスィ)は「گ ۈ ر ۈ چ ق و ر ۇ م س ى」が「is m u r o q ch ü r ü g」でこれを右から読む。なお「ۈ」(ü)は「ウの口の形でエを混ぜる」ような音。日本語カタカナ表記ではウでよい。

◆マシチュップ(ماش چۇپ)とチュップ(چۇپ)

ウイグル料理このマシチュップ(ماش چۇپ)は、チュップ(چۇپ、薄い平麺)の薄さが素晴らしかった。マシ(ماش)のセイ(سەي、野菜のおかず)は鶏肉、緑豆、トマト、玉ねぎ、塩、こしょう、カワウィチン(كاۋاۋىچىن、花椒)、バターで調理しておく。チュップは別ゆでしてザルにあげて水気を切って皿に盛り、マシのセイをかける。

「كاۋاۋىچىن」(カワウィチン)は「ك ا ۋ ا ۋ ى چ ى ن」が「n i ch i w a w a k」でこれを右から読む。

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以下は全7回の見出しINDEXです。次回につづく。



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