ウズベキスタンで食べて美味しかった「マスタワ」。
お米が入っていて、お肉も野菜も入っていて、スパイス&トマト仕立ての汁でいただきます。日本で言えば雑炊です? でもとってもリッチな滋養食!
しかも、雑炊なのにカティーク(ヨーグルト)を乗せて食べるんです。
カティーク(ヨーグルト)で味も栄養もUPして、中央アジアたる実力の味がします♪
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マスタワは、ウズベク語ではスユクオシュとも呼ばれます。スユク(суюк)は液体、オシュ(ош)はごはん。だからスユクオシュ(суюк ош)は「スープごはん」、日本語にして「雑炊」と訳すことができます。
では「マスタワ」は何語なのでしょう?
マスタワはキリル文字で「Мастава」と表記されます。キリル文字だからロシア語?・・・
結果から言うと、
・・・いや、まさか、ペルシャ語起源だとは思わなかった。
しかもそのペルシャ語の単語を突き付けられたとき、まさか自分が知っている単語に合致するなど思わなかったから、まさに衝撃だったのです。
ということで、本記事では、マスタワの語源と言語について検証した過程を記します。
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◆1)ロシア語版Wikipedia「Мастава」(≫こちら)
料理の解説はありますが、マスタワが何語かは書いていません。でもそこからウズベク語版へリンクを飛べます。
◆2)ウズベク語版Wikipedia「Mastava」(≫こちら)
冒頭にMastava (fors, most — qatiq va ob — suv)と書いてあります。全体をざーっと読んでいるとき、ごめんなさい、迂闊にもこの最も大事な冒頭をスルーしてしてしまいました。
でももう一度冒頭を見たとき。
あ・・・
目を見開いた。
口が開いたままになった。
息が一瞬止まった。
fors, most — qatiq va ob — suv
カティークだ!!!
つまりヨーグルトだ!!!
これだ!!!
fors, most — qatiq va ob — suv
は、つまり、
「forsにおいて、mostはヨーグルト、で、obはsuv」と。
ハッ、suvって、トルコ語の水かな?(※)って思った。
※正確にはトルコ語で水はsu、液体はsıvı。
つまり、
fors, most — qatiq va ob — suv
の部分は、
「forsでは、mostがヨーグルト、で、obが水」
を表すのだろうと。
そして目を見開き、口が開いたままになり、息が一瞬止まったのです。
「mostがヨーグルトって、イラン料理のマストヒャールのマストじゃないか」と。
そして、「obが水って、イラン料理のアーブグシュトのアブじゃないか」と。
イラン料理のアーブグシュトは、アーブ(水)+グシュト(肉)という料理名で、肉を壷で煮込んだ美味しいスープです。料理の用語としては「肉の水」ではなく「肉のスープ」と訳すほうがよいですね。
<ここまで分かったこと>
- most=ヨーグルト=マストヒャールのマスト。
- ov=水ないしスープ=アーブグシュトのアブ。
なお、
「fors」は、ペルシャ語という意味のウズベク語でした。日本語Wikipedia「ペルシャ語」からウズベク語版へ飛んだら「Fors tili」(ペルシャ+言語)という見出しだったので確信しました。
さあ、
mostov=モストブ=ヨーグルトスープです。
この「mostov=モストブ」が転じて「mastava=マスタワ」になり、ロシア帝国進出と併合でキリル文字化されて「Мастава=マスタワ」になったのでしょう。
だからマスタワにはカティークが添えられるのでしょう。原義は「ヨーグルトが入ったスープ」だから。
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なお、マスタワの元になったmostとovをそれぞれペルシャ語の「ماست」(most)と「آب」(ov)にし、これを接続した「ماستآب」(mostov)がマスタワのような雑炊料理を示すかどうかをGoogle画像検索で探しましたが、「ماستآب」(mostov)はヨーグルト水(ヨーグルトを水で割ったもの)が出てくる程度で、雑炊料理は見当たりませんでした。
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ウズベキスタン料理で知られるマスタワの語源はペルシャ語の「ヨーグルト(most)+スープ(ov)」。もちろん現在はウズベク語等としても定着している。ただしovは水の意味だがここでは料理用語としてスープ(水の多い料理)と置く。
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作ってみました!!
語源にもなった「ヨーグルト(most)+スープ(ov)」のように、現地のカティーク風にヨーグルトを入れて・・・♡
マスタワにカティークを乗せることは、語源的にも、とっても大事だったんだね!!