きっかけはバチカンクックブックでした。
英語書籍の「Vatican Cookbook」が素晴らしい。メニューを日本語に翻訳してみました。
バチカンという国は、カトリックの総本山が聖なる場所としてイタリア国内で領土を保有している一角です。バチカンで生まれ育つ者はおそらくおらず、聖職者や教会組織の職員は、他国の人が赴任してきて2つめの国籍としてバチカン国籍を与えられ、バチカンを離職するときにはバチカン国籍を失うという仕組みで、国が成立しています。
バチカン職員としてはスイスガードというスイス出身の傭兵を多く擁し、教会組織の様々な任務に就いています。「バチカンクックブック」は、そのスイスガードがバチカン料理レシピを出版したものです。そこには、教皇のための料理や、組織執行の料理のほか、スイスガードの食事も掲載されています。そのひとつがスイス料理として伝統あるパペヴォードワです。
いろいろな国の料理を作りたい私は、是非バチカン料理も作ってみたい♪ そこで、今まで見たことがない料理ですが、バチカンかつスイス料理のパペヴォードワに興味と関心を抱いたので、どんな料理なのかを出来るだけ調理の前に知りたいと思いました。この記事では、その事前学習に知ったことを記録しています。自分がちゃんとスイスのことを知っていけるように、頑張って地図も書いてみよー、いってみよー、おー!!
* * *
◆フランス語Wikipedia「Papet vaudois」(≫こちら)
パペヴォードワ(別名パペオーポロー)はスイスのヴォー(ボー)州の伝統料理です。(Le papet vaudois, ou papet aux porreaux, est un plat traditionnel du canton de Vaud en Suisse.)
◆Wikipedia「スイスの地方行政区画」(≫こちら)
スイスというのは、平地のごたごたに巻き込まれたくない地域が一致団結してできた国。つまりは山岳国家。山岳地帯の中世より続く王国などが多数集まったゆえ、その名残が26の州(カントン)になっています。正確には20州と6準州。国が集まって国になることからスイスは連邦国家という国家形態を持っています。
スイスがこうで、
26のカントンに分けるとこうで、
ヴォー州は濃いピンクの部分です。
ヴォー州は西部ですね。主要都市はローザンヌ。フランスに接し、言語上区分におけるフランス語圏です。
◆DAY OF THE PAPET|Office du Tourisme du Canton de Vaud(≫こちら)
ヴォー州観光局のオフィシャルサイトです。見出しの「DAY OF THE PAPET」は「パペの日」という意味です。州の成立記念日の1月24日が「パペの日」だそうです。ヘッダー画像に大きく映っているのが、地域を代表する料理としてのパペヴォードワです。素敵ですね。・・・ところで「パペの日」と言うくらいに大きく使われている「パペ」はどういう意味?
◆LE PAPET DU LS 2019|Facebook(≫こちら)
「LS」はスイスのサッカーチームである「FCローザンヌ・スポルト」です。見出しの「LE PAPET DU LS」は、「ローザンヌ・スポルトのパペ」というイベント名。動画を見たら、大きな天幕の中、素敵なダイニングスペースを設け、皆がワインと食事と会話を楽しんでいました。ここで提供される料理には、パペヴォードワも含まれていました。素敵ですね。・・・で、「パペ」ってどういう意味?
◆Google翻訳
フランス語の「Papet」が英語に翻訳されない。「Papet vaudois」は訳語でも「Papet vaudois」として確定していた。
◆フランス語Wikipedia「Papet vaudois」(≫こちら)
冒頭で、「パペヴォードワはスイスヴォー州の伝統的な料理です。」(Le papet vaudois est un plat traditionnel du canton de Vaud en Suisse.)と記述した次、
「リークネギとじゃがいもでパペットが得られるまで調理します」(C’est un mélange de poireaux et de pommes de terre, cuites jusqu’à l’obtention d’une « papette ».)と書いている。
パペヴォードワのパペはpapetだが、「パペットが得られるまで調理」のパペットはpapetteで、綴りが違う。
では、パペットとは何でしょうか?
◆フランス語Wikipedia「Papette」(≫こちら)
パペットないしパペは、フランスブルゴーニュやスイスロマンディー(※)の古い言葉で、どろっとした濃いもの(粥状のもの)を意味します。(Papette (papète, papet) est un vieux mot de dialecte bourguignon et romand désignant une bouillie ou une soupe épaisse.)
※スイスロマンディー:ジュネーヴ州、ヴォー州、ヌーシャテル州、ジュラ州の4州からなるスイスフランス語圏。
了解。パペもパペットも、どろどろ煮やくたくた煮のことね。
◆#papetvaudois|Instagram(≫こちら)
インスタグラムでパペヴォードワの写真を並べて見てみました。ねぎやじゃがいものくたくた煮に、美味しそうなボイルドソーセージが乗っています。美味しそうだね。ワインに合いそうです♪
◆フランス語Wikipedia「Papet vaudois」(≫こちら)
パペヴォードワは、パペ(ねぎとじゃがいものくたくた煮)に「キャベツソーセージ」が乗ります。(Le papet accompagne généralement la saucisse aux choux)
キャベツソーセージ!! フランス語でソシースオーシュー(saucisse aux choux)!! 料理にキャベツを使うんじゃなくて、「キャベツ入りソーセージ」というものがあるとは!!
◆Google画像検索「saucisse aux choux papet」
「キャベツ入りソーセージ」の中身も見てとれます。パペヴォードワでは、このソーセージの皮は食べずに(食べられず)、中身を野菜のくたくた煮と一緒に食べるのだそうです。ソーセージの塩分と燻製風味が、野菜のあっさりしたくたくた煮を美味しくするのですね。
* * *
では、パペヴォードワのレシピを検討していきましょう。なるべく日本の多くの人が作れるように、流通している食材で作りたいから、レシピ化にも工夫が必要です。
1)ソシースオーシュー
現地の特産ソーセージは(ネット通販などで特殊な出どころがあるかもしれませんが、通常は)日本では流通していません。だから、欧州産の太めのソーセージで「おいしそーv」と思えるものがあり、燻製の香りがしっかりしていそうなものがあれば、それを使ってみましょう。そしてソーセージは、事前に別鍋でゆでて、ふっくらとさせよう。
2)パペ
農村住民など、中世ヨーロッパでは、質素で素朴な食卓も多かっただろう。寒冷に強い作物であるねぎとじゃがいもをくたくたに煮る料理は、スイスに似合っているとさえ思う。ポロネギは、売っていない地域なら長ねぎで。
ねぎとじゃがいもをただくたくたに煮るだけのレシピもある。現代的なレシピでは、最初に玉ねぎをサラダ油などで炒め、白ワインやコンソメキューブや生クリームを使って美味しくしている。
いろいろと海外レシピを見ていて、私の思うところとしては、玉ねぎとサラダ油は使わない。コンソメキューブも使わない。でも酪農国家だからバターや生クリームは使おう。つまり、ねぎを最初にバターで炒め、じゃがいもを白ワインと水でくたくたに煮て、塩こしょうと生クリームで味を調えるレシピにしようと思う。ビネガーを入れるレシピも入れないレシピもあるが、まずは加えずに作ってみよう。それが美味しくなかったらビネガー有りで作り直せばいい。
いろいろな出来上がり写真を見て思うこと。どちらの選択肢もあって迷う点は以下の通り。
・汁だくか?汁なしか? →汁なしが綺麗だ。きちんと調理すればじゃがいもが汁気を吸ってくれるはずだ。
・じゃがいもが多いか?ねぎが多いか? →本物もリークねぎをたっぷり使っている。ねぎを多く使いたいし、じゃがいもも使いたい。1人1皿にねぎが1本分入り、お腹を膨らませる量のじゃがいもが入っているレシピにしよう。
3)キャベツ
ソシースオーシューの「シュー」はキャベツです。だからどこかにキャベツの旨味は入れたいです。では、キャベツはソーセージの側の材料ですから、じゃがいも側と合わせるよりも、ソーセージ側に合わせたらいいですね。ソーセージをゆでるときにキャベツをゆでて、あとで刻んで、ソーセージに添えましょうか。
ということで、ドイツソーセージを買ってきて、本物のパペヴォードワではないけれど、いい感じの料理が出来上がりました!!
ちなみに、スイスは多言語国家とか言われるけれど、ドイツ語を話す人が圧倒的多数の国。だからスイスにドイツソーセージは普及しています。
あ、話がそれましたw
そして、キャベツソーセージを味わいたくて、ソーセージにキャベツを組み合わせました。
きゃあ♡ これは美味しいわ。ゆでキャベツのみじん切りの甘味がソーセージの塩分とよく合います。
レシピは簡単です(≫詳細はこちら)。
材料(2人分):
- 長ねぎ
- 2本
- じゃがいも
- 大3個
- バター
- 大1
- 白ワイン
- 200mL
- 塩
- 小1/3
- こしょう
- 少々
- 生クリーム
- 大4
- ソーセージ
- 大4本
- キャベツ
- 80g
作業工程:1 時間
- 長ねぎを縦半分に切る。このとき緑の部分の中にゴミなどがありそうだったら洗う。そして1cm幅に切る。
- じゃがいもは皮をむいて1.5cm角切りにする。
- フタができる鍋にバターとねぎを入れて中火で炒める。
- ねぎに火が通ったらじゃがいもと白ワインを入れ、じゃがいもが大方かぶるまで水を加え、フタをして、30分煮る。
- 木べらでじゃがいもが比較的容易に潰せるほどじゃがいもが柔らかくなったら、フタを取り、塩、こしょう、生クリームを入れ、じゃがいもを潰しながら、水分がなくなるまで煮る。
- ソーセージにつまようじで両端1か所ずつ穴をあける。
- 鍋に湯を入れて沸騰させ、キャベツとソーセージを入れてフタをして弱火で5分ほどゆでる。
- ソーセージを取り出し、キャベツをまな板の上に置いて細かいみじん切りにする。
- お皿にねぎじゃがいもマッシュを乗せ、ゆでキャベツのみじん切りを乗せ、ソーセージを乗せて出来上がり。
- Enjoy!
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今日は、なんとなく、「料理研究家」というなりわいができたような気がします。研究にはいろいろな形があるけれど、作った⇒美味しかった・・・だけじゃあ研究にならないよね。研究とは、得たい結果を検証するために比較実験などをして得たくない結果を検定で排除して得たい結果を検証するとか、既存の知識や見識を統合して既存にない知識や論理を生み出すこととか、多段階研究をして最適を見出すことなどが該当するのだから。
今回は、大がかりでもなんでもなく、小さな私のライフワークの範囲内だけれども、上の2つめに書いたような、既存の情報を統合して研究した結果をレシピにするという作業ができました。
うわ♡ 今見ても美味しそうだね。皮がプチっとはじけ始めるところまで、ソーセージをぷっくりと茹でた甲斐がありました♪ ありがとう♪ 冷えた白ワインも美味しかった♪